幼女軍医   作:瀧音静

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めがっさ忙しくなってきたのでこれまで以上に投稿間隔空きそう読み投稿。

前からだけど書いてる小説に性癖詰め込みまくるのが癖になってて読み返すと笑う。

とりあえずロリ百合ヤンデレナースは正義。冷ややかな目で見られたい。



豪雨

「大隊諸君、観光旅行だ。敵の空挺だ。魔導部隊がアレーヌ市の民兵と合流したらしい。同市はもはや共和国軍の手に落ちた。――当然、奪還する!」

 

 力強い言葉と共に、隊員達を見渡すデグレチャフ殿。

 昨日の可愛らしい雰囲気はどこへやら、すっかり、私とはほど遠い凜々しい顔であります。

 

「さて、それにあたり難題がある。……我々は市内の共和国軍を『全て』排除しなければならない。当然ではあるが、非戦闘員への発砲は厳しく禁じる。ただし、市街戦につき、物的破損については破壊許可が出ている」

 

 難題がある。そう告げた後に僅かに考え、口にした『全て排除』と言う言葉に隊員達がざわつきますが、まぁ予想通りでありましょう。

 

「なお、敵魔導師との交戦前と排除後にそれぞれ勧告を行う。敵が降伏勧告を受諾すればよし。……そうでない場合は掃討戦に移行する。以上だ」

 

 いくら上からの命令と言えど、この事を部下である者達へ通達するのはデグレチャフ殿。

 司令部は、もう少しデグレチャフ殿の精神面でのフォローに重きを置くべきだと思いますね。

 もう二度と、あのような人財たり得る存在など、出てくることはないのでしょうから。

 さて、デグレチャフ殿が壇上から降りると、皆不安になってざわついていますね。

 お願いされた通り、私は彼らの不安を払拭せねばなりません。

 降りたデグレチャフ殿の代わりに私が壇上に上がれば、訓令された隊員達は言葉を消して待機します。

 

「皆様、デグレチャフ殿の言うとおり、今回は市街戦。しかし、我らは一般市民をも皆殺しにする野蛮な存在ではありませんね? 国際法的に避難勧告の後に残るのは敵国の民兵。ですが、様々な理由で避難できなかった帝国国民が存在するかも知れません」

 

 ここまで言って、私の言葉に耳を傾ける皆様の表情がさらに曇ります。

 間違いの可能性があると、私が明確にしてしまったから……。

 

「ですが、結果が伴っていなければどうでしょうか? 記録に残らないとすれば?」

 

 ですが、明確にせねばならない理由がありますので……。

 具体的には、どのような場合でも、一般市民を殺すことにはならない、という事実を認識させる必要があり、そのプロセスの中の一つであります。

 

「私の腕は皆様ご自身か、あるいは他の方から聞いている事とは思いますが、何も軍人だけを治療するのが軍医ではありません。であるならば、私は負傷した市民の皆様をも治療するわけであります」

 

 昨夜のデグレチャフ殿同様、私の言葉を理解した方から、表情が晴れてきます。

 

「誤射で打ち抜いた? 建物の下敷きにした? 相手の流れ弾を受けた? 全て等しく治療致しましょう。誰も――一切の帝国の民を死なせないと約束しましょう。これまで通り皆様を治療し死なせず、さらには市民の皆様にも、等しく『奇跡』を振るいましょう」

 

 要約すれば遠慮するな、余計なことは考えるな、と。

 皆様の尻拭いは私がするから、と。

 国のために振るう皆様の射撃を、術式を、覚悟を。

 今は濁らせないでくれ、と。

 

「さて、それにあたって懸念が一つあることでしょう。如何に治療しようとも、市民の記憶には帝国軍人から攻撃された記憶が残るのでは無いか、と。…………ご安心ください。ちょっと脳を弄れば、短期の記憶など抹消できます」

 

 自分でも怖いことを言っている自覚はある。

 が、しかし。

 皆様無意識のうちに私によって記憶を消されているのでございます。

 具体的にはやられる寸前の記憶。

 皆様被虐趣味はございませんから、痛いのも怖いのもお嫌いでございます。

 身体を撃ち抜かれる記憶。

 砲撃が腕を吹き飛ばす記憶。

 様々な痛みの記憶はございますが、それらは全て過去の物になっていませんか?

 あの時は痛かった。そう皆様仰りますが、『この直後に痛かった』、そう振り返る兵士の方は居ませんよね?

 攻撃を受けた瞬間の数秒前、これは、刺激が強すぎるあまりに忘れようとする脳の作用にあります。

 私はそれを、単に広げているだけ。

 皆様が自発的に行っている記憶処理の、ほんのお手伝いをしているに過ぎないのであります。

 

「誰に撃たれたか? 私は共和国軍だと断言するでしょう。何故このようなことに? と問われれば、共和国軍のせいだと答えましょう。 我々は何をしに来たのかと問われれば、帝国のために働きに来たと胸を張りましょう」

 

 やり過ぎだと思われるでしょうか? それとも、妥当であると判断されるでしょうか?

 

「我らに都合のいいように、市民達に刷り込みましょう。それが許されるくらいに、我々は連中から苦痛を受けているのでありますから」

 

 デグレチャフ殿が食事も喉を通らなくなるほどに悩ませる?

 気が重いと私に弱音を吐いてくる?

 不安に押しつぶされそうだ、と年の近い私を訪ねてくる?

 そこまで追い込んだ共和国軍は、私の脳内軍法会議にて極刑が確定。

 どころか、都度蘇らせて精神が壊れるまで極刑を繰り返したいほど。

 その精神の壊れも治療して、己の行いを悔いて悔いて帝国に寝返るほどに繰り返しませんと、私の気が済みません。

 ……絶対に許しません。

 

「さて、これまでは皆様に向けてこの言葉を言っていましたが、今回はさらに範囲を拡大する必要がありますね。……大隊各員、並びに帝国国民。アレーヌ市の市民の皆様、一旦、死ぬのをやめましょう」

 




はぁ。……失礼、どうにも気が重いとため息ばかりが出てしまいますね。
フリューア・アーデルハイト軍医中尉であります。
まずそもそもとして、自分らが気が乗らぬのに私が気乗りしていると思っている大隊の方はおられませんよね?
私だってデグレチャフ殿の治療以外したくありませんし、デグレチャフ殿以外が傷つく映像で目を汚したいとは思いません。
が、仕事です。仕事を頑張った者にだけ、報酬という物は存在します。
今回くらいは、デグレチャフ殿が私の介護を必要とするぐらいの怪我をしてくれるとよいのですが……。

次回、幼女軍医 「悲鳴」 ではまた、戦場で。

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