ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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第184話 終焉の光

 

 

《核動力炉に過剰エネルギーを感知!このまま暴走すれば、ジェネシス宙域にいるザフト軍や我々に多大な被害が出る!!》

 

事態は最悪の展開へと転がり落ちていた。分析結果を見て、ニックは拳をモニターに叩きつける。原因としては動力炉内での戦闘だ。リークのメビウスから送られてくるデータでは、すでに傷付いた動力炉から核物質が流れ始めている。

 

リアクターはあくまで動力炉で生まれた核エネルギーをガンマ線へ変換し、放射する準備をする機構だ。確かにここを破壊すれば、ガンマ線を照射することは防げるだろう。

 

しかしだ。

 

核エネルギーを動力炉が生み出し続ける限り、行き場を無くしたエネルギーは半永久的に生み出され続ける。今はまだ被害は微弱だが、流れ続けることでそれは割れない風船と同じになり、溢れ出た核物質はヤキンドゥーエ宙域ーーそして、いずれはプラントへと到達することになる。

 

耐爆仕様の元、プラントは設計されてはいるが、それはあくまで宇宙での基準値だ。それを上回る膨大な放射能、核エネルギーにさらされた場合、どんな被害が起こるか予測できない。

 

「止める方法はあるか!?」

 

止まることなく暴走したエネルギーを垂れ流し続けるジェネシスの中で、ムウが問いかけるが、ニックは力なく肩を落として口を噛み締めてから、言葉を紡ぐ。

 

《動力炉内の核反応を停止させれれば…しかし》

 

「くそ、爆破した瞬間に俺たちも」

 

動力炉が止まれば、生み出されるエネルギーも止まる。今ならまだ、宇宙での放射能レベルと大差はないほどだ。だが、これ以上引き延ばせばーーー。

 

《ジェネシス発射まで、残り三分!!》

 

猶予は、無かった。

 

プラントーーそして、この怨念にまみれた兵器を止めるためにはーー俺たちの命をもって。

 

「ーージャスティスを自爆させる」

 

最悪の状況の中、肩を震わせていたアスランは、ゆっくりと顔を上げてそう呟いた。その自己犠牲に似た声を発したアスランに、ラリーは思わず声を上げる。

 

「アスラン!!お前はまだ…」

 

「タイマーをセットすれば、俺たちが脱出できる時間は稼げるはずだ」

 

そう言ったアスランの目には、影はなかった。真っ直ぐとした目で、ライトニング隊のみんなを見つめている。

 

「アスラン…」

 

「わかってるさ、キラ。俺はもう自分の命を蔑ろにはしない。それに、カガリが泣くからな」

 

ジャスティスは父から預けられたものだ。ならばーーここで果てさせるのが、恨みと怨念に取り憑かれて死んだ父への葬いになる。そう言ってアスランは、横に備わっている自爆コード入力端末を引き出して、自爆の手順へと入った。

 

ジャスティスは核動力で動くモビルスーツだ。その機体が内部で爆発すれば、ジェネシスの大きさでも耐えることは困難だろう。

 

「ラリーさん。フリーダムもここに」

 

アスランの隣にいたキラも、言葉を繋ぐ。驚いたように全員がキラの方を見つめた。彼のフリーダムは経緯はあれど、こんなくだらない戦争を止めるためにラクスから与えられた力だ。

 

それをーー。

 

「キラ…いいのか?」

 

全てを言わんとし、ラリーが問いかけた言葉にキラは少し考えるように目を伏せてから、笑みを浮かべてラリーへと向き直った。

 

「核エネルギーなんて、あっちゃダメなんだ。ジャスティスもフリーダムも、ここで終わらせた方がいい」

 

血のバレンタイン。

 

核で始まったこの終末戦争。

 

ならば、その核を残したまま戦いを終えるのは、この先の未来に遺恨を残すことになる。

 

それに、核で始まった戦争ならばーー核で幕引きをした方がずっといいに決まっている。今のキラなら、純粋な思いでそう答えられた。

 

「ラクスも…きっとそう言うと思うから。それにーー僕一人であんなものを持っていても、何もできませんから」

 

ラリーが示してくれた。

 

どれだけ本物でも、どれだけ力を持っていても、一人では何もできない。

 

リークが示してくれた。

 

誰かの力を借りて戦うことを。それぞれが与えられる中で、できることに懸命を尽くして立ち向かうことを。力だけでは何もできないことを。

 

アイクが教えてくれた。

 

一人で考えても答えは出ないということ。多くの人の生き様や、戦い、考え方や、その命を見つめて、自分がなすべき事を見つめる事を。

 

バーフォード艦長、トール、フレイ、ムウ、マリュー、ナタル…ここまでくるのに多くの人の手を借りて来た。

 

だから、僕は一人ではない。

 

あの力に、フリーダムにすがり付いて行くことは無いし、あれがなくてもーーーみんながいる。

 

そう満足そうに笑みを浮かべるキラに、ラリーは小さく笑って、コクピットハッチを開けた。

 

「…わかった。二人はタイマーをセット後、俺とトールの機体へ」

 

了解、その言葉と同時にアスランもキラも手早く二機の自爆タイマーのセットしていく。機体のデータを抹消し、起爆モニターを確認すると、二人はコクピットから脱出。

 

アスランはトールの元へ、キラがラリーのメビウスへと到着する。

 

「時間は無いぞ!」

 

「キラ!」

 

「いつでもいいです!!」

 

キラとアスランが狭いコクピットへ収まったのを確認して、ムウを先頭にジェネシスからの脱出が始まる。

 

「飛ばせ飛ばせ!!」

 

「うりゃああああ!!」

 

推進剤の消費量を全開にして向かって来た道をひたすらに遡ってゆく。

 

《カウント合わせ!!10、9、8、7ーーー》

 

長い、とても長いシャフトのトンネル。カウントが迫る中、ラリーの目が小さく光る宇宙の星を捉えた。

 

「しっかり捕まってろよ!キラ!」

 

《5、4ーーー》

 

「リーク!!」

 

「隊長!!ついていってます!!」

 

どんどんと迫ってくる出口。計算した安全領域から脱出するため、全員がスロットルバーを全開に解放した。

 

「出口だ!!いっけぇえええ!!」

 

《3、2、1ーーー!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな爆発が見える。エターナルにいたラクスは思わず立ち上がり、ヤキンドゥーエから発せられた光をみた。

 

それと、同時にジェネシスから光が溢れ出してゆく。

 

「キラ!」

 

「ラリーさん!!」

 

思わず席から立ち上がったアークエンジェルの面々。アズラエルや、バーフォードも食い入るように閃光の先を見つめた。

 

《メビウスライダー隊、応答せよ!ライトニング!!ラリー!!》

 

爆煙と衝撃波に晒される空間の中ーーーそれを切り裂いて、四機のモビルアーマーが宇宙の光背に、こちらへと向かってくるのが見えた。

 

《ライトニング隊、確認!!》

 

《やりやがった!!》

 

《ジェネシスは破壊されたぞ!!》

 

《俺たちの勝ちだ!!》

 

《信じられねぇ!!》

 

《見事だ、メビウスライダー隊!!》

 

誰もが見事に脱出し、核爆発で崩壊していくジェネシスを背にして、編隊を維持したまま、美しい曲線を描いてメビウスライダー隊は宇宙を飛んでゆく。

 

《はぁー、オービットよりメビウスライダー隊へ。肝が冷えたよ》

 

そう言ったニックは、満面の笑み浮かべて、言葉を紡いだ。

 

 

 

 

 

 

《さぁ、あとは各方面に任せてーー帰ろう。俺たちの帰る場所へ》

 

 

 

 

 

 

 

 

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
  • キャラは脳内イメージするので不要
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