ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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UA200万超記念で、前から温めてたネタを!!


番外編 オーブ温泉物語 1

 

「 「 「温泉?」 」 」

 

オーブ、オノゴロ島。

 

パナマの危機を脱したザフト軍が合流してしばらくの頃。モルゲンレーテの工場でデータ取りをしていた各々は、カガリが言い出した言葉を反復するように問いかけ直した。

 

「ああ!オーブは活火山の島国だからな!軍事産業の中心であるオノゴロでも、天然の温泉がなんと20箇所もあるんだ」

 

そう胸を張っていうカガリ。

 

このオノゴロ島も、活火山で形成られた島国であり、目立った火山はないが地脈には真っ赤に熱せられたマグマが幾十も根を張っており、その影響か、オノゴロを始め、ヤラフェスや、オーブの島々には温泉が多く点在しているのだ。

 

「あー、そのオンセンって、つまりお風呂ってこと?」

 

「自然に湧き出るお湯ってイメージ?」

 

地球にはいたものの、温泉文化に触れたことないトールや、フレイの手伝いをしていたサイは顔を見合わせながら疑問を投げ合う。

 

すると、ホワイトグリントから降りてきたラリーが咳払いをして説明し始めた。

 

「間違ってはないけど間違ってるな。温泉というのはつまるところ、地下のマグマや地熱で暖められた地下水だ。その地域の地層に含まれる栄養源が熱で溶け出し、それがお湯に含まれて湧き出てくる」

 

正確には、地中から熱水泉が湧き出している現象や場所、湯そのものを意味する温泉。

 

その熱水泉を用いた入浴施設やそれらが集まった地域も一般に温泉と呼ばれ、地下水を熱した人工温泉と対比して「天然温泉」と称する場合もある。

 

正確に熱源で分類すると、火山の地下のマグマを熱源とする火山性温泉。火山とは無関係に地熱などにより地下水が加温される非火山性温泉に分けられる、

 

そして肝となるのは、必ずしも水の温度が高くなくても、普通の水とは異なる天然の特殊な水やガスが湧出する場合に温泉とされるというところだ。

 

ちなみに旧アメリカ合衆国では21.1度。旧ドイツでは20度以上と定められていたりする。

 

「古来より、湯治なんてのもあってな。傷や疲れにも効く効能がある」

 

「なんだよ、やけに詳しいじゃないか」

 

ラリーの言い草に、ムウが感心したように言う。もともと現代日本人であるラリーにとって温泉とは故郷を思い返す上で切っては切れない情景であり、宇宙にいる間も、幾度となく文献や資料で調べるほど、その存在は恋い焦がれるものであった。

 

「まぁ、そんなわけだ。ここのところ皆張り詰めてるからな!温泉でもどうかと思って」

 

そう言うカガリに、全員が顔を見合わせる中、モビルスーツの調整を行なっていたディアッカがそれとなく手を挙げた。

 

「俺、賛成。宇宙じゃ湯船に風呂はってなんて贅沢、なかなかできないもんなぁ。ニコルは?」

 

「僕も入ってみたいです」

 

ニコルの同意を得て、ディアッカは隣にいるイザークに視線を打つ方がーー。

 

「俺は作戦指揮の資料があるからーー」

 

そう言ってそそくさと逃げようとするイザーク。だが残念、ニコルとディアッカに回り込まれてしまった!!

 

「はいはい、オーブの姫さんがわざわざ言ってくれてんだ。うだうだ言うなってイザーク」

 

「くっ!離せ、ディアッカ!!わかった!わかったから!!」

 

「根詰めすぎなんですよ、イザーク。たまには休むことを覚えたほうがいいですって」

 

そう言って強制連行されるイザークを横目に、アークエンジェル組もトールが手を挙げていた。

 

「キラも行くよな?」

 

「うん、僕も少し疲れたからね」

 

そう言った結果、工廠で作業をしていたほとんどクルーが参加することに。これは貸切で用意しないとな、とカガリが内心でどうするか考える。まぁ当てはいくらでもある。こう言う時くらいには首相の娘という特権を充分に生かさせて貰おうではないか。

 

「よし!フラガ少佐やラミアス艦長たちはすでに誘ってあるからな!送迎はオーブ軍の車を使ってくれ!ラリーは…」

 

そう言ってカガリが振り返るとーー。

 

《よーし!全員、タオルと洗面用具を持って1800時に集合だ!ルールとマナーを守って楽しく温泉だ!!》

 

「率先して指揮を執ってる!?」

 

拡声器を持ったラリーが作業を切り上げた地球軍、ザフト軍の作業員たちに温泉の入り方や、用意するものをテキパキと指示しているのだった。

 

 

 

////

 

 

 

 

「うおー!!でっけー!!」

 

「ゴージャスゴージャス!!」

 

淤能碁呂の湯畑。

 

オノゴロ島の中でも市街地からほど近い保養施設で、ヤラフェス島の温泉地の次に大きい温泉街と言えた。

 

「こんなにお湯を使った保養地があるなんてな…」

 

その中でも海が一望できる屈指の露天風呂施設を貸切にしたカガリたち一行。脱衣所から出てきたディアッカとイザークはあまりの大きさに感銘のような息をつくばかりだった。

 

「まさに地球の自然様々だな」

 

そう言うイザークに、ディアッカもニコルも頷く。その隣を、年相応にはしゃいだトールが走り抜けた。

 

「俺が一番だー!!」

 

「はーい、ストップ。まずはかけ湯で体の汚れを落としてな?」

 

「 「 「うぃーす」 」 」

 

走り出そうとしたトールをヘッドロックで固定しながらマナーを口にしたラリーの一声に全員が気の緩んだ返事を返した。

 

 

////

 

 

地球とザフトの兵士たちが入り乱れた温泉御一行だが、夕方と夜の二班に分かれて温泉を堪能することになった。

 

夕方は、モビルスーツの調整や修理、データの移行を担当する作業員スタッフ、夜は近隣の警戒任務に出ているパイロットを中心にした班にわかれることになっており、希望者は全員入れるようにカガリが手配したのだった。

 

「あっちー!!ぁああああーー」

 

「けど、慣れたら気持ちよくなるな。これ」

 

初めて入る温泉におっかなびっくりなザフトの兵士たちであったが、お湯に慣れてきた頃にはすっかり温泉の心地よさに魅入られることになっていた。

 

「まさか温泉にありつけるなんてなぁ…いやぁ、極楽だぁ」

 

「なぁ、肩こりとかにも効くって?俺の古傷にも効くかな」

 

地球軍とザフト軍の作業員たちが肩を並べて湯船に使っている。少し前までは考えられなかったことだが、この時間で二つの勢力に属する彼らの信頼関係はより近いものへと強化されたに違いはなかった。

 

「ゆっくり入っとけ入っとけ。効く効く」

 

「それより見ろよ!すべすべ!コロニーのお湯じゃこうもならねぇぜ?」

 

はしゃぐもの、寛ぐもの、暑さを和らげるために岩場に腰掛けるもの、多種多様の楽しみ方で全員が温泉を堪能している中ーー。

 

「んぁあーーー染みるぅう……」

 

ラリーは肩まで浸かって温泉を全身全霊で堪能していた。ひさびさーーいや、もう二度と入ることはないだろうと諦めていた温泉に浸かる。それがどれほど幸せなことだろうかーー。ラリーはただ今はこの幸せをゆっくりと噛みしめている。

 

「なんかおっさんくさいな、ラリー」

 

そんなラリーの隣で、タオルを頭に乗せて寛ぐムウと、キラ。ムウは呆れたように溶けているラリーを見つめた。

 

「いいじゃないですかぁ…足を伸ばせて浸かれるお湯ってこうも有り難みがあったんですねぇ…」

 

「はっはっは!そりゃ違いないな」

 

普段は立ってシャワーを浴びるだけ。ムウ自身も、こうやって足を伸ばして入る入浴は久々だった。ここで誰の目もなくマリューと一緒に入りながら酒を飲めたら言うことはないが…。そんな邪なことを考えると、メガネを外したサイとトールが近づいてくる。

 

「トールもラリーさんたちも、結構筋肉ありますよね?」

 

そう言うサイに、溶けていたラリーはザバッと音を立てて姿勢を正した。

 

「ああ、戦闘機乗りには必要不可欠だからな」

 

ラリーが言うとおり、トールもラリーもムウも、標準的に筋肉が発達しているキラと大差がないほどーーいやそれ以上に鍛えられた肉体をしていた。

 

トールに至っては、訓練の時からアイクに伝えられていた筋トレメニューを毎日欠かさずこなしているので、その肉体はアークエンジェルに乗り込んだ頃と比べると見違えるほどだ。

 

「いいなぁ、俺も筋トレしようかな」

 

「オペレーターの仕事に筋肉使わないだろ?」

 

そう言いながら力こぶを作るサイ。少しでも彼女には良いところ見せたいだろ?と困ったように笑うサイに、今度はムウが言葉を紡ぐ。

 

「筋肉はいいぞぉ、肩こりにもなりにくいしな」

 

「そうなんですか?」

 

「いや、多分だけどな、肩こりとか意識したことないし」

 

「うちの隊長は適当だからなぁ」

 

「なにをぉ!?このやろ!」

 

トールの言葉に、ムウは笑みを浮かべたままお湯を手で掬ってトールの顔へと浴びせた。

 

「ぶわっち!やりましたねぇ!」

 

そうして、トールやラリーたちのお湯かけ合戦が勃発。被害は広がるばかりで、ラリーの一撃が不運にも隣でくつろいでいたディアッカの頭から顎先にかけてびしょ濡れにする被害をもたらした。

 

「うわー!!こっちにも掛かったぞ!いくぞ!ニコル!!」

 

「ちょっと皆、子供っぽいからやめ…わぶっ!」

 

次々と被弾しては合戦に参加していくメンツを眺めて、肩まで行儀よく浸かっていたイザークの苛立ちは頂天に達した。

 

「ええい!貴様ら!大人しく浸かってられんのか…ぶっはぁ!」

 

「あ、やべ」

 

勢いよく立ち上がったイザークの上半身と顔に、ラリーとトール、キラのコンビネーションお湯かけが見事に命中。その威力侮るが如し。お湯は顔を濡らすだけではなく、イザークの体内にまで突入することになった。

 

「げっほ!ごっほ!!……くぉのぉ…やったなぁ、貴様らぁ!!」

 

「わー!!イザークがオコだ!オコ!!」

 

「逃げろー!」

 

「待たんか貴様らぁ!!」

 

バシャバシャと大股で逃げていくメンツを怒り心頭な顔で追いかけ回すイザーク。周りのザフトや地球軍の作業員たちも「いいぞー!」、「もっとやれやれ!」、「そこだ!ああ惜しい!!」と声を出し始めて、男湯はお祭り騒ぎのような喧騒に包まれた。

 

 

「まったく、元気だねぇ」

 

そんな喧騒を滝湯が落ちる湯船で見守るPJとハインズ。

 

イザークが盛大に足を滑らして顔から湯船に突っ込んでいく様を見て、みんなが大笑いし、捕まえたぞ!とラリーの手を掴んで道連れにし、今度は道連れ合戦が始まる。

 

やれやれ、元気なものだとPJは岩場に手を組んだ上に顎を乗せて寛ぎながら眺めた。

 

「はっはっはっ、若者はあれくらい元気じゃないとな」

 

滝湯に打たれながら笑うハインズの言葉に、PJ

も同感ですと相槌を打った。

 

「それにしても良いところですね、ここは。戦争が終われば、娘たちも連れて来たいものですよ」

 

静かな場所でお湯のせせらぎや、湯けむりの美しさ。どうにかしてこの神秘に溢れる光景を宇宙で待つ家族に伝えたい。PJは自然とそう思うようになっている。

 

「連れてこれるさ。直に戦争も終わる」

 

そんな彼に、ハインズは優しげな声で答える。そうだとも。こうやってみんなが楽しく笑いあえる。それだけでも、自分たちがここにいる意味があるというものだ。

 

「そうですね。俺たちはそのために動いてるんですから」

 

そんなハインズにPJも答えながら、喧騒が続く未来の希望たちを見つめているのだった。

 

 

 

 

 

キャラデザイン

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