アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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折角登場したのに唯ちゃんがいないぞおおおぉぉぉ!(挨拶)


Lesson194 Project:Krone 4

 

 

 

「……ぐぬぬ」

 

「し、渋谷さん? どうしたの?」

 

「えっ? いや、別に……大丈夫、何でもない」

 

「普段の貴女からは想像できないような唸り声で、ちょっと心配になったんだけど……」

 

「ありがと、津辺(つべ)さん。それより、さっきトゥアールさんが観束(みつか)君を何処かに連れていくのが見えたけど、追わなくていいの?」

 

「トゥアアアァァァルウウウゥゥゥ!」

 

 今年の春に入学早々やってきた外国人の転校生の名前を叫びながら、津辺さんは黒髪のツインテールを揺らしながら凄まじいスピードで走っていってしまった。恐らく、もうしばらくしたらトゥアールさんの叫び声が聞こえてくることだろう。……トゥアールさんの声って、蘭子に似てるから少し微妙な気分になるんだよなぁ。

 

 しかし、どうやらクラスメイトに心配されるぐらい私は、傍目に見て悩んでいたらしい。

 

 実際、悩んでいることは事実である。内容は勿論、クローネのことだ。

 

 良太郎さんに頼らずにどこまで出来るのか一人で考えてみようと決めたのが、昨日の晩のこと。それからずっと、こうして次の日の放課後になるまで悩んでいたのだが、案の定、簡単には答えは出てこなかった。

 

 未央と卯月の三人でニュージェネを続けるか、加蓮と奈緒の三人で新たなユニットを組むか……。勿論、掛け持ちという手もあるが、まだアイドルを始めたばかりの私に、そんな器用なことが出来るのだろうか。ニュージェネの歌とダンスを絶対に大丈夫と胸を張れるレベルで完璧ならば良かったのだが、生憎自己評価はあまり高くない。

 

「……事務所行こ」

 

 はぁ……と溜息を一つ吐きつつ、私は鞄を持ち上げながら席を立った。

 

 ――ぎゃあああぁぁぁ……!

 

 校舎の何処からか、蘭子に似ているにも関わらず全く乙女らしさを感じさせない叫び声が聞こえてきたような気がした。

 

 

 

 

 

 

「……あれ」

 

「ヤッホー」

 

「……よっ」

 

 あと少しで事務所というところで、加蓮と奈緒が立っていた。

 

「えへへ、待ち伏せ成功ー!」

 

「待ち伏せって……」

 

 どうやら二人して私が事務所に来るのを待っていたらしい。

 

「……ちょっと、話がしたいんだけど……いいかな?」

 

「……話?」

 

 私が聞き返すと、加蓮はコクリと頷いた。その隣で、奈緒はやや気まずげに自身の毛先を指で弄っている。

 

 ……話の内容は、何となく想像できた。なら、私にそれを断る理由はない。

 

「……うん、いいよ」

 

「よかった。それじゃあ立ち話もアレだし……あそこ行こっか」

 

 そう言いつつ加蓮が指差したのは、ファーストフード店。軽いお話をするには丁度いい場所だった。

 

 私はそれに了承し、三人でその店へと向かった。

 

 

 

 放課後の時間帯なので学生客が多くいる可能性もあったが、幸いなことに空いていた。

 

 勿論何も頼まずに場所だけ借りるというわけにはいかないので、それぞれ適当なものを注文する。レッスン前なので軽めにということで、私はアップルパイと飲み物、加蓮はポテトと飲み物を注文。一方で奈緒が注文したものは……。

 

「………………」

 

「な、なんだよ……」

 

「いや、別に」

 

 所謂お子様セットと呼ばれるものだった。先ほどから嬉し気にオマケとして付いてきたフィギュアを見ていることから、どうやらそれを目当てに注文したらしい。確か……ウチの事務所の小関(こせき)麗奈(れいな)ちゃんがモデルであり本人が声優も務めている『幽体離脱フルボッコちゃん』とかいうアニメで、その主人公フルボッコちゃんのフィギュアだ。

 

「ふ、ふんだ、どーせ子どもっぽいとか思ってるんだろ……?」

 

 拗ねたように唇を尖らせる奈緒。そんな奈緒をニヨニヨと口元を歪めながら見ている加蓮は、多分子どもっぽいと思っているのではなく、そんな風に拗ねる奈緒が可愛くて笑っているのだろう。

 

「だから別になんとも思ってないって。良太郎さんもそれ注文してたし」

 

「「……えっ!?」」

 

 まぁそれなりに長い付き合いをしていれば、こういうファーストフード店で一緒に食事をする機会はそれなりにあったりする。そういうとき、たまに良太郎さんもオマケ目当てでお子様セットを注文することが多々あったのだ。

 

 そしてつい先日も、一緒にここの系列の別のお店へ一緒に行った際に、良太郎さんが奈緒が貰ったものと全く同じフィギュアを貰っていたのだ。私がそのフィギュアについて詳しく知っていたのも、そのとき良太郎さんから教えてもらったからだ。

 

「『基本的にここでしか手に入らないものが多いから、意外と侮れない』って言ってた」

 

「ふーん、意外……でもない、かな? 確かに、アニメやゲーム大好きとは公言してるもんね、良太郎さん」

 

「へ、へぇ……そうなんだ……」

 

(……ははーん。これは奈緒、話が通じる相手が見つかって喜んでるなぁ?)

 

 何故かそわそわしてる奈緒と、そんな奈緒を見ながら再び口元を歪める加蓮。よく分からないが、とりあえず加蓮が奈緒を弄ろうとしていることだけは分かった。

 

 そんなやり取りをしつつ、私たちは店の片隅のテーブルに着いた。一応、私たちもアイドルなので、それなりに人目を気にした結果である。

 

「改めて、付き合わせちゃってゴメン」

 

 私は「大丈夫」と首を振る。

 

「……トライアドプリムスのことでしょ」

 

 逆に私からそう切り出すと、二人とも少し驚いたような表情を見せた。もしかして、二人はまだ私がその話を聞いていないと思っていたのだろうか。

 

「色々考えてみたんだけど……私は参加できない」

 

 結局、私がとりあえず出した結論はそれだった。私はアイドルとしてデビューしてから今まで未央と卯月の三人でニュージェネレーションズとして活動してきた。今ではそれなりにファンの人が増えてきたが、それでもまだまだ駆け出しの半人前……三人揃って一人前なのだから、寧ろ三分の一人前だ。

 

 そして私たちが優先しないといけないのは、今回の定例ライブの後に控えている『シンデレラの舞踏会』。それを成功させなければ、ニュージェネどころかシンデレラプロジェクトのみんながバラバラになってしまう。

 

 ……やっぱり、それが一番嫌だった。

 

 「ゴメン」と謝ると、奈緒は「……やっぱりな」と寂しげに呟いた。

 

「そうだよな、凛にはニュージェネがあるもんな……」

 

 しかし、加蓮の反応は違った。

 

「……でも私、このチャンスを逃したくない」

 

「ちょっ!? 加蓮!?」

 

 加蓮は、話を断ったことに対し悲しむでもなく、ましてや怒るでもなく……ただただ真っ直ぐな目で私を見ていた。

 

 隣で慌てる奈緒を他所に、加蓮はさらに言葉を紡ぐ。

 

「デビューしたいっていうのは勿論だけど……私、奈緒と凛の三人でもっと歌ってみたいんだ。この前三人で歌ってみた時、凄くいい感じだった。……だから、この三人ならきっと凄いことが出来る……そう思えた」

 

 「凛はどうなの?」という加蓮からの問いかけに、私は言葉に迷う。

 

 ……何も思わなかったと言えば、嘘になる。

 

 あのとき、私たち三人で歌ったエボレボは、ハッキリと言って私たちニュージェネ三人が歌ったときのものと比べるとまだまだと感じた。うぬぼれかもしれないが、あの曲は確かに私たち三人のための曲で、最も上手く歌えるのは私たち三人だと自負している。

 

 けれど、()()()()()()()()での歌には、私の心の琴線に触れる何かがあった。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()と思ってしまうだけの何かが。

 

 

 

 ――志半ばで途絶える夢もある。辿り着けずに挫折する夢もある。

 

 ――けれど、始めなければ分からない夢だってある。

 

 

 

 思い出すのは、まだ私がプロデューサーからアイドルのスカウトを受けていた頃に、電話で相談をした良太郎さんの言葉。

 

 

 

 ――まぁ要するに、何事もチャレンジってことだよ。

 

 

 

(……始めなければ……分からない……)

 

「……ねぇ、凛のこの後の予定は? まだ時間ある?」

 

「えっ……今日は、その……自主練の予定」

 

「だったらさ、今から一緒に事務所のレッスン室に行こ。そこでもう一度、この三人で合わせてみようよ……そうすれば、きっと分かる」

 

「………………」

 

 その加蓮からの提案に、私はコクリと頷いた。

 

 

 

 

 

 

「こんばんは、凛ちゃん」

 

『……こんばんは、良太郎さん』

 

 美城さんとの話を終えた日の夜。再び凛ちゃんから電話がかかって来た。

 

『えっと……今日は大丈夫?』

 

「うん、大丈夫だよ」

 

 まだ帰宅はしていなかったものの、その日の仕事を終えて後は帰るだけなので、キチンと話が出来る。

 

「それで、どんな悩み事?」

 

『……その、今日電話したのは、相談じゃないんだ』

 

「あれ」

 

 先日聞きそびれたことかと思ったら、どうやら違うらしい。だからといって、ただの世間話をするような雰囲気でもないし……。

 

『……私ね、今凄い悩んでることがあって……それを、良太郎さんに頼らずに、自分で決めようと思ってるの』

 

「……そうなんだ」

 

 何というか、嬉しさ半分寂しさ半分である。

 

『それは、私にとっての挑戦で……アイドルとして、新しい可能性が見つかるかもしれないことで……』

 

 だから、その……と若干要領を得ない凛ちゃんだったが、黙って彼女の言葉を待つことにする。

 

『……応援、して欲しんだ』

 

「……へ?」

 

 正直予想していなかった凛ちゃんからのそんな要望に、思わず呆気に取られてしまった。

 

『その、変なことを言ってるって自覚はあるよ。……でも、私はまだその一歩が踏み出せなくて……だから、えっと……』

 

「………………」

 

 

 

 ――もしアイドルになるっていうんなら、俺は全力で応援するよ。

 

 

 

 それは他ならぬ俺自身が、アイドルになるための一歩を踏み出せずにいた凛ちゃんに向けて言った言葉だ。

 

 最初から俺は、トップアイドル『周藤良太郎』としてではなく――。

 

 

 

「頑張れ、凛ちゃん」

 

 

 

 ――彼女の兄貴分として、応援すると決めていた。

 

「君が進むと決めたなら、俺はそれを全力で応援する。だから頑張れ」

 

『……うんっ。頑張る。……ありがとう、良太郎さん』

 

「どういたしまして。これぐらいなら、いつでもオッケーだよ。……あ、もっとハート多めがいい?」

 

『そーいうのいいから』

 

 クスクスという凛ちゃんの笑い声が聞こえてきた。

 

 

 

 ……さて、どうやらプロジェクトクローネの本格始動は、目前みたいだ。

 

 

 




・津辺さん
・トゥアールさん
・観束さん
今や既に懐かしき『俺、ツインテールになります』の登場人物たち。
良太郎のみならず、凛ちゃんの高校も魔改造していこう(提案)

・小関麗奈
『アイドルマスターシンデレラガールズ』の登場キャラ。パッション。
小物系悪戯っ子な13歳。レイナサマー。
デレマス勢の悪戯っ子枠。ただ滲み出る小物臭は一体……。
ちなみにデレステのステージ衣装の髪型が凄い好き(小並感)

・『幽体離脱フルボッコちゃん』
奈緒が好きらしいアニメ。……アニメ? 特撮?



 とりあえずキリがいいので、今回はここまで。次回からまたサブタイ変更してアニメ20話および21話編を続けていきます。微シリアスが続くよぉ……。

 だから空気読めてないかもしれないけど、次回は番外編書くよ!

 ある意味番外編が本編みたいなもんだもんね!(大暴言)

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