アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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アニメ時系列の順番を間違えていたことに、感想で指摘されて気が付きました……な、なんとかなるよ、なんとかするよ。


Lesson178 I waver, laugh or yawn 2

 

 

 

「やっぱり! ステージを猫耳とふわふわでいっぱいにしたいにゃ!」

 

「だから、そんなのロックじゃないって!」

 

 

 

「また揉めてるんだ、あの二人」

 

「相変わらずですね……」

 

 今日も今日とてシンデレラプロジェクトの拠点として使わている資料室ではアスタリスクの二人が言い争いをしていた。プロデューサー曰く「ああして自分を強く主張する姿こそ、あの二人の魅力なのです」とは言っていたが、本当にアレでちゃんとユニットとして形になっているところが驚きである。

 

 まぁこの二人のやり取りはいつものことなので、私たちニュージェネレーションズはいつも通りの自主レッスンへ……。

 

「いーや、自分のやりたいことを貫くのがロックなら、みくのこれだってロックにゃ!」

 

「!?」

 

 と思ったら、何やらいつもと様子が違うような気がしたので思わず三人とも足を止めてしまった。

 

 李衣菜もみくの発言が予想外だったのか、声を出さずに驚愕していた。

 

「みくは感銘を受けたのにゃ。ついこの間のイベントで、事務所から止めるように言われていたはずのウサミンキャラを貫き通す姿は、みくが理想とするアイドルとしての姿そのもの……! ロックのことがよく分からないみくでも分かるにゃ! アレこそがロックなんだって……!」

 

「あ、あのー……だから、ナナのこれは別にキャラとかそーいうのじゃないんですけどー……」

 

 そんなみくの言葉をやんわりと否定したのは、最近ここに出入りする頻度が増えた菜々である。

 

 つい先日、プロデューサーとみくの提案により、他の部署において自分のキャラクターを見直すように通達されたアイドルたちを私たちシンデレラプロジェクトの企画内に引き込むことになり、おかげでこの資料室を出入りする人が増えた。

 

 例えば、現在所有者が仕事のため不在となり空席となったピンク色のウサギ型の椅子に埋まるように座りながらクークーと寝息を立てる着ぐるみ少女こと市原(いちはら)仁奈(にな)だとか、紙を丸めて作った剣を使ってみりあと一緒になってヤーヤーとチャンバラごっこを繰り広げている剣道少女こと脇山(わきやま)珠美(たまみ)だとか。

 

 菜々も、そんな個性的過ぎるメンバーの一人としてうちにやって来た一人である。いつも事務所のカフェテリアで給仕をしている際に着ているものと同じエプロンドレス姿で、プロジェクトメンバーにお茶を淹れたりと給仕のようなことをしてくれていた。格好も相まって、まるで本物のメイドさんのようである。

 

「仁奈ちゃんがお昼寝している今の内に、取れかかってた上着のボタンを付け直しておいてあげましょう……って、みりあちゃん、珠美ちゃん、仁奈ちゃんが起きちゃいますし、埃も立つからもう少し静かにしてくださいねー」

 

 ……メイドさん、というかお母さんみたいだった。いや、二つしか歳の違わない菜々に向かって「お母さんみたい」っていうのは少し失礼なのかもしれないが、それ以外に喩えようがなかった。

 

「とにかく! みくは菜々ちゃんを見習って自分を貫くことにしたのにゃ!」

 

「う、うぐぐ……!」

 

 おぉ……いつもは拮抗している二人の力関係だったけど、菜々という身近な目標が出来たことによりみくが有利になっている。李衣菜もロックという自身の領域を持ち出されてしまったので、強く言い出すことが出来ないようだ……。

 

「うぅう~……ふーんだ! みくちゃんのバカー! 魚嫌いの猫もどきー! 買ってみたはいいものの恥ずかしくて付けれなかった猫ランジェリーをタンスの肥やしにしてる癖にいいいぃぃぃ!」

 

「みくの部屋のタンス漁ったにゃあああぁぁぁ!? というかそんなこと大声で言うにゃあああぁぁぁ!?」

 

「みくちゃんがそんな中途半端な猫のフレンズだから、たつき監督も降板しちゃうんだあああぁぁぁ!」

 

「ぜっっったいにそれはみく関係ないにゃあああぁぁぁ!」

 

 何やら言い負かされたらしい李衣菜は、涙目で自分のギターケースを引っ掴むとそんなことを言い捨てながら部屋から出て行ってしまった。

 

「っと、そろそろ私たちも行かないと」

 

「そ、そうでしたね」

 

「いつも見慣れているはずの二人のやり取りだったのに、今回は思わず最後まで見てしまったよ……」

 

 義務ではないが、それでもやると決めた以上しっかりとレッスンしないと。

 

 最後に怒りと羞恥で顔を赤くするみくを一瞥してから、李衣菜が開け放ったままにしていった扉を潜り、レッスン室へと向かうのだった。

 

 

 

「……ちーなーみーにー! しぶりんもあったりしそうだよね~? 買ってみたはいいものの、着れなくてタンスの肥やしになっちゃった服とか下着とかそういうの~?」

 

「……えっと、良太郎さんにメッセージ作成……『未央の下着は上下オレンジ』っと……」

 

「対応が面倒くさいからってイキナリそーいう手段に出るのは酷くないかなっ!?」

 

 

 

 

 

 

「……はっ!? なんだろう、今何か重要な情報を聞きそびれたような、そんな惜しい気持ちで胸がいっぱいになった……!?」

 

「……良太郎さんは、相変わらず突拍子もないことを言うね……」

 

 コンビニへ行っていた杏奈ちゃんと百合子ちゃんが戻って来たので、早速三人でゲームをプレイすることになった。ちなみに一応ジュリアも誘ってみたが、よく分からないということで傍観に徹するらしい。

 

 貰った新作ゲームの中から選んだのは、三人でプレイすることが出来る『ドラゴナイトハンターZ』という、所謂狩りゲーである。三人で簡単にキャラメイクして、早速一狩り始めたところである。

 

「このパッケージのキャラ、『龍戦士グラファイト』っていう敵キャラなんだって……」

 

「ドラゴン狩るゲームで、ヒト型のドラゴンとは斬新だなぁ」

 

「既に先行プレイ組が進めて判明したらしいんだけど……必殺技が『ドドド黒龍剣』で、強化版の『ドドドド黒龍剣』。強化体になると『ドドドドド紅蓮爆龍剣』とかさらに強化された『ドドドドドドドドドドド紅蓮爆龍剣』になって……」

 

「なんて?」

 

「えっと……『ドドド黒龍剣』と『ドドドド黒龍剣』と『ドドドドド紅蓮爆龍剣』と『ドドドドドドドドドドド紅蓮爆龍剣』っていう技が……」

 

「ああああの二人ともっ!? 二人はゲームの腕前的に余裕なのは分かるんだけど出来れば私のサポートをお願いしたいってあああぁぁぁ!?」

 

「「あっ」」

 

 よく噛まずに言えるなぁ……と変な感心をしながら少し目を離して杏奈ちゃんと二人でスマホの画面を覗いていたら、よそ見をしていた俺たちではなく百合子ちゃんのキャラクターがやられてしまった。

 

「「「あっ」」」

 

『GAME CLEAR!』

 

 そして百合子ちゃんのキャラクターがリスポーン地点から戻ってくる前に、今回のクエストの討伐対象であるドラゴンを倒してしまった。なんか前もこんなことあったなぁ……。

 

「正直すまんかった」

 

「ゴメンね、百合子ちゃん……」

 

「う、ううん、大丈夫」

 

 とりあえず一旦休憩ということで、みんなゲーム機を机に置いて買って来たお菓子を摘まむ。手が汚れる油ものではなくスティック状のお菓子をメインにする辺りが、ゲーマーの杏奈ちゃんらしいチョイスだった。

 

「………………」

 

「ん? どうしたジュリア。やりたい?」

 

「あ、いや、その……なんつーか……」

 

 そんな俺たちのやり取りを見ていたジュリアが、何やら不思議なものを見るような目で俺たちを……というか、俺を見ていた。

 

「初めて会ったときからずっと思ってたけどよ……ホント、アンタって不思議な奴だよな」

 

「……良太郎さんは最初から不思議な人だと思うけど……」

 

「不思議というか、人智を超えているというか……」

 

 杏奈ちゃんはともかく、百合子ちゃんのそれはとりあえず褒め言葉ということで受けてめておくことにする。

 

「……常識外れ?」

 

「それだねっ!」

 

 それだねっ! じゃなくてさ。……あぁ、合宿で初対面のときのあの初々しい反応を見せてくれた杏奈ちゃんと百合子ちゃんは何処へ……。

 

 時の流れの残酷さを噛みしめつつ、結局どういう意味なのかをジュリアに尋ねる。

 

「……いや、やっぱり何でもない。気にしないでくれ」

 

「いや、そう言われても余計に気になるんだが……」

 

 しかしジュリアは答えてくれず、ギターを抱えて「ちょっと屋上で鳴らしてくる」と言い残して事務所を出て行ってしまった。

 

「……なんだったんだ、アイツ?」

 

「……良太郎さん、ゲームの続き……」

 

「次はやられないように頑張ります!」

 

「あ、ごめん、そうだったね」

 

 まぁあのロック娘が意味深なことを言うのはいつものことだし、深く気にしないでいいかな。

 

 とりあえず頭の片隅に留めておくことにして、再び少女二人とドラゴンの世界へと旅立つのだった。

 

 

 

 

 

 

「くっそーみくちゃんめー……今に見てろー……」

 

 資料室から飛び出した私は、少し離れたところの中庭のベンチに腰を下ろした。ギターケースと一緒に小型アンプも持って来ていたので、そこでギターの練習をするつもりだった。

 

 何かにつけて「どうせまだギターを弾けない」と言ってくるみくちゃんを見返すために、これでも結構ギターの練習はしているのだ。……まぁ、結果は芳しくないけど……。

 

 それでも、こうして続けていればいつかは弾けるようになると信じて、今日もまた練習を……。

 

 

 

「へぇ、おたくの相棒、中々渋いな」

 

 

 

「え?」

 

 それは背後から聞こえた、女の人の声だった。

 

 振り返ると、そこには薄い色の茶髪をソフトモヒカンにした女の人……多分、私より少し年上……が立っていた。

 

「わりぃ、少し貸してもらってもいいか?」

 

「え? あ、う、うん」

 

「サンキュー」

 

 無邪気な笑みで手を差し伸ばしてくるもんだから、思わず何も疑問に思わずに自分のギターを彼女に渡してしまった。その笑みは少女のように無垢なものというよりは、少年のような無邪気なものだった。

 

 彼女はストラップを首から下げると、私から受け取ったピックを手にして――。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 ――なんというか、凄かった。ギターに関する語彙が不足しているので、何がどう凄かったのかを詳しく説明できないが、それでもそれが凄いギターの演奏だということはすぐに分かった。

 

 私と殆ど変わらなさそうな女の人なのに……と考えたところで、彼女の姿に見覚えがあったことを思い出した。

 

「ふぅ……サンキューな」

 

 一通りの演奏を終えて、私に向かってギター返してくるその女の人は。

 

 

 

「アンタの相棒、クールだな」

 

 

 

 346プロのロックアイドル、木村夏樹だった。

 

 

 




・シンデレラプロジェクト入りアイドルたち
正確にはプロジェクト入りではありませんが、この小説ではアニメ以上にそちら側のアイドルとの絡みを増やそうかと思っております。

・市原仁奈
『アイドルマスターシンデレラガールズ』の登場キャラ。パッション。
若干独特な語尾をしてやがるでごぜーますな着ぐるみ系な9歳。
何やら家庭内に問題を抱えている様子を散々仄めかされていたが、この小説では……?

・脇山珠美
『アイドルマスターシンデレラガールズ』の登場キャラ。クール。
小学生にしか見えない剣道小町な16歳。ですぞ!
初見時、作者はガチで小学生だと思ったゾ……。

・猫ランジェリー
胸元が猫のマークに開いたとてもえっちぃ下着。みくにゃんは絶対に持っている(確信)

・たつき監督
大きすぎて拾わざるを得なかったネタ。
作者はとりあえず傍観を決め込む派。

・『ドラゴナイトハンターZ』
・『龍戦士グラファイト』
仮面ライダーエグゼイド内のゲームタイトルにしてパワーアップアイテム、および敵幹部にしてそのゲーム内での敵キャラ。
……なんかこのフォームどこかで見たことあるような……ウィザード……オールドラゴン……うっ頭が……!?

・『ドドド黒龍剣』以下略
なんかやたら長い名前だったことだけは覚えているのだが、文字にするとこんな面倒くさい名前だったのか……。

・木村夏樹再登場
黄色の短編集以来の登場となります(ストライキ騒動のときにもちらっといたけど)
14話編を殆どやっていなかったので、このタイミングでの初対面になります。
そして時期がずれ込んだことにより李衣菜も夏樹のことを知っていたという差異も発生しております。



 ウサミン他色物アイドルたちの出番を増やす下地を作っておきました(有効利用できるとは言っていない)

 そして前書きでも触れましたが、本来ならばウサミン回→美嘉ねぇ回→ガラス切子回→なつきち回の順番だったんですね……すっかり忘れてました。

 こうなったらこのまま突き進み、そして順番が入れ替わったことによって生じる変化も書けたらなぁと考えております。



『どうでもいい小話』1

 新作のアイドルマスターステラステージにて、961プロに新アイドル……!?

 さらにブラウザゲームにてアイドルマスター完全新作……!?

 これ、本当にアイ転書き終わる日は来るのだろうか……。



『どうでもいい小話』2

 ん? R18作品? なんのこったよ()

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