アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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りーな&なつきち+αのロック回、開始!


Lesson177 I waver, laugh or yawn

 

 

 

 今日も今日とてお仕事なのは、アイドルも社会人も変わらない。

 

 今回のお仕事は『幻夢コーポレーション』というゲーム制作会社の新作ゲームの発表イベント。そこの社長さんが随分と気前のいい人で、イベント後に試供品という名目で新作ゲームを何本か貰ってしまった。「よっ! ゲームの神様!」とヨイショすると「そうだ……私が神だっ!」と乗ってくれるぐらいにはノリのいい人だった。

 

 というわけで手に入れたこのゲーム。俺一人でやるのもつまらないので、最近出来たゲーム仲間である杏奈ちゃんや百合子ちゃんと一緒にやろうと765プロの事務所までやって来た。

 

 「初めてここの事務所に来てから二年以上経つのかぁ……」という時の流れの早さを感じつつ、逆に「あれ、まだ二年しか経ってないのか……?」という矛盾した状況に苛まれて首を傾げながら765プロの事務所の階段を昇る。……まぁいいや。

 

「おっはようございまーす! キャハッ!(如月ボイス)」

 

 挨拶は大事って古事記にも書いてあったから、元気よく挨拶をしながら事務所に入る。千早ちゃんもそろそろこれぐらいはっちゃけてもいいと思うんだけどねー。

 

 正直何回も遊びに来ているので勝手知ったる何とやらで、事務所の奥へと向かう。杏奈ちゃんと百合子ちゃんにも今から事務所に遊びに行く約束はしてあるし、つまりアポは取れているということだ。(暴論)

 

「杏奈ちゃーん、百合子ちゃーん! あっそびーましょー!」

 

 いつものようにソファーにでもいるのかなーと覗き込むと、そこには一人の少女が座っていた。

 

「……え?」

 

 しかし彼女は杏奈ちゃんでも百合子ちゃんでも、というか()()()()()()()()765プロの人間ではなかったはずだ。

 

「はあっ!? な、何でアンタがここにいるんだよっ!?」

 

「……いや、こっちのセリフなんだけど……」

 

 

 

 街中ロック不良娘こと、ジュリアだった。

 

 

 

 

 

 

「……天下のトップアイドルが、そんなに気軽に他事務所に遊びに行くか、フツー……?」

 

「流石にそのマジレスは聞き飽きたかなぁ」

 

 とりあえず手土産として持ってきたお菓子を、事務所の奥にいた小鳥さんに挨拶をしつつ渡す。何やら酸欠気味でひーひー言っていたが、どうやら先ほどの千早ちゃんボイスの挨拶(ウサミン風味)がツボにハマったらしい。

 

「小鳥ちゃんもハピハピすぅ?(如月ボイス)」

 

 どうやらそれがトドメになったらしく、小鳥さんは膝から崩れ落ちた。

 

「それで、何でお前が765プロ(ここ)にいるんだよ」

 

「うっ……!?」

 

 息も絶え絶えな小鳥さん曰く、杏奈ちゃんと百合子ちゃんはゲームをやりながら食べるお菓子を買いに近くのコンビニに行ったとのこと。なので少し待たせてもらいながら、明らかに他事務所のアイドルである俺以上にこの場にいることが謎なジュリアに問いかけると、先ほどまで弦を弄っていたらしい愛用のギターを抱えるように持ちながらジュリアは目を逸らした。

 

 えっと、こいつと最後に会ったのはみくちゃんと李衣菜ちゃんと武内さんの三人を『周藤良太郎と巡るニャンとロックな魅力満載ツアー』で連れ回したときだ。確かあの時は「音楽事務所のオーディションを受けに行く」って言ってて……。

 

「え、お前まさか……」

 

「………………」

 

「……オーディション受ける事務所を間違えたとか、言わないよな……?」

 

「……オ、オーディションを受ける直前に間違えたことは気付いたさ! で、でも受けるって言った手前、途中で投げ出すのも悪いと思ってオーディションを受けたら、その、スカウトされちまって……!」

 

 どうせオーディションしたのって高木さんとりっちゃんだろうし、高木さん好みな個性の塊であり、りっちゃん好みのアーティストとしての能力の高さも持ち合わせてるジュリアが落ちるわけないんだよなぁ。

 

「くそぉ……笑いたきゃ笑えよ……あんだけカッコつけて『あたしはアイドルって柄じゃねーよ』とか言っといて結局アイドルなんだから……!」

 

 そう言いながら頭を抱えるジュリア。

 

「笑うわけないだろ」

 

 物理的に笑えないというのもあるが。

 

「また一人、新しいアイドルの蕾が芽吹こうとしているんだ。一アイドルとして、それを祝福すれど笑う道理はないさ」

 

「……りょ、良太郎さん……!」

 

「ここからまだ少しだけ道は長いが……それでも、その道の先で待ってるぞ」

 

「……あ、あぁ! 任せとけ!」

 

 右手を差し出すと、ジュリアはパァッと顔を軽くしながらその右手を握ってくれた。

 

「だから最初にこれだけは聞かせてくれ」

 

「あぁ、何だ?」

 

 

 

「『オーディション』の映画は見た?」

 

「……思い出したあああぁぁぁ!!」

 

 握った右手をそのまま引っ張られ、思いっきり腹パンされた。

 

 

 

 

 

 

 

「危うくダチから借りるところだったんだからなっ!?」

 

「随分とコアな趣味の友人をお持ちで……」

 

 確かあの映画、レンタルはVHSしかなかったはずだ。だから借りて観るっていう選択肢がないから大丈夫だろうと思っていたのだが、まさかDVDを持っている友人がいたとは……相当なホラーというかスプラッター好きだなそいつ。

 

「しかし、いくら間違えてオーディションを受けてスカウトされたからって、よくアイドルになる気になったな」

 

 小鳥さんが淹れてきてくれたお茶を飲みながら、疑問に思ったそれを尋ねる。いくらジュリアが目指すロックミュージシャンとアイドルで共に音楽という共通点があったからとはいえ、歌って踊るのは似て非なるものだと思うのだが。

 

「いや、確かにあたしも最初はそう思ったさ。でも『歌う』ことには間違いない。現にここの如月千早だって、どちらかというとアーティスト寄りの人間のはずだ。なら、アイドル事務所にスカウトされたのも何かの縁と考えて、そこから始めていくのも悪くないって思ったんだよ」

 

 それに実例もあるしな、とジュリアは傍らに置いてあった自身のギターケースの中から二枚のCDを取り出した。その内の一つには見覚えがあった。

 

「あぁ、アスタリスクの二人か」

 

 それはみくちゃんと李衣菜ちゃんのユニット『*(Asterisk(アスタリスク))』のデビュー曲である『ΦωΦver(オーバー)!!』のCDだった。

 

「最初はご祝儀のつもりで買ったんだが……よく考えたら、二人はもうこうしてCDデビューしてるあたしの先輩なんだよな」

 

 あの時の二人がって考えるとなんか不思議だな、とジュリアは笑う。

 

「ジュリアの目から見て、二人はどうだ?」

 

「それはどういう意味で聞いてるんだ?」

 

「勿論、音楽的な意味だ。これでも、俺はお前の音楽を買ってるからな」

 

「……へへ、天下の『周藤良太郎』にそう言われるとなんだか変な気分だな」

 

 そう言いつつ満更でもなさそうなジュリアは、そうだなぁと呟きながらジャラァンと手にしたギターを掻き鳴らした。

 

「ハッキリ言わせてもらうと、まだまだだな。技術的な面が出来上がりきってない」

 

 でも、と彼女たちのCDを手に取る。表のジャケットはみくちゃんと李衣菜ちゃんが背中合わせにポーズを決めている写真。裏側には、撮影時に少し揉めて口論をしている最中を、カメラマンが面白いからと言って撮影したものが採用されていたりする。

 

「……そうだな、二人からは確かに『ロック』を感じた。お互いがお互いを尊重しつつ、それ以上に自分の信じるものを絶対に譲らない……そんな強い想いを感じた」

 

「……そうか」

 

 第三者にそう感じ取ってもらえるような曲を生み出せたということならば、彼女たちの思惑は大成功だった、ということだろう。

 

「まぁ、それ以上にコッチの方が『ロック』だけどな」

 

 二人のCDを机に置いたジュリアが次に手にしたのは、先ほど一緒にギターケースから取り出したもう一枚のCD。そのジャケットに映る少女にも見覚えがあった。

 

「……えっと、木村夏樹ちゃん……だっけ?」

 

「おっ、やっぱり知ってたか。346プロのロックアイドルってことで、李衣菜より有名らしいじゃねーか」

 

「知り合い……とまではいかないけど、顔見知りではあるかな」

 

 確か123プロが設立して恵美ちゃんとまゆちゃんがやって来て間もない頃。南の島で行われるアイドルたちによる音楽の祭典『シャイニーフェスタ』に参加するためにギターを練習していた俺が出会ったのが、当時まだデビューしたての夏樹ちゃんだった。

 

 あの時、夏樹ちゃんは「ロックなアイドルになる」って言ってたけど、それから半年ぐらいしてからその宣言通り『ロックアイドル』として名前を聞くようになった。

 

 そして今年も行われたシャイニーフェスタにて、ついに彼女にも声がかかり……えっ、そんなイベントいつやってたんだって? ……ほら、行間とか。もしくはお話とお話の間。

 

 とにかく、今重要なことは『木村夏樹はロックアイドルとして名を馳せている』ということだ。

 

「……実は、こっちはこっちであたしも顔見知りだったりするんだけどな」

 

「えっ」

 

 それは素直に驚きなんだが。

 

「確か前は何処かのバンドでボーカル兼ギタリストやってたはずだぜ。前にライブハウスで一回話したことがある」

 

 成程、バンドマンとしてやってたところを、何らかの経緯があって346にスカウトされた口だったのか。

 

「そんときも『こいつはすげぇロックな奴だ』って思ってたよ。……こいつと李衣菜がアイドルやりながら自分の音楽(ロック)をやってるっていうのが、あたしもアイドルとして初めてみようって思ったきっかけかもしれないな」

 

 ……菜々ちゃんのときもそうだし、そもそも春香ちゃんたちのときも思ったけど、新人だと思っていた子たちが『憧れられるアイドル』側になっていくのを見ると、先ほど感じた以上に時の流れの早さを実感する。

 

「はぁ……やっぱり俺ももう歳なのかなぁ」

 

「あたしと四つしか違わない奴が何言ってるんだよ……」

 

「いや、()()()()()()()()っていう言葉が自然に出てくるってことは、もう若くないってことだよ」

 

「えっと……どうしてそれを私の目を見ながら言ったんですか、良太郎君……?」

 

 先ほどと俺が渡したお菓子を器に持って来てくれた小鳥さんが、口元をヒクヒクと引き攣らせていた。

 

 いや、他意はないですよ? そもそも前世から数えたら俺の方が小鳥さんより年上だし。

 

「うぅ……せめて、せめて三十になる前にはウエディングドレスを……!」

 

 そう言いながら打ちひしがれる小鳥さん。

 

 ……ふっふっふ、甘い、甘いぞ小鳥さん! そんな如何にも「私婚期に焦っています」みたいなムーヴをしつつ、実は現在ハリウッドの赤羽根さんから「帰ってきたら伝えたいことがあります」とかなんとか言われていることを、俺は知っている! というか春休みにハリウッドへ行ったとき遭遇し、その際赤羽根さんから聞き出している!

 

 さーて、どのタイミングでそのことを弄ってくれようか……!

 

 

 

「……表情は変わってないのに、すっごいワリィ顔してる気がする……」

 

 

 




・『幻夢コーポレーション』
代表作品は『マイティアクションX』シリーズ、『タドルクエスト』シリーズ、『バンバンシューティング』シリーズなど。社長自らが手掛けたホラーゲーム『デンジャラスゾンビ』もコアなファンが多いとかなんとか。

・「そうだ……私が神だっ!」
(ピロロロロロ…アイガッタビリィー)宝生永夢ゥ! 何故君が(ry

・「あれ、まだ二年しか経ってないのか……?」
現実時間だとそろそろ四周年が間近に迫っておりますが、実は劇中時間はLesson01から二年と二ヶ月弱しか経っていないという事実……。

・「おっはようございまーす! キャハッ!(如月ボイス)」
・「小鳥ちゃんもハピハピすぅ?(如月ボイス)」
ちーちゃん激おこ案件発生中。

・ジュリア765プロ入り
ミリシタで「スカウト→アイドル事務所発覚」という順番だったことを知りましたが、こちらの世界では「オーディション→アイドル事務所発覚」ということにします。

・レンタルはVHSしかなかったはず
どうしても『オーディション』が見たいっていう変tもとい物好きの方は、是非とも買うしかないね! 作者? SAWもまともに観れないから無理。

・そんなイベントいつやってたんだって?
ほら、ただそのイベントを描写してないだけだから(建前)
すっかり忘れてたぞ(本音)

・赤羽根さんから「帰ってきたら伝えたいことがあります」
Lesson78でフラグを立てていたことを覚えている人が果たして何人いることやら。



 ロック回ということでジュリア参戦! 越境ネタはこの小説の特徴の一つだしね!



『どうでもいい小話』

 ついに今日、デレステの宝くじ当選発表ですね。

 こういうことを言っておくと、色々とフラグが立ってくれると思うので……。



 見事三等以上が当選したあかつきには『R18作品を書く』ことをここに宣言しておきます!

 さぁ当たれ!
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