アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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「あれ? ここって初対面だっけ?」と作者も悩んだ組み合わせ。


Episode26 On Your Mark! 2

 

 

 

 123プロ感謝祭ライブ。全国の……いや、全世界の人々が待ち望んだ奇跡の祭典。

 

 その祭典がついに開場し、私たち765プロ関係者チケット組も関係者入口から会場入りを果たした。他の人たちが長蛇の列を築いて少しずつ入場している横で悠々と入れてしまったことに対して、罪悪感と優越感が入り混じっていた。

 

「可奈ちゃん大丈夫?」

 

「は、はい……」

 

 そんな中、先ほどからずっと顔色が悪い可奈ちゃんを案じて声をかけると、彼女から返ってきた言葉は弱々しいものだった。

 

「ちょ、ちょっと緊張しちゃって……」

 

「気持ちは分かるけど、リラックスリラックス。こんなチャンス二度とないんだから、楽しまないと損だし、きっと良太郎さんたちもそれを望んでるよ」

 

「そそそそうですよね折角だし損しちゃちゃちゃ」

 

「あぁ、逆効果だった!?」

 

 気持ちを落ち着かせようとした言葉は、逆に可奈ちゃんを追い詰める結果になってしまった。顔色は青を通り越して白くなっており、既に緊張とかそういうのじゃなくて別の何かが心配になってきた。

 

「ほら可奈ちゃん、落ち着いて~」

 

「わぷっ」

 

 壊れた機械のようになってしまった可奈ちゃんを、あずささんが正面から抱き締めた。その豊満な胸にポフリと顔を埋める形になり、可奈ちゃんは驚いた様子であずささんの顔を見上げた。

 

「こういうのは、深く考えない方がいいのよ。ただ()()()()()()()だけ。それは私たちがステージに立つときも同じでしょ?」

 

「ふぁ、ふぁい!」

 

 あずささんに抱きしめられながら優しい言葉を投げかけられたことにより、どうやら可奈ちゃんの緊張が解けたようだ。

 

「おぉ……すごいのあずさ!」

 

「これが母性! 流石今日のメンバーの中で唯一のお姉さん!」

 

「ちょーっと真美ちゃーん? 今の言葉、お姉さんの目を見ながらもーいっかい言ってみなさーい?」

 

 そんな様子に感心した様子の美希と真美だったが、真美の余計な一言によりこのみさんが笑顔のまま青筋を浮かべるのだった。

 

 

 

 というわけで、最初に貰った四枚のチケットでやって来た私と可奈ちゃんとあずささんとこのみさん。そして961プロの黒井社長に招待されるという予想外すぎるミラクルによって当日参戦が決まった美希と真美の六人で、こうして関係者席へとやって来た。ちなみに黒井社長が指名したらしい社長と小鳥さんは貴賓室へと行ってしまったのでここにはいない。

 

「あっ! 春香さん!」

 

「詩花ちゃん!」

 

 関係者席へと向かう途中、その961プロのアイドルであり黒井社長の娘でもある詩花ちゃんと出会った。

 

「皆さん、お久しぶりです!」

 

 ペコリと頭を下げる詩花ちゃん。ファーストコンタクトこそ「以前はパパが大変失礼しましたあああぁぁぁ!」と土下座しそうな勢いで謝り倒して来た彼女だったが、今ではこうして普通に仲良くなることが出来た。少々腰が低い気もするが……それは彼女自身の性格的なものだろう。

 

「詩花ちゃん、久し――」

 

「ありがとー詩花お姉ちゃーん!」

 

「ありがとーなの詩花ー!」

 

「きゃー!?」

 

 久しぶりと言い切る前に、タックルと見まごうばかりの勢いで真美と美希が詩花ちゃんに抱き付いた。そのまま倒れそうになった三人を慌ててこのみさんと二人で支える。

 

「詩花お姉ちゃんのおかげでマミも参加出来たよー!」

 

「ホンットウにありがとーなの!」

 

「あ、いえ、正確には私じゃなくてお父さんなんですけど……喜んでいただけたなら、なによりです」

 

「こら! その前に危ないじゃない! 折角のライブの前に怪我しちゃったら元も子もないでしょ!」

 

「「ご、ごめんなさーい」」

 

 このみさんの叱責に、ばつが悪そうに苦笑しながら素直に謝る二人。こういうところを見ると、やっぱりこのみさんも『お姉さん』だなぁと実感する。

 

「詩花ちゃんは関係者席の方で観るの?」

 

 言外に「黒井社長たちと同じように貴賓室では観ないのか」と尋ねてみると、詩花ちゃんは「はい」と頷いた。

 

「あそこはちょっと落ち着き過ぎてるというか……やっぱりライブは、音を肌で感じたいので」

 

「分かる分かる! 私も観客側でライブに参加するときは、わーって盛り上がりたいから!」

 

「ですよね! あそこだと、パパや高木のおじさんたちがいますから……その、声を出して応援しづらいかなーって思いまして……」

 

「……それは多分、大丈夫だと思うけどね」

 

 事務所を出る際、美希たちに混じってウキウキとペンライトの電池を交換していた社長の姿を思い出す。多分本番は小鳥さんと一緒になって応援していることだろう。それで真面目な話が中断させられて青筋を浮かべる黒井社長の姿までは想像出来た。

 

「というわけで、今日はご一緒させていただいてもいいですか? 関係者席とはいえ、一人で座ってるのも寂しいので」

 

「勿論!」

 

 チラリと他のみんなに視線を向けると、全員も頷いてくれた。

 

「任せて詩花! 今日は先輩として、みっちりりょーたろーさんのライブとはなんたるかを教えてあげるの!」

 

「は、はいっ!」

 

「あ、あの! 是非私もお願いします!」

 

「おっ! いい心がけですな~かなりん!」

 

「だから騒がないの! 招待してもらっておいて迷惑かけない!」

 

「うふふっ」

 

 

 

 さて、関係者席と言っても決してVIP席のようなものではなく、あくまでも関係者たちがまとめて座る席を一ヶ所にまとめただけである。今回はセンターステージに対して向かって右側の三階席の一角がその関係者席となっていた。

 

「あっ」

 

 そんな関係者席に結構早めにやって来たつもりだったが、既に人が座っていた。しかも知り合いである。

 

「なのはちゃん、美由希ちゃん」

 

「あっ、春香さん!」

 

「お久しぶりです!」

 

 声をかけると二人とも笑顔で立ち上がってくれた。美希・真美・あずささんといった既に翠屋へと訪れたことがあるメンバーは同じように知り合いに会えたことで嬉しそうに会話を始めた。

 

「春香ちゃん、知り合い?」

 

「えっと、確か……310プロの高町なのはちゃん?」

 

 このメンバーの中で二人のことを知らないこのみさんにそう尋ねられた。同じく可奈ちゃんも首を傾げており、詩花ちゃんはなのはちゃんの姿に見覚えがあったようだ。

 

「はい。二人は……そうですね、良太郎さんのご家族みたいな間柄の人です」

 

 『喫茶翠屋の看板娘』や『310プロに所属しているアイドル』というよりも、この場においてはこういう紹介の仕方の方が適しているだろう。

 

「あら、可愛い子たちねー。やっぱりみんなもアイドルなのかしらー?」

 

 しかし、そんな二人の向こう側に座っている少女の姿には見覚えがなかった。

 

 多分私と同い年ぐらい。身長は私よりも低そうにもかかわらず、美希はおろかあずささんにも匹敵するような大きさの胸。ニコニコと柔和な笑みを浮かべている様もあずささんにそっくりだった。見覚えがあるような気もするのだが、123プロの新人アイドル候補の子だったりするのだろうか。

 

 そんなことを考えていると、すっと立ち上がった少女はペコリと頭を下げた。

 

「リョウ君たちのライブに来てくれてありがとう。今日は楽しんでいってくださいねー?」

 

「は、はい……」

 

 釣られて私も頭を下げてしまったが、頭の中の疑問が無くならない。新人アイドルかと思ったのに、その口ぶりはまるで良太郎さんの母親のようで……。

 

(ん? ()()?)

 

 その刹那、良太郎さんが事あるごとに口にしていた「うちのリトルマミー」という呼称が私の頭の中を過り……そして数年前にテレビでやっていた良太郎さんの日常を追ったドキュメンタリー番組を思い出した。

 

 ……ま、まさか。

 

「えっと、多分皆さん初対面だと思うので、私から紹介させてもらいますね」

 

 戸惑う私たちの空気を察したらしい美由希ちゃんが、苦笑しつつ手で少女を指し示した。

 

 

 

「こちら、周藤良子さん。良太郎さんと幸太郎さんのお母さんです」

 

「お母さんでーす」

 

 

 

『……母親ぁ!?』

 

 

 

 そんな私たちの驚愕の叫び声は、丁度会場内のモニターに流れ始めたPVに盛り上がった観客たちの歓声によって掻き消された。

 

 

 

 

 

 

 開演時間が迫り、俺たち出演者はオープニングステージでの衣装への着替えを終えた。一番最初の衣装はそれぞれ『デビューステージで着た衣装』をアレンジしたものになっており、それぞれ懐かしさに浸りながら思い思いに写真を撮ったりしていた。

 

 かくいう俺もその一人で、折角だからとみんなとのツーショットを撮って回っていたのだが。

 

「重い」

 

「そりゃあ、そんだけジャラジャラしてたらな」

 

 何故か俺の衣装のアレンジの方向性が『やたらと鎖や貴金属をあしらう』というもので、純粋に重い。いくら最初の曲は振り付けが激しくないからとはいえ「ここまでやる必要性はあるのか」と企画段階のときからずっと言い続けているのだが、JANGO先生と衣装スタッフがノリノリで聞き入れてもらえなかった。『もっとシルバー巻くとかSA!』じゃないんだよ! シルバーじゃなくて全部ゴールドじゃないかよ!

 

 加えてダメージ加工の入ったマントまで羽織っているので、見た目が完全に魔王だった。覇王なのに魔王だった。

 

「じゃあどういうのが覇王なんだよ」

 

「えーっと……こう、全身アカムの鎧みたいな感じで」

 

「お前の場合、『正しき闇の力』というよりは『ただひたすらに混沌』って感じだけどな」

 

 冬馬から「そもそも鎧の方が今より動きづれぇだろ」と尤もなツッコミを貰ってしまった。

 

「そういう良太郎さんもカッコいいですよぉ?」

 

「そーそー! すっごく強そう!」

 

 でもまぁ、まゆちゃんや恵美ちゃんからは好評みたいだから良しとしよう。

 

「実際にダンスが激しくなると、結局これ脱ぎ捨てるしな」

 

 むしろ脱ぎ捨てる用に重りをつけている感じもする。実際にマントを脱いで黒のインナーだけになると、今まで重かった分だけかなり動きやすい気がする。

 

お客様(良太郎さん)お客様(良太郎さん)お客様(良太郎さん)! 困りますっ! いきなり脱がれては! あーっ! お客様(良太郎さん)! 困ります! あーっ!」

 

「楽しそうですね、まゆさん」

 

 いきなりパシャパシャと連写を始めたまゆちゃんのために、インナー姿のままで何個かポージングをしてあげるのだった。

 

 

 

 

 

 

 ――開演まで、あと『1時間30分』。

 

 

 




・765メンバーと詩花
既に邂逅済みどころかある程度765と961の確執も解けていたりする設定。

・翠屋看板娘二人と765メンバー
ASの四人は翠屋へ行ったことがあり知り合いの設定。

・765メンバーとリトルマミー
ここが初対面。一応ドキュメンタリーに出演しているので顔は知っているはずだが、気付けなかった模様。

・リトルマミーの外見
以前にもどこかで書いた気がしますが、作者の中ではISの束のイメージ。

・良太郎の衣装
なんかジャラジャラしてた方がかっこええやん?(厨並感)

・『もっとシルバー巻くとかSA!』
もはや古典芸能。

・『正しき闇の力』
結局これってなんだったんだろう……。



 ついにリトルマミーが(春香たちの前に)初登場!

 この後もこんな感じで今までに関わりが少なかったキャラを対面させていきます……地味に大変だなコレ。



『どうでもいい小話』

 宣伝忘れてましたが、ツイッター限定でアイ転新章予告や外伝『四条貴音は告らせたい~恋愛頭脳戦とかそういうのは一切ない~』の試作などを公開しています。

 もしよろしければ、こちらもよろしく(小声)

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