ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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第125話 開戦の音

 

 

「なに黄昏れてんの?艦長さん」

 

アークエンジェルのブリッジで、着々と進む出航準備の様子を眺めていたマリューに、ブリッジに上がってきたムウが話しかけてきた。

 

ムウも新しい機体であるストライクの慣熟訓練を終えて、今は指令を待つ身ーーというより、自分で考えを持って、この場に留まっている人員の一人だ。

 

「結局、アークエンジェルからの退艦は11名。ユーラシア連邦の艦隊のほとんどが残ってるし、ザフトの動ける奴らも迎撃に参加するんだって?」

 

あたりを見渡せば、地球軍の侵攻を食い止めるために出発準備と出撃準備をする船が多くあり、眼下ではオーブ軍と地球軍、さらにザフト軍の制服を着た兵士や技術者たちが忙しなくひしめいていて、それぞれが協力して準備に取り掛かっている様子が見える。

 

「みんな凄いじゃないの。ジョシュアとパナマがよっぽど頭に来たのかねぇ」

 

アラスカとパナマの悲劇ーーいや、惨劇を見て心を動かされた人々が多かったということだろうか。逃げようと思えば逃げられるというのに……それでも歯を食いしばって立ち止まり、自分たちが正しいことを為すために奔走している人々。

 

マリューは、こんな自分に付いてきてくれる下士官たちへの責任感や、これから為す自分自身の行いを見つめながらも、アラスカからずっと気になっていたことに想いを馳せていた。

 

好都合なことに、ここには誰もいない。マリューは意を決して、ムウの方へと振り返って問いかけた。

 

「…少佐は、なんで戻ってらしたんですか?その…ジョシュアで」

 

その問いかけに、ムウは今まで見たこともない間の抜けた表情をすると、困ったような顔をして頬をかいた。

 

「今更…聞かれるとは…思わなかったぜ」

 

なにを…とマリューが声を発しようとした瞬間、ムウは数歩マリューの方へ歩み寄ると、そっと優しくマリューの腰へ腕を回した。

 

これはーーと問うまでもなく、マリューは吸い込まれるようにムウの瞳を見つめた。ああ、こんな眼をした人を、自分は知っている。そんな考えが頭をかすめて、マリューはすこし悲しそうに眼を細めた。

 

「……私は…モビルアーマー乗りは嫌いです」

 

過去に、そんな瞳を向けてくれた人は、戦争で死んでいる。それもモビルアーマーに乗って。マリューの中には、いつも失う恐怖が付きまとっていた。ムウの気持ちに気付いていながら、そんな自分が答えることを邪魔している。すると、マリューの顎先へ指を添えながら、ムウは優しく微笑んだ。

 

「俺今、モビルスーツのパイロット」

 

その言葉の後、ムウはマリューへと吸い寄せられていく。影が一つになって、マリューは戸惑っていた手を、そっとムウの背中へと回していく。

 

その光景は二人だけのものーーーーだと思っていたが、管制システムを見ていたナタルが、その一部始終をバッチリ目撃してしまっていたことを二人が知ったのは、オーブ戦のあとだった。

 

 

////

 

 

オーブ守備隊への参加を表明したイザークたちは、キサカの案内の下、第六工廠へと足を踏み入れることになった。

 

理由は簡単で、キサカが志願したパイロットのデータを整理していた時に、イザークたちがG兵器に乗っていた経歴を見たことだった。

 

「マジで?これを俺たちに?」

 

「まさか君たちがGのパイロットだったとはな。驚いたが、君たちが扱っていたものだ。元鞘、というのはおかしいが、君たちが乗った方が戦力になるはずだ」

 

キサカの返答の後、改めてディアッカは改修されたバスターの姿を見上げる。それもただ直された訳ではない。稼働時間の問題を解決するため、動力源も最新型のバッテリーに交換されており、関節の駆動軸も互換性のある上位機種へ変更されているという。

 

カタログスペックだけでも、1.5倍ほどは機動力が増しているのがわかった。

 

「切って貼って直してたバスターが、新品同様とはなぁ」

 

「ブリッツの片腕は新造したが、武装面は間に合わなかったため、デュエルと同等のシールドとビームライフル、ビームサーベルを装備してある。うまく使ってくれ」

 

「了解しました」

 

それでは、システムの説明をと、ディアッカとニコルが技師からの説明を受けようとしていた時だった。

 

「イザーク?」

 

二人と共に呼ばれていたイザークは、少し離れた場所でフリーダムの調整を行なっているキラの方へと向かっていた。

 

「貴様が、あの機体のパイロットか」

 

そう問いかけられてキラが振り返る。なんだ、自分たちと変わらないじゃないかとイザークが少し驚いたが、すぐに気を取り直した。

 

「あっ…貴方は…」

 

「俺は、デュエルのパイロット。イザーク・ジュールだ」

 

そのイザークの言葉に、キラは一瞬、低軌道会戦の記憶がフラッシュバックした。

 

「デュエ…ル…」

 

コイツが、無関係な民間のシャトルを狙いーーあまつさえベルモンド少尉を撃ったパイロット…。そんな思いが湧き出して、キラの手に無意識に手に力がこもった。そんなことなど知らずに、イザークはキラの元へと歩み寄って、その不機嫌そうな目でじっとキラを見つめる。

 

「正直な話、俺は貴様のことを信用してはいない。戦場で相手を殺さないなんて、おかしいと思うからな」

 

イザークが言っているのはアラスカでの戦いだ。フリーダムは、決定的に自分を討てるタイミングだったというのに、わざと逸らして自分の命を見送ったのだ。その行為がイザークの中でずっと引っかかっていた。

 

「相手を殺さなければ、そいつはまた新しい機体に乗ってやってくる。元を断たねば、終わらないと思っているからな」

 

これはザフトの軍事学校で教わったことだ。敵を完全に倒す。でなければ、敵は傷を癒して新しい兵器に乗ってやってくる。それで同胞が傷ついたらどうなる?それで戦友が殺されたら?あるいはーーー自分自身が殺されたら?

 

故に、イザークは逃げ出した腰抜けたちが乗る船を狙ったし、それでも立ち向かってくる相手に銃を向けたのだ。

 

「今でも…そう…思うんですか…」

 

震えるキラの言葉に、イザークは鎮座するフリーダムへ視線を動かした。

 

「わからん」

 

「えっ」

 

予想していなかった返答にキラが驚くと、イザークも、自分でも戸惑っているのだがなと付け加えて、言葉を紡いだ。

 

「ただ、今までそうやって兵隊をやって、教えられたことを守り、敵を殺して殺されて、役目を果たして勲章をもらって……そこに俺は、意味を見出せなくなっている。今まで散々、コーディネーターの誇りだ、ナチュラルは下等だと宣っていたのにな」

 

アラスカだけじゃない。オーブで仲間ごと葬ろうとした地球軍にも。武器を持たない兵士に銃を放ったザフト軍にも。そして、そんな惨状の中でも手を互いに握ることができた両軍の兵士を見て、イザークは思ったのだ。

 

自分は、なんのために戦っているのだ、と。

 

「俺が受けるべき、罰はあると思う。この戦争に加担した誰にでも。だが償うのは今じゃない。今はやるべきことをやる。それだけだ」

 

「ジュール…さん…」

 

「イザークでいい。これから貴様とも共同戦線を張るのだからな。それが言いたかっただけだ」

 

邪魔をしたなと言ってニコルたちの元へ戻っていくイザーク。気がつくと、キラの手にこもっていた力はすっかり抜け落ちていたのだった。

 

 

 

////

 

 

 

 

 

 

 

各員、傾聴。

 

まずは、ここに残りオーブのため、そして自分たちが戦うべき相手を見定めるために剣を手にしてくれた諸君に感謝する。

 

これより、ミッションを説明する。

 

場所はオーブ首長国連合、オノゴロ島。敵の目的はモルゲンレーテの本社とマスドライバーだ。

 

島のほぼ中心部に位置する2箇所の防衛目標を守備するため、オーブ軍はアップル、バター、チャーリー、ダフの4つのエリアに展開し、防衛を行うことになる。

 

我々を含めたユーラシア連邦所属の地球軍、カーペンタリア所属のザフト軍も今作戦へ参加し、メビウスライダー隊は、敵勢力が最も侵攻してくると予想されるエリアが担当となる。

 

オーブ軍も自国産の量産型モビルスーツ、M1アストレイで迎撃を試みるが、実戦が初めてな新兵が多い。よってモビルスーツ隊の中核としてザフト兵、地球軍の混成部隊で部隊指揮を行う事になった。

 

ラリー。君はライトニング1として、チャーリーエリアのモビルスーツ隊の中核を担ってもらう。メンバーはキラのライトニング2、トールのライトニング3。

 

ダフはフラガ少佐のストライクを中心に、オーブ軍のモビルスーツ部隊を展開。沿岸部からの上陸部隊を阻止する。

 

アップルは、ザフト軍と地球軍の戦闘機、モビルスーツの混成部隊だ。隊長はホーク殿を中心にした手練れで行ってもらう。また連絡した通り、味方からの誤射を防ぐために、ザフト軍にもM1アストレイに搭乗してもらうことになる。

 

バターには、ジュール殿のデュエルを中心とした部隊を中核に、敵の迎撃に出てくれ。

 

よってこれより、メビウスライダー隊は四つの小隊で運用することになる。

 

チャーリーを、ライトニング隊。

 

ダフはグリフィス隊。

 

アップルはアンタレス隊。

 

バターはガルーダ隊だ。

 

AWACSも二手に分かれて、アークエンジェルを主軸としたエンジェルハート隊、空母スプレッドを主軸にしたカノープス隊となる。

 

エンジェルハートはライトニング、グリフィス。カノープスはアンタレスとガルーダを担当する。通信時は、それぞれの小隊のTACネームを使用してくれ。

 

各員。

 

我々の目的は、オーブの技術力とマスドライバーを地球軍に渡さないことだ。それを渡してしまえば、戦火はより広がり、宇宙では血みどろの戦いになるだろう。

 

それだけではない。奴らにはモルガンがある。

あの火でオーブの無関係な市民たちを焼くことは、絶対に避けなければならない。

 

苦しい戦いになるだろうが、我々ならやり遂げられるはずだ。

 

この戦いで、我々が為すべき事を果たそう。

 

幸運を祈る。

 

メビウスライダー隊、発進せよ!!

 

 

 

 

 

 

 

////

 

 

 

オーブ、オノゴロ島南西部。

 

そこにあるモルゲンレーテのモビルスーツ格納庫では、ムウが乗るストライクを始め、ラリーの訓練を受けたアサギたちが乗るアストレイR型が発進準備に入っていた。

 

「嬢ちゃんたち!エレメントを組んで、しっかり付いて来いよ!」

 

グリフィス隊である彼女らのリーダーとして、ムウが隊長らしく声をかける。だが、彼女たちは軍人ではない。あくまでモルゲンレーテのテストパイロットだ。故にーー。

 

《うう、タイプRの慣熟訓練は終わったとは言え》

 

《不安が残るなぁ》

 

会話も非常にラフだ。M1アストレイよりも遥かに鋭いレスポンスを持つR型に乗り込みながら、三人はこれから出ていくことへ不安を露わにしている。

 

「戦場に出たらそんな言い訳通用しないぞ?しゃんとしろよぉー」

 

《 《 《了解ー》 》 》

 

気の抜けた返事だぜ…とムウが小さく呟くと、思い出したようにコクピットモジュールの空いたところへ一枚の写真を貼り付けた。

 

そこには、マリューとナタルを両肩に寄せたムウという、苦労を共にした三人の姿が映っていた。

 

守ってみせるさーー今度こそな。

 

《進路クリアー。グリフィス隊、フラガ機!どうぞ!ご武運を!》

 

「よっしゃあ!グリフィス隊、グリフィス1、ムウ・ラ・フラガ、エールストライク、出るぞ!!」

 

 

 

////

 

 

オノゴロ島の中腹部の格納庫でも、同じように発進準備が進められている。誘導員に従ってモビルスーツ用のエレベーターに乗るのは、M1アストレイを駆るPJと、同じ機体に乗る彼の長年の部下たちだ。

 

「M1アストレイ…ザフトの機体よりも、かなりデリケートな操作感覚ですね」

 

「マニュアルは読んだんだ。慣熟訓練も終わっている。あとは実践あるのみだな」

 

そう言って肩を回してからベルトを装着するPJ。そんな彼に、長年付き従ってきた部下がとぼけたように笑ってみせる。

 

「あまり無理はしないでくださいよ、隊長」

 

「娘たちに会うまでは死ねんよ」

 

そういう彼も、コクピットに故郷にいる家族の写真を貼り付けていた。

 

そうだとも。こんなくだらない戦争で死んでたまるものか。

 

そして見つけなければならない。この戦いの中で、自分たちーー地球もプラントも真にやらなければならない、戦わなければならないことを。

 

それを後の世に伝えるためにーー。

 

《進路クリア!アンタレス隊!発進、どうぞ!》

 

「了解した。アンタレス隊、アンタレス1、パトリック・J・ホーク、M1アストレイ、出るぞ!!」

 

 

////

 

 

「守備隊は東側に配置だ!他の奴らも抜かるなよ!」

 

モルゲンレーテ本社から出撃することになったイザークたちは、展開する迎撃部隊に指示を出していく。おそらく相手も地球軍製のモビルスーツでくるはずだ。

 

ならば、敵が嫌がるところに迎撃部隊を配置すればいい。ガルーダ隊では、事細かな指令系統もイザークの指揮に噛み合っている。

 

陸戦のミサイル部隊だというのによく動くものだと感心しながら、イザークもデュエルの発進準備を進めていく。

 

「まさかこの機体で、しかも流星隊で出ることになるなんてなぁ」

 

「人生とはわからないものですね」

 

両隣にいるバスター、ブリッツから二人の戦友の声が聞こえる。

 

「ふん、ナチュラルどもはモビルスーツに乗ったばかりだ。経験の差という物を見せつけてやる!」

 

「はりきってるねぇ、イザーク」

 

「無茶はしないでくださいね!」

 

「ちぃ!わかってる!」

 

そもそも心配というなら、一度落とされているお前たちの方がなぁーーーといいかけたところで、管制官からの合図が入った。

 

《進路確認!ガルーダ隊、発進してください!ハウメアの加護があらんことを!》

 

「ガルーダ隊、ガルーダ1、イザーク・ジュール、デュエル、出るぞ!!」

 

 

////

 

 

「いいな!発進は戦闘機からだ!!各作業員はさっさと配置につけよ!!」

 

マードック指揮の元、アークエンジェルでも忙しなく発艦準備が進められていく。ノーマルスーツに着替えたトールは、コクピットへかけられたハシゴを登って、〝やや形が変わった〟スカイグラスパーのコクピットに搭乗する。

 

「トール、スーパースカイグラスパーの調子はどう?」

 

「いい感じですよ、ハリー技師。レスポンスはバッチリです」

 

そうトールがにこやかに答えると、彼女は得意気に胸を張ってみせる。

 

ハリーがホワイトグリントを諦めて、トールのスカイグラスパーの点検をし始めてから数時間。

 

今作戦、唯一の戦闘機だからとハリーが気合を入れて弄った結果、そこにはラリーが乗っていたスーパースピアヘッドのデータを踏襲しながら、ノンオプションのストライカーパック装備システムを活かした、新たなるスカイグラスパーが完成していた。

 

「当然!なんたってオーブから新品を貰ったもんね!ガツンとやっつけてきてよ!」

 

何度かのテストで度肝は抜かれたが、すっかり乗り馴れた機体であるスーパースカイグラスパーの中で、トールは手を振るハリーへ敬礼を打って答えた。

 

「了解!」

 

《進路クリアー、スーパースカイグラスパー、どうぞ!トール、気をつけてね!》

 

「まかせて!トール・ケーニヒ、ライトニング3、スーパースカイグラスパー、行きます!!」

 

ランチャーストライカーを装備し、防護壁と増槽、小型ミサイルを搭載したファストパックを装備したスーパースカイグラスパーは、外付けのブーストユニットを吹かしながら、アークエンジェルを飛び立っていく。

 

続いて運び込まれてきたのは、ラリーのホワイトグリントだ。

 

「ラリーさん、よく聞いて。その機体は外装を任意でパージはできるけど、中身は誰にもわからない。もし宇宙用の機体だったら、すぐに帰還してくださいね」

 

フレイの忠告を聞き入れながら、ラリーもコクピットの中で発進準備を整えていく。

 

「了解した。まぁパージしないように気をつけるよ」

 

「いっそパージしてくれた方が、手を付けやすいんだけど!?」

 

「今度はモビルスーツと戦闘機を合体させようとか言うんじゃないだろうな?」

 

「はっはっは!そんなまさかぁ」

 

「そのまさかがあるんだよなぁ…」

 

《無駄口は終わりか?ライトニング1。敵はすぐに来るぞ》

 

トーリャの辛口の言葉に苦笑を洩らしながら、ラリーは操縦桿を強く握りしめた。

 

「はいはーい!んじゃあ、ラリー・レイレナード、ライトニング1、ホワイトグリント、発進する!!」

 

ガシュゥッと射出スライドにのって飛び出していくホワイトグリントは、空に飛び出すと畳んでいた翼を展開して、トールのスーパースカイグラスパーの後へと続く。

 

「次はフリーダムだ!さっさと動けよ!!」

 

《キラ、気をつけろよ。絶対、無理はするなよ!》

 

ハンガーから射出位置へ運ばれるフリーダム。そんなキラへサイが通信を繋ぐ。サイの表情はとても心配そうで、一度キラを失ったと思ったから余計に不安なんだろう。そんな彼に、キラは優しく微笑んだ。

 

「了解、サイ。無理はしないよ。大丈夫」

 

「キラ!」

 

発進シークエンス間際に、フレイがキラのフリーダムを見上げて叫ぶ。

 

「フレイ」

 

「今度も、守ってね」

 

そう言ったフレイに、キラは力強く頷いた。

 

今度こそ守る。自分の大切なものを、大切だと思えた全てをーー!!

 

「キラ・ヤマト、ライトニング2、フリーダム、行きます!!」

 

 

////

 

 

オーブ、オノゴロ島沖合。

大西洋艦隊のフリーゲート艦に守られるように配置されるアズラエルが乗るモビルスーツ用の船の中では、カラミティ、レイダー、フォビドゥンの発進準備が進んでいた。

 

《あー、君達?マスドライバーとモルゲンレーテの工場は壊してはいけません。分かってるね?》

 

各機体に届けられたアズラエルの言葉に、フォビドゥンに乗るシャニは小さな笑みを浮かべる。

 

「他はいくらやってもいいんだろ?兄ちゃん」

 

「向かってくる敵はね。とにかく自分たちを守ることだよ。無理に戦って怪我をするのも馬鹿らしいしね」

 

そう答えるのは、アズラエルが用意した機体に乗るリークだ。三人にとって隊長であり、兄であるリークの言葉は、ほぼ絶対だ。

 

「了解了解」

 

「兄さんは心配症だからな」

 

「オルガ、これが初出撃ってこと忘れないでね?無茶をしたら今度の新作の本、買わないから」

 

カラミティの中で呆れたようにいうオルガに釘をさすと、彼はうげぇと心底嫌そうに顔をしかめる。テストと勉強の間の唯一の娯楽が!と言わんばかりに、オルガは焦ったように言葉を出した。

 

「えー!そりゃねぇぜ!」

 

「やーい、兄貴に怒られてんの」

 

「ダッサ」

 

「うるせーぞお前ら!」

 

クロトとシャニのまるで指をさして笑うような言い草に、半ば切れるように返すオルガ。そんなやりとりをアズラエルは通信越しにパンっと手を叩いて制した。

 

《はいはい、お話はそこまで。では、ベルモンド上級大尉、あとは任せます》

 

「了解。じゃ、行こうか」

 

すると、四人の機体へ訓練時から聞き慣れたオペレーターの声が届いた。

 

《こちら、AWACS「スカイキーパー」のニック・ランドールだ。メビウス隊、通信時はコールサインで。敵情報はこちらでモニタリングする》

 

船の側面が開く。朝焼けが迫っていた海は徐々に明るくなっていて、扉が開いた瞬間に一筋の光がオルガたちの元へ届いた。

 

《作戦時間丁度。日の出だ》

 

さぁ、始めましょう。アズラエルの一言を合図に、各艦からモビルスーツ部隊と戦闘機隊が一斉に飛び立ち始める。

 

「了解っと!オルガ・サブナック、メビウス1、カラミティ、おらぁ!!行くぜぇ!!」

 

「クロト・ブエル、メビウス2、レイダー、発進しまーす」

 

「シャニ・アンドラス、メビウス3、フォビドゥン、出るよ」

 

3機も同様に船から飛び出して、ほかの部隊と同じようにオーブのオノゴロへと進行していく。

 

《ベルモンド上級大尉、その機体はあくまでテストです。つまらないことで撃墜は許しませんからね?》

 

遅れて発進するのは、先に出た三機よりもオーソドックスな機体で、地上での滞空時間を獲得するために装備された、フォビドゥンと同様のフライトユニットを背中に背負ったG系の機体だ。

 

「わかってますよ、アズラエル理事。リーク・ベルモンド、メビウスリーダー、〝リベリオンガンダム〟、発艦します!!」

 

そう答えて、リークも出撃していく。

 

オノゴロ島を目指す地球軍勢。戦いはすぐそこに迫っていた。

 

 

 

 

////

 

 

 

 

「メビウスライダー隊?ああ、例の時代遅れか」

 

極秘にオーブに向かう空母の中で、ブリーフィングを受けている壮年の男性はつまらなさそうに呟く。

 

《君たちに下った命令は、事実を知るもの全ての破壊だ。これはどの命令よりも優先される》

 

「戦闘機、モビルアーマー乗りで名を馳せたようだが、今はモビルスーツの時代だ。戦闘機などと言うロートルにはさっさとご退場願おう」

 

そう吐き捨てる男性の隣では、麗しい女性パイロットが立っていて、こちらもメビウスライダー隊の情報を、特に興味もなさげに眺めながら呟く。

 

「宇宙の野良犬の駆除には番犬ってね。いいじゃない。ひさびさに楽しそうで」

 

《カテゴリー15、レッドキャップ。カテゴリー5、プロメシュース。君ら黄色部隊のモビルスーツには、多額の金がかかっていることを忘れるな。戦果を出さねば意味がないのだからな》

 

「了解している。では、時代遅れを狩るとしよう」

 

 

 

 

 

 

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
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