アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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いつもより長めなのはスマホでポチポチ書いていて文字数を全く見ていなかったから。

別に今後文量が増えるということではないです。


Lesson132 New generation girls 3

 

 

 

「ねーねーみんな! 明日はちょっとこの未央ちゃんに付き合ってもらうよ!」

 

「え?」

 

 私たちニュージェネレーションズのデビューが間近に迫ったとある日のこと、レッスン終わりで一緒になったラブライカの二人と共に着替えをしていると未央が突然そんなことを言い出した。

 

「……いきなりどうしたのさ」

 

「えっと、明日もレッスンでしたよね?」

 

「私たちもその予定なんだけど……」

 

「ダー」

 

 しかし当然の如く明日は私たちニュージェネレーションズもラブライカの二人もレッスンがあった。未央の個人的な用事であれば、優先するべきなのは当然レッスンである。

 

 だが未央はフッフッフッと不敵に笑った。

 

「プロデューサーの許可は既に下りているのだー! 明日のレッスンは中断して新人アイドルのデビューイベントに行くよ!」

 

「「「新人アイドルのデビューイベント……?」」」

 

「……ですか?」

 

「そう! これを見よー!」

 

 そう言いながら未央が取り出したのは一枚のチラシだった。

 

 そこに描かれていたのは赤と黒のドレスのような衣装に身を包んだ黒髪の少女の姿と『北沢志保デビューイベント』の文字。そして、チラシの片隅には見覚えのあるプロダクションの名前があった。

 

「……って、123プロじゃないですか!?」

 

「お! しまむー気付いた? 良太郎さんの123プロの新人なんだけど、実は私の友達なんだ!」

 

 驚くことに未央はこの子の他123プロに所属するピーチフィズの二人とも仲が良いらしいのだ。

 

 一体いつの間に仲良くなったのだろうと思ったら、なんと未央が346の扉を叩く前からの知り合いとのこと。なるほど、以前の「しぶりん()()アイドルの知り合いいるの!?」という未央の台詞はこのことを言っていたのか。

 

 話を戻そう。

 

 未央がピーチフィズの所恵美さんに今度デビューすることを伝えたら、偶然この北沢志保さんも同時期にデビューすることを聞いたらしい。

 

 「友達のデビューイベントだから絶対に行きたい!」と考えた未央は『同じ新人アイドルのデビューイベントがどのようなものなのか見学したい』という名目でプロデューサーに打診してみたところ、オッケーが出たらしい。

 

「とゆーわけ! どうどう!? 我ながら名案だと思うんだけど!?」

 

「……まぁ、確かに」

 

 未央の言う通り、私はアイドルのデビューイベントというものを見たことがなし、どういうものなのか聞いたこともない。付き合いの長い良太郎さんならばとも思うかもしれないが、あの人の場合はデビューイベントよりもその後の『伝説の夜』のインパクトが強すぎるのだ。

 

 会場の雰囲気など通常のライブ以上に予想しづらいものなので、見に行ってそのイメージの参考にするのもいいかもしれない。

 

「凄い良い考えですよ、未央ちゃん!」

 

「予習は大事だものね」

 

「ダー。楽しみです」

 

 卯月と美波とアーニャも私と同じ様に賛成のようだった。

 

「よーし決まりだね! 明日はみんなでしほりんこと北沢志保のデビューイベントに――!」

 

 

 

「話は聞かせてもらったにゃあ!」

 

 

 

「うわっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

 突然扉が開いたかと思うと、ロッカールームにみくが勢いよく飛び込んできた。

 

「私もデビューイベント行きたーい!」

 

「みりあも行くー!」

 

 さらにその後ろからゾロゾロと他のプロジェクトメンバーの姿も。……何となくそんな気はしていたというか、予定調和染みた展開というか……。

 

「お、何々? みくにゃんたちも一緒に来ちゃう感じ?」

 

 未央がそう尋ねると、みくは「当然にゃ!」と頷いた。

 

「要するにその北沢志保ちゃんはみくたちの同期のライバル! 敵情視察は戦略の基本なのにゃ!」

 

「ミリタリーの話でありますか!?」

 

「違うにゃ!」

 

「そうでありますか……」

 

「というわけで、みくたちも一緒に行ってライバルの実力を見届けてやるにゃ!」

 

「待って、今の誰」

 

 ともあれ、どうやら今回はプロジェクトメンバー全員で参加することになりそうだ。

 

「んっふっふ~! みくにゃんは本当にそれだけなのかな~?」

 

「な、なんにゃ未央ちゃん、急に変な笑い方して……?」

 

 戸惑うみくに、ニヤニヤとした笑みを浮かべる未央が肩に腕を回す。

 

 

 

「ホ・ン・ト・ウ、は! 良太郎さんが事務所の新人の様子を見に来ることを期待してるんじゃないかな~?」

 

「……にゃっあ!?」

 

 

 

「みく、顔がクラースヌィ……赤い、です」

 

 一瞬未央の言葉の意味を飲み込めていなかったが、次の瞬間漫画のように一瞬でみくの顔が赤く染まった。

 

「みみみ未央ちゃんはいいい一体何を言ってるにゃ!?」

 

「未央ちゃんはちゃーんと見てたよー? この間のストライキの時、眼鏡をかけた良太郎さんの顔を見るなり真っ赤になって逃げ出したみくにゃんの姿を!」

 

 そーいえばそんなこともあったなぁ。

 

 話している内容は聞こえなかったが、確かに顔を赤くして走り去るみくの姿はプロジェクトメンバー全員が目撃している。

 

「惚れちゃったんじゃないの~? 相談に乗ってくれた先輩の眼鏡姿にキュンと来ちゃったんじゃないの~?」

 

「なにゆーてんの未央ちゃん!? そ、そんなわけあらへんて! 適当なこと言わんといてくれへんかな!?」

 

「ケットシーの眷属たる少女よ、言の葉を司りし精霊が乱れているぞ」

 

「猫言葉から標準語をすっ飛ばして関西弁って凄いシフトの仕方だよね」

 

 というかみく、関西圏の出身だったんだ。

 

「………………」

 

「ミナミ、どうかしましたか?」

 

「あっ、えっと、何でもないよ、アーニャちゃん」

 

 良太郎さんの話題になってから何やら美波さんが落ち着かない様子で、心配そうに声をかけたアーニャに何でもないと言いつつ何でもなさそうには見えなかった。

 

「? ……!」

 

 そんな美波に首を傾げるアーニャだったが、何かを思い付いたようにポンと手を叩いた。

 

 

 

「ミナミもリョータローと会えるの、楽しみなんですね?」

 

「どうしてそんな解釈になっちゃうのかなっ!?」

 

 

 

(……どーして美波さんはこんなツンデレキャラみたいになっちゃったんだろうか)

 

 「私は別に周藤さんのこと何とも思ってないんだからねっ!?」「私はリョータローと会えるの、楽しみですよ?」という何処かズレた美波さんとアーニャの会話を聞きつつ、美波さんも良太郎さんにキャラを壊された被害者だよなぁと失礼ながら憐れんでしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、いい天気だ。絶好のデビュー日和だね」

 

「確かに天気はいいですが、屋内なんですがそれは」

 

 ついに我らが123プロの三人目の新人である志保ちゃんのデビュー日を迎えた。

 

 今回は某ショッピングモールの吹き抜けエリアのど真ん中に特設ステージを建てさせてもらった。人通りの多い上に上からもステージを覗けるので注目は受けやすい。

 

 そこからどれだけの買い物客の足を止めることが出来るかどうかは、志保ちゃん次第だ。

 

「調子はどう? 緊張してない? ポンポン痛くない?」

 

「心配していただけるのはありがたいですが、もう少し言葉のチョイスを何とかしてください」

 

 従業員以外立ち入り禁止のエリアに設けられた楽屋へ特別に入れてもらって本番直前の志保ちゃんの様子を見に来たのだが、志保ちゃんはステージ衣装への着替えを終えてお茶を飲んでゆっくりしていた。どうやら大丈夫そうである。

 

「そういえば良太郎さん、こういうステージの前の楽屋には顔を出さないみたいなこと言ってませんでしたっけ?」

 

「それはあくまでも『ファンとして参加するから楽屋には行かない』っていうだけだよ。生憎、俺はまだ君のファンじゃない」

 

「……言ってくれますね」

 

「是非ともこの周藤良太郎を魅了してみせてくれよ?」

 

「望むところです」

 

 俺の挑発的な言葉に対して臆することなく笑う志保ちゃん。今回のデビューイベントはあえて以前()()()()()()()()()()()()()()()()()と似通った場所を選んだのだが、どうやら既に吹っ切れているようでメンタル的には問題無さそうだ。

 

「それじゃあ、ステージの方で待ってるよ」

 

「はい、待っていてください」

 

 そう言って志保ちゃんの楽屋を後にする。あとは観客として彼女のデビューを見守ろう。

 

 ……と言っても、ぶっちゃけ心配はしていない。年末のアリーナライブの時点で基礎は既に出来上がっており、ステージの上に立つ覚悟も出来ている。そして何より彼女は既に『アイドルの現実』を知っているので新人アイドルに有りがちなショックも無いだろう。

 

 だから俺はステージの上で華々しくデビューを飾る彼女のファンになるのを心待ちにしていればいい。

 

(……そーいえば、ピーチフィズの二人は撮影で来れないらしいけど、ジュピターの三人は様子を見に来るって言ってたっけ)

 

 何が始まるのだろうかという興味から人が集まり始めているステージ付近で、まだ来ていないのかと三人の姿をキョロキョロと探す。

 

「っと、お?」

 

 三人の姿は見当たらなかったが、その代わりに見覚えのある少女たちの姿を発見した。というか凛ちゃんたちシンデレラプロジェクトのメンバーだった。一目で分からなかったのは、目立つ筆頭のきらりちゃんがいなかったからだ。

 

「ひーふーみー……十二人か」

 

 どうやらきらりちゃんと杏ちゃんがいないようだ。

 

 しかし彼女たちが何故ここに? みんなで買い物に来てたまたま目に入ったから見に来たのかな?

 

(それはそうと、目立ってるなぁ)

 

 きらりちゃんがいないとはいえ、見た目麗しい美少女があれだけ揃っていればそれなりに注目を浴びて当然だった。

 

 俺も目立つのは出来るだけ避けたいが、知り合いがあれだけいて声をかけないのもアレだし、ちょっと行ってくるとしよう。

 

 

 

 

 

 

「……ここが、新人アイドルのデビューイベントの会場……?」

 

 きらりちゃんと杏ちゃんを除いたプロジェクトメンバーは、ショッピングモールに設けられた特設会場にやってきました。ちなみにきらりちゃんは杏ちゃんが捕まらなかったため「杏ちゃんを探すにぃ!」と言って来ませんでした。

 

 そんな会場を見渡しながら、未央ちゃんはやや困惑した様子の声を出します。

 

「? 未央ちゃん、どうかしましたか?」

 

「あ、いや、その……思ってたよりも、その……小さいというか、人が少ないというか……」

 

「そうですか?」

 

 休日のショッピングモールだから、それなりに人で賑わってると思いますけど。

 

「そーいうことじゃなくて……なんというか……」

 

「……バックダンサーの経験があっても、まだまだアイドルとしては無名です。ファンがいなければ、コアなアイドルマニアの方でもない限りわざわざ足を運びません。……身内以外は」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 考えてみれば、確かにプロデューサーの言う通りです。美嘉さんのステージや他の先輩方のステージに集まった観客の多くは『彼女たちのファン』ですから、まだファンがいない新人アイドルのステージに同じレベルで観客が集まるはずがないですよね。

 

「……ね、ねぇプロデューサー……って、え? プロデューサー?」

 

 そう説明をしてくれたプロデューサーに声をかけようとして、はてと未央ちゃんは首を傾げます。というか、その場にいたプロジェクトメンバー全員が首を傾げました。

 

 確かにここに来るためにプロデューサーさんの許可は得ましたが、仕事があるからと言ってプロデューサーさんは一緒に来なかったはず……?

 

「うきゃ? どーしたにぃ?」

 

「え、きらりちゃん?」

 

 あれ? きらりちゃんも来なかったはずですよ?

 

「印税なんていらない。ファンの人の笑顔さえあれば、杏はこれからも頑張れるよ」

 

「杏ちゃん!?」

 

 杏ちゃんにどんな心変わりが!?

 

 一体これはどういうことなのかと振り返ると、そこには帽子を被り眼鏡をかけた男の人の姿が。

 

「やっぱりいた……」

 

「やっぱりって言い方に若干棘を感じるなぁ」

 

「って、良太郎さん!?」

 

 そう言いながら眼鏡をずり下げる男の人は、なんと周藤良太郎さんでした。

 

 どうやら凛ちゃんは真っ先に気付いたらしく、やや呆れたような表情をしています。他のみんなは基本的に私と同じ様に驚いており、例外として美波さんは眉間に皺を寄せていて、みくちゃんは顔を赤くしながら李衣菜ちゃんの影に隠れていました。

 

 それにしても、今のプロデューサーさんたちの声は……?

 

「良太郎さん、また声真似のクオリティー上がってない?」

 

「あの三人は特徴的だから真似やすかっただけだよ」

 

「今の声、良太郎さんだったんですか!?」

 

 なんかもう驚くポイントが多すぎます!

 

 

 

「それで、どーしてみんなはここに?」

 

 落ち着いてから、改めて良太郎さんとお話しすることに。

 

「私たちの同期になるアイドルのデビューを参考にしようって話になって」

 

「あぁ、そーいうことね」

 

 相変わらず良太郎さん相手に物怖じしない凛ちゃん。昔からの知り合いとはいえ、やっぱり凄いと思ってしまいます。

 

「そういう良太郎さんは?」

 

「俺は勿論、事務所の新人の様子を見に来たんだよ」

 

 ……もしかしたら同じ様に天ヶ瀬さんもいるのではないかと周りを見渡してみますが、それらしき人は見つかりませんでした。CDデビューすることになったと伝えたかったんですが……。

 

「え、えっと良太郎さん、さっきの話なんですけど。新人のデビューイベントってこれぐらいの規模が普通なんですか……?」

 

「んー、事務所の規模や力の入れ具合によってはマスコミを呼んで大々的にデビューすることもあるけど、まぁこれぐらいが妥当かな」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 何故か未央ちゃんの表情が暗くなりました。一体何が……?

 

「っと、そろそろ始まるかな」

 

 良太郎さんの言葉にステージを見ると、事務服のお姉さんがマイクを手に司会を進めていました。

 

『それでは、どうぞ……』

 

 そう促され、ステージの上に登ってきた一人の女の子。

 

 ポスターに載っていた時と同じ衣装に身を包んだその女の子は――。

 

 

 

『………………』

 

 

 

「……っ」

 

 ――年下とは思えないぐらい、物怖じする様子は一切無く堂々とステージの上に立っていました。

 

『……初めまして、北沢志保です。早速ではありますが、私のデビュー曲を……どうぞ、ご堪能下さい』

 

 

 

 ――『ライアー・ルージュ』

 

 

 




・「ミリタリーの話でありますか!?」
熊ジェット流にゅっ式割り込み術。
割り込んできたのは一体何処のミリタリーアイドルなんだ……?

・しかし彼女たちが何故ここに?
現在進行形で「良太郎」「三人娘」「冬馬」はそれぞれがCPのメンバーと面識があることを知りません。さてどこまで引っ張れるか……。

・久しぶりの声帯模写
折角の設定なのに使いどころが少なすぎるンゴ。当初予定していたディアリ―スターズ編だと大いに使うはずだったのに……。

・『ライアー・ルージュ』
LTP04に収録されている志保の持ち歌。
同CDにはころめぐの『アフタースクールパーリータイム』も収録されております。
ある意味この小説での元ネタになった泣き虫ころめぐにも出会いますよ!(ステマ)



 ついに志保ちゃんデビューです。このデビューイベントがちゃんみおに果たしてどのような影響を与えるのか……?

 次回ニュージェネデビュー編終了予定です(ニュージェネの出番が少ないのは仕様)



『サンシャイン第十話を視聴して思った三つのこと』
・お姉ちゃんとマリのポンコツ化が止まらない……!

・ミューズもやったトレーニング(やってない)

・ナイスバディで釣るっていっても女性客しか……あっ(察し)

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