アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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正直熊本弁よりもロシア語の方が苦戦した二話目です。


Lesson135 Fallen Angel's awaking 2

 

 

 

 春の暖かさが夏の暑さに変わり始め、春物の服が夏物の服に変わり始めるそんな季節。

 

『CDデビュー第二弾!?』

 

 それは前回と同じように、いつものミーティングルームに集められた私たちにプロデューサーの口から告げられた。

 

「こ、今度は誰と誰がデビューするにゃ!?」

 

「ハイハーイ! アタシアタシー!」

 

「私もー!」

 

「きらりもやりたいでっす!」

 

 真っ先に反応したのは、やっぱりみくだった。さらに莉嘉とみりあが元気よく手を挙げ、こういう場面では珍しくきらりも杏を抱えたまま自己主張をする。

 

「あ~……みんながやりたそうだし、今回杏は譲るよ……」

 

 その抱えられた杏は相変わらずとして。

 

 いよいよ来ちゃうかぁ……と呟く李衣菜を他所に、プロデューサーは今回デビューすることになるメンバーの名前を告げた。

 

「今回は……神崎蘭子さん。貴女のソロCDデビューになります」

 

 一瞬ミーティングルームがシンとなり、全員の視線が蘭子に向いた。

 

「やったねランラン!」

 

「………………」

 

 未央が祝福の言葉をかけるが、当の本人はまだ状況が飲み込めていない様子だった。

 

「それでは……」

 

(ピー)ちゃん!」

 

 そのまま話を続けようとするプロデューサーを、みくが遮る。

 

「今回、他には?」

 

「前みたいに、同時二組デビューとか!?」

 

 期待を込めた目でプロデューサーの言葉を待つみくと莉嘉。それ以外のみんなも、少なからず自分たちもデビュー出来ることを期待していた。……杏を除いて。

 

「次回はその方向で考えていますが、今回は……待っていてください」

 

 しかしプロデューサーからの返答は芳しくないものだった。

 

 けれど、プロデューサーはちゃんとと『待っていてください』と口にした。前回、言葉足らずでみくたちに誤解をさせてしまったことを反省したということだろうか。

 

 しっかりと、プロデューサーは『絶対にデビューさせます』と言ってくれた。

 

「……分かったにゃ! みくたち、待つにゃ」

 

 みくもそれをしっかりと理解しているからこそ、今回は前回のようにゴネたりしなかった。以前のストライキの時に良太郎さんに説得されたことも影響しているのだろう。

 

「だから蘭子ちゃん、ファイトにゃ!」

 

 だからみくは素直に蘭子を応援した。

 

 自然と拍手が起こり、そうしたところでようやく蘭子は状況を飲み込めたようだ。

 

「……ふ、ふふふ……!」

 

 惚けていた表情が徐々に笑みに変わり、バッと腕をクロスさせたポーズを取る。

 

「我が闇の力、今こそ解放せん!」

 

 

 

 というワケで、今回のCDデビューは蘭子の番になったわけなのだが……やはりというか何というか、問題が発生してしまったようである。

 

 

 

 

 

 

「今日も生き延びることが出来た……」

 

 あの後。美奈子ちゃんに連れられてついにやって来てしまった佐竹飯店。予想通りに予想以上の大盛具合に少し心が折れそうだったが、美奈子ちゃんの期待に満ちた目と奈緒ちゃんとこのみさんの助けを求める目に応えてなんとか完食した。

 

 美奈子ちゃんは「沢山食べてくれる人は大好きだよ!(はぁと)」と随分好感度が上がったみたいだが、これは回収してはいけないフラグな気がする。これを回収した先に美奈子ちゃんが待っていてくれるかもしれないが、そこに辿り着く過程で俺は俺で無くなっているだろう。とんだ闇堕ちルートである。

 

 奈緒ちゃんとこのみさんも「良太郎さんがいてくれてホンマ良かったですわぁ!」「流石男の子ね!」とこちらも好感度が上がったみたいだが、なんというか『これは人柱として使えるな』みたいな副音声が聞こえてきたような気がしてならなった。

 

 「女の子に喜んでもらえるなら本望だよ(自棄)」と最後に出てきた山盛りのゴマ団子を口に詰め込んだところまでが今回のハイライトである。

 

「今日は予定を変えて久し振りに高町ブートキャンプにでも参加するかな……」

 

 普段の運動量や仕事量から考えればそこまで深刻に考えるようなことではないとは思うし、生まれてこの方大きく体型や体重が変わったことも無いが、少しでも過剰摂取したカロリーを消費しておいた方がいいだろう。

 

 『アイドルとしての才能』がアイドルとして適正な体型を保とうとしている可能性があるが、それはそれでイギリスの舞台劇『吸血姫』の中に出てくる吸血鬼染みていて嫌だ。

 

「……ん?」

 

 一時間前と比べて確実に体重というか質量が変わった気がする体を引き摺りながら歩いていると、目の前を歩く二人の銀髪少女の姿に気が付いた。

 

 銀髪と言って真っ先に思い浮かぶのはやはり765の貴音ちゃんだが、割と背の高い貴音ちゃんと比べて小柄なその二人はどちらにも当てはまらない。

 

 というか、二人とも見覚えのある背中であり、さらに言えばシンデレラプロジェクトの蘭子ちゃんとアーニャちゃんだった。

 

 

 

「ランコ、私に何か力になれること、ありますか?」

 

「……優しき同胞よ、感謝する。だが心配無用! 私はいかなる困難も超えてみせる!」

 

 

 

 髪の毛の色を除けば若干言語的な意味で意思疏通が難しいこと以外に共通点が無さそうな二人だが、聞こえてくる会話の内容的に割と仲が良さそうだった。

 

 さて、このまま歩を進めれば多分歩行速度的にすぐ彼女たちに追い付くだろう。

 

 これで何事もなくただ追い越してしまうのも失礼というか味気ないだろうから、普通に声をかけることにしよう。

 

 

 

「再び合間見えたな《ブリュンヒルデ》! そして遥か北の地より舞い降りた雪の妖精よ!」

 

 

 

 思わず釣られた。普通とは何だったのか。

 

「っ!? りょ、良太郎さ――覇王よ! やはり我らは輪廻の因果に囚われぬ者!」

 

「ドーブリィ ヴェーチェル、リョータロー」

 

 突然のことに一瞬素が出かけた蘭子ちゃんだったが、何とかキャラというか言葉遣いを保つことが出来たらしい。右手で顔を押さえてその隙間から目を覗かせめる所謂『中二ポーズ』だが、赤い瞳故に様になっている辺り天性の中二キャラなんだろうなぁと思ってしまった。

 

 逆にアーニャちゃんからは俺のこの言動に対する反応が一切無かった。蘭子ちゃんで慣れているからというだけであって、既に彼女の中で蘭子ちゃんの言葉が標準的な日本語の一種なのだという認識になっているわけではないことを切に願いたい。

 

「今から帰り? なんというか、個人的には意外な組み合わせだけど」

 

「我らは共に魔王の城に座す同胞なり」

 

「ダー、私とランコ、同じ寮で暮らしています」

 

 なるほど、二人は寮生活なのか。

 

「確かアーニャちゃんは北海道だって言ってたよね。蘭子ちゃんは……えっと、ブリュンヒルデ、汝がこの下界に堕天せし地は何処(いずこ)か?」

 

「我は火の国に降り立った!」

 

「へぇ、熊本か」

 

 なるほど、つまり今の蘭子ちゃんの言葉こそが現代のエクストリーム熊本弁ということか……熊本始まってるなぁ。

 

「……ハラショー!」

 

「え?」

 

 俺と蘭子ちゃんのやり取りを聞いていたアーニャちゃんが何故か目を輝かせていた。

 

「リョータローは、ランコの言葉、分かるのですね!?」

 

「……あー、うん、まぁ、そこそこ」

 

 正直ノリと勢いだけで独自解釈しているから完璧に理解しているわけではないが、まぁニュアンスは伝わっているから問題はないだろう。

 

 いやぁ、以前はやてちゃんの『夜天の書』を読ませてもらった経験がアニメの主演だけじゃなくてこんなところにまで生きてくるなんて思わなかった。

 

「……それじゃあリョータロー、ランコの話、聞いてあげてくれませんか?」

 

 するとアーニャちゃんは突然そんなことを頼んできた。

 

「ど、同胞よ!? い、一体何を……!?」

 

「ランコ、元気無いみたいです。でもランコの言葉ムズかしくて、私じゃ話を聞いてあげること出来ません」

 

「……そうなの?」

 

「……う、うむ……」

 

 俺が尋ねると、蘭子ちゃんはやや間を置いてから小さく頷いた。

 

 まぁこーいう言葉は額面通りに受け取ろうとすると全く理解出来ないから、ある程度こちらのノリが分かる人じゃなきゃ無理だよなぁ。

 

「一応こんなのでもアイドルとしては先輩だし、何か困ってることがあるなら話を聞くよ? ……汝の心を蝕む淀んだ魔力、言の葉に乗せて解き放て」

 

「……それもまた一興やもしれん」

 

 そう言って蘭子ちゃんはコクリと小さく頷いた。

 

 どうやら話してみてくれる気になったらしい。

 

「それじゃあこんな道の真ん中で話すのもあれだから、場所を移そうか」

 

 割と先ほどから大手を振って熊本弁(仮)で話していたせいで、先ほどから微妙にチラチラと通行人から見られていた。

 

「蘭子ちゃん、アーニャちゃん、何処か希望はある? 入ってみたい店とか、食べたい物とか。しばしの間、その翼を休める地を己の意志で定めるがよい」

 

「……で、では――」

 

 

 

「メンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシ!!」

 

 

 

「「「………………」」」

 

 ……えっと。

 

「お腹空いたの?」

 

「っ!?」

 

 ブンブンと勢いよく首を横に振る蘭子ちゃん。いやまぁ、そんな筈はないと思ったけど余りにもタイミングが良すぎたもんだから……。

 

 じゃあ今の聞いただけで胃が重くなりそうな呪文は一体誰が……というか、またしても聞き覚えのある声だった。

 

 相変わらずアイドルとのエンカウント率高過ぎぃ! と思いながら振り返ると、そこには先程名前が上がった765プロの銀髪お姫様が今まさにラーメン屋の暖簾を潜ろうとしていた。

 

「貴音ちゃん、響ちゃん」

 

「おや、良太郎殿」

 

「え、良太郎さん?」

 

 その後ろには黒髪ポニーテール沖縄っ子の姿もあった。

 

「な、765プロの四条貴音さんと我那覇響さん!?」

 

「クラサーヴィッツァ……綺麗な人」

 

 既に中堅を超えてトップアイドルの域に達している765プロのアイドルとの邂逅に、流石に蘭子ちゃんも素で驚いており、アーニャちゃんも素直な感想が口から出ていた。

 

「どうしたのですか良太郎殿、こんなところで」

 

「一応ただの通りすがりだけど……二人は今から晩御飯?」

 

「いえ、らーめんを食しに来ました」

 

「? だから晩御飯だよね?」

 

「いえ、らーめんです」

 

 ヤバイ、蘭子ちゃんとは意思疎通出来たのに何故か貴音ちゃんとそれが出来ない。

 

「らーめんとは、ただの食事として括られるものではありません。心のままに食し、魂を満たすのがらーめんなのです」

 

「お、おう」

 

 キラキラと目を輝かせた貴音ちゃんは何故か若干熊本弁(仮)が入っていた。

 

 おかしい。確かに貴音ちゃんは元々ミステリアスな雰囲気ではあったが、ここまで異次元ではなかったと思うのだが……。

 

「どうやら良太郎殿にも分かっていただく必要があるようですね……では参りましょうか」

 

「えっ」

 

 ススッと近づいてきたかと思うと極々自然な動きで俺の腕をガッチリとホールドする貴音ちゃん。765プロで二番目の大乳がむにっと肘に当たる感触に気を取られている内にズルズルとラーメン屋の中に引きずり込まれてしまった。

 

 というか『良太郎殿()()』ってことは……。

 

 チラリと視線を響ちゃんに向けると、彼女は先ほどの奈緒ちゃんやこのみさんと同じ目をしていた。具体的に言えばハイライトが全く仕事をしていない。いやぁ響ちゃんもそんな表情できるなるなんて演技の幅が広いなぁなどと言っている場合ではない。

 

 これアカンやつだ。

 

「りょ、良太郎さん!?」

 

「そこの貴方たちも共に来るのです。らーめんの神髄……とくとご覧に入れましょう」

 

「え……!?」

 

「シトー……?」

 

 あれよあれよと店内に連れ込まれる哀れな俺たちの明日はどっちだ……!?

 

 

 




・「今日も生き延びることが出来た……」
FE新作まだかなー。

・とんだ闇堕ちルートである。
彼女の場合純粋に『自分の作ったものを沢山食べて欲しい』という想いはあるものの、その実『体形が太目の人が好き』とガチで太らせに来ているので油断してはいけない。

・イギリスの舞台劇『吸血姫』
『うつくし姫』『アセロラ姫』の二部作。初代主演をイギリスが誇る名女優アタナシア・マクダウェルが務め、その娘のキティ・マクダウェルも主演を務めた。
……という作者の設定。詳しくは業物語にて。

・熊本弁
初めはあくまでも非公式だったものの、次回予告にて小梅が発言したことにより公式ネタになってしまった。

・「メンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシ!!」
※胃の弱い奴は死ぬ。



 気が付けば良太郎が熊本弁とのバイリンガルのようになっていた。

 割と書いていて楽しい熊本弁ですが、やはり時間がかかる……。

 ようやく前回の冒頭に繋がったところで次回です。



『サンシャイン第十三話を視聴して思った三つのこと』
・そんなこと……あるけど(謙遜)

・ダイヤさんそのポーズなんすか(マジレス)

・で? 二期は?
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