第185話 極東を訪ねて
2年前。
地球と宇宙を巻き込んだ戦争があった。
いや…戦争ならば、遥かな昔から何度となくあった。
ナチュラルとコーディネーター。二つの種族。前者は地球、後者は宇宙と別れ、コーディネーターは宇宙というフロンティアを開拓し、そして自らの独立と種族としての威信をかけて、青き地球へと攻め入った。
撃てば撃ち返す戦争。彼らは自分たちが疲弊していることに気づかなかった。
前進と後退を繰り返しては、自然の豊かさと富を失い続ける戦争。両軍は比類無き工業力を養い、それを武器に最後の戦いを挑んだ。
それが2年前の戦争。まさに終末戦争の有り様だった。
彼らは猛々しく戦いーーそして散っていった。
互いに核兵器を使う愚さえ犯した軍。その無惨を目の当たりにした人々は、自らの武器を捨てようと心に誓った
世界に平和が訪れた。
オーブ首長国連邦。
カグヤ国際宇宙センター。
大戦後、混迷する地球の経済状況をユーラシア連邦と共に建て直しのために奔走し、今では地球圏で多大なる影響力を持つことになった島国に、私は足を踏み入れた。
季節は夏。
照りつける太陽が、宇宙と地球を結ぶ船から降り立った私へ降り注ぐ。その視線の先を、幾つかの戦闘機が横切っていくのが見えた。響くエンジンの音。青い空の中を飛行機雲を作って飛んでゆく。
皮肉にも、平和から最も遠いこの島で平和を守って飛ぶ彼ら。
現地球連合政府に反発する組織が、跋扈する地球圏。オーブの軍人たちは、その脅威から人々を守るために空を飛び続けている。アズラエル財団や、ブルーコスモスの一派も、地球に撃ち込まれたNジャマーを撤去する作業や、エネルギー事業の復興に注力してるものの、まだ地球圏の再建には時間がかかるようだ。
私はポケットに入れていた一枚のメモを取り出して、最寄りのタクシーへと乗り込んだ。
向かう先はすでに決まっていた。
先祖代々から、ジャーナリストとして生計を立てて来た私が、なぜプラントからこの国へとやって来たのか。
大戦時。
あの歴史的なアプリリウスの演説が行われた時から、私はヤキンドゥーエ戦役に貢献したあるパイロットの足取りを追っていた。だが、彼らのことを多く語る人物はおらず、その存在も秘匿されるものであった。
流星。あるいはネメシス、メビウスライダー隊。
いくつもの呼び名を持つ彼らは、地球も宇宙も関係なく、泥沼化した終末戦争を終わらせるために戦った勇者たちだ。
大戦から一年と数ヶ月。彼らの痕跡を辿ることすらできなかった私のもとに、ある情報が飛び込んできた。
始まりはーーーヘリオポリスだった。
大戦時。戦争の分岐点となった地球軍のモビルスーツ開発を極秘で行なっていた、オーブ首長国連邦が有するコロニー、ヘリオポリス。
ザフトの急襲を受け、モビルスーツは奪取され、コロニーにも深刻な被害がもたらされた。破壊された港口が応急的に復旧し、コロニーの修復が急ピッチで行われている。
住人も戻り、中立国として謳歌していた姿を取り戻しつつあるヘリオポリス。
流星のことを調べる私の元へ連絡をして来たのは、ヘリオポリスのカレッジで講師をし始めた、元ザフト軍のパイロットだった。
キャラデザイン
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他キャラも見たい
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キャラは脳内イメージするので不要