ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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番外編 守りたかった世界2

 

状況を確認する。

 

現在、マユ・アスカに非常に迫られ、ハリーから痛いほどの視線が飛んできている。以上だ。

 

そんな何の救いにもならない状況把握でしかないブリーフィングを脳内で終えたラリーは、頭を抱えたくなっていた。

 

マユーーシンの唯一無二の妹であり、Destinyでは終始、シンの心に深い傷と共に悲しみの象徴でもあった少女が、今自分の目の前で遥かに年上であるハリーとメンチを切り合いながらいるのだ。これみたことあるよ、どこかの青年雑誌で見たことあるくらい絵面がひどいメンチの切り合いである。

 

彼女と出会ったのは大戦末期、アスカ一家を救った件だ。その時は一目見た程度であったが、彼女と再会するにはそう時間は掛からなかった。

 

大戦後のオーブに到着して2日後、道端でシンが土下座して弟子入りを申し出てきたのだ。

 

何を言ってるかわからないと思うだろうが、ラリー自身も何をされているのかよくわからなかった。というか、十代であるシンを道のど真ん中で土下座させて「弟子にしてください」と大声で懇願されているラリーを見て、オーブ住人はなんと思うだろうか?うむ、明らかに変質者か異常な状態と言えるだろう。

 

とりあえず回収し、行きつけのジャンクフード店でシンに話を聞くと、どうやら彼は自分の姿に憧れて追いかけようとしていたらしい。両親に反対されたが、将来的には地球軍を訪ねて、ラリーの元へ弟子入りを志願するつもりだったらしいが、その本人がオーブ島内でばったり遭遇したので、突然そんな奇行に走ってしまったらしい。

 

ラリーは戸惑った。というより、シンの行動に反対だった。

 

これから世界は平和に向かう。シンの家族も無事だというのに、自分から戦いに赴くべきではない。そんなことは自分に任せて、自由に生きるべきだと。

 

それでも頑ななシンに呆れて、ラリーは久しぶりのアスカ一家と再会。シンの説得を申し出たが、ラリーが人格者として両親からも高く評価され、本人の強い希望もあり、とりあえず飛行訓練だけでもと懇願されて、ついに折れることになった。

 

そこからは、教えれば教えるほど、乾いたスポンジが水を吸う如く吸収していくシンの才能に魅入られたように、ラリーは多くのことを教えて行った。ただ、戦闘面についてだけは教えることができなかった。

 

ラリー自身、シンの戦いの中で負うことになる別の未来の姿が目に焼き付いていたからだ。あんなボロボロになるまで戦わなければならない状況に、シンを巻き込みたくない。そんな思いから、ラリーはシンには戦うことを一切教えなかった。

 

そして、事件が起こった。

 

訓練飛行中に、ブルーコスモス派の過激派に急襲されたのだ。当時はラリーとトールでシンの訓練飛行に付き合っていたが、ブルーコスモスの捨て身の特攻にシンが反応し、自分を庇ったのだ。

 

幸い、大事には至らなかったが一歩間違えれば死んでいたかもしれない事件。

 

ラリーはシンの無茶な行動を諫めると同時に、自分の甘さに深い後悔を抱いた。自分の弱さとためらいが、シンを危険な目に合わせることになったのだ。そして、シンはそれでもラリーを信じて付いてきてくれたのだ。自分の甘さで落ちかけたというのに、シンは頑なにラリーを信じたのだ。

 

そこから、ラリーは本格的にシンに教導を行った。持てる全てを全て伝えるつもりで、シンに全てを授けようと決めた。もう彼が危険な目に合わないために。

 

そんな日々の中、ラリーはよくアスカ一家とも付き合うようになった。オーブの紅葉の季節に、メビウスライダー隊も集まってみんなでバーベキューをしたり、夏には海水浴に行ったり、初詣というイベントにはカガリを連れて行ってみんなを驚かせたりして、そして訓練の疲れから泥のように眠るシンを背負って家まで送り届けたりして。

 

そして気がついたら。

 

マユにめちゃくちゃ懐かれていた。

 

 

////

 

 

《では、お二人の共同作業です!ウェディングケーキ、入刀ー!》

 

多くの仲間に囲まれながらウェディングケーキにカットを入れるサイとフレイ。そんな二人を遠目に見つめながら、ラリーは仲が悪いハリーとマユを見てため息をつく。

 

マユの好意に気付いてないわけではない。いや、気付いているからこそややこしいこともある。

 

シンからは「お兄さんになるんですか!?」と言われてすでにお兄さん呼びされ始め、両親からはラリーさんなら是非と言われ、マユの友人たちからも何故か彼氏認定されている始末だ。

 

気が付いたら外堀埋められて、周りに火を付けられてるなんて笑えない話である。

 

では、自分が早くハリーの思いに答えてやるべきだと思うだろう?

 

ラリーもヘタレではない。戦後にちゃんと思いを伝える予定だったのだ。そう、伝える予定だったのだ。

 

ちゃんとレストランも予約し、準備も万端にして挑んだ告白の当日。

 

気がついたら、ハリーが調整したスピアヘッド改で空を飛んでいたのだ。

 

なんでも新規フォーマットで機体を組んだから試して欲しいとのこと。はっはっはっ、やつめ、さては自分を生体テスト機体とでも勘違いしてるのではないか?

 

その話をリークやイザークたちにしてから、彼らから無言で肩を叩かれた時は思わず泣きそうになった。

 

まぁ、そんなこんなで、今に至る。

 

マユとハリーのいがみ合いを遠い目で眺めていると、ふとムウと目があった。そして目を逸らされた。まったく、使えない年長者め!

 

キラは相変わらず感極まってる。なんだかんだ言って、サイとフレイを大切に思っていたのだ。二人の晴れ姿を見て感無量といった様子で。その隣にいるアズラエルも柄にもなく瞳を潤ませている。

 

オルガたちはうまいご飯に舌鼓をうち、リークは妹たちと共に二人との写真を撮っている。

 

そんな中流れるお祝いのビデオ。

 

そこには二人が出会ったカレッジで講師を務めていた優しげな教授が、お祝いの言葉を送っている。

 

《エイフマン教授、何を撮っているので?》

 

《ああ、クラウド教授。実は教え子への結婚祝いメッセージでね。紹介するよ、新しく講師としてやってきたクラウド教授だ》

 

その映像を見ていたムウとラリーは、思わず飲んでいたシャンパンを盛大に吹き出したのだった。

 

 

 

 

キャラデザイン

  • 他キャラも見たい
  • キャラは脳内イメージするので不要

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