ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

124 / 213

いつも誤字指摘、修正ありがとうございます!!!!

感想も励みになっております!!!

次あたりにパナマいきたいな




第120話 戦争の理

 

オーブにアークエンジェルが入港する。

 

その一報を受けて、カガリは気がついたら走り出していた。アラスカ基地での一件は、近隣諸国であるオーブもある程度の情報は入手していたし、生き残った守備隊の存在も察知はしていた。

 

アークエンジェルがオーブにやってくるのも想定の範囲内とも言える。

 

カガリが駆け出した理由が、入港してくるアークエンジェルのクルーのリストだった。そこには、死んだと思っていた人物の名が記されていたのだからーー。

 

「キラ!!」

 

アークエンジェルから降りてきた士官の中に混ざっているキラを見つけて、カガリはすぐに飛びついた。

 

「カガリっ…ぅうわ…!」

 

キラは急に飛びついたカガリを受け止めようとしたものの、バランスを崩して通路に腰を落としてしまう。起き上がってカガリを見ると、彼女は泣きじゃくった顔を上げてキラに怒鳴った。

 

「ぅ…このバカァ!お前…お前…ぅぅ…死んだと思ってたぞ!このやろう!」

 

そう言って、カガリは再びキラの胸元に顔を埋める。しばらく肩を揺らすカガリの頭を撫でてから、キラは小さく「ごめん」と呟いた。

 

そんなキラたちの行く先では、アークエンジェルから降りたマリューたちが、出迎えにきてくれたウズミや、オーブの首脳陣と挨拶を交わしていた。

 

「私どもの身勝手なお願い、受け入れて下さって、ありがとうございます」

 

「事がこと故、各艦のクルーの方々には、しばらく不自由を強いるが、それはご了解いただきたい。ともあれ、ゆっくりと休むことは出来よう」

 

「ありがとうございます」

 

そう敬礼するマリューに、ウズミは複雑そうな面持ちで言葉を続ける。

 

「ーー地球軍本部壊滅の報から、再び世界は大きく動こうとしている。一休みされたら、その辺りのこともお話ししよう」

 

これからあなた達が何を選ぶのかもね、と言うウズミに、マリューは何も答えられずにその場に立ち尽くしている。

 

「見て聞き、それからゆっくりと考えられるがよかろう。貴殿等の着ているその軍服の意味もな」

 

 

////

 

 

「では、我々はこれで」

 

オーブ近海。領海線の手前で、地球軍のハインズはザフトの代表者であるホークと握手を交わした。

 

「すまないな、色々と。世話になったよ」

 

「お互い様ってやつですよ」

 

そう答えてくれるホークに、ハインズは表情を曇らせた。彼は、これからカーペンタリアに帰投する予定だ。ザフトと地球軍。さすがにオーブにこれだけの勢力を匿う力は無い。それにホーク達にはザフト軍人としての考えもある。このまま離反して共にーーというわけにもいかなかった。

 

「しかし……辛いものだな、PJ。我々はひと時であったとはいえ、わかり合うことができたと言うのに」

 

「我々にも、守るものがあるとしかーー答えられません」

 

そう答えるホークも、どこか悲しげな表情だった。二人は改めて握手を交わして、互いの健闘を祈った。

 

「そうだな。それを守るために、互いに存分に生きよう」

 

「ええ。そうですね」

 

ハインズとホーク以外にも、見送りにやってきた地球軍人とザフト軍人が、それぞれ想い想いの別れを告げていた。

 

「向こうに帰っても元気でな」

 

「お前に一杯奢ってもらったこと、俺は忘れないぜ」

 

あるいはパイロット同士で。

 

「ああ、元気でな…次会うときは、平和な時がいいな」

 

「そうだな、お前もお袋さんに、ちゃんと顔を見せるんだぞ」

 

あるいは作業員同士で。

 

「お前もな。ーーじゃあな」

 

そう言って離れていく。次会うのは再び戦場かもしれない。しかし、ここで心を通わせあったことはーー決して嘘ではないのだから。

 

 

////

 

 

オーブ領海へ入り、離れていく地球側の守備隊を眺めながら、ニコルは呟いた。

 

「このまま戻っていいんですかね、僕たちは…」

 

さっきまで手を振ってくれていた相手の軍人。そんな彼らに見送られた自分たちは、カーペンタリアに戻る。きっと、パナマ進攻部隊に加えられる事になるだろう。

 

ふと、後ろに腰を下ろしていたイザークが立ち上がると、船の奥へと入っていこうとした。

 

「イザーク」

 

「命令には従わなきゃならないだろ」

 

呼び止めたニコルの声に、イザークは背を向けたまま、抑揚のない声でそう言って、船の奥へと消えていった。

 

「イザーク!だけど!」

 

「ニコル。わかってるよ、あいつも」

 

そんなイザークを追おうとしたニコルを止めたのは、ディアッカだった。

 

「ディアッカ…でも」

 

そう言って落ち込むニコルに、ディアッカはため息をついて言葉を続けた。

 

「納得できないけど、納得できるまで立ち止まれないのが、俺たちパイロットの辛いところだよな」

 

生きるのも殺すのも、殺されるのも上層部の胸一つーーあーヤダヤダ。そう言って日陰になっている甲板で寝転がるディアッカを見て、ニコルはこの先に待つ異様な雰囲気に息を飲むのだった。

 

 

////

 

 

「ねぇこれで…これからどうなんの?」

 

アークエンジェルの食堂で、ひとまずの休息に入っていたキラの学友達。その中のカズイは、全員が食事を口に運ぶ中で、ふとそんなことを呟いた。

 

「え?」

 

「俺達、もう軍人じゃぁないんだよね?軍から離れちゃったんでしょ?アークエンジェル。だったら…」

 

そう弱々しい声で言うカズイに、スクランブルエッグを頬張ったトールが、淡々とした口調で答えた。

 

「敵前逃亡は軍法では重罪。時効無し」

 

バジルール中尉も言ってたでしょ?とミリアリアも付け加える。軍から離れたとはいえ、軍属であることは変わりない。見つけ出されたら、全員もれなく銃殺刑という悲惨な運命が待っているだろう。

 

「…俺さ、実はこれ持ってるんだけどさ、前の除隊許可証」

 

そう言って、カズイはポケットから、低軌道戦前にナタルから貰っていた除隊許可証を取り出す。もちろん、ここにいる全員が持っているものだが、カズイ以外は思いもつかなかったものだった。

 

「カズイ…」

 

「前に、アフリカで女性の管制官に言われたことが、ずっと離れなくてさ…」

 

〝ただ惰性でここにいるなら、悪いことは言わない。さっさと軍をやめて田舎にでも逃げることだね〟

 

アフリカで出会った、タスク隊の管制官をしていたモニカ・マスタングの言葉だ。

 

カズイにとって、キラが残る、みんなが残るからというので、ここまで踏ん張ってきたが、そこに自分の命を賭してーーという気概が、自分の中にない事を薄々感づいてはいたのだ。

 

「ずっと考えてたんだ。俺…俺は…本当はどうしたいんだろうって…」

 

アフリカのときも。紅海の時も。そしてソロモン諸島ーーアラスカ。

 

凄惨たる戦場で、自分の命すらも危険に晒されてーー。

 

「あの光景を見てさ…なんか、それがわかったような気がしたんだよ」

 

そう申し訳ないようにいうカズイの言葉に、誰も否定的な言葉は向けなかった。わかっているからだ。ここにいて、本当に自分の命を危険に晒してもいいのだろうか、と。

 

「カズイの気持ちはよくわかるよ……けど、俺は残るつもりだ」

 

そんな重苦しい空気の中、食事を食べ終えたトールが、真っ直ぐとした声色でそう言った。

 

「俺にとってーーこの船で受け継いだものを、俺は捨てることはできないんだ」

 

この船で過ごした日々。戦闘機に乗った日々。そしてーーボルドマン大尉と過ごした日々。その全てが、今の自分を形作っている。これを捨ててまでアークエンジェルを降りようなど、トールには考えられなかった。

 

「俺やキラは、みんなとはちょっと思いが違うだろ?だから、みんなもそこはよく考えた方がいいぜ?」

 

それだけ言ってトールは立ち上がると、食堂の外へと出て行ってしまった。

 

何のために、この船に、戦場にいるのかーー。

 

サイとミリアリアは、その疑問にまだ答えを出せなかった。

 

 

////

 

 

アークエンジェルの修理を見守りながら、キラはカガリに、これまであったことを話し、カガリもキラに、ソロモンでの戦いの後のことを話していた。

 

「そっか。アスランに会ったんだ」

 

カガリの言葉に、キラは少し暗い声で頷く。

 

「お前を探しに行って見つけたのーーあいつだったんだ。滅茶苦茶落ち込んでたぞ、あいつ。お前を見殺しにしたって、泣いてた」

 

そう言うカガリも、辛そうな顔をしていた。おそらくアスランも、負った傷がそれぞれに深いのだろう。

 

「あの時は、どうしようもなかった。僕も…きっとアスランも」

 

あの爆発があったとき、キラは咄嗟にアスランを退がらせることしかできなかった。それが最善のことだと思えたし、それが正しいと信じたからーー。

 

「小さい頃からの友達だったんだろ?」

 

アスランから聞いたのか、カガリの問いにキラは頷いて、懐かしそうに目を細めた。

 

「アスランは昔から凄くしっかりしててさ、僕はいつも助けてもらってた」

 

「なんで…その…アスランと戦ってまで、地球軍の味方をしようとなんて思ったんだ?」

 

「え?」

 

カガリの唐突な疑問に、キラは目を見開く。

 

「いや…だってさ、お前…コーディネイターなんだし、そんな…友達と戦ってまでなんて…なんでだよ」

 

〝お前はコーディネイターだ!僕達の仲間なんだ!〟

 

戦闘中に何度も言われたアスランの言葉がフラッシュバックする。たしかにコーディネーターとしては、自分はアスラン達の仲間だろう。それにアスランとは正真正銘の親友同士でもある。

 

だからこそ、だ。

 

「僕はーーラリーさんや、ムウさん…ベルモンド少尉が居たから。やれるべきことをやる。大切なものを守るために戦う。ただ、それだけを考えて戦ってたんだ」

 

〝僕は君を撃ちたくない。けど、君が僕の大切な人や、友達を傷つけると言うならーー僕は、君と戦う。大切な人を守るために〟

 

ラクスを引き渡したときに、一緒に来いと言ってくれたアスランに向けた言葉。その言葉に嘘はない。

 

アークエンジェル、クラックス、そしてメビウスライダー隊の仲間。彼らを守りたいと心から思ったから、キラはそう答えた。

 

「けど…」

 

そこで、キラは今になってわかった自分の浅はかさを憂いた。

 

「ほんとはーーーほんとのほんとは、僕がアスランを殺したり、アスランが僕を殺したりするなんてこと、ないと思ってたのかも知れない」

 

溢れるように呟くキラの言葉に、カガリは何もいえなかった。自分もそうだったから。戦争は止められる。自分は死なない。そんなアテにならない自信で、アフリカの地で戦っていたのだからーー。

 

 

////

 

 

翌日、マリューたち指揮官クラスに呼び出されたキラは、ウズミを含めたオーブ首脳陣との会談に臨むことになった。

 

マリューたちとともに会議室へ入室すると、ユーラシア連邦のハインズを含めた指揮官たちも顔を揃えている。

 

「サイクロプス…そしてモルガン、か。しかし、いくら敵の情報の漏洩があったとて、その様な策、常軌を逸しているとしか思えん」

 

事のあらましを聞いたウズミは、呆れるような、憂いるような目で、各指揮官が出した資料を眺めながら息をついた。

 

なんとも、杜撰な作戦とも言えよう。まさに人の命を生贄に捧げた作戦だ。

 

「立案者に都合がいい犠牲の上に。机の上の…冷たい計算ですが」

 

「それでこれか…」

 

そう言って、部屋にある全員が、モニターに映し出されている映像に目をやった。

 

《守備隊は最後の一兵まで勇敢に戦った!我々はこのジョシュア崩壊の日を、大いなる悲しみと共に歴史に刻まねばならない。だが、我等は決して屈しない。我々が生きる平和な大地を、安全な空を奪う権利は、一体コーディネイターのどこにあるというのか!》

 

そこには、パナマ基地で演説をする地球軍上層部の人間が映し出されている。後ろに控えるメンバーの中には、ウィリアム・サザーランドの姿も見て取れた。

 

《この犠牲は大きい。が、我々はそれを乗り越え、立ち向かわなければならない!地球の安全と平和、そして未来を守る為に。今こそ力を結集させ、思い上がったコーディネイター共と戦うのだ!》

 

「サイクロプスとモルガンの件は、マスコミに圧力をかけているのか……そもそも公表されてないのか」

 

ナタルの推測はおそらく当たっているだろう。先日からラジオやテレビ、軍の通信網まで、徹底した箝口令が敷かれ、サイクロプス、モルガンの情報は闇に葬られている。

 

「少なくとも、ここにいる守備隊の生き残りは、皆戦死したことになってるのは間違いないな」

 

ハインズの言葉に、巡洋艦グレゴリアの艦長は、バシッと手のひらに拳を打ちつけて苛立ったように声を荒げた。

 

「ふざけるなよ…!証拠隠滅のためにミサイルまで撃ってきたくせに!!」

 

「俺たちが戻っていたら銃殺刑どころか、賊軍として味方に撃ち殺されてたかもしれんな」

 

「解っちゃいるけど堪らんねぇ」

 

そこでモニターを切ったウズミが、改めて地球軍側へと視線を向ける。

 

「大西洋連邦は、中立の立場を取る国々へも、一層強い圧力を掛けてきている。連合軍として参戦せぬ場合は、敵対国と見なす、とまでな。無論、我がオーブも例外ではない」

 

「奴等はオーブの力が欲しいのさ」

 

後ろで控えていたカガリが呆れたようにそう言うのを、ウズミは視線だけで黙らせる。

 

「御存知のことと思うが、我が国はコーディネイターを拒否しない。オーブの理念と法を守る者ならば、誰でも入国、居住を許可する数少ない国だ。遺伝子操作の是非の問題ではない。ただコーディネイターだから、ナチュラルだからとお互いを見る。そんな思想こそが、一層の軋轢を生むと考えるからだ」

 

生まれの違い、民族の違い、種族の違い、大昔から戦争の発端など、あまり変わらないものだ。

 

「カガリがナチュラルなのも、キラ君がコーディネイターなのも、当の自分にはどうすることもできぬ、ただの事実でしかなかろう」

 

生まれや民族、そういったものを選んで生まれてくる生命はいない。生まれたときから人は違うのだ。しかし、それを超えて人は分かり合える。助け合った地球軍とザフトのように。

 

だがーー。

 

「なのに、コーディネイター全てを、ただ悪として、敵として攻撃させようとするような大西洋連邦のやり方に、私は同調することは出来ん。一体、誰と誰が、なんの為に戦っているのだ」

 

誰に利があり、誰が損をし、何を求めて戦うのだ。今のあり方は、ただいたずらに互いの種族を疲弊させ、滅ぼし合おうとしているようにしかウズミには見えない。

 

「しかし、仰ることは解りますが…失礼ですが、それはただの、理想論に過ぎないのではありませんか?」

 

マリューの率直な意見に、ナタルも頷く。

 

「それが理想とは思っていても、やはりコーディネイターはナチュラルを見下すし、ナチュラルはコーディネイターを妬みます。それが現実です」

 

「解っておる。無論我が国とて、全てが上手くいっているわけではない。が、だからと諦めては、やがて我等は、本当にお互いを滅ぼし合うしかなくなるぞ」

 

何も全てを許し合うことはない。折り合いをつけるのが大切だとウズミは言う。互いの意思を折らずに押し通すなどーー肉食獣の縄張り争いのように単調で、理がない戦いだ。

 

折り合いをつけられるから、人は戦争と呼んでいる。そうでなければ、それは殺戮だ。

 

「そうなってから悔やんだとて、既に遅い。それとも、それが世界と言うのならば、黙って従うか?どの道を選ぶも君達の自由だ。その軍服を裏切れぬと言うなら、手も尽くそう」

 

そう言ってウズミは、立ち並ぶマリューたちを見渡した。軍に従い、戦うと言うならばーー彼らのあり方を尊重しよう。しかし、心から今を憂いるなら、選択は他にもたくさんある。

 

「君等は、若く力もある。見極められよ。真に望む未来をな。まだ時間はあろう」

 

そう静かに言うウズミに、各指揮官は何も答えられなかった。誰もが正しい答えを探しているのだ。

 

そんな中、キラは真っ直ぐとした目でウズミに問いかける。

 

「ウズミ様は、どう思ってらっしゃるんですか?」

 

この果てしのない憎しみで成り立つ戦争を。その問いかけに、ウズミは少し瞑目してから、答えた。

 

「理念や信念を守るためには、ただ鑑賞や芸術のために剣を飾っておける状況ではなくなった。そう思っておるよ」

 

 

 

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
  • キャラは脳内イメージするので不要
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。