アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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その日、運命が交差する……!


Lesson210 I've got a feeling 3

 

 

 

「んー! このクレープ美味しー!」

 

「そうかそうか、それはよかった」

 

「リョータローくんのは何だっけ?」

 

「ゴーヤクレープ」

 

「……美味しいの?」

 

「癖になる味ではあるかな」

 

 唯ちゃんに連れられていったクレープ屋は、偶然にも以前りんとのデートの際に利用したクレープ屋だった。今度こそ普通のクレープを買おうとしたはずなのだが、気付けば俺の手にはまたしてもゴーヤクレープ。決して不味くはないのだが……何故だろうか。

 

 さて、少々行儀が悪いと分かりつつもクレープを片手に食べ歩きをする俺と唯ちゃん。クレープを買うときは流石に離れていたが、唯ちゃんは先ほどからずっと俺の左腕に抱き着くように右腕を絡めていた。

 

 ……うーむ、ギャルの距離感ってよく分からないなぁ……まぁ大変ご馳走様なのだが。

 

「それで、次は何をご所望かな? ……の前にゴメン」

 

 ポケットのスマートフォンがバイブレーションで着信を告げていたので、取り出して見るとどうやら電話のようだった。

 

「悪いけど、ちょっと待っててもらっていい?」

 

「いいよー!」

 

 またナンパされないようにねーと言い残し、少しだけ唯ちゃんの元から離れて電話に出ることにする。

 

 さて、随分と珍しい奴からの電話だが……一体何事だろうか。

 

「よぉ北郷、珍しいな」

 

『久しぶり。いきなり悪いな、周藤』

 

 高校卒業後に卒業旅行として中国に行き、そこで何故かアイドル事務所のプロデューサーとしてスカウトされるというなんとも主人公チックな人生を送っている元同級生の北郷(ほんごう)一刀(かずと)の、春休みに中国で顔を合わせたとき以来に聞いた声だった。

 

「何か用か?」

 

『用というか……誰に連絡をするべきか悩んだ結果、真っ先に思い付いたのがお前だったというか……』

 

「……よく分かんねーんだけど」

 

『実は――』

 

「――はぁ?」

 

 北郷の口から聞かされたそれに、俺は思わずそんな声を出してしまった。

 

「……何やってんだよアイツ……」

 

『だからもしそっちで会ったら、よろしく頼むというか、一言声をかけておいてくれというか……』

 

「やめろよそれフラグだろ」

 

 全く了承したくなかったがとりあえず了承と返事をし、たまにはこっちに戻って来いよと一言付け加えてから通話を終了する。

 

「……ま、まぁ日本は広いからな、そんなバッタリ出くわすなんてこと……」

 

 被りを振ってから、唯ちゃんを待たせていたところに戻る。勿論そこには、俺を待っていてくれた唯ちゃんの後姿が……。

 

 

 

「貴女……良い眼ね。どう? これから一緒に……」

 

 

 

「……だから展開が早いって神様(さくしゃ)

 

 先ほども言ったが、フラグ回収に時間が無さ過ぎるのは問題なんだってーの! こんなんだからご都合主義とか言われるんだよ! この展開の早さをもっとストーリー方面に活かすとかさぁ!?

 

 遠い空の上への文句は多々あるが、今はそれよりも見覚えのある金髪の後姿が女性に声をかけられているところを見て見ぬふりは出来ないので……って、この文句もついさっきやったばかりである。

 

 ……おまけに、その女性にも見覚えがあるどころか、たった今しがた電話で話を聞いていた人物だった。

 

「日本のアイドルに粉かけるのは止めてもらおうか」

 

「……誰だか知らないけど、何か文句でも……って、アラ、貴方……」

 

 露骨に顔をしかめた金髪ツインロールに向かって伊達眼鏡をズラして自分を認識させる。相変わらず()()()()()という厄介な趣味嗜好をしているようで、男に声をかけられて邪魔をされたことがそんなに嫌だったか。

 

「久しぶりね」

 

「お陰様でな。……それで、日本になんのようだ――華琳」

 

「あら、随分と棘があるじゃない」

 

 (そう)華琳(かりん)――中国最大の芸能事務所『359(サンゴク)プロダクション』の社長という重々しい肩書を持つ女性は、いつの間にか習得していた流暢な日本語を話しながら、所属アイドル以上と称されることもあるその美貌でクスリと笑った。

 

「たった今、北郷から連絡があったんだよ。『いつの間にか華琳がいなくなってて、調べたら日本に行ってる』ってな。どうやって気付かれずにここまで来たんだよ」

 

「別に? 桂花(けいふぁ)が色々と手回しをしてくれたのよ。……帰ったら、とびきりの()()()をあげる約束をしてね」

 

 ホントあの社長秘書一号は、有能なのに余計なことしかしないな……。

 

「護衛の夏侯(かこう)姉妹を置いてか?」

 

「まさか、あの二人は連れてきてるわ。今は少しだけ別行動をさせてるだけよ。……と言っても、今頃どこからか見てるんでしょうけどね」

 

「だろうな」

 

 先ほどからピリピリと刺さるような視線を感じているので、多分これだろう。あの猪突猛進な姉が飛び出してこないところを見ると、妹が頑張っているようだ。

 

「で、もう一度聞くぞ。……()()()()()()()()()?」

 

()()()()()よ」

 

 そう言って笑いながらサングラスをかける華琳。俺とはまた別の意味でのポーカーフェイスで、その内心は読み取れそうになかった。

 

「……なら、ナンパなんかしてないでさっさと観光なりなんなりして、はよ帰れ」

 

 しっしっと手を払う仕草をするが、華琳は余裕の笑みを浮かべたまま肩を竦めた。

 

「えぇ、貴方に見つかった以上、スカウトは止めておくわ」

 

 下手なアイドルよりも優雅な仕草で踵を返した華琳は、「あぁ、そういえば」と首だけでこちらを振り返った。

 

「伝言があるわ。『私が日本に行く機会があったら、よろしく頼む』だそうよ」

 

 さて誰からの伝言でしょうね、とクスクス笑う華琳。尤も中国の知り合いで、尚且つ華琳に伝言を頼めるような人物は一人しか心当たりがないので、すぐに察しはついた。

 

「『了解した』って伝えておいてくれ」

 

「相変わらず甲斐性がないのね。もうちょっと情熱的な言葉はないの?」

 

「ほっとけ」

 

 ほらさっさと帰れと再び手を払うと、華琳は今度こそ振り返ることなくその場を立ち去って行った。それと同時にピリついていた感覚がなくなったので、護衛の姉妹も行ったのだろう。

 

「……はぁ」

 

 突然始まりようやく終わったシリアスな空気に耐え切れず、思わず重い溜息を吐いてしまった。心臓に悪いから、日常回に余分なシリアスを入れるのは止めてもらいたいものだ。

 

 しかし、本当にアイツはなんでこっちに来たんだよ……まさか本当に日本のアイドルを引き抜きに来たんじゃないだろうな。……もしくは、ナンパ目的か。こっちの方があり得そうなんだよなぁ、アイツだったら。とにかく、あとで北郷には一報を入れておいてやろう。

 

 さてと。

 

「別の意味で随分と質の悪いナンパだったけど……大丈夫だった?」

 

 華琳(ナンパ)がいなくなったので、待っててもらった唯ちゃんに声をかけて――。

 

 

 

「うん! 大丈夫! 真剣なりょーたろー()()、カッコ良かったの!」 

 

「……え゛っ」

 

 

 

 ――そこにいたのは、ウットリとした表情を浮かべる美希ちゃんだった。

 

 

 

(そういえば、今度は美希ちゃん特有のアホ毛があるじゃん!)

 

 これで前科二犯である。

 

 

 

「えーっ!? ミキのこと、他の女の子と勘違いしてたのー!?」

 

「本っ当に申し訳ない……」

 

 黙っておけばいいものの以下省略。

 

 美希ちゃんは一瞬だけショックを受けた表情になったが、そのまま目に涙を浮かべながらプクーッと頬を膨らませた。どうやら自分が思っている以上に、美希ちゃんを怒らせてしまっていたようだ。

 

「誰なの!? りょーたろーさんと白昼堂々デートしてた泥棒猫は!?」

 

 え、そっちに対して怒ってるの?

 

「リョータローくーん! ごめんごめん! クリームで手が汚れちゃったから洗ってたのー!」

 

 ちょうどそのとき、少し先にあるコンビニから唯ちゃんが出てきてこちらに向かってブンブンと手を振って来た。それに反応した美希ちゃんがグルンッと勢いよく振り返る。再び唯ちゃんとよく似た後姿がこちらに向いたので表情は見えないが、微かに「グルルッ……!」という威嚇のような声が聞こえたような気がした。

 

「? ……あー!? もしかして!」

 

 一瞬何事かと首を傾げた唯ちゃんは、パァッと明るい笑みを浮かべてこちらに向かって走って来た。そしていきなり動き出した唯ちゃんに驚いて身構えた美希ちゃんに一気に肉薄すると――。

 

 

 

「本物の美希ちゃんだ! うわっ、超カワイイ! 顔小っちゃい!」

 

 

 

 ――美希ちゃんの手を握り、ブンブンと上下に振った。

 

 

 

「……え?」

 

 これには美希ちゃんも呆気に取られた様子だった。いや、こういう反応をされること自体は多々あるのだろうが、今しがた自身が敵認定した相手にそれをされるとは全く予想していなかったのだろう。

 

「アタシ、346プロの大槻唯! まだまだ駆け出しだけど、美希ちゃんみたいなアイドルになりたいってずっと思ってるの!」

 

「……ふ、ふーん……そうなの?」

 

「うん!」

 

 喜色満面の笑みで頷く唯ちゃん。未だに背中を向けているので俺からは美希ちゃんの表情は見えないが、どうやら満更でもないようだ。恐らくだが、ファンから「可愛い」とか「綺麗」だとかは言われ慣れていても「美希ちゃんのようなアイドルになりたい」といった言葉を直接言われるのには慣れていないのではないだろうか。

 

「……ふふーん! あんまり外でサインはするなって律子に言われてるけど……プリクラだったら、一緒に撮ってあげてもいーよ? 唯には特別なの!」

 

「ホントに!? 撮ろ撮ろ!」

 

 そうして金髪ギャル二人はすぐ近くにあったゲームセンターへと足を向けて……って、アレ? もしかして俺忘れられて……。

 

「ほらほらー! リョータローくんも早く早くー!」

 

「りょーたろーさんも一緒に撮るの!」

 

 なかったようで、一安心だ。

 

 などと胸を撫で下ろしていると、むぎゅりと柔らかい感触が両腕に。見ると、右腕には美希ちゃんが、左腕には唯ちゃんが抱き着いていた。別に行くことを拒否しているわけでもないのに、何故この子たちは俺の腕を引いているのだろうか……いや、役得だから文句は言わないって先ほどから言ってるんだけどさ。

 

「ふっふっふ……りょーたろーさんと、初プリなの!」

 

「リョータローくんと美希ちゃんと三人でプリクラとか、超ラッキー!」

 

 そう言って笑う二人に引きずられ、俺はゲームセンターへとなだれ込んでいくのだった。

 

 

 




・ゴーヤクレープ
Lesson31に引き続き、ネギまネタ。柿崎が好きです(突然の告白)

・北郷一刀
恋姫無双シリーズの主人公。武将が女性ばかりの世界に迷い込んで……というわけではなく、中国に旅行に行った際に、なんやかんやあってプロデューサーをする羽目になったとい主人公体質。原作でいうところの魏ルートを進行中。

・華琳
・桂花
・夏侯姉妹
恋姫無双シリーズの登場人物で、それぞれ『曹操』『荀彧』『夏候惇』『夏侯淵』
今までのクロスキャラ同様、アイ転世界の影響を受けているため色々と設定が違う。

・359プロダクション
中国最大の芸能事務所。実は創立は最近で、それまで覇権を争っていた『曹魏プロダクション』『孫呉プロダクション』『劉蜀プロダクション』が合併して出来た事務所。

・日本になんのようだ?
忘れないように、定期的に伏線を撒いておく。

・『私が日本に行く機会があったら、よろしく頼む』
だーれだ?(なお、こちらもただの作者の趣味嗜好な模様)

・これで前科二犯である。
相変わらず学習しない主人公である。



 美希と唯が同時に登場するSSは珍しいのではないかと自負している。

 まぁただの作者の趣味が形になっただけなんだけどね!

 次回(多分)終わる!



『どうでもいい小話』

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 6thLIVE

 メットライフドーム初日 名古屋ドーム両日

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