ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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第183話 ジェネシス破壊作戦 2

 

 

ジェネシス内部。

 

モビルスーツが飛び回るにしても、その閉鎖空間はあまりにも狭い。ましてや直線的な加速性能に優れるモビルアーマーでは尚更だ。

 

初めて入る空間の中、ラリーたちは機体を翻しながら追ってきた手練れのゲイツと戦いを繰り広げていく。

 

《奴らめ、ジェネシスはやらせん!これは我々コーディネーターの礎を築く導なのだ!》

 

その声を聞いて、アスランは愕然とした。装甲をゲイツが放ったビームが擦り、ジャスティスの肩部装甲がどろりと溶ける。

 

「ええい!こうも狭いとガンバレルも飛ばせんか!!」

 

四門のガンバレルの砲塔を展開してゲイツを追うムウ。その脇で棒立ちとなったアスランのジャスティスを、キラのフリーダムが横から押し除ける。さっきまでアスランがいた場所を、パトリックが乗るゲイツが放ったビームの閃光が駆け抜けていった。

 

「父上…!?その機体に乗っていらっしゃるんですか…!!」

 

《アスラン、この愚か者が!!そんなことも理解せずに!!》

 

ジャスティスに乗っているのをアスランだと知りながら!!キラの中には湧き上がる怒りがあった。そこまでしなければ、納得できないというのが!!

 

「ええい!時間がないというのに!!」

 

ラリーは狭い空間の中、フレキシブルスラスターをマニュアル操作で反転させて、機体を無理やり反転させると、迫っていたゲイツの背後を取った。

 

しかし、相手もザフトのパイロット。咄嗟に繰り出したメビウスのマニューバーを予測して、こちらを見ずに予測でビームを放ってくる。いくつかの閃光がメビウスの翼端を掠めた。

 

《撃たねばならんのだ!!撃たれる前に!!なぜそれが理解できん!!》

 

「父上!!」

 

ビームシザーを展開させて迫る父のゲイツに、アスランもビーム刃を繰り出して応戦する。

 

くそ!こんな形でしか、言葉を交わすことができないのか…!!

 

アスランの自分自身に対する不甲斐なさと、憎しみから解放されない父への悲しみ。意識の刃をぶつけ合うしかできない歪な今に、奥歯を食いしばってアスランは向き合った。

 

「それでもーージェネシスを撃ってもーー母さんは戻ってこないんだ!!」

 

《ーーっ!!黙れええええ!!!》

 

一番触れられたくない。一番見ないようにしていた部分を貫かれたパトリックは、ついに発狂したように声を上げた。アスランを払い除けて、がむしゃらにビームを放つ。

 

その閃光は追従してきた部下の機体をも掠め、それで生まれた一瞬の隙を突いたトールのビーム砲が、ゲイツのコクピットを貫いた。

 

「一機撃墜!つぎぃ!!」

 

《ヤキンドゥーエ自爆まで、残り五分!!》

 

しつこく追い立ててくるゲイツの追従を躱しながら、ラリーはグッと操縦桿を引き絞る。半円を描くようにラインを描いたメビウスへ、ゲイツは容赦なくビームを放っていく。

 

目を凝らして弾道を見切ろうとするが、クルーゼとの死闘のあとだ。頭は痛み、充血から直っていない視界が霞む。ビームが擦り、機体が大きく揺れた。

 

「こなくそぉー!!」

 

「ラリー!!」

 

ハッとゲイツが気がついた時はもう遅かった。リークが放った弾頭はタングステンの弾芯をあらわにし、ゲイツのコクピットを容赦なく貫く。

 

ラリーが決死の覚悟で敵を引きつけたおかげで、側面からの隙ができた。それに合わせられたリークが、阿吽の呼吸で敵のコクピットを見事に仕留めたのだ。

 

トール、ラリー、リークが編隊を組み直しながら、機体を丁寧に翻して動力炉内にある小さな穴を目指す。時間はもう残されていない。

 

「先行してリアクター内に突入する!!」

 

そう叫んだラリーが、先頭を切ってリアクターへ繋がるトンネルへと機体を突っ込ませた。トールやリーク、ムウも続こうとするが、影のように現れた敵がメビウス一機が通れるかどうかの通路へと身をねじ込むように突入させる。

 

「ライトニング1!背後に敵機だ!」

 

ムウからの言葉に、後方モニターに視線を向ける。そこには火花を上げるゲイツがモノアイの光点を瞬かせながら、通路の中を無理やり押し通ってきているのが見えた。

 

「トール!!」

 

「ラリーさんはやらせない!!この野郎!!」

 

飛び込んだパトリックのゲイツを追って、再度姿勢を整えて飛び込んだトールは、地を這うように進むゲイツへ、残った最後のビームライフルを放った。

 

『やらせんぞ!!ジェネシスは…コーディネーターの世界ーー』

 

パトリックの声が、一発の光によって遮られた。トールの放った閃光がゲイツの背部ユニットを捕らえる。

 

即座に煙が上がったゲイツは、そのまま姿勢を崩して通路へとつんのめるように転倒しーーー火花をより発生させた。グジャグジャになっていくゲイツの残骸が飛び散りーーその隙間を縫うようにトールのメビウスが飛び越えていった。

 

「父上ぇえーー!!」

 

アスランの慟哭が響きーーーゲイツは火に包まれていく。

 

リアクタールームへ飛び込んだラリーとトールは、機体を鋭く旋回させながら、ヒットアンドアウェイで規則正しく配列されたリアクターユニットをビーム砲で撃ち抜き、炎に包まれたリアクタールームから即座に脱出する。

 

「リアクターの破壊成功!!」

 

炎の中から脱出したラリーとトールの言葉に、誰もが湧き立つ中、アスランは地獄の釜とかしたリアクターへ至る穴を見つめる。

 

「父上…」

 

「アスラン…」

 

言葉を満足に交わすことなくーーわかり合うことなくーー遠くへ行ってしまった父を思っているのか。隣にいるキラには、かける言葉が見つからなかった。

 

《ライトニング隊。敵機はーーどうなったんだ》

 

「ゲイツは…リアクター内で墜落。あれはダメだ…すまん、アスラン」

 

そう言ってオービットとの通信を終えたムウの言葉に、アスランは改めて父を失った感覚を味わった。交わしたかった言葉。わかり合いたかった気持ち。そして、何もできなかった自分への怒り。さまざまな感情がアスランの中に溢れてーーそしてそれは、涙となってヘルメット乗る中を濡らしていった。

 

「…馬鹿…野郎」

 

「ーーアスラン、帰ろう。カガリや、みんなが待ってる」

 

消えそうな声でそう言葉を吐いたアスランの機体の肩を、キラはフリーダムで支える。力を失ったように項垂れるジャスティスに、誰もがかける声を無くしていた時だった。

 

《オービットよりメビウスライダー隊へ!!不味いことになった!!》

 

 

まだ事態は、終わりを迎えていない。

 

 

 

 

ヤキンドゥーエ自爆まで、残り四分。

 

 

 

 

 

 

 

 

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
  • キャラは脳内イメージするので不要

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