ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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祝!100話記念!!

感想で要望があったので雑ですが書いてみました。

スーパースピアヘッドのイメージ図です

【挿絵表示】





第100話 成長と旅立ち

注水が始まっていくアークエンジェルのドック。その光景を眺めながら、見送りのためにオーブの制服に身を包んだカガリは感慨深い表情で、出発準備を整えていく自分が乗っていた船を見つめていた。

 

「カガリ」

 

ふと、同じくアークエンジェルの見送りにやってきたウズミが、後ろから声をかけてくる。父はカガリの隣に緩やかに立って、同じように船を眺めながらカガリに問いかけた。

 

「あの船と共に行くつもりか?」

 

そう言われて、カガリは手を添えていた手すりにグッと力を込めた。しばらくの沈黙の後、カガリはウズミと向き合った。

 

「正直に言えば、迷っています」

 

「ほう?お前にしては珍しいな」

 

きっと付いていくと言って聞かん坊になるだろうと予想していたウズミは、迷っているカガリの様子を見て少し驚いた様子だった。

 

カガリはずっと考えていたことを、頭の中で整理しながら、黙って話を聞いてくれる父に思いの内を話し出した。

 

「プラント、コーディネーター。地球、ナチュラル。立場が変われば、状況が変われば、戦う相手も変わる。こんな複雑な戦況の中にいる彼らを助けたいのです!そして、早く終わらせたい!こんな戦争は!」

 

「ーーお前が戦えば終わるのか?」

 

ウズミの言葉に、カガリはグッと力が篭る。自分が戦場に出れば、戦争は終わるか?そんなもの、考えるまでもなく答えは分かっている。

 

「終わりません。この戦争はそんな単純なものじゃないんです…お父様…」

 

アフリカ、紅海、そしてオーブ。父の言葉にがむしゃらになって、祖国を飛び出して見てきた世界は、カガリの幼い考えを覆すには十分な力を持っていた。そして知ったことも多い。

 

なによりも、そんな戦争に多くの人を駆り立てたのは自分だ。

 

その誰かが誰かを討てば、討たれた者を大切にしている人が相手を憎み、銃を手に取り、そして戦場に向かう。

 

政治、暴力、憎しみに私情、ビジネスが絡み合う、この複雑な戦争に飛び込んでいく。

 

「あの船の友人に言われました。この戦争を終わらせるには、プラントも地球も納得できる落とし所を探さなければならないと」

 

結局、その時の勝利のために戦っても何も変わらない。もっと根本的な何かを変えなければ、この破滅的な戦争は終わらないのだ。

 

「どうすれば、戦争は終わるのでしょうか…お父様…」

 

そう迷うように言うカガリに、ウズミは優しく頭を撫でてやり、微笑みを向けた。

 

アフリカに行き、レジスタンスをしてるという報告を受けた時は、思わず卒倒しそうになったが、自分の子供は、そんな中で何かを見つけれたようだ。

 

キラ・ヤマト。

 

彼とカガリの出会いは、皮肉な運命とも言えるがーーそれでも、その出会いから得られた得難い教訓は、きっとカガリを成長させ、強くさせることだろう。

 

「銃を取るばかりが戦いではない。お前は見てきたものを芯に、私と共に戦争の根を学べ、カガリ。撃ち合っていては何も終わらん」

 

頷くカガリを見て、ウズミは自分の居なくなったオーブで縦横に才を振るう、カガリの理想の姿を見つめるのだった。

 

 

////

 

 

「オーブ軍より通達。周辺に艦影なし。発進は定刻通り」

 

「了解したと伝えて」

 

アークエンジェルのブリッジでは、注水が行われる中での最終チェックが行われていた。ナタルやエンジェルハートの管制官たちは、更新した内部機器の調整などで動き回り、作業員やオペレーターも忙しなく働いている。

 

「護衛艦が出てくれるんですか?」

 

そんな中で、オペレーター業務を遂行しながら、サイは首を傾げた。

 

「隠れ蓑になってくれようってんだろ?艦数が多い方が特定しにくいし、データなら後でいくらでも誤魔化しが効くからな」

 

そんな問いにノイマンが答える。このまま単身で出ることも考えられただろうが、そうなればアークエンジェルはすでに出港したとメディアに報じているオーブとしても、面倒なことになりかねない。

 

木を隠すなら森の中、船を隠すなら艦隊の中と言った具合だろう。

 

すると、通信を受けたミリアリアがマリュー宛に頼まれた伝言を伝える。

 

「ドック内に、アスハ前代表がお見えです。ヤマト少尉とレイレナード大尉を上部デッキへ出して欲しいと言われてますが」

 

 

////

 

 

「キラー!!ラリー!!」

 

キラとラリーが上部デッキに出ると、目と鼻の先にある作業用の橋の上で、カガリがこちらに手を振っているのが見えた。

 

「カガリ!バルトフェルドさんも!」

 

そう手を振るカガリから少し離れた隣には、すでにアークエンジェルから下船していたバルトフェルドとアイシャの二人が、こちらを見下ろしていた。

 

「見送りにとね。私も形はどうであれ、あの船に乗った身だからな」

 

「まったく、よく許しが出たな」

 

仮にもザフトの軍人だろうに、ラリーが呆れたように言うと、バルトフェルドもわざとらしく肩をすくめた。

 

「まぁ特例だがね?君の後ろにもう乗らなくて済むと思うと、なんだかホッとするよ」

 

「言ってろ」

 

そう返して快活に笑うバルトフェルドは、ポケットに入れていた小さな小型端末をラリーに向かって放り投げる。

 

「君にこれを渡したくてね」

 

受け取ったラリーは端末をひっくり返すと、「From Mr.K」と書かれたラベルだけが貼られていた。

 

「餞別だよ。きっと役に立つ」

 

そうウインクを飛ばすバルトフェルドに、ラリーは端末をポケットに突っ込んでからサムズアップを向けた。

 

「あぁ、ありがたく使わせてもらうよ」

 

向こうでは、アイシャがキラと最後の別れをしている様子が見えた。

 

「体には気をつけなさいよ?良い男になるのよ」

 

「ありがとうございます。バルトフェルドさんも、アイシャさんもお元気で」

 

「君たちと過ごした時は、楽しかったよ。じゃあな、少年」

 

「はい、バルトフェルドさん」

 

そう言って、バルトフェルドとアイシャはドックの奥へと消えていく。残ったのはーー。

 

「カガリ」

 

カガリただ一人だ。彼女は少し悲しげに目を伏せてから、立派に前を向いてキラに微笑んだ。

 

「私はここに残るが、気持ちはお前たちと一緒だ」

 

「うん。ありがとう、カガリ。色々と」

 

「気にするな。だからまぁ…お前…死ぬなよ?」

 

「ん…大丈夫。もう大丈夫だから」

 

そう言葉を交わしていると、キラとラリーの端末が淡く光った。そろそろ出航の時間だ。

 

「ありがとう、さようなら。カガリ」

 

キラはカガリに優しい声で伝えると、ラリーと共にアークエンジェルへ戻っていく。

 

さざ波を立ててドックから出て行くアークエンジェル。それを見送りながら、カガリはアフメドから貰った鉱石のネックレスをぎゅっと握り、旅立って行く船の先に幸あれと願うのだった。

 

 

 

 

 

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
  • キャラは脳内イメージするので不要

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