アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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女の子がキャッキャするだけのお話。


Lesson206 Kiss my LiPPS 3

 

 

 

 さて、いつまでもフレちゃんに付き合って遊んでいるわけにもいかないので、そろそろレッスン室へと向かうことにしよう。

 

「酷いリョーくん! フレちゃんとは遊びだったって言うの!?」

 

「……そうさフレデリカ! 君とは遊びだ! 君だけじゃない! 俺には他にもスマホゲームを一緒にする遊び相手はいくらでもいるんだよ! 他にも囲碁将棋オセロその他ボードゲームでもなんでもいいぞ!」

 

「あっ、フレちゃん麻雀やってみたーい。あれでしょー『ポン』とか『ロン』とか」

 

「おっと意外だな。ちなみに麻雀にはそれ以外にも『チー』『カン』『ニャー』などの様々な鳴き声を組み合わせることで得点を競い合うんだ」

 

「にゃ~ご!」

 

「おぉ、可愛らしい猫だ。残念ながら嘘だけど」

 

「フレちゃん、猫辞めます」

 

「「イエーイ!」」

 

 

 

「流れるように第二回戦始めないでもらえますか!?」

 

 

 

 打てば響くフレちゃんとのやり取りが面白くてついつい話題が弾んでしまったが、美嘉ちゃんに怒られてしまったので断念する。

 

「はぁ……はぁ……奏、良太郎さんって学校でもこんな感じだったの……?」

 

「えぇ、基本的にこんな感じよ。その後、三年の高町先輩や二年の降谷(ふるや)先輩辺りが暴力的に鎮圧していたわ」

 

「……アイドルに対して、暴力的に……?」

 

「ウチの高校、周藤良太郎をアイドルとして扱わないっていう方針なのよ」

 

 ウチの高校事情を速水から聞いた美嘉ちゃんは頬を引きつらせて引いていた。

 

 流石に出席日数ギリギリ故にある程度の温情は貰っていたが、それ以上の特別待遇は無く、ある意味アイドルじゃないただの周藤良太郎でいられる貴重な場所だったので、正直ありがたかった。ただもう少しぐらい気を遣ってくれてもよかったのでは、と思っている。痕が見えないようにすればいいっていう問題じゃない。

 

 というか、懐かしい名前を聞いた。

 

「降谷って結局進路どうなったんだ? 警察か医者のどっちかって言ってたよな」

 

「大分悩んでたみたいだけど、警察学校に進んだらしいわ」

 

「成程。まぁ、アイツの腕っぷしから考えると、医者よりは警察の方が向いてそうだな」

 

 ボクシングをかじっているらしく、腰の入ったいい拳が何度も俺の肝臓を襲ったことである。しかし警察か……いずれ早苗ねーちゃんの後輩になるのかな。

 

 色黒茶髪でイケメンな後輩のことを考えながら、ようやく俺たちはレッスン室へとたどり着いた。

 

 一応今日はボイスレッスンなので激しく運動するつもりはないが声を出すための準備運動はするので、美嘉ちゃんたちには更衣室で着替えてきてもらう。一方俺は前回の失敗を省みて、最初から運動できる恰好なのでレッスン室で着替える必要も無い。

 

「さてと……」

 

 今回も一番乗りのレッスン室の片隅に自分の荷物を置くと、とりあえず彼女たちが揃うまで自分の声出しを少しだけしておくことにしよう。

 

 すぅはぁと二・三回深呼吸をして息を整えると、お腹に手を当てた。

 

 

 

 

 

 

「あ、周子」

 

「ヤッホー」

 

 更衣室に入ると、中にはベンチに座ってスマホを弄る周子がいて、アタシたちに気が付くとヒラヒラと手を振ってきた。

 

「いやーさっきは大変だったみたいだねー」

 

「……え、さっきのやり取り見てたの?」

 

「ずっと見てたわけじゃないけど、見かけたから巻き込まれたくなくて遠回りしてきた」

 

「ちょっと!?」

 

「ある意味賢明な判断ね」

 

 なんとなく見捨てられたというか自分たちを囮にして逃げられたような気がして少しだけイラッとしてしまった。

 

 とりあえず(散々あれだけ辟易させられた相手ではあるものの)先輩アイドルの良太郎さんを長く待たせるわけにはいかないので、さっさと着替えることにしよう。

 

「ほら志希も」

 

「めんどくさいなー」

 

 一応良太郎さんから「美嘉ちゃん、悪いけど志希の事よろしくねー」と頼まれているので、ぶーぶーと不満を漏らす志希に着替えを促すと、彼女はしぶしぶとコートを脱ぐと続いてTシャツを……って!?

 

 

 

「なんでブラしてないの!?」

 

 

 

 Tシャツを脱いだ志希は、既に上半身が裸の状態になっていた。

 

「へ?」

 

「えっ」

 

「わお」

 

「おー! シキちゃん大胆!」

 

 キョトンとする志希に、大なり小なり驚く三人。そしてその三人以上に驚くアタシ。別に女の子の裸を見るのが云々というわけではないが、何故か見ているアタシが恥ずかしくなってしまった。

 

「……あー、そういえば、朝文字通り叩き起こされて、そのまま適当に服着てきたんだっけ」

 

 無言で自分の体を見下ろしながらポリポリと頭を掻いていた志希だったが、思い出したようにポンと手を打った。

 

「ほら、シキちゃんってば寝るときは付けない派だからさ~」

 

「別にそんなことは聞いてないって!」

 

 え、確か志希って、朝からずっと良太郎さんと一緒だったわけだよね……!? しかも車内では二人きりだったわけだし……この子、そんな状態で男の人と二人きりだったの!? それは本当に大丈夫だったの!?

 

「ダイジョーブでしょ。上着着てたから気付いてないだろーし。気付いてたとしたらリョータローだったらそれとなく指摘しただろーし。リョータローってば、何だかんだ言いつつそーいうところヘタレだから」

 

「ヘタレって……」

 

 流石に天下のトップアイドルにして大先輩を捕まえてヘタレと称することに抵抗があった。

 

「ヘタレだよ~? 普段女の子の胸に興味津々みたいなことを喧伝してる癖に、直接見たり触ろうとしたりは絶対にしないからねー」

 

「いいから早く上を着なさいよ」

 

「というか志希ちゃん、まさかノーブラで今日一日過ごすつもりなん……?」

 

「んーっと、ママさんが洗濯物全部まとめてこの中に入れてくれたはずだからー……あったあった」

 

 奏と周子に指摘されて志希がゴソゴソと自身が持ってきたバッグの中を漁ると、中から地味なスポーツブラが出てきた。うら若き十代の乙女としてそれもどうかと思ったのだが……まぁ、ある意味志希らしい。

 

「それで、リョータローくんがヘタレって話だけど」

 

「そこ掘り下げるの!?」

 

 先ほどの志希の話にフレデリカが興味を持ってしまった。

 

「うん、ヘタレだよー。リョータローの研究サンプルが欲しかったから『協力してくれたら胸を触っていいよ』って言ったのに、触ろうとしないんだもん。普段からずっと見てるから、この条件だったら一発だと思ったのにー」

 

「それはヘタレというか、良識があるだけでは……」

 

 確かに先ほどのフレデリカとのやり取りを思い返すと少々頭が痛くなるが、あぁ見えて良太郎さんは常識人だ。社会人として当たり前と言えば当たり前だが、少なくとも自身の立場を利用してどうこうしようとするような人柄ではない。

 

 ……いやまぁ、セクハラ紛いな発言が多いことも認めるが、それでも冷静にその言動に注目すると彼が『大人』なのだと実感することが多々ある。でなければ、ここまで多くの人々に慕われるトップアイドルになんてなれやしないだろう。

 

「どうしたの美嘉、いきなりそんなギャグを言い出すなんて」

 

「ギャグ!?」

 

 しかしアタシの必死のフォローも、奏の(良太郎さんに対して)手痛い一言に寄ってバッサリと切り捨てられてしまった。

 

「でもそうね……言われてみると、高校でも周藤先輩は騒ぎを起こす側にいることが多いけど、たまに同級生を見る目が保護者や教師のそれになってることがあったわ。あの人の本質は、少し引いたところで人を見ることなのかもしれないわね」

 

「案外、いつもの言動も本当にキャラづくりだったりして」

 

「随分と用意周到な上に徹底したキャラづくりだこと」

 

 自分で言っててそれもないなーと思い、奏と二人でクスクスと笑ってしまった。

 

 

 

「……えっ、なに? 二人とも良太郎さんのこと好きなの?」

 

 

 

「「はあっ!?」」

 

 突然周子からトンデモナイ爆弾が投げ込まれた。たぶんアタシも奏も凄い顔をしていると思う。

 

「どうしてそういうことになるのさっ!?」

 

「いい加減なこと言わないでちょうだいっ……!」

 

「えーでも……ねぇ?」

 

「二人とも、いい笑顔だったよー?」

 

 周子がフレデリカに振ると、彼女はいい笑顔でそんなことを言い出した。いや、あれはどうしようもない先輩に対する呆れた笑いだから!

 

「ハスハス……うーん、恋の匂いはしなかったけど、何やら興味深い匂いはしたかなー? サンプル取らせてー!」

 

「華の乙女が他人に匂いを嗅がせるわけないでしょ!?」

 

「いいからそのシャーレとスポイトを置きなさい!?」

 

 先輩を待たせているということも忘れて、乙女五人が更衣室でギャーギャーと時間を無駄に消費するのだった。

 

 

 

 

 

 

「……ぼっちー……ぼっちー……ひとりーぼっちー……はぁ、みんな遅いなぁ」

 

 いやまぁ、女の子の着替えは時間がかかるということは十二分に理解しているが、まさか自分の発声練習が終わってもまだ来ないとは思わなかった。

 

「……暇だし何か歌うか」

 

 声出しの続きということで、このまま何か一曲歌うことにしよう。突発的な考えなので当然音源は無いから、アカペラで歌えるもの……かと言って、自分の持ち歌っていうのも味気ないから……。

 

「……よし」

 

 

 

 

 

 

「いっけなーい! 遅刻遅刻ー! アタシの名前はフレデリカ! 今日は転校初日だっていうのに寝坊しちゃって――」

 

「言ってる場合、かあああぁぁぁ!?」

 

「うわぁ、結構時間経っちゃったね……良太郎さん、怒ってないかな?」

 

「うーん、多分怒らないとは思うけどねー?」

 

「それでも、流石に褒められた行動ではないことは確かね……」

 

 バタバタと騒いでいたらいつの間にか三十分も経っていたことに気付いたアタシたちは、急いで着替えを終えると小走りで良太郎さんが待っているレッスン室へと急いだ。

 

 レッスンを見てもらう立場だというのに、流石にこれは失礼すぎた。志希の言う通り、良太郎さんが怒っている姿は想像できないが、それでも確実にアタシたちに非が――。

 

「――え?」

 

 レッスン室の前にまで辿り着いた途端、聞こえてきた()()に思わず足を止めてしまった。

 

 一瞬自分の聞き間違えかとも思ったが、見ると四人も足を止めて訝し気な表情をしているのでどうやらそれも違うようだ。

 

「……えっと、良太郎さんが待ってるレッスン室ってここ……だよね?」

 

「えぇ……ついでに言うと()()()は今頃ラジオの生放送に出る予定らしいから、ここにいるはずがないわ」

 

 アタシの問いかけに対して、奏が肯定しながら有益な情報を付け足してくれた。

 

 なら――。

 

 

 

「――なんで、中で()()()()()()()()の……?」

 

 

 




・「フレちゃん、猫辞めます」
なにっ!? フレちゃんのセカンドシングルは『ウルトラリラックス』ではないのか!?

・降谷
コナン時空より十年前のアイ転時空において、なんと75億の男ことバーボンこと安室透こと降谷零は良太郎より一つ年下で現在十九歳なのだ!
きっと今頃警察学校で、永い付き合いになる四人の親友と出会っていることでしょう。

・警察か医者
あぁいうことがあったわけだし、明美さんと一緒に医者になってる未来もあったんやないかなって……。

・ノーブラ志希ちゃん
当然作者の妄想ですがなにか()

・良太郎はヘタレ
ついに年下の女の子にまで言われる始末。

・スポーツブラ
趣味です!()

・「……ぼっちー……ぼっちー……ひとりーぼっちー……」
一人でカラオケー……一人で居酒屋ー……。

・「いっけなーい! 遅刻遅刻ー!」
今ではすっかりポプテネタになってしまった……。

・「――なんで中で楓さんが歌ってるの……?」
「よっしゃ! 完全再現は無理とは分かっていても、いっちょ楓さんの真似やってみっか!」



 フレちゃんが良太郎の代役として十分活用できる説(一理ある)

 次回、久しぶりに良太郎の本気。



 ……さてと、明後日の準備してこないと。

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