ガンダムSEED 白き流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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番外編 スーパーコーディネーターvs流星 1

 

ローとモントゴメリ、クラックスに囲まれるように中規模の艦隊編成を維持しながら、アークエンジェルは第八艦隊主力と合流するために、地球圏に向けて星の大海を進んでいた。

 

「ババン!バンバン!」

 

「バンバン!!ババン!!」

 

そんな艦隊の先頭に立つクラックス艦内。物資倉庫の一角をパーテーションで区切った小規模な訓練スペースで、乗組員達は弾倉を抜いた拳銃を持ちながら大きな声で叫び、お互いに壁に隠れては撃ち合いをする訓練に励んでいた。

 

クラックス、ロー、モントゴメリは若手の乗組員で構成されるアークエンジェルとは違い、れっきとした軍用艦。よって、艦内での白兵戦を想定した訓練も定期的に行なっている。

 

区切られたパーテーションの中は、クラックスの通路と同じ間隔で区切られており、無重力の中での白兵戦訓練で、メビウスライダー隊を始め、AWACS担当のオービットの通信官たちも汗を流していた。

 

「模擬戦……ですか?」

 

そんなクラックスのメンバーに混ざって訓練を受けていたキラが、休憩がてら水分補給をしていたときに、息を荒くしたハリーからそんな提案を受けたのだ。

 

「そうそう。ラリーのメビウスもかなり完成度が上がってきた訳だから、ここらで実戦的なデータが欲しいわけなのよ」

 

ハリーの肩越しにキラが見ると、彼女の後ろにはデータ取り用のケーブルに繋がれている純白のメビウスが鎮座している。

 

先日、ユニウスセブンで回収したメビウスの残骸から組み立てたパッチワークは、モントゴメリ救出時に大破よりの中破となったため、ローとモントゴメリのメビウスの予備パーツをかき集めて、ハリーが新たに組み上げたのだ。

 

今ハンガーにあるメビウスは、まるで新品同様となっており、しかもユニウスセブンで回収されたザフトや地球軍の武器兵装がハリーの手によって惜しげも無く搭載されている。

 

しかし、あくまでデータも机上のものだ。ハリー含む技術屋としては、一度飛ばしてみて機体の具合や性能のテストをしておきたいところだった。

 

「そこで、キラくんに白羽の矢が立ったわけだよ。地球軍はホラ、まだマトモなモビルスーツの実技訓練とかが完成してないから、ストライクのデータ取りとしての目的もあるみたいでね」

 

ハリーと同席していた作業着姿のリークが疲れたように肩をすくめる。おそらく、制止をしたのだろうが、ハリーの押しの強さに負けたのだろう。

 

「やっぱり対モビルスーツ戦が望ましいからね!この通り!お願い!」

 

「いえ、まぁ…構いませんけど」

 

「やったぁー!」

 

じゃあ艦長たちに確認してくるねと、ハリーはクラックスのブリッジへと飛んでいく。それと入れ違いになったラリーがキラに首を傾げたが、キラ自身困った笑いしか浮かべられなかった。

 

唯一の救いは、「まだザフトの勢力圏内だから艦長が許すわけないよ」というリークの励ましの言葉だけだった。

 

 

////

 

 

そして結果から言えば、リークの励ましの言葉は無に帰することになった。何を考えているのか、クラックスの艦長であるドレイクが許可を出し、しかもそのままアークエンジェルやロー、モントゴメリにまで許可を取り付けてしまったのだ。

 

ローとモントゴメリからすれば、これから戻る第八艦隊への手土産として実戦データを入手できれば申し分ないだろうが、よくアークエンジェルのマリューが許したものだと、キラは頭を抱えたくなった。

 

「けど、レイレナード中尉との模擬戦か…」

 

「キラ、大丈夫か?」

 

「あ、サイ。うん、大丈夫だよ」

 

パイロットスーツに着替えてブリーフィングルームに向かう道中で、サイと合流したキラは、学友からの心配の声に笑みで返した。気持ち的には実戦では無いので、敵を迎え撃つための出撃と比べれば心は穏やかだ。

 

「キラ、あんまり無理はするなよ?」

 

「ありがとう、カズィ」

 

ラリーの無茶苦茶な機動戦を肌で感じているカズィから割と真顔で伝えられた言葉を受け止めて、キラはブリーフィングルームに入る。

 

そこには、いつもは居ないアークエンジェルのブリッジのクルーも集まっていた。

 

「キラ!レイレナード中尉にギャフンと言わせてやれよ!お前に今月分の給料賭けてるんだからな!」

 

「ハイ!精一杯がんばーーえ?」

 

ノイマンからの言葉に精一杯答えたキラの声が最後で間抜けな色に染まる。よく見ると、何人かがA4判サイズの端末を持っていて多くのクルーがそれを覗き込んでいる。

 

「レートとしては6:4か。まぁまぁ成り立ってるな」

 

「流石に中尉でもストライク相手じゃ苦戦するでしょ?」

 

「いや、流星の名は伊達じゃないって」

 

それだけでわかった。おそらく、ラリーと自分、どちらが勝つかを賭けているのだ。しかも隠れてではなく大々的にだ。

 

「ええ……賭け事……しかもビジネスとして成り立ってる……」

 

よく見るとアークエンジェルのクルーだけではなく、ローやクラックスのクルーも何人か紛れ込んでいる。そんな人混みの中で、喧騒を眺めるマリューをキラは見つけた。

 

「いいんですか!?ラミアス艦長!!」

 

「えっ……まぁ、艦内でも、娯楽は必要ですから」

 

そう答えるマリューの目は明らかに泳いでいる。ジト目で見つめるキラの視線に耐えられなくなってついにマリューは視線を外した。

 

「それ、本心ですか?」

 

「…ええ!もちろん」

 

「バーフォード艦長ぉ?」

 

マリューじゃ話にならないとキラが繋がってるはずの通信音声でクラックスの長にそんな声を投げかける。しばらくの沈黙の後………。

 

《聞こえんな》

 

《やっぱり主犯はあんたか!》

 

悪びれる様子のないドレイクの声。それ見たことかと声を上げるラリー。そして頭を本当に抱えるキラ。道理で模擬戦申請がすんなり通ったわけだ。

 

《ちなみに私はラリーに賭けてる。一応、流星の指揮官としてな?》

 

そういう問題じゃねぇ!とラリーが反論するが、歴戦の艦長はどこ吹く風だ。もっとも、娯楽半分、そしてどこかで隠れて見ているであろうザフトに対する牽制半分と言ったところだと聞いたのは後の話になる。

 

この小規模な艦隊の二頭首であるラリーとキラの模擬戦を見せつければ、手を出しにくくなるだろうと言う思惑があったらしい。

 

「ナタル?夕食のプリン、忘れないでね?」

 

「ヤマトが勝つに決まってますよ、ラミアス艦長」

 

そんなやり取りをするマリューとナタルを見て、キラは早々に深く考えることを諦めるのだった。

 

 

////

 

 

あー、とりあえず、ミッションの内容を知らせる。

 

今回の目的は、ライトニング1のメビウス・インターセプターの実戦テストだ。ストライクの機能、能力、そしてモビルスーツの教導目的のデータ集めの一環であることを忘れないでくれ。

 

実弾は使用しないが、バルカン砲には水性ペイント弾、ライトニング3のビームライフルには照射型のポインターを取り付けているので、被弾箇所はそこから判定する。

 

暗礁宙域の近くだ。くれぐれも機体に傷はつけるなよ?

 

兵士の心得に則り、可能な限りのベストを尽くしてくれ。ちなみに俺はキラくんに賭けてる。

 

互いの幸運を祈るぞ。メビウスライダー隊、発進!

 

 

////

 

 

《進路クリア!メビウスライダー隊、発艦どうぞ!》

 

「先に行って待っておくぞ、キラ。ラリー・レイレナード。メビウス・インターセプター。ライトニング1、発進する!」

 

クラックスの船外ハンガーに固定されていたラリーのメビウスは、エンジンを煌めかせて予定される暗礁宙域へと飛翔していく。

 

対するアークエンジェルからは、模擬戦のデータ取りとモニタリングのため、ムウのメビウスゼロの発進準備が整えられていた。

 

《メビウスゼロ、フラガ機、リニアカタパルトへ!》

 

「了解、今回は特等席から観戦させて貰うよ。ムウ・ラ・フラガ、ライトニングリーダー、出るぞ!」

 

開放されたハッチから、ムウの駆るメビウス・ゼロが大海に向かって飛び出していく。

 

《シチュエーションは遭遇戦よ。予定宙域でレイレナード中尉のメビウスを捕捉してから模擬戦がスタートするわ。逆も然りだから暗礁宙域に惑わされないように注意してね》

 

「了解」

 

《カタパルト、接続!エールストライカー、スタンバイ!システム、オールグリーン!》

 

キラのストライクもカタパルトへと運ばれていく。状況は説明通り「遭遇戦」だ。先に相手を見つけることが勝敗を分かつと戦術指導をしてくれたオービットのニックの言葉をキラは思い出す。

 

それに相手はあの「流星」だ。近くで見ていたからこそ、その脅威は身にしみて理解している。

 

《進路クリア!ストライク、どうぞ!》

 

「キラ・ヤマト、ストライク…ライトニング3、行きます!!」

 

その声とともに、キラが操るストライクは船から飛び立ち、流星が網を張って待つ暗礁宙域へ進んでいくのだった。

 

 

 

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