アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

109 / 556
「ちひろさん蒸すと出るとかwでも試しにやってみっかw」
( ^Д^)10連ガチャガチャ

[神秘の女神]高垣楓SR
[ゆるふわ乙女]高森藍子SR

「………………」(;゜Д゜)


Lesson93 良太郎、襲来ス 2

 

 

 

「良太郎さぁ~ん!」

 

「ん?」

 

 食堂にて全員分の昼食を用意する旦那さんや女将さんのお手伝いを冬馬と共にしながら談笑していると、そんな甘い女の子の声が聞こえてきた。

 

 この甘い声は一人しかいないなぁと声の主に当たりを付けつつ振り返る。

 

「やぁまゆちゃん。みんなの様子を見に来たよ」

 

「お久しぶりです、良太郎さん。……はぁん、あと三日は良太郎さんに会えないものだとばかり考えていたので、わざわざまゆに会いに来てくださって感激ですぅ」

 

 案の定そこにいたまゆちゃんは、ウットリとした恍惚の表情で俺の顔をじっと見ていた。

 

 ……久しぶりというには短すぎるし、まゆちゃんだけに会いに来たって訳でもないんだけど……なんかここで否定したら不味い気がするから黙っておこう。

 

「……あれ? 天ヶ瀬さんはどうしてここに?」

 

「……良太郎と一緒におめーらの様子を見に来たに決まってんだろ……!」

 

 たった今しがた気が付きましたといった様子で首を傾げるまゆちゃんに対し、拳を握りしめながらプルプルと震える冬馬。まぁなんというか……まゆちゃん、一応ジュピターの面々に敬意は払ってるけど割と興味無さげな節があるし。

 

 しかしながら「そうですかぁ」と早々に会話を切り上げられる冬馬に対して同情は禁じ得なかった。いや、まゆちゃんだけが特別なんだと信じてあげたい。でないと、まがいなりにも961プロ時代からトップアイドルとして名を馳せていたジュピターの一員である冬馬が不憫すぎる。

 

 さて、レッスンの進展具合などは全員が集まってから聞くとして……とりあえず、これだけは聞いておこうかな。

 

「どう? 合宿は楽しい? と言っても、まだ二日目だけどさ」

 

「……はい、楽しいですよぉ」

 

 ニッコリと。先ほどまでのウットリとした表情とはまた違った柔らかい笑みを浮かべながら、まゆちゃんは頷いた。

 

「そう。それはよかった」

 

「それで良太郎さんは何時までこちらに――」

 

「恭也さんだ!」

 

「ホントに恭也君だー」

 

 おそらく「いるのですか?」と尋ねようとしたのであろうまゆちゃんの言葉は、食堂に入って来た他のバックダンサー組の子たちによって遮られてしまった。

 

「やぁみんな、久しぶり。合宿頑張ってるかな?」

 

「もうヘトヘトだよー……」

 

「やっぱりプロの皆さんはレベルが高いです……」

 

 苦笑する美奈子ちゃんと可奈ちゃん。他のみんなも疲れた様子が隠しきれていないところから、今の彼女たちにはプロのアイドルのレッスンは辛いんだろうなぁ。

 

「あ、あの」

 

「ん? あ、恵美ちゃんも二日ぶり。どう? 合宿楽しい?」

 

「あ、はい楽しいです。……じゃなくて、恭也さん」

 

 ススッと近付いてきた恵美ちゃんがコッソリと耳打ちしてくる。一応『恭也』呼びなのは他のみんなに聞かれている可能性を考慮してくれているのだろう。

 

(……いつまで恭也さんの名前を借りてるつもりなんですか? 流石に765プロの皆さんもいらっしゃるので、その嘘を吐き続けるのは無理があるかと……)

 

(今どの辺りでネタバラシすると面白いかを模索中なんだ)

 

 行き当たりばったりなのは割といつも通りだったりする。

 

 いやぁ、今はこうして『恵美ちゃんとまゆちゃんの知り合いのお兄さん』という立場だが、それが違ったと分かった時の彼女たちのリアクションが凄い楽しみだなぁ。

 

 ……ただ。

 

「………………」

 

(相変らず志保ちゃんが胡散臭い物を見るような目で睨んでるんだよなぁ)

 

 マゾッ気は無いので可愛い女の子に睨まれてもゾクゾクしたりしないのだが、やはり彼女の顔立ちには何処か見覚えがあるような気がした。しかしこうして対面してみて確信したが、俺は過去に直接彼女と面識は無いはずだ。つまり、彼女の血縁者が知り合いということなのか……?

 

 しかし直接面識が無いなら、なんで俺が周藤良太郎だってことがバレて……?

 

(……あれ? もしかしてこれ、前提条件が間違ってるんじゃ……?)

 

「あ、あれ? もしかして……あ、天ヶ瀬冬馬さんですか!?」

 

 ふと思考を遮るそんな声に振り返ると、バックダンサー組の子たちがやってきても黙々と昼食準備のお手伝いをしていた律儀な冬馬に星梨花ちゃんが話しかけていた。室内に入ったことでサングラスを眼鏡に変えていた俺とは違い、サングラスを外していた冬馬の正体がついにバレてしまったらしい。

 

「おお とうま! バレてしまうとは なにごとだ!」

 

「うるせぇよラルス16世」

 

「というかさっきから普通にサングラス外してたのに気付かれるの遅いな。アイドルとしてのオーラ足りてないんじゃない?」

 

「ホントにうるせぇよ!」

 

 と言いつつ「握手していただけますか!?」とやや興奮気味の星梨花ちゃんとちゃんと握手をしてあげる辺りやはり律儀な性格である。

 

「うひゃあ……じゅ、ジュピターの天ヶ瀬冬馬さんや……!」

 

「ほ、本物のアイドルです!」

 

「いやまぁ、昨日からその本物のアイドルと一緒にレッスンしてるけどね、私たち」

 

 トップアイドルの登場に騒めき立つバックダンサー組の子たち。あれ、これはもしかして俺の登場が食われたか……?

 

「……って、あれ? ジュピターの冬馬さんは恵美ちゃんたちと同じ123プロ……その冬馬さんと一緒に来た恭也さんって……?」

 

 おっと、杏奈ちゃんの鋭い考察。

 

 さて、それじゃあそろそろネタバラシといこうかな。

 

 眼鏡と帽子を取り払い、高らかに自分の正体を明かそうとしたその時である。

 

 

 

「やっぱりアンタかあぁぁぁ! 良太郎おぉぉぉ!」

 

 

 

 そんなりっちゃんと叫び声と共に、食堂の入口から飛来したプラスチック製のバインダーの角が『スコーン!』と軽快な音を立てて俺の額に突き刺さったのだった。

 

 

 

 

 

 

「あー、お腹空いたー!」

 

「お昼なんでしょうねー?」

 

「新鮮な海の幸……はたまた山の幸……あぁ、楽しみです」

 

「貴音は本当にブレないわね……」

 

 部屋で着替えを終え、私たちは揃って食堂に向かっていた。食堂からは賑やかな声が聞こえてくるところから、どうやらバックダンサー組のみんなは既に集まっているようだった。

 

「……ん? なんか食堂から男の人の声が聞こえないか?」

 

 不意に響ちゃんがそんなことを言って足を止めた。

 

「? 旦那さんじゃないの?」

 

「いや、旦那さんにしては若すぎるぞ」

 

「じゃあプロデューサーさんとか」

 

「俺がどうかしたか?」

 

 振り返ると、そこには別室で打ち合わせをしていたプロデューサーさんと律子さんの姿があった。

 

「どうしたのよ、みんな。こんなところで立ち止まって」

 

 律子さんの言う通り、全員が響ちゃんにつられて足を止めてしまっていた。よくよく考えてみれば、誰が食堂にいるかなんて中を覗けば分かる簡単なことだった。

 

 なので食堂の中を覗こうとしたのだが。

 

「春香ストップ」

 

「ぐえ」

 

 律子さんに服の首の部分を掴まれて動きが止められ、思わずアイドルとして出しちゃいけない声が出てしまった。

 

「春香、アイドルとして以前に女の子として出しちゃいけない声だと思うわ」

 

 ええい千早ちゃん、今は私が出した声についてはどうでもいいの!

 

「何するんですか、律子さん!?」

 

「……嫌な予感がするから心の準備をさせて欲しいのよ」

 

 そう言いながら律子さんは『頭痛が痛い』といった様子でこめかみを抑えていた。

 

「というか、こういうところでグダグダしてるから『さっさと話を進めろ』とか言われるんだぞ」

 

 何処からか電波を受信した響の発言はさておき。

 

「もしかして、りょーたろーさんなの!?」

 

「りっちゃんがそういう反応をする時は大体りょーにぃが関係することは確実! そう、コーラを飲んだらゲップが出るっていうぐらい確実!」

 

 途端に目を輝かせる美希と真美。確かに、律子さんがここまで嫌そうな反応をする時って大体良太郎さん関係と相場が決まっている。

 

「い、いやいやいくら何でもそれはないわよ。だってここ福井よ? 飛行機と車で三時間近い道のりを、仕事で忙しいはずのトップアイドルが来るわけないじゃない。こっちで撮影でも無い限り」

 

 虚ろな目で笑いながら律子さんがフラグを乱立していた。今にも「私、東京に戻ったらアイドルとして再デビューするんだ……」とか言い出しそうな雰囲気だった。

 

「……あの、律子さん」

 

「そろそろ現実見た方がいいと思いますよ」

 

 控えめに手を挙げながら雪歩と真がそう進言する。

 

「分かってるわよ! さっきから良太郎と天ヶ瀬冬馬の二人のやり取りとしか思えない会話が聞こえてることぐらい!」

 

 うん、まぁ、ほぼ確定なんだろうなぁ……。

 

 虚ろな目で「ヤッテヤルデス!」と叫びながら律子さんは食堂に突撃し――。

 

 

 

「やっぱりアンタかあぁぁぁ! 良太郎おぉぉぉ!」

 

 

 

 ――ほぼ確認することなくノータイムで良太郎さんに向かってバインダーを投げつけるのだった。

 

「あ痛っ!?」

 

 まるで手裏剣のように飛翔したバインダーは良太郎さんの額に直撃し、スコーンという軽快な音を立てた。

 

「随分と中身が入ってないような音がしたぞ」

 

「相変らず考え無しの行動だったってことね」

 

 響ちゃんと伊織の言動が若干辛辣だったような気がしたが、割といつも通りだった。

 

「イタタ……約束通り様子を見に来てあげたのにこの対応はないんじゃないの?」

 

「この五日間はアンタの襲撃を気にしなくていいと思ってたのに……!」

 

「りっちゃん、想像力が足りないよ」

 

「怒りの力でメガシンカしてやろうかしら……!?」

 

「り、律子、落ち着けって……」

 

 律子さんが次元と種族とシステムの壁を超えそうになっているところをプロデューサーさんが宥める。

 

「……え? 今、律子さん、『リョウタロウ』って……?」

 

「ま、まさか……!?」

 

 どうやら良太郎さんは以前私たちの事務所に来た時のように自分の正体を隠していたらしく、律子さんの発言を聞いてバックダンサー組のみんなも気付き始めたようだ。

 

 良太郎さんは「ふっふっふ……!」と不敵な笑みを(無表情のまま)浮かべながら、バッと帽子と眼鏡と取り去った。

 

 

 

「恵美ちゃんの従兄の高町恭也とは仮初の姿……! かくしてその正体は! 123プロダクション所属! 周藤りょ――!」

 

「わーい! りょーたろーさんなのー!」

 

「りょーにぃ、何時来たのー!?」

 

 

 

「……うん、着いたのは今さっきだよ」

 

 諦めた! 高らかに名乗ろうとしたところを美希と真美に遮られたから諦めた! 無邪気って怖い!

 

 流石にこれは可哀想だったので、私からフォローしてあげることにする。

 

「えっと、気付いている子もいると思うけど、この人は123プロダクションの周藤良太郎さん。恵美ちゃんとまゆちゃんがこっちに来てること以外でも、前から私たちの事務所とは仲良くしてくださってるから、度々顔を合わせる機会があるかと――」

 

 

 

『えええええええええええええ!!!??』

 

 

 

 静かな山に囲まれた民宿に、総勢七人のアイドル候補生の驚愕の叫び声が響き渡るのだった……。

 

 

 

 

 

 

「……あれ? あまとう、そんな隅っこでどうしたのー?」

 

「……別に、俺の時と反応が違いすぎるとか思ってねーし。知名度で良太郎に勝てるとは最初から思ってねーし」

 

 

 




・「おお とうま! バレてしまうとは なにごとだ!」
しかも (苦労人不憫枠という呪いに)のろわれているではないか のろわれしものよ でてゆけっ!

・頭痛が痛い
所謂『重語』と言われるもの。
「違和感を感じる」や「後遺症が残る」も同じだから物書きさんは気を付けよう(戒め)

・「コーラを飲んだらゲップが出るっていうぐらい確実!」
ジョジョ語録の使いやすさ()

・「私、東京に戻ったらアイドルとして再デビューするんだ……」
(別にりっちゃん再デビューフラグでは)ないです。

・ヤッテヤルデス
けいおんのアニメも既に五年以上前なのか……(遠い目)

・「想像力が足りないよ」
親の顔より見たヒガナのカバディ。
なお作者は二回目でACS無邪気レックウザを自模った模様。(H? 知らんな)

・メガシンカ
フライゴンさん、メガシンカして虫ドラゴンにならないかなってそれ一番言われてるから。



 あまとう(不憫)

 感想でバックダンサー組との絡みを期待されてたけど、次回に続くんです申し訳ないです。もうちょっと待ってね(テヘペロ)



『デレマス二十四話を視聴して思った三つのこと』
※作者はアニメをニコニコ動画で視聴しているので、特別編だった今回はお休みです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。