アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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ウサミン書くの楽しい。


Lesson174 The world which can't say to want 2

 

 

 

「あ、良太郎さん! 改めまして、次のお仕事よろしくお願いします!」

 

「ん、こちらこそよろしく。『俺は間違っている』の吹き替えに引き続き、だね」

 

「え、何そのタイトル……?」

 

「確か……ライトノベル原作のアニメ、でしたっけ?」

 

「あぁ、次は『Re:ようこそスマートフォンが導く素晴らしい世界って、それはないでしょう!』っていうアニメなんだけど」

 

「長いっ!」

 

「ちなみに今回の略称は?」

 

「『リ以下略』」

 

「投げやりだけど的確っ!?」

 

 やっぱり声優アイドルを目指している、と本人が語るだけあって、こうしてアニメの声優としての仕事で一緒になることが度々……と言っても、まだ二回目だけど。

 

「そういえば菜々ちゃん、仕事現場での良太郎君はどうですか?」

 

 ケーキをフォークで切り分けながらそんなことを菜々ちゃんに尋ねる茄子。

 

「私はまだ良太郎君と一緒のお仕事はしたことなかったので」

 

「そーいえば茄子はそうだったねー。……いや、私のアレも一緒の仕事って言っていいのか微妙なところだけど」

 

 まぁ、友紀が出演者で俺がゲストって感じだったからなぁ、マッスルキャッスルは。

 

「加えて、大体の被害を瑞樹さんと幸子ちゃんが被ってくれたから、私の方には殆ど被害が来なかったんだよねー」

 

「あの二人はいい感じにツッコミを入れてくれる上に、幸子ちゃんは弄りがいがあるから……」

 

「分かる」

 

 うんうんと俺の意見に同意する友紀。

 

 罰ゲームのバンジージャンプのときも、誰もフッてないのに「押さないでくださいよ!? 絶対に押さないでくださいよ!?」って言っちゃう辺り、類い稀なる芸人気質を持ち合わせていると見た。ちなみにそのときは俺が押しました。

 

「それで、どうですか? 菜々ちゃんも変なことされていたりしませんでしたか?」

 

「えっと、そうですね……」

 

 そんな茄子の質問に対し、菜々ちゃんは若干言葉を選んだ後。

 

 

 

「……と、とても優しくしていただきました」

 

 

 

 顔を赤らめながらトンデモナイことを言い出した

 

「……良太郎?」

 

「……良太郎君?」

 

「菜々ちゃんその言葉のチョイスとその反応は流石に悪意が無いかな!?」

 

 友紀と茄子の視線が氷点下にまで下がっていてヤバい。特に茄子から良くない感情を持たれると、それまで友人として貰っていた幸運の女神の加護が反転してヤバいことになる。

 

「勿論冗談ですよー。いや、優しくしていただいたというのは本当ですけど、あくまでもお仕事でのお話です」

 

「……どう思う?」

 

「……これまでの素行のことを考えると怪しいですが、基本的にヘタレ気質な良太郎君ですから、まぁ信じてもいいのではないかと」

 

「ありがとよっ!」

 

 ヘタレは余計だけどな!

 

「それに良太郎さんはアイドルとしても勿論一流ですけど、声優としても本職の方に全く劣らない迫力と演技力を持っていらっしゃるので、一緒にお仕事をさせていただくととても勉強になるんです」

 

「あー、そういえば良太郎ってそういう設定あったよね。無表情だから声色での感情の表現が上手いんだっけ?」

 

 設定って言うな。

 

「それに完全声帯模写もありますからね。高二の文化祭で高町君と月村さんで『ロミオとジュリエット』の演劇をやったときも、高町君があまりにも棒読みだったから良太郎君が高町君の声でアテレコすることになりましたし」

 

「「あったな~」」

 

「何ですかその気になるエピソード!?」

 

「しかもそのまま『もう良太郎君一人でいいんじゃね?』ってなって、ナレーションから登場人物全員のセリフまで全部良太郎君一人でやることになったんですよね」

 

「「あったな~」」

 

「こう言っちゃなんですけど周藤良太郎の無駄遣いすぎやしませんかね!?」

 

 確か高二の文化祭当日は仕事が入っていて参加出来ないことが分かってたから、あらかじめ全部のナレーションとセリフを録音しておいて、それに合わせて演技をするっていうなんとも奇抜な方式の演劇になった。

 

 そして当然の権利のようにアドリブをぶっこんでおいたバージョンの音源を作成し、前日にすり替えておいた結果、仕事を終わらせて駆けつけた後夜祭で演者全員からシメられたというのがオチである。

 

「人生で初めてジャーマンスープレックスを経験した瞬間だったよ」

 

「よ、容赦ないクラスメイトさんですね……」

 

 まぁあれはあれでいい思い出になったのではないかと思っている。

 

「そういえば菜々ちゃんは? 時期的にそろそろだったと思うんだけど、もう文化祭は終わった?」

 

「……えっ!? な、ナナの文化祭ですか!?」

 

 終わっていないのであれば、あわよくば現役JKひしめく文化祭へと遊びに行けないかという下心満載で聞いてみる。

 

「え、えっと、そ、そうですね……す、ステージに立ったりしましたよ? も、勿論アイドルになる前の話で、友達と一緒にアイドルの曲を歌いながらダンスをしたり……」

 

「おぉ、意外に女子高生っぽい」

 

「え゛っ!? い、意外にってどういう意味ですかっ!?」

 

「おっとゴメン、深い意味はないよ」

 

 菜々ちゃんは十七歳っていう年齢の割にはだいぶ大人びてるから、転生の記憶の関係で周りとの精神年齢の差で悩んでたりするのかなーとか勝手に考えてしまっていたが、俺の杞憂だったようだ。

 

 ちなみに俺はそんなこと無かった。どうやら俺は肉体年齢に精神年齢が釣られてしまったらしい。だから俺の精神年齢が若干低いと揶揄されるのはしょうがないことなんだよ!

 

 ……しかし、何故菜々ちゃんは冷や汗を流しているのだろうか。

 

(ま、まさか……良太郎さん、私の年齢のことを気付いてる!? で、でも良太郎さん、いつもは普通にナナのことを年下扱いしてくれますし……! ぐ、偶然ですよね!? そうですよね!?)

 

「もう、良太郎君! 女の子はそういうことに敏感なんですから、ダメですよ」

 

「ん、ごめんね菜々ちゃん」

 

「い、いえ……き、気にしてないですから……」

 

 どう見ても気にしているようにしか見えないが……以前から思っていたのだが、菜々ちゃんは他の子よりも年齢や学年、年代に関する話題に対して若干敏感な気がする。

 

 ……やっぱり、悩んでるのかな? もしそうならば、それとなく転生者の先輩として相談に乗ってあげたいところだけど。

 

「菜々ちゃん、もし何かあるなら相談に乗るよ? ……多分、その悩みは俺にも心当たりがあるから」

 

「えっ!?」

 

 俺の言葉に、菜々ちゃんはとても驚いた様子を見せた。

 

「そ、そうなんですか!?」

 

「多分、だけどね」

 

 友紀と茄子がいるから大っぴらには言えないが、これできっと伝わってくれるだろう。

 

(ど、どういうことですか……!? な、ナナと同じ悩みに心当たりがあるって……はっ!? も、もしかして……良太郎さんも、ナナと同じで本当はもっと年上っ……!?)

 

 そのとき、菜々ちゃんに電流走る……! というナレーションが聞こえてきたような気がした。

 

(そ、そう考えれば普段の言動は別として、二十歳という年齢の割りに大人びた立ち居振舞いが出来るのにも納得です……! も、もしかしたら本当にナナより年上だったり……!?)

 

 そのまま何やら思案顔になった菜々ちゃんは多分話しかけない方がいいと判断し、友紀と茄子に話を振る。

 

「そーいえば今さらだけど、この間はダチャーンに会ったよ。会ったというか、車の修理をお願いしたんだけど」

 

「美世ちゃんですか」

 

「そっか、確か実家の整備工場に就職したんだっけ。元気してた?」

 

「いい乳してた」

 

「そっか元気か」

 

「私も久しぶりに会いたいですねー」

 

「……今お三方、不思議なやり取りをされてませんでした?」

 

「「「?」」」

 

 思案顔をしていた菜々ちゃんが戻ってきたかと思ったら、そんなことを尋ねられて三人で首を傾げる。

 

「い、いえ、多分ナナの聞き間違いですね……」

 

 そーいえば、菜々ちゃんは特典とか貰ったのだろうか。流石に俺の『転生する世界で最も武器になる能力』みたいな回りくどい特典は貰ってないだろうけど。

 

 うーん……アイドル関連の特典なのかな?

 

(って、そうでした、良太郎さんは友紀さんや茄子さんと同級生でした……となると、このお二人も一緒に年齢を……? いやいや、確かに茄子さんも大変大人びてますけど、友紀さんは……その……むしろもっと年下なのではという感じですし……)

 

「……ん? 今誰かに『ガキ』って言われたような気がした」

 

「ねこっぴーの下着付けてるからそういうこと言われるんだぞ」

 

「きょきょきょ、今日は付けてないし!?」

 

「ゆ、友紀ちゃん……!?」

 

「……あぁ!? ち、ちがっ!?」

 

 カマ掛けにすらなってないのに、引っかかる友紀は一体……。

 

(……や、やっぱり三人とも同級生だとすると、良太郎さん一人だけ年齢が上とは考えられない……はっ!? もしや、良太郎さんは高校や大学ですら年齢を偽って通っていたのでは!?)

 

 真っ赤になった友紀のぎゃーぎゃーとした言い訳になっていない言い訳を聞き流しながら、こちらはこちらで先ほどから百面相を繰り広げている菜々ちゃんを眺める。

 

 悩みを打ち明けようか打ち明けまいか悩んでるってところかなぁ。

 

(だ、だとすると良太郎さんは、ある意味でナナの目指すべきところにいる大先輩っ! ナナがこの道を成し遂げた先にいる理想のアイドルっ!)

 

 するとキッと意を決した目つきになった菜々ちゃんが顔を上げた。

 

「りょ、良太郎さん!」

 

「はいはい」

 

「じ、実は折り入ってご相談が――!」

 

「あ、いました! 菜々ちゃーん!」

 

「――ありま……え?」

 

 何やら菜々ちゃんを呼ぶ声がする方へと視線を向けると、こちらに向かって手を振る一人の少女が……えっと確か……。

 

「堀裕子ちゃんだっけ?」

 

「って、わわっ!? 周藤良太郎さん!? な、なんということでしょう! 菜々ちゃんを呼び寄せるために発した私のサイキックテレパシーが暴走した結果、トップアイドルの周藤良太郎さんを呼び寄せてしまうなんて……!」

 

 セクシーギルティで雫ちゃんや拓海ちゃんと一緒にいるので目にする機会は多いが、なんというか相変わらず元気だ(アホっぽい)なぁ。

 

「えっと、ユッコちゃん? ナナに何か御用でしたか……?」

 

「はっ! そうでした! そろそろ収録に向かわないといけないので、サイキックお迎えに上がったところでした!」

 

「収録……あっ! マッスルキャッスル! 忘れてました!?」

 

 どうやら菜々ちゃんはこの後、番組収録が控えていたのを忘れていたらしい。

 

「ゴメンね、引き止めちゃった形になったね」

 

「い、いえ! ご馳走していただき、ありがとうございます!」

 

「なんのなんの。なんだったら、俺も一緒に収録に行って、もう一回『王様』役を……」

 

「アンタじゃない座ってろ」

 

 腰を浮かしかけたところを友紀に撃墜された。まだ頬は赤いが、とりあえず吹っ切れたようだ。もうしばらくしたら弄るかな。

 

「それじゃあ、相談はまた今度にしようかな」

 

「は、はいっ! またよろしくお願いします!」

 

 そう言って綺麗に一礼すると、友紀と茄子にも頭を下げてから裕子ちゃんと一緒に去っていった。

 

 まぁ、転生者同士のお悩み相談はまた今度かな。

 

 

 

「……さて、改めて友紀の下着の話でも――」

 

「むきゃあああぁぁぁ!?」

 

 もうしばらくしたら、を我慢できませんでした。

 

 

 




・『Re:ようこそ(ry
今回も六つぐらいラノベのタイトル混ぜてみました。

・高二の文化祭
拾う予定の無い小ネタをどんどんぶっこんでいくのはいつものこと。

・だから俺の精神年齢が若干低いと揶揄されるのはしょうがないことなんだよ!
言い訳乙。

・(良太郎さんも、ナナと同じで本当はもっと年上っ……!?)
こっちはこっちでトンデモナイ勘違いを。

・「いい乳してた」
訳:元気でした。

・ねこっぴーの下着
某量産型さんのネタ。あのお方の描くユッキはいい乳をしている……。

元気だ(アホっぽい)なぁ
※褒め言葉です。



 良太郎→ウサミン 転生者の先輩として、悩みを聞いてあげよう。
 ウサミン→良太郎 実年齢を偽っている先輩として、悩みを打ち明けてみよう。

 さーてどうなるか(すっとぼけ)



『どうでもいい小話』1

 うわあああぁぁぁ唯ちゃん復刻だあああぁぁぁ!!!(安定の天井)



『どうでもいい小話』2

 某テーマパークを舞台とした新作ss『北沢志保と夢と魔法の国へ』の連載を始めました。

 ハーメルンの規約上、ツイッターのみの公開となりますが、毎週木曜日更新になりますのでよろしければ。

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