ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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第178話 閃光の刻 3

 

 

 

「戦況は混乱している!今のうちにヤキンドゥーエに進むぞ!」

 

アデスやアプリリウス市の防衛師団が加わったことで、形勢は大きく傾きつつあった。そもそもメビウスライダー隊によって、陣営を真っ直ぐに貫かれることとなったヤキンドゥーエ防衛隊の焦りは凄まじく、分隊単位の現場指揮によって統率が乱されたザフト軍は、物理的にも戦力を分散せざるをえない。

 

それに月から近づいてくる地球軍の増援もある。

 

《動けるものはヤキンドゥーエへ!》

 

地球軍、ザフト軍の寄せ集めとなった艦隊から声が上がり、ジンやシグー、ダガーやアストレイの混成部隊が、ザフトのゲイツ隊を退けてヤキンドゥーエへ向かって前進していく。

 

「でえええい!」

 

「ジュール様!」

 

敵に捕捉されそうになったシホの機体を庇うように、イザークはデュエルのビームサーベルで襲いかかってきたゲイツを切り払った。

 

「迂闊だぞ、ハーネンフース!」

 

そう言ってシホの盾になるイザークだが、アサルトシュラウドの装甲も限界であった。敵からのバルカン砲に耐えかね、破損した装甲をパージしていく。

 

「イザーク!無理をすんな!」

 

「援護します!」

 

そんなイザークの機体をディアッカのバスターと、マイダスメッサーを投擲するニコルのブリッツが護衛に入る。

 

《みんな!死ぬなよ!生きろ!!》

 

クサナギからキサカの声が響く。その声に応えるように、補給と応急修理を受けたアサギたち、グリフィス隊が再度出撃した。

 

「当然!!」

 

「ここまで来たら生きて帰ってやるわよ!!」

 

飛び立ってすぐに敵のモビルスーツが迫る。アサギは機体で丁寧に位置を取りながら、迫る敵のモビルスーツを討ち取っていく。マユラやジュリも同じだ。

 

「ええい!!」

 

ゲイツの近接攻撃を潜り抜けて、引き抜いたビームサーベルで敵を切り裂く。戦いはまさに激戦を成していた。

 

「ぐうぅ!!」

 

その部隊の最前線で道を切り開いていたオルガたちにも、疲労と限界の色が出始めていた。長距離ビームの被弾を受けたカラミティが、背部に備わるビーム砲から煙を上げていく。

 

「オルガ!?」

 

気づいたクロトとシャニが援護に入るが、それを好機と捉えた敵の動きが早い。このままでは、こちらも押し潰されて、後退を余儀なくされる。そして下がれば、敵が再び艦隊を襲いかねない。

 

どうするーー!!

 

「ライトニング3!俺とエレメントを!」

 

集う三機の脇を、白い流星となった三機が敵めがけて飛び出した。

 

ムウの操るメビウスゼロ、そして前線から一度後退したトールのメビウスが一本の光の筋のようになり、敵のモビルスーツ部隊を翻弄していく。

 

「行くぞ!アークエンジェルの邪魔をさせるな!」

 

「了解!!」

 

凄まじい機動でモビルスーツを圧倒するモビルアーマー。それを見つめるオルガたちの前に、フリーダムが降りてくる。

 

「オルガたちはアストレイ隊の援護を!!」

 

バイザー越しに叫んだキラは、クルーゼとの戦いで破損したミーティアの最後の弾薬を使って敵を薙ぎ払った。

 

「フリーダム…悪りぃ…!!」

 

煙が舞い上がるコクピットの中で、オルガがそう告げると三人は一度ドミニオンへと後退する。キラは使い切ったミーティアユニットをパージして、その自由の翼を雄々しく広げる。

 

「これ以上…これ以上皆をやらせるもんかぁああ!!」

 

マルチロックシステムで敵を捕捉すると、ハイマットフルバーストで敵を次々と行動不能にしていく。

 

「誰も死なせない!死なせてたまるもんか!!」

 

それはキラの心の叫びだった。

 

もう守れないのはこりごりだ。クルーゼが言うように自分が人類が生み出した英知の極みで、大きな力を持つ存在だと言うなら…!!

 

「人の英知が生み出した力なら…人を救ってみせろぉぉーー!!!」

 

深淵の宇宙の中、キラは声を上げて閃光を煌めかせる。人が生み出した力を、この時、この瞬間に全てを出す。全てを使って、守りたいものをーー守るために!!

 

 

////

 

 

《カウントダウン開始。射線上の全軍に退避勧告。Nジャマー・キャンセラー起動、ニュークリアカートリッジに接続、全システム接続オールグリーン》

 

ジェネシス発射は目前だ。ドミニオンのブリッジで巨大で最悪な兵器を見つめるバーフォードは、目を細める。

 

「第8閉鎖バンク閉鎖!サブ回線オンライン!弾薬ノッシュ進行中!!」

 

「火器管制システムをこちらに回せ!ダメコン!!」

 

ドミニオンも満身創痍と言っても過言ではなかった。三人が着艦しようとする出入り口の片方が敵の艦砲に抉られており、バリアントも破損、巡航速度も三割以上落ち込んでいる。

 

それでも、ドミニオンのクルーたちはーー護衛艦クラックスで戦い抜いてきた仲間たちは諦めようとはしなかった。

 

「なんとしても止めてください!あれを撃たせたら…世界は…!!」

 

バーフォードの要請でノーマルスーツを身につけたアズラエルが強張った顔で告げる。あんなものを残して、もし地球が撃たれでもすれば戦後の処理など言ってる場合じゃなくなる。月からくる地球軍の艦隊も、プトレマイオス基地もやられれば、地球圏の経済的立て直しの目処も立ち行かなくなるのは明白だ。

 

撃たせてはならない。放たれれば世界に終焉をもたらすことになる。

 

「これ以上あれを撃たせてはなりません!!」

 

「矛先が地球に向いたら終わりだぞ!!」

 

エターナルにいるラクスも、この艦隊に集った全ての艦艇の艦長たちも同じ思いだった。

 

「ジェネシス、射程距離に入ります!」

 

「フェイズシフトとて無限じゃないんだ!ローエングリン!斉射!てぇ!」

 

ナタルの声に合わせて、アークエンジェルと随行するクサナギからローエングリンの閃光が迸るが、ジェネシスの外壁はその攻撃を難なく跳ね返してみせた。

 

「くっそー!厄介なもんを!」

 

あれだけ大規模なフェイズシフト装甲だ。動力源である核融合炉から送られる膨大な電力のせいで、ダメージを与えても即座に無効化されてしまう。

 

「照射口を狙え!撃てぇえーー!!」

 

バーフォードの声が響き、片方のローエングリンでドミニオンがジェネシスの照射口を撃つ。全体がフェイズシフト装甲で覆われてはいるが、ガンマ線が放出される箇所を重点的に攻撃すれば時間稼ぎくらいにはなる。

 

「撃て撃て撃て!なんとしても破壊するんだ!」

 

アデスの指示に従って、ナスカ級やローラシア級からも閃光が放たれていく。

 

「ローエングリン、ゴットフリート1番、2番、てぇ!!ミサイル斉射!!」

 

アークエンジェルとドミニオンの連携を持ってしても、傷一つ付けられない堅牢さを持つジェネシス。唯一の希望は、それを制御するヤキンドゥーエに突入した部隊だけだった。

 

 

////

 

 

「くぅう!!」

 

閃光が走るジェネシスの反対側では、クルーゼの機体と揉みあいながらジェネシス外壁部へ接近したラリーのホワイトグリントと、リークのリベリオンの姿があった。

 

《はっはっはっ!使えるじゃないか、この新装備!!》

 

ラリーとリークは、辺りを不規則に浮遊するソルディオスオービットの対応に追われていた。機体装甲はおそらくフェイズシフト装甲。その上にプロヴィデンスから送られる電力を展開して、擬似的な「プライマルアーマー」を作り上げていた。

 

おかげで、ただでさえ頑丈なフェイズシフト装甲に加えて、遠距離からのビーム兵器による攻撃は、全てがプライマルアーマーによって逸らされていく凶悪さを持っている。

 

加えて、機動力はラリーの駆るメビウス・インターセプターと同等かそれ以上の力を持っており、ほぼ瞬間移動と言ってもいい動きをしながら大口径のビーム砲を放ってくるのだ。

 

「こんなものを浮かべて喜ぶかよ…!!」

 

前世で「変態兵器」と称されていた武装だが、相手にすると本当にヤバイ代物だ。対処するとしたら超接近戦でビームサーベルを突き刺すくらいしかない。

 

そんな兵器に囲まれながら冷や汗を流すラリーに、クルーゼは高笑いしながら多連装ビームブレードを振るって距離を詰めていく。

 

《喜ぶさ!君との戦いがより楽しくなる!!これほど愉快なことはない!!》

 

何度かの攻防を繰り返す中で、プロヴィデンスの腰部から小型のドラグーンが射出されるのを目撃したラリーは、すぐさま距離を取った。

 

途端、ビームの嵐がホワイトグリントへ襲いかかってくる。

 

「くっ!こいつ…こんなものまで」

 

《本来ならこちらが主軸だったがな!あれに比べたら面白味も少ない!君を滾らせる程度にはなるかな!?》

 

「言ってろ!この変態があああ!!」

 

展開したビームサーベルで小型ドラグーンから放たれるビームを切り払い、ソルディオスオービットから放たれるビーム砲を、ビームサーベルを回転させることで防ぎつつ、ラリーはプロヴィデンスへビームカービンを放った。

 

《あーっはっはっ!!楽しいな、ラリィイーー!もっと見せてくれ!!その先を!!私にぃい!!》

 

攻守を目まぐるしく入れ替えるラリーとクルーゼの戦い。それを横目に、リークもなんとかラリーの援護に入ろうと試みるが…。

 

「ラリー!!くっそ!こいつ!」

 

8基のうちの4基のオービットがリークの前へ立ちふさがる。ビーム兵器で応戦するものの、その全てが無効化されていく。

 

「ビーム兵器は…だめか!ならば!!」

 

バキン、と背部のビームランチャーをパージしたリークは、腰部に備わる大型無反動砲を取り出し、HEIAP弾頭の実弾兵器をオービットへ向けた。

 

「こいつでぇ!!」

 

薬莢を排出して放たれたそれは、ソルディオスオービットへ直撃し、その装甲を大きく揺らす。ぐらついた隙を突いたリークは、ビームサーベルを抜き放って最大出力で足が止まったソルディオスオービットへ突貫する。

 

「そこだぁああ!!」

 

弾頭を受けて再構成がままなっていない箇所へビームサーベルを突き立てると、オービットは鈍い光と爆発を吹いて、機能を停止していく。

 

「あと3基…!止まるな、攻めろ!!でやあああ!!」

 

針の穴を通すような戦術ではあるが、それしか今は対処する方法はない。リークは自身を鼓舞するように雄叫びをあげると、再び他のオービットに向かって飛翔していくのだったーー。

 

 

 

 

 

ジェネシス発射まで、残りーー。

 

 

 

 

 

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
  • キャラは脳内イメージするので不要

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