《こちら、メネラオス。作戦は第3段階へ移行した。メネラオスはアプリリウス市へ入港。これより、クライン、アスハ、ハルバートン提督を護衛しプラント政府へ交渉に向かう》
心ここにあらず。そんな様子のイザークのデュエルに、通信が入ってくる。
作戦としては第二段階を完了し、メネラオスを中心にした停戦師団がシーゲル・クラインが懇意にしていたプラント「アプリリス市」へ入港を果たした。
しかし、議会やザフトからの抵抗も鑑みて、地球軍とザフト軍の混成部隊で設立されたシーゴブリン隊による制圧作戦も並行して執り行われるため、まだまだ気を抜けない状態が続くことになる。
サザーランド旗艦の艦隊はことごとく敗走。
艦隊としての指揮系統すら維持できなくなった地球軍は、個々の判断によってボアズの宙域を右往左往する羽目になっていた。
ザフト軍は核の余波とサザーランド指揮下の艦隊が崩壊したことにより、体勢を立て直すために攻勢をやめて撤退。
一時的ではあるが、激戦と乱戦の渦にあった宇宙には静けさが戻りつつあった。
「終わった…のか」
「イザーク…」
静寂に包まれた宇宙に浮かびながら、イザークは小さく呟く。数多の残骸。沈んだ船。そして息絶えたパイロットたち。イザークは宙域に浮かぶアストレイの残骸を目にすると、視線を落として手を握り締めながら呟いた。
「無力だな…俺は…」
生き残れと言ったのに、その言葉しかかけられなかった自分に腹が立つ。彼らはーーナチュラル、コーディネーター関係なく、ガルーダ隊の隊員たちは決死の覚悟で核を見つけて、それを成したのだ。
たしかに核はプラントには落ちなかった。しかし、もっと他にマシなやり方があったのではないか?もっと犠牲を出さずにできる方法があったのではないか?
もっと…他に…。
そんな「もしも」な思考がイザークの中で駆け巡っていく。焦燥するイザークに、ディアッカとニコルが近づき、モビルスーツ越しではあるが、その肩に手を添えた。
「そんなこと、ありませんよ」
僕らは最善を尽くしました。そう言ってくれるニコルに、張り詰めていたイザークの心は少しだけ救われたような気がした。
まだ戦いは終わっていない。イザークはそう自分に言い聞かせて前を向く。地球軍は壊落したが、まだ戦意を失ったわけではない。
彼らが再びプラントに向かうと言うなら、止めるまでだ。
////
「クラインどもが?…小賢しいことを。構わぬ、放っておけ!こちらの準備も完了した」
戦線が変化を見せる中、パトリックはヤキンドゥーエの司令室の中で、報告してきた士官を手であしらう。
シーゲルが今更になって和平や停戦を進めようと、すでに核は打たれたのだ。ならばこちらも防衛のため、自衛のために撃たなければなるまい。
「ジェネシスは最終段階に入る。全艦、射線上から退避!」
「部隊を下がらせろエザリア!我等の真の力、今こそ見せてくれるわ!」
そう往々しく叫ぶパトリックの号令によって、ザフト全軍へ通達が送られる。ボアズの防衛に参加しようとしていたシホも、蒼いゲイツの中でその通達を目にした。
「全軍射線上より退避?なによ…これ…ジェネシス!?」
「ジェネシス、照準用ミラー展開。起動電圧確保。ミラージュコロイド解除」
ヤキンドゥーエの後方。ザフトが極秘裏に開発していた最悪の兵器が、そのベールを剥がしていく。
「ーーフェイズシフト展開」
灰色だったその姿は、皮肉にも地球軍からもたらされた技術によって、その色を迸らせていく。
////
《各機は補給のために帰投せよ!残存戦力は第一警戒態勢!周辺のモニタリングを厳にせよ!》
アークエンジェルとドミニオン、クサナギ、ヒメリギもまた、戦線の後方へと艦を下げていた。メビウスライダー隊、メビウス隊の損傷は軽微であったが、ガルーダ隊、アンタレス隊、グリフィス隊、そしてブラックスワン隊の負った被害は多く、その傷も深かった。
アンタレス隊は唯一生き残ったアストレイ二機を残して壊滅。
ガルーダ隊も、デュエル、バスター、ブリッツを残して撃破された機体が多数あり、ブラックスワン隊も隊長機と数名の生き残りしかいない。
グリフィス隊は、隊長機であるストライクが核の余波を受けて大破。アサギたちのアストレイ・タイプRは健在であるが、隊員たちにも未帰還者が多数あった。
「ムウ…!」
アークエンジェルを核から守ったガンバレルストライクは、核の余波の影響で四肢と頭部、ストライカーパックが全損。パワーエクステンダーの電力を空になるまでフェイズシフト装甲を展開し、更にはセーフティシャッターまで併用したが、機体はスクラップ寸前と言っても差し支えはない状態だった。
帰還時にトールにより発見されたストライクは、そのまま牽引され、首の皮一枚で耐爆防護壁で守られたムウが、這うように焼きただれたストライクから降りてくる。
「言ったろ?俺は不可能を可能にするって」
放射能除去とその対策でノーマルスーツ着用必須でハンガーが封鎖されており、ハンガーへの連絡口で待っていたマリューは、疲れ切ったムウの体を抱きしめた。
よかった。生きていてくれて。
マリューはその思いだけを噛み締めて、生き延びてくれたムウの温もりを確かめるように、その唇を重ね合わせる。
ドミニオンでも、ブラックスワン隊の回収が進む。そんな中、管制官からバーフォードへ報告が上がった。
「ザフト軍、撤退していきます!この動きーーどこか妙ですよ」
そう言われ、ニックとバーフォードが正面に出されたモニター見る。確かに、ボアズに撤退すると言うより、なにかの射線上から逃げるような退き方をしているようにも見えた。
「艦長!ヤキン・ドゥーエ後方に巨大な物体を確認!」
そう敵の動きを予測していると、彼らの動きの答えをオペレーターが捕捉した。データを見る限り、巨大な建造物ーー要塞?そんな姿をした何かがヤキンドゥーエの後方に〝突如として〟姿を現した。
その姿は、ヤキンドゥーエから離れたここからでも肉眼で確認できる。ちょうど差し迫った太陽を背中に、歪な形をしたその姿がくっきりと浮かび上がっていた。
「なんだ…あれは?!」
アズラエルがそんな声を漏らす。嫌な予感、身の毛がよだつような感覚が走る。バーフォードの判断は素早かった。
「全軍に至急連絡を回せ!!」
////
ボアズの宙域を警戒するように飛ぶメビウス。そのコクピットの中で、トールは名状し難い息苦しさと怒りに似た感情を胸に、宇宙を飛行していた。
「トール…」
メビウスの横についたラリーは、口ごもるトールに心配そうに声をかけた。そんなラリーの心を感じ取ったのか、トールはぎこちなく笑みを浮かべながらラリーの通信に答えた。
「大丈夫です、レイレナード大尉。ボルドマン大尉はーーあの時に逝かれました。彼は、大尉の残骸だと」
ベルリオーズとの戦闘。そこで知った自身の恩師の成れの果ての姿。そんな鬼畜の所業をした地球軍に怒りや憎しみを感じないと言えば嘘になるが、今は彼の言った言葉と、自分の心を整理する方が先だった。
「そうか…すまない。お前にそんな役目を与えることしかできなくて」
ラリーは、情けないものだと自身を罵る。あの時に感じた懐かしさを、なぜトールにおしつけてしまったのか。彼の心に傷をつけてしまうことになったのは、間違いなく自分の責任だ。
そう自身を責めるラリーに、トールは心配しないでください、と声をかけた。
「大丈夫ですよ。あの時は、仕方がありませんでした」
そう言うトールに、ラリーはこれ以上言及するのも野暮かと判断し、そうかと声をかけることしかできなかった。
「リークや、キラたちも補給を受けている。このままザフトが交渉についてくれればいいんだがな」
《サザーランド指揮下の地球軍に告げる!全ての戦闘行為の中断、ならびに武装を解除し、投降せよ!》
そう呟く二人の機体には、第八艦隊から発せられる降伏勧告の公開音声が鳴り響いていた。サザーランド指揮下の艦隊が崩壊した以上、帰る場所がない地球軍のモビルスーツに選択の余地はない。
何機かはまだ抵抗を続けているが、核の事情を知らなかった艦船や、モビルスーツは次々と降伏し、サザーランド指揮下の艦隊はほぼ解体状態にあった。
《繰り返す、地球軍艦隊は全ての戦闘行為をやめ、速やかに武装を解除!投降をーー》
そう勧告を続けようとした時だった。
「Nジャマー・キャンセラー起動。ニュークリアカートリッジを撃発位置に設定。全システム接続オールグリーン」
「思い知るがいいナチュラル共。この一撃が我等コーディネーターの創世の光と成らんことを!」
焦燥するイザークや、退避したアークエンジェル艦隊、そして降伏勧告をする第八艦隊へ通信が届く。
《ジュール様!アークエンジェル!》
それは以前、メンデルでイザークが教えたこちらの極秘回線番号による通信だった。声の主は、あの時に分かれたザフトの兵士の一人。
「シホか!?」
シホ・ハーネンフースは、焦りと戸惑いを混ぜ合わせたような声で叫ぶ。
《早く離脱を!!ジェネシスが来ます!!》
その瞬間、宇宙に
光が走った。
キャラデザイン
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他キャラも見たい
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キャラは脳内イメージするので不要