ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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第74話 砂漠の決戦1

 

 

 

「まず、墜落したスピアヘッドのエンジンを全部載せます」

 

「バカじゃないのか?」

 

スピアヘッドの具体的な改造案が纏まったと言われて話を聞いてみれば、ハリーから開口一番に出た言葉がそれだった。

 

すでに、墜落したラリーのスピアヘッドはレジスタンスとストライクの協力のもと、部品取り用としてアークエンジェルに引き上げられていたが、取り外されたエンジンをスピアヘッドの背面へ取り付ける準備が、マードック指揮の元、着々と進められている。

 

「ついでにバジルール中尉とラミアス艦長から許可を頂いてバラしたエールストライカーの部品も取り付けます」

 

「ほんとにバカじゃないのか?」

 

「翼面積を稼いだことでフラップ展開時の減速率を大幅に稼ぎつつ、高出力ターボファンジェットを丸ごと追加ブースターとして機体背面に接続し、本来のスピアヘッドのエンジンにもチューンを施した結果、通常時の推力は20パーセント増し、アフターバーナー使用時は90パーセント増しとなります」

 

「ほんとにほんとにバカじゃないのか?」

 

ちなみに、エールストライカーの翼は高速機動時は折りたたまれ、本来の堅牢なスピアヘッドの翼を用いた高速を発揮し、高速域からの急減速、ストールを用いたマニューバー時はエールストライカーの翼が展開し、減速、マニューバー時の補助翼として機能するとの事。

 

もともとモビルスーツの地上での空中戦を想定したエールストライカーだ。部品強度も人型を飛ばすとなると相当な強度となっているはず。

 

そこにハリーは目をつけ、高速域と低速域の翼面の変形システムを考案したのだ。

 

はっきり言って、もはやスピアヘッドではない。

 

スピアヘッドの形をした別の何かだ。

 

さらに武装面も強化されており、追加装備としてバスターの肩部に設けられたミサイルポッドと、翼先端部に取り付けられた旋回可能なビームサーベル、メビウスで装備されたレール砲などなど、それらと燃料タンクを兼ねたファストパックが装着されている。

 

しかも取り付けられた全てが任意でのパージが可能となっており、ハリーの持つ技術全てが余すことなく注ぎ込まれている。

 

そのため極端な重量バランスと、限界近くまでオーバーチューンしたエンジンの極端な出力特性を持っておりーー結果。

 

「なんじゃ…こりゃあ!」

 

機体の挙動予測は非常に困難になった。

 

シミュレーションで行われた飛行特性データの投入や、スピアヘッドにもともと搭載されていた空戦機動システムの補助は有るものの、出力がそれらのデータをはるかに上回っていた為、飛ばした後はパイロットの技量に任せざるを得なかった。

 

「ラリー!大丈夫か!?」

 

「こいつ、かなり…じゃじゃ馬で…!」

 

ムウが焦るほど、外から見る限りのラリーの機体軌道は歪で、かろうじて空路は取れているものの、機体の姿勢は上下左右にブレまくっている。

 

「ラリーさん!?」

 

後から出たキラも、ラリーの普段では考えられない軌道に焦ったような声を上げたが、すぐ後ろでレセップスからの艦砲射撃が砂柱を巻き上げた。

 

「チィ!アークエンジェルが!やらせるかよ!」

 

ムウとアイクのスカイグラスパーが鋭く弧を描き、好き放題に撃ってくるレセップスへと向かっていく。

 

アークエンジェルも黙っていない。始動し始めた艦は武装を展開してゆっくりと敵へと向かっていく。

 

「バリアント、てぇ!」

 

ナタルの一喝で放たれた弾頭により、レセップスとアークエンジェルの艦戦が始まると、砂丘の向こうからバクゥの連隊が姿を現した。

 

「バクゥは何機居るんだ?4…5機か!」

 

キラも素早く反応し、ビームライフルを構えてストライクを飛翔させる。

 

////

 

 

「バルトフェルド隊長!どうして我々の配置が、レセップス艦上なんです!?」

 

パイロットスーツ姿のバルトフェルドに、艦上からの支援攻撃を指示されたイザークが不満そうに噛み付く。すると、バルトフェルドは隠す様子もなく嫌味な笑みを浮かべた。

 

「おやおや、クルーゼ隊では、上官の命令に部下がそうやって異議を唱えてもいいのかね?」

 

「いえ、しかし…奴等との戦闘経験では、俺達の方が!」

 

「負けの経験でしょ?」

 

「な…なにぃ?」

 

逸るイザークを、白いパイロットスーツを着るアイシャがバッサリと切り捨てる。宇宙が庭と豪語する赤服が重ねたのは、敗北の記録だ。

 

凄まれたところで、なんら実績がない以上、負け犬の遠吠えに等しい。

 

「アイシャ」

 

「失礼」

 

悪びれる様子なく愛機へ乗り込んでいくアイシャに、バルトフェルドはやれやれと肩をすくめた。

 

「君達の機体は砲戦仕様だ。高速戦闘を行うバクゥのスピードには、付いて来れんだろ?」

 

「し、しかし…!」

 

「イザーク!もうよせ!命令なんだ!失礼致しました」

 

そうディアッカに半ば強引に連れ戻されていくイザーク。そんな二人を見送っていると、ディアッカの小声が聞こえた。

 

「気にするなよ、な~に、乱戦になればチャンスはいくらでもあるさ」

 

聞こえてるんだがなぁ、とバルトフェルドは若さゆえの無謀さというものかと、イザークとディアッカの面従腹背にあえて目を瞑った。

 

あの少年のような真似、誰にでも出来るというものではないだろう。きっと砂漠に落ちれば足を取られる。そうなったときはーーまぁなるようになる。

 

「では、艦を頼むぞ、ダコスタ君」

 

「は!」

 

ゆっくりとハンガーの扉が開いていくと、ほかのバクゥとは根本的に違う、オレンジを基調としたモビルスーツ、ラゴゥがその姿を現した。

 

「さて、凶と出るか吉と出るか…バルトフェルド、ラゴゥ、出る!」

 

 

////

 

 

「ゴットフリート、バリアント、てぇ!」

 

レセップスからの艦砲射撃に応戦するアークエンジェルだが、敵は強力な実弾兵器だ。まともに直撃すれば、いくら装甲の厚いアークエンジェルでもただでは済まない。

 

「ECM、及びECCM強度、17%上がります!バリアント砲身温度、危険域に近づきつつあります!」

 

サイからの報告に、ナタルは今手持ちにある札を頭の中で整理しながら、的確な攻撃指示を出していく。

 

「ミサイル発射管、6番から12番、コリントス、てぇー!砲身温度の冷却に時間を稼ぐ!!」

 

「ローエングリンは地表への汚染被害が大きすぎるわ!バリアントの出力と、チャージサイクルで対応して!」

 

地上ではレジスタンスが、バクゥやレセップスに対して最後の攻勢に出ている。その様子を映し出すモニターだが、いくらヘリやバクゥをメビウスライダー隊が引きつけているとは言え、その戦力差は歴然としており、突撃したジープは次々とスクラップと化していた。

 

その戦場を、一筋の流星が駆け抜ける。

 

地面をスレスレに飛ぶ機体は、驚異的な加速性能を見せて、脇を通り抜けるだけで四つ足で地面に接地しているはずのバクゥを激しく揺らした。

 

『な、なんだあの機体!』

 

振り返ろうとした矢先、スーパースピアヘッドから発生した衝撃波で足が止まったバクゥを、キラが的確に撃ち抜いていく。

 

そんな中でラリーは暴れる操縦桿を必死に両手で操りながら、コクピットの中で四苦八苦していた。

 

「くそ!安定させようとしたらフラつくってどういうことだよ!」

 

従来までの手足のように動く感覚がまるでない。機体は急に傾き、折りたたまれたエールストライカーの翼がわずかに地面と擦れて、砂の壁を巻き上げながら地表スレスレを通っていく。

 

手こずるラリーの元へ飛びかかってきたバクゥを、盾で受け流してビームサーベルで叩き切ったキラが通信を発した。

 

「ラリーさん!翼面荷重の設定を上目に設定してみて下さい!外から見た意見ですけど!」

 

キラが言ったように翼面荷重の設定を大雑把に上目に設定し直すと、機体の揺れが少しずつなくなっていく。さらに値を調整すると、機体の挙動がますますラリーの腕とリンクしていくようになった。

 

「急に言うことを聞くようになったな!!」

 

嬉しそうに言うラリーは、操縦桿を鋭く倒して、機体の機動を確認して、叫んだ。

 

「いくぞぉ!うおりゃああああ!!」

 

 

 

 

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