ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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第130話 束の間の停戦と再会

 

ラリーはオノゴロ島の避難船の近く、休戦のために着陸した地球軍のモビルスーツ隊の側に来ていた。

 

キラが乗るフリーダムとアスランが乗るジャスティスも、四機のモビルスーツが不自然な動きをしないか監視するために近くに着陸しており、その場は、地球軍、オーブ軍、ザフト軍の最新鋭モビルスーツが揃い踏みになるという異様な空間が形成される事になった。

 

「その機体のパイロット!!聞きたいことがある!!」

 

ラリーは地球軍のモビルスーツ隊の隊長であろう機体、リベリオンの足元でコクピットに向かって大声を出した。

 

《……僕も聞きたいことがあります》

 

リベリオンのパイロットも外部音声でラリーの声に応える。しばらくの重苦しい沈黙のあと、ラリーは意を決してリベリオンのパイロットに問いかけた。

 

「リーク……お前なのか?」

 

その言葉に応えるように、リベリオンのコクピットハッチが開くと、中からヘルメットを外したパイロットが現れ、下から見上げるラリーを見下ろす。

 

その顔は見間違えようがない。キラもフリーダムのコクピットで目を見開いた。

 

「ラリー……ラリー・レイレナード……。まさか、ラリーが…」

 

そこ居たのは紛れも無い、二人が大気圏で別れたーーーリーク・ベルモンド、本人の姿だった。

 

「リーク、生きていたのか……」

 

「ベルモンド……少尉?」

 

フリーダムもコクピットをせり上がらせて、シートから立ち上がりながらキラはヘルメットを脱いだ。隣でアスランが驚いたように同じくコクピットから出てくるが、驚愕しているキラは、ただリークを見つめて立ち尽くすだけだった。

 

「キラくん、君だったんだね」

 

そんなキラを見て、リークは優しく微笑む。その顔を見て、キラはやっとリークが生きていたことを実感できた。無意識に視界が霞み、涙が溢れ出す。

 

「無事……で……本当に……」

 

《おいおいおい!》

 

そんな感動の対面の中で、いきなりカラミティの外部音声が響き渡る。キラが視線を動かすと、残りの三機のコクピットも開き、パイロットがハッチの上に飛び出してきていた。

 

「兄貴は今は上級大尉なの!!」

 

「ていうか、お前ら、兄ちゃんの知り合い?」

 

レイダーとフォビドゥンから出てきたクロトとシャニが、まるで大事なものを守るために威嚇する動物のように、キラとラリーをギラギラとした目つきで睨みつける。

 

オルガは出てこなかったが、二人が不穏な動きをしたらカラミティで蹂躙できるように、臨戦態勢を取っていた。

 

そんな三人を宥めるように、リークはキラとラリーが何者なのかを簡潔に伝えた。

 

「メビウスライダー隊のパイロットたちだよ」

 

「 「 「まじで!?」 」 」

 

普段、喧嘩のようなじゃれ合いをする三人が珍しく息を揃えて驚いた。リークがもともと所属していたメビウスライダー隊の話は、アズラエルからもよく聞いていたし、なによりリークという隊員本人の技量の高さを、三人は深く理解している。

 

そんなリークが一目を置いている隊のメンバーが揃っていることに、三人は変な汗を流しつつ、道理で手こずった訳だと先ほどの戦闘内容を納得してしまったのだった。

 

「あの戦闘機は?」

 

リークが空を見上げてラリーに問いかける。空にはトールが駆るスーパースカイグラスパーが周辺警戒のために悠々と飛んでいる姿があった。初めはあの戦闘機にラリーが乗っているのだと思っていたのだが……では誰が?

 

そう首をかしげるリークに、ラリーは聞いて驚くなよ?と前振りをしてから答えた。

 

「トールが乗ってるよ」

 

「キラくんの友人が?」

 

リークも宇宙で何度か話をしたことがあるキラの学友だ。まさか彼が?自分が隊を離れている間に一体なにがあったのだろうか?

 

「まぁこっちも色々あってな」

 

そう言うラリーも、リークに語りたい多くのことがあった。大気圏を降りたあとのこと、アフリカでの戦い、紅海での戦い、そしてオーブ、ソロモン諸島、アラスカーー。

 

「……僕も、聞いていた話との食い違いに戸惑ってる。ラリーとキラくんはソロモン諸島で行方不明に。そしてアークエンジェルもアラスカでーーって話だったんだけどね」

 

つまりアラスカで全滅したと言われていた守備隊の多くもここにいるのだろう。身なりはオーブ軍になっているかもしれないが、アークエンジェル、そしてなによりラリーがここにいると言うのがその証だ。

 

彼が居るなら、守備隊を見殺しにはしない。宇宙空間になにも知らないまま放り出された自分を助けてくれたように、彼はきっと戦ったのだろう。大切なものを守るために。

 

「その割には驚いてないな?」

 

行方不明の相手がお互いに目の前に現れたのだ。こちらはリークの姿に驚いたが、リーク自身はどこか納得したような……そんな落ち着きすらある。そう問いかけたラリーに、リークはいたずらっぽく微笑んだ。

 

「この程度で死ぬ玉?人外であるラリー・レイレナードが?」

 

そう言われて、ラリーはしばらく固まったあと、膝を叩いて大笑いをした。

 

「わっはっはっはっ!違いねぇな!!」

 

自分を人外だとか、人間じゃないと散々言っていた相手が、早々に死を信じるはずはないか。それを聞いて、ラリーは長年の戦友との会話で久々に笑えたような気がした。

 

すると、リークはヘルメット内の通信に応答する。誰かからの指示を受けたようだ。

 

「地球軍からも、正式な撤退命令が発令された。メビウス隊は母艦へ帰還する。はいはい、みんな、帰るよ!乗った乗った」

 

うぃーと、きだるげな返事をするオルガたちがコクピットに乗り込む様子を見て、リークもリベリオンのコクピットへ戻ろうとラリーに背を向けた。

 

「リーク!」

 

その声に、リークはコクピットに潜り込もうとしていた身体を止めた。そして振り返る。

 

「ーーわかってるでしょう?ラリー。僕らは軍人」

 

語り合いたいこと、話したいこと、聴きたいこと。多くがある。けれど、今の二人の立ち位置がそれを許さなかった。

 

形はどうであれ、ラリーたちメビウスライダー隊は、地球軍を離れた離反者。そしてリークは地球軍の軍人だ。プライベートであれば話は別だが、今は互いが組織に従って動いている。

 

身勝手に動けば、自分だけではない。周りにも大きなデメリットが降りかかることになる。

 

「リーク。お前は……地球軍を信じているのか?」

 

そのラリーの問いかけに、リークはヘルメットを被りながら答えた。

 

「ラリーとキラくん、それにアークエンジェルが生きていたことで、地球軍は信じられなくなりつつあるけど、僕や妹たちを助けてくれた恩人は信じている」

 

「そうか……そうだったな」

 

そう言ってラリーは納得したように声を繋ぐ。

 

リークがオルガたちの隊長をやっているというなら、バックにいるのはアズラエルだ。方法はどうであれ、彼が大気圏に落ちたリークを何らかの形で救助し、そしてオルガたちブーステッドマンを託したのだろう。

 

うまく育てているのは戦いを見てすぐにわかった。三人ともとても穏やかであったことから、きっとリークが三人を守っているのだろう。あるいは、アズラエルが何か変わったか……。

 

少なくとも、彼が不満を言わずに三人の隊長をやっているということは、リークはきっと自分の信条に従っているはずだ。

 

「これを知った上も何か動いてくれるはずだよ。今は……僕らは戦うしか無いだろうけどね」

 

そう少し悲しそうに言うリークに、今度はラリーが意地悪っぽい笑みを浮かべる。

 

「ならば、手心を加える必要があるかな?」

 

すると、リークは表情を笑みに変えて受けて立つように答えた。

 

「したら許さないよ」

 

「わかった」

 

会話を終えたリークはリベリオンに搭乗すると、四機のモビルスーツはゆっくりと上昇し始め、海上に浮かぶ母艦へと帰還していく。

 

「ラリーさん!良いんですか?!ベルモンドしょ…上級大尉と!!」

 

降りてきたキラが驚いたようにラリーに詰め寄る。そう言われても仕方ないが、とラリーは困ったように頭を掻いた。

 

「ここまで来ると、俺たちみたいに内輪で解決できる簡単な話じゃ無いんだ。それに」

 

「それに?」

 

「あいつと俺、どれだけ強くなったか、俺自身としては興味が…」

 

《エンジェルハートよりライトニング1!!ラリー!!東だ!!》

 

ヘルメットの通信機に、トーリャの大声が響く。通信に答える前にキラとラリーが東側の海上を見ると、遠くから二つの影がこちらに向かってきているのが見えた。

 

『こんな時に撤退?敵が無防備な今がチャンスだろうが』

 

『気は進まないけど、私たちの任務はあなた達とは別だからね』

 

黄色部隊の二機が、停止しているホワイトグリントとフリーダム、そしてジャスティスに標的を定めて徐々に距離を詰めてきた。

 

《すまない!流星!そちらに抜けられた!》

 

《あいつら!!協定を無視して!!》

 

停戦協定を無視して、二機はデュエルとバスターを騙し討ちし、チャーリーの主力であるメビウスライダー隊めがけて奇襲をかけてきたのだ。

 

帰還しようとしていたリベリオンが、二機の機影を捉えて即座に反転。規定を無視する二機へ通信をねじ込んだ。

 

「あいつら……どこの所属だ!!このエリアは停戦協定の範囲内だぞ!」

 

『アズラエルのおもちゃが!お前らでは話にならん!!』

 

『まぁ、アズラエルの坊やとの話が終わる頃には、メビウスライダー隊なんていう時代遅れは死んでるでしょうけどね?』

 

「貴様ら……!」

 

アズラエルから聞いていたデータに、あんな特異な存在は無かった。おそらく、大西洋連邦が潜り込ませた者たちだろう。アラスカでの出来事、そしてパナマで起こった、大西洋連邦にとって知られては不味い事を握りつぶすためにーー!!

 

「トール!?」

 

そんな二機へ正面から立ち向かう機体、スーパースカイグラスパーが、黄色部隊からオノゴロ島を守るために立ちふさがる。

 

「レイレナード大尉とキラは避難民を!こいつらは俺がやります!!」

 

『はっ!現れやがったな時代遅れが!』

 

『へぇ、調子に乗って殺されに来たのね?野良犬が。死になさい』

 

そう言って武器を構える二機を目にして、トールはぐっと歯を食いしばり、操縦桿を握る。

 

「やれるものなら、やってみろよ…!」

 

もうあんな思いはーーボルドマン大尉が守ったものを、こんな奴らに汚させはしない。

 

流星たちに鍛えられた腕。

 

ここを易々と通れると思うな……!!

 

 

 

 

 

 

 

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
  • キャラは脳内イメージするので不要
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