ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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第77話 砂漠の決戦4

 

カガリが操るスピアヘッドは、アークエンジェルから飛び出して工場跡の廃墟の間を縫いながら、件の障害物を探していた。

 

「引っかかってる残骸はどれだ!」

 

複座に座るトールに怒鳴るように言うカガリに、彼も負けじとモニターパネルを操作して周辺をスキャンする。そして見つけた。

 

「あれだ!船体の下!煙突部分!!」

 

崩れた煙突がアークエンジェルの翼に引っかかっているのを、操縦するカガリもはっきりと確認すると、よーしと握る操縦桿を傾けた。

 

「どうだ!」

 

翼に備わるミサイルを放ち、爆煙から飛び去るスピアヘッド。その振動に揺さぶられるアークエンジェルで、ノイマンは軽くなった舵を握って叫んだ。

 

「外れた!」

 

「面舵60度!ナタル!」

 

「ゴットフリート、照準!」

 

浮き上がったアークエンジェルは、ゴットフリートを旋回させて、後方から出現した敵艦の横っ腹を極大の閃光で貫いた。

 

 

////

 

 

『足つきめ!あれだけの攻撃でまだ!?』

 

陸上戦艦二隻を投入して、艦砲射撃を加えたと言うのに、息を吹き返したように反撃してきたアークエンジェルの図太さに、バルトフェルドは苦虫を噛み潰す。

 

『まずいわよ、アンディ!』

 

そう叫んだアイシャの言葉に、バルトフェルドはハッと目の前の光景を見た。ストライクが浮き上がり、こちらに向かって真っ直ぐ飛んでくるのが見える。

 

アイシャが何発かビーム砲を撃つが、その全てをひらりと躱して、さらに距離を詰めてくる。バルトフェルドはラゴゥの頭部に備わるビーム刃を展開させようとしたが、ストライクは速度を落とさずに、そのままラゴゥの頭上を飛び去っていった。

 

「キラ!?おい!どこにいく!?」

 

ラリーの言葉にも反応を示さず、光をなくしたキラの目には、砂漠に足を奪われるデュエルしか映っていなかった。

 

「デュエル…デュエル…!!」

 

////

 

『おいおいおい!何が砂漠の虎だよ!うおぉ!』

 

そう悪態をつくディアッカが駆るバスターも、着地と同時に砂漠に足を飲まれる。ふらつく機体を立て直そうとしていると、高熱源の接近を知らせるアラームが鳴り響いた。

 

『ストライク!!』

 

イザークのデュエルの前に降りたディアッカは、咄嗟にバスターの銃口をストライクに向けたが、足場が悪い砂漠で狙いが定まるはずもなく、明後日の方向にビームが打ち出される。

 

キラはそれを躱す素振りも見せずにスラスターを抑えると、体勢が整っていないバスターの肩を足場にするように高度を一気に落とした。

 

『うわぁああ!!』

 

結果、バスターはストライクを受け止めきれずに砂漠に叩きつけられる。キラは用済みと言わんばかりにバスターを踏み台にして、デュエルへ肉薄した。

 

「デュエル…お前…お前だけは!!」

 

頭部に備わるイーゲルシュテルンで動けないデュエルを抑えて、キラはビームライフルの銃口を向けると躊躇いなく引き金を引いた。

 

『な、なんだコイツ!?』

 

イザークはシールドで何とかビームを防いだが、間髪入れずにストライクが残弾が無くなったビームライフルを捨て、シールドごとデュエルを蹴り飛ばす。

 

『うわぁああああ!!』

 

尻餅をついたデュエル。そのシールドを持つ腕を、キラは蹴り飛ばしながら抜いたビームサーベルでたやすく両断した。まずは防ぐ手段を断つ。キラはデュエルを逃がすつもりはなかった。

 

『イザーク!離れろ!なんかヤバイぞ!』

 

「ええい…!おめおめと逃げられるか!」

 

負けじとイザークはプライドの赴くままビームライフルをストライクに向けたが、その銃口が向けられる前に一閃がきらめき、今度はビームライフルごと残った片腕が両断された。

 

「お前だけは、落とす!!」

 

キラはシールドを装備したもう片方の手でもサーベルを引き抜くと、両腕を失ったデュエルの頭部を吹き飛ばした。

 

『うわぁあ!!』

 

遠くで情けないイザークの叫び声が響く。

そんなことには構わず、ラリーは操縦桿を握ってスーパースピアヘッドを操る。

 

ラゴゥのビームを紙一重で避けて、反撃に最後のミサイルを撃ち放つ。背中のビーム砲に着弾した衝撃で、アイシャのコクピットパネルが過負荷で火を吹いた。

 

『熱くならないで!負けるわ!』

 

『分かっている!』

 

頭部に備わるビーム刃を振り回して、バルトフェルドは降りてきたスピアヘッドと交差した。

 

「この野郎!!」

 

ラリーもスピアヘッドを起こして、旋回する。できれば高度を取りたいところだが、大きく回ればその分の燃料消費も増える。バッテリーも燃料も限界があるため、ラリーも最低限の動きでバルトフェルドと対峙していた。

 

『こりゃぁまずいぜ!くっそー!』

 

砂に埋もれたバスターを四苦八苦しながら起き上がらせようとするディアッカの目に、なす術を失ったデュエルに、ビームサーベルをぶら下げたストライクがゆっくりと歩み寄っていく光景が映る。

 

『こいつ!足場さえ…うわぁ!』

 

サブモニターしか使い物にならなくなったコクピットの中で喘ぐイザークだが、ストライクが腕を振り上げたことで残っていた肩から先の腕が切り裂かれる。

 

サブモニターに映るストライクは、逆光で顔が影になり、その黄色のデュアルカメラアイを光らせながらデュエルを見下ろしている。その光景に、イザークは感じたことがなかった圧倒的な恐怖と、べったりとした死を意識することになる。

 

『イザーク!飛べ!』

 

ディアッカからの音声を聞いて、イザークは咄嗟にフットペダルを踏み込んで上空へと舞い上がる。とにかく今は距離を取るしかない…!

 

しかし、そんな安直な考えをキラは許さなかった。

 

「逃すものか!!」

 

サイドアーマーに格納されたアーマーシュナイダーを引き抜くと、上へ逃げようとするデュエルへ投擲する。それは腹部へと突き刺さり、火花を上げた。

 

そして怯んだイザークには見えなかった。

 

投擲した瞬間に飛び上がったストライクの姿が。

 

キラは言葉を発さずに、デュエルに突き刺さったアーマーシュナイダーめがけて膝蹴りを放ち、デュエルを地にいるバスターめがけて吹き飛ばした。

 

 

////

 

 

「第4、第9区画消失!第3区画大破!

 

「火災発生!機関、及び振動モーター停止!」

 

残されたレセップスに、もう戦う力は残っていなかった。バルトフェルドの代理を務めるダコスタは自身が置かれている状況に拳を握りしめる。

 

このままで狩られるのはこちらだ。

 

「くっそー!」

 

《ダコスタ君》

どうするべきか考えていたところに、バルトフェルドから通信が入った。ダコスタはその通信を受けて身を固める。

 

《退艦命令を出せ》

 

「隊長…!?」

 

《勝敗は決した。残存兵をまとめてバナディーヤに引き揚げ、ジブラルタルと連絡を取れ》

 

それは事実上の敗走だった。逃げ切れよ、とバルトフェルドは言葉を続けると通信を切った。ダコスタの声に反応はない。

 

おそらく、指揮官である彼は殿を務めるつもりだ。ダコスタは強く瞼を閉じてから、総員に退艦命令を伝えるのだった。

 

 

////

 

 

「君も脱出しろ。アイシャ」

 

煙に包まれるコクピットの中で、バルトフェルドが静かに言う。おそらく、ラゴゥも持たないだろう。重火器すら使えなくなった以上、彼女の補佐に頼ることはない。

 

ここから先は自分だけで充分だとも思ったが、アイシャはきっぱりと断った。

 

「そんなことするくらいなら、死んだ方がマシね」

 

「君もバカだな」

 

「なんとでも」

 

その言葉に後押しされて、バルトフェルドは深く息を吐いた。レセップスから乗員が退艦するまで、自分のやるべきことを果たすために。

 

「では、付き合ってくれ!」

 

 

////

 

 

『イザーク!イザーク!!しっかりしろ!』

 

腹部から火を上げて沈黙するデュエルを受け止めながらディアッカは何とか機体を立て直す。

 

『痛い…痛い…痛いぃい』

 

デュエルからの接触回線で悲鳴のようなイザークの声が聞こえた。どこか怪我をしてるに違いない。ディアッカは心の中で毒づきながらスラスター吹かそうとしたが、途端モニターに暗い影が落ちた。

 

『ハッ!』

 

見上げるとシールドを構えたストライクが急降下しており、バスターと満身創痍なデュエルごとシールドで殴り飛ばした。

 

倒れる二機に、キラは心に溢れるどす黒いに何かに導かれるまま、ビームサーベルを構える。

 

そこで、アークエンジェルから通信が入った。

 

《キラ!深追いはするな!エネルギーももう無い!戦略的には目的は達成している!》

 

サイの声に、キラの瞳に光が戻った。ふとエネルギーゲージを見れば、すでに危険域手前でこれ以上動けばフェイズシフト装甲を保つこともできなくなる。

 

《キラくん!!》

 

キラはもう一度、デュエルとバスターを見てから、深く瞳を閉じてマリューやサイの言葉に頷いた。

 

「くっ…了解…!」

 

飛び去っていくストライクを見て、ディアッカは大きく張り詰めていた息を吐いた。

 

『引いていく…助かったのか…?イザーク!』

 

労わるようにデュエルを支えながら、ディアッカも後方へ退避する準備に入ったレセップスへと後退していく。

 

痛がっていたイザークの声は聞こえなくなっていた。

 

 

////

 

 

レセップスが後退し始めたとの報告を受けて、ラリーは素早く相対するラゴゥへの通信を試みた。

 

「バルトフェルド!」

 

《まだだぞ!流星!》

 

ラリーの声に、バルトフェルドも答えるがラゴゥは停戦の意思を見せずにビーム刃を展開して迫ってくる。

 

「このバカが!さっさと退がれよ!」

 

《言ったはずだぞ!戦争には明確な終わりのルールなどないと!》

 

「命あっての物種とアンタも言っただろうが!」

 

突貫してくるラゴゥを上昇でやり過ごそうとしたが、バルトフェルドは地を蹴ってラゴゥを回転させながら突っ込んでくる。不規則な攻撃に対応できなかったラリーの翼の一部にビーム刃の切り傷ができ、機体は大きく揺れた。

 

「くぅぅ!!」

 

《ここが戦場であり、我々が戦争をしているなら、戦うしかなかろう。互いに敵である限り!どちらかが滅びるまでな!》

 

「それは憎しみに囚われた軍人の台詞だろうが!退がれよ!それをやめさせるために、俺は!!」

 

二度目の交差。バルトフェルドが再びラゴゥを飛び上がらせた瞬間、ラリーは機体を鋭く回してキャノピーが真下にくるような背面飛行を行いながら翼先端に設けられたビームサーベルを展開させる。

 

「でやぁああ!!」

 

《なにぃ!?》

 

《アンディ!》

 

ビームサーベルはラゴゥのコクピットをーー両断することなく、その四肢全てを切り裂いた。足をなくしたラゴゥは着地することができずに、砂漠へと横たわる。

 

交差を終えて上昇したラリーは、地に落ちたラゴゥを見ながら一息つく。

 

その時、スーパースピアヘッドのコクピットにアラームが鳴り響いた。レーダーを見ると戦場とは反対方向からミサイル群がこちらに迫ってきていた。

 

「うっくぅうう!!」

 

ラリーはフレアを撒きながら機体をストールマニューバさせ、ミサイル群をやり過ごした。

 

「何だ!?」

 

機体を立て直してミサイルが来た方向を見る。そこには太陽を背にした、見たこともない一つの影が空を飛んでこちらに向かってきていた。

 

そして、音声通信が入る。

 

 

 

 

《会いたかったぞ…流星!!》

 

 

 

 

 

 

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