アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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POISON!

※一部修正しました。


Lesson173 The world which can't say to want

 

 

 

「……『シンデレラの舞踏会(仮)』……?」

 

「はい。アイドルたちの個性を活かした、複合イベント企画です」

 

「……個性か。私の提示する方向性とは真逆だな。……『Power of Smile』?」

 

「コンセプトは『笑顔』です。アイドルたちが、自分自身の力で笑顔を引き出す。それが力になる。そうでなければ、ファンの心は掴めません」

 

「……笑顔、か」

 

「アイドルの笑顔、それを支える沢山の笑顔。作られた笑顔ではない本物の笑顔が魅力なのだと、考えます」

 

 

 

「……()()()()()()()()()()()()、君は分かっているのだろうな?」

 

 

 

「……はい」

 

「……ならばいい。……まるでおとぎ話だが、いいだろう。そこまで言うのならばやってみなさい」

 

「っ……!」

 

「だがやる以上は成果をあげてもらう。期限は今期末、それまでに結果を出すように。支援はしないが口出しもしない。結果によってはプロジェクト存続も認めよう。それが()()だからな。……勿論――」

 

 

 

 ――私は私のやり方で進めさせてもらう。

 

 

 

 

 

 

「ふむ、雪歩ちゃんが結婚か……」

 

 あからさまに語弊がある言い方をしたが、正しくは『雪歩ちゃんが演じる浅倉杏美という女性がドラマ内で結婚』である。その撮影の際に雪歩ちゃんがウエディングドレスを着たらしく、その姿が新聞の芸能面に載っていたのだ。

 

「『記者から自身の恋愛事情についての質問を受けて真っ赤になった萩原さんは、スコップを取り出し「穴を掘って埋まってます~!」と恒例のネタを披露した』……と」

 

 雪歩ちゃんのアレが世間的には恒例のネタ扱いされているのが、笑うところか憐れむところか若干判断に難しいところである。

 

 しかしいつものことながら、あのスコップは何処から? 恭也も何処からともなく小太刀を抜くことがあるし、謎だなぁ。

 

「ところで、お二人にウエディングドレスを着るご予定は?」

 

「んー、近い将来に結婚式をモチーフにしたイベントがあってそこで私を含めて五人ぐらいでウエディングドレスを着るような気がするんだけど、今のところ予定としては入ってないかなー」

 

「私はどちらかというと白無垢の方がいいので、ドレスを着るとしたらお色直しのときぐらいですかねぇ」

 

 恋愛事情的なことを変化球で聞いたつもりだったが、友紀と茄子は見送ったためボールとなってしまった。二人とも微妙にストライクゾーン狭いもんなぁ……色々な意味で。

 

 あと友紀もいい感じに電波を受信できるようになってきたらしい。いい傾向だ。

 

「というか、良太郎こんなところで何してるのさ」

 

「さっき『お、良太郎じゃんヤッホー! 飲み物ぐらい奢ってよ(アイドルの)センパーイ!』って言いながらしれっと同じテーブルに着いた奴のセリフとは思えない」

 

「いや、確かに『良太郎君ならいてもおかしくないなー』とは思いましたけど、よくよく考えたら『他事務所のアイドルが自分の事務所のカフェテラスで優雅にアイスコーヒーを飲みながら新聞を読んでる状況』は疑問を抱かざるを得ないかと……」

 

「だってここの常務に『いつでも来てくれたまえ』って言われてるし。ほら、許可証」

 

「……見たこと無い形式の許可証ですけど、確かにウチの常務の署名入りの本物みたいですね……」

 

「うわっ、ウチの常務、周藤良太郎の大ファンすぎ……!?」

 

 つい先日受け取った『周藤良太郎専用関係者立ち入り許可証』なるものを見せると、二人とも程度の差はあれど引いていた。

 

 確かに許可証を貰えるという話は聞いていたが、それがまさか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とは誰が想像できようか。これさえあれば事務所敷地内はおろか、346プロ主催のイベント会場のバックステージにも入ることが出来るというまさに免罪符(チート)と呼んで差支えの無い代物。

 

 ……いや、普通にやりすぎで俺も引いたけど。

 

「まぁ、良太郎君だったら悪用することはないと思って渡したんでしょうけど……」

 

「良太郎、それ使って変なことしないでよ? アイドルの楽屋に無理矢理入るとか」

 

「失敬な。いくら俺だって着替え中の楽屋に入っていくなんてことするはずないだろ」

 

「本当に不安になるので言葉の端々に不穏な発言を混ぜるの止めてくれませんか?」

 

 自分からちゃんと念押しをしたのに、何故逆に不安がられるのだろうか。

 

「ただまぁ、おかげでこうして二人の近況を聞きに来ることが出来たし、シンデレラプロジェクトのみんなの様子も、今後こっちでお世話になる志希の様子を見に来ることも出来る」

 

 バックステージに入れるのはついでとはいえ、それでもイチイチ許可を貰いに行かなくて済むようになったのはありがたい。

 

「……え、二人のって……」

 

「もしかして……私たち、ですか?」

 

 何故か二人とも驚いた様子で目をパチクリさせていた。

 

「そりゃあ同級生だし、気にするだろ。特に友紀の場合、KBYD(バラエティー寄り)の仕事が多いみたいだから今回の改変のあおりを受けただろうし」

 

「あ、うん……マッスルキャッスルのレギュラーから降ろされることになっちゃって……紗枝ちゃんが落ち込んでた」

 

「私の方はそれほど影響は受けてないですけど……今後どうなるか分からないとは、プロデューサーさんから言われました」

 

「そっかー……」

 

 シンデレラプロジェクトの方に口出ししちゃったから、これ以上美城さんにお願いっていうのもしづらいしなぁ……俺の方から彼女たちを指名して仕事を、っていうのは『仕事に関して贔屓しない』っていう俺の主義に反するしなぁ……。

 

「……友紀ちゃん、今ちょっとドキッとしたんじゃないですか?」

 

「……そういう茄子こそ、ちょっとキュンとしたんじゃないの?」

 

 何やら二人がコソコソと話していたが、まぁ気にしないことにする。女の子トークに男が割り込むのは無粋だし。

 

「……ん? ちょっと待って、それじゃあもしかして……ここでコーヒーを飲んでたのも……も、もしかして、私たちを待って、とか、だったり……?」

 

「あ、それは本当に偶然。たまたま時間が少しだけ空いてたから、ここで時間潰ししてただけ。ほら、ここなら雫ちゃんとか拓海ちゃんとかに会えるかもしれないし」

 

「知ってたよこのスットコドッコォォォイ!」

 

「少しでも淡い想いを抱いてしまった自分に腹が立ちます……!」

 

「?」

 

 個人的には平常運転だったと思うのだが、何故か怒られた。やっぱり事務所に流れる不穏な空気に二人とも不安定になってるんだろうな……可哀想に。

 

「お待たせしましたー! って、あ、あれ? 何やら険悪な雰囲気……?」

 

 そんな中、今日もカフェテリアのウェイトレスとしてのアルバイトに勤しむ菜々ちゃんが友紀と茄子の注文した飲み物をトレイに乗せてやってきた。俺が追加で注文したアイスコーヒーのおかわりも一緒である。

 

「菜々ちゃん! ここのケーキ全部一個ずつ!」

 

「全部良太郎君の伝票に付けてください!」

 

「え、えぇ!? ……りょ、良太郎さん……!?」

 

「あー、いいよ、俺の伝票に付けといて」

 

 きっと女子特有の甘いものを食べてストレスを発散したい衝動に駆られているのだろう。困惑した様子でこちらを見てくる菜々ちゃんに、右手をヒラヒラと振って了承する。

 

「ついでに菜々ちゃんもどう? 休憩ついでに一緒にお茶でも」

 

「ふぇ!?」

 

「何、良太郎ナンパ?」

 

「どーしてそうなるよ」

 

 なんというか……菜々ちゃんは同じ転生者として(番外編21参照)凛ちゃんたちとは別の意味で気になるんだよなぁ。きっと苦労してるだろうし……まぁ、アイドルとは別口で気にかけてあげてもバチは当たらないだろう。

 

 店内にいる店長さんに「菜々ちゃんお借りしてもいいですかー?」とヒラヒラ手を振りながら確認を取ると、店長さんは親指を立てて了承してくれた。

 

「というわけで、最後に一仕事お願いね? 菜々ちゃんも自分の好きなケーキと飲み物、俺の伝票に付けてきていいからさ」

 

「……あ、ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

 というわけで、エプロンドレスのままではあるがウェイトレスから一人のアイドル少女に戻った菜々ちゃんを加えて四人でプチお茶会である。

 

「……うわ、勢いで頼んだのはいいものの、凄いことになっちゃった……」

 

「時期的にブドウが旬ですから、ブドウのスイーツが沢山……」

 

「ブドウとブドウでブドウがダブッてしまったってレベルじゃねーな」

 

「み、みんなで少しずつ食べましょうか」

 

 テーブルの上に並んだケーキを四人で分けながら少しずつ食べる。

 

「あ、そういえば良太郎さん! 先日のインタビュー記事、拝見させていただきました!」

 

「ん?」

 

 一粒ブドウを口の中に放り込むと、菜々ちゃんにそんなことを言われた。

 

 割とインタビューは色々なところで受けているのでどれのことか一瞬悩んだが、菜々ちゃんが食いついてきたということで一つに絞り込む。

 

「もしかして、弦十郎さんとのインタビュー?」

 

「はいっ!」

 

 どうやら正解のようだ。

 

 風鳴(かざなり)弦十郎(げんじゅうろう)さんは日本有数のスタント俳優であり、現在放映中の『覆面ライダー』シリーズの前身となる『電光刑事バン』の主演を務めた人だ。

 

 この人の何が凄いって、自身がスタントも兼ねているからって本当に()()のアクションを自らがこなしたのだ。そう、()()。変身前アクションからスーツアクターからバイクアクションまで誇張表現無く()()一人でこなしたのだ。特撮界では本当に伝説の人物である。

 

 そんな弦十郎さんなのだが、今度の覆面ライダーの映画に電光刑事バンが特別ゲストとして登場するにあたり、同じく特別ゲストとしてまたレジェンドライダーポジションで出演することになった俺との談話がインタビューという形で雑誌に掲載されたのだ。

 

 なんというか……凄いバイタリティーに溢れ返っている人だったなぁ。「スタントやアクションは全部映画で見て覚えた!」という冗談を言うぐらい気さくな人だし、本格的に撮影が始まった時が楽しみだ。

 

「いやぁ、まさか良太郎さんと弦十郎さんの競演をこの目で見れる日が来るとは思いませんでした! 電光刑事バンは()()()()()()()()視ていた思い入れの深い作品なので、感動もひとしおです!」

 

 そう言ってもらえるのは、出演者として冥利に尽きるな。

 

「……ん? でもその『電光刑事バン』っていう番組、やってたの十五年近く前じゃなかったっけ? 菜々ちゃん、そのときまだ二歳ぐらいじゃないの?」

 

「……あ゛」

 

 首を傾げながらそう問いかける友紀に、菜々ちゃんは何故か潰れたカエルのような声を出した。

 

「そうだけど、良く知ってたな、友紀」

 

「……小さい頃は男の子趣味だったから」

 

 つまりリアルタイムに観ていたわけだ。まぁ俺も観てたし、何もおかしくない。

 

「……え、えっとですね! お、おぼろげながら覚えてたんですよ! えぇ、そのときまだナナは二歳ですから! 流石に覚えてないですよ!」

 

「だよねー」

 

「……ふぅ」

 

 ……転生すると、割と一・二歳の頃から自我に目覚めて、結構見たもの覚えてるんだよねぇ、分かる分かる。

 

 『転生者あるある』に一人頷きながら、俺は二杯目のアイスコーヒーを傾けた。

 

 

 




・『雪歩ちゃんが演じる浅倉杏美という女性がドラマ内で結婚』
というわけで、浅倉さんご結婚おめでとうございます!
ほらほら文春! サボッてないでこういうネタ持って来てホラホラ!

・「近い将来に結婚式をモチーフにしたイベントがあって」
(別に劇中でWith Loveイベントをやるフラグでは)ないです。

・『周藤良太郎専用関係者立ち入り許可証』
露 骨 な テ コ 入 れ

・菜々ちゃんは同じ転生者
勿論本当は違いますが、ここが今回のお話で最重要ポイントです。

・「ブドウとブドウでブドウがダブッてしまった」
「うーん……ご飯とご飯でご飯がダブッてしまった」

・風鳴弦十郎
『戦姫絶唱シンフォギア』に登場するOTONAと呼ばれるチートキャラ。
何処のアニメに完全武装状態のラスボスを素手で圧倒するサブキャラがいるんだよ……。

・『電光刑事バン』
公式サイトに掲載された設定がガチすぎるシンフォギアの劇中劇。
ちなみに作中内では川島さんと茜ちゃん(の中の人)が主題歌を歌ってたりする。



 というわけで今回からはウサミン回です。

 基本的にはアニメと同じ流れになりますが……良太郎(転生者)とウサミン(実年齢2○歳)が化学反応を起こします。
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