アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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いやぁ、幕張公演よかったなぁ……(セクギャルサプライズで無事死亡)

それはさておき ト ラ ブ ル 発 生


Episode35 Like a water… 3

 

 

 

『『最後のキス……』』

 

 

 

「『ライアー・ルージュ』では大人になりたい背伸びした女の子だった志保ちゃんが、こうして大人の恋愛の曲を歌うようになったんだなぁ……」

 

「リョータロー君って、基本的に親目線だよね」

 

「何せ実年齢は二十そこそこだけど、精神年齢的にはその二倍以上だからな」

 

「二分の一ではなく?」

 

 おうおう、誰が精神年齢男子中学生じゃい。

 

「僕としては志保ちゃんもそうだけど、美優さんがこれだけ大きな舞台の上で堂々と歌を披露できるようになったことが、感慨深いかな」

 

 翔太はそう言いつつ、天井しか見えないものの視線を美優さんたちがいるであろうメインステージに向ける。

 

「美優さんを事務員として紹介されたときの僕に『彼女は将来アイドルになって満員のドームのステージで堂々と歌う』って言っても、多分信じないと思う」

 

「俺はなんとなくそうなるような気がしてたけどな」

 

「それは、いつもの『アイドルとしての勘』?」

 

「それもあるけど……彼女はいずれボイスが実装される実力を秘めていると確信してた」

 

「……え、なに、初めて会ったときのリョータロー君には美優さんの声が聞こえてなかったの?」

 

 三章の冒頭に登場して、約一年後に声が付いたんだよなぁ……。

 

「真面目な話をすると、兄貴は最初からアイドルとしても起用する気満々だったらしい」

 

 事務員が欲しかったっていうのも本当だが、あくまでも事務所稼働直後だったから人手が足りなかったのであり、それも慣れれば二人でも十分に回ることが出来るようになる……と兄貴は考えていたようだ。

 

「それでも、美優さんの性格からするとアイドルになるとは思わないよ」

 

「それはまぁ、そうだな。それでも()()()()()()()()()()()()()()()()から『君にはアイドルとしての魅力がある』って口説かれたら、流石の美優さんも心動かされたってことなんだろ」

 

「ちょっと待って」

 

 そろそろ迎えのトロッコが戻ってくるかなーと首を伸ばして確認しようとすると、ガシッと翔太に肩を掴まれた。

 

「どうした?」

 

「いや、どうしたじゃなくて、そういうアイドルとしてはバラしちゃいけないことをサラッと言っちゃうの!? こんな誰が聞いてるか分かんないようなところで!?」

 

「大丈夫、お前以外誰も聞いてない」

 

「そんなわけないじゃん! 他にもスタッフの人が……いないし!?」

 

 いないことはないのだが、ライブ中故に色々とお仕事があるスタッフさんたちは俺たちの会話を聞いていられるほど暇ではなかった。

 

「ちなみに俺が勝手にそう考えてるだけであって、もしかしたら間違ってる可能性もあるから。信じるか信じないかは、お前次第だ」

 

「そんな取って付けたような補足をされても、既にそうとしか見れなくなっちゃうよ……」

 

 翔太が頭を抱えながら「あああ『Last Kiss』の歌詞がそういう意味に聞こえてくるううう社長と何かあったようにしか思えなくなってくるううう」と苦悩している内に、迎えのトロッコがメインステージから戻ってきた。

 

「あ、やっほー」

 

「おう、お疲れー」

 

 迎えのトロッコは無人ではなく、次の『秘密のトワレ』で登場するためにバックステージへ向かう志希が乗車していた。

 

「ん? 翔太はどーしたの?」

 

「知らなくてはいけないことを知ってしまったような気がしてるだけだから、放っておけば治るさ」

 

「ふーん?」

 

 よく分かっていなさそうだが、次の瞬間には興味を失ったらしい志希はそのままバックステージ行きのトロッコへと向かってしまった。

 

「頑張って来いよー」

 

「はいはーい」

 

 振り返ることなくヒラヒラと手を振る志希の姿がバックステージへと続く線路の向こうへと消えていった。

 

「さて、俺たちも戻るぞ。お前はこのブロックのトリでまた出番があるんだから、戻って準備があるだろ」

 

「分かってるよ……はぁ、僕はこれからこのモヤモヤを抱えたままステージに立たなくちゃいけないのか……」

 

 項垂れながら「これからどんな顔で美優さんの前に立てばいいんだ……」とぼやく翔太の背中をポンポンと叩きながら、俺たちはメインステージ下へと戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

「先ほどのMCで少々遅れが出ていますが、問題ありません。きっとこれも良太郎君の計算通りなのでしょうね」

 

「アイツは計算してるわけじゃないだろうけどな。……っ!?」

 

「先輩?」

 

「あ、いや……なんか、非常に俺の都合の悪いことが起こったような……」

 

「どうしたんですか、いきなり良太郎君みたいなことを言い出して」

 

「とりあえず一発引っ叩いとくか」

 

「流石に『とりあえず』で殴るのはいかがかと……」

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「良太郎さあああぁぁぁん!!!」

 

 舞台裏に戻ってきた途端、涙目のまゆちゃんが飛び込んできた。どうやら流石のまゆちゃんでもミルを挽いてコーヒーを入れることが出来なかったらしい。

 

「まゆは、まゆは勉強不足でしたぁ……良太郎さんのことを考えて、コーヒーミルの使い方ぐらい覚えておくべきでしたぁ……!」

 

「大丈夫だよ、まゆちゃん。君のその気持ちだけで……」

 

「良太郎良太郎」

 

「ん?」

 

 しがみついてくるまゆちゃんの頭をポンポンと撫でていると、俺の肩がトントンと叩かれる。

 

 そして振り返った途端、ズドンと拳が俺の登頂部に突き刺さった。普通に痛い。

 

「自由を奪った状態で殴るなんて……!」

 

「自由が奪われてるのは、まゆちゃんを振りほどかないリョータロー君の自己責任では」

 

 いや、だってお腹にフニフニと柔らかいものが当たってて気持ちよくて……。

 

 それはさておき。

 

「何するんだよ兄貴」

 

 俺の頭に拳を振り下ろした下手人はやや疲れた様子の兄貴だった。今日は社長としてというよりはプロデューサーとして現場で働いているだけあって気苦労は多いのだろうが、だからといって頑張っているトップアイドルに暴力を振るうのは如何なものか。

 

「建前としては、冒頭からのお前の予定にない行動のせいで時間が若干押していることに対する制裁だ」

 

「本音は?」

 

「お前に何か不利益なことを言われた気がした」

 

 カーンデジファー様に唆された武史君でも、もうちょっとまともな理由を持ってくるぞ。

 

「社長、さっきセンターステージの下でリョータロー君が……」

 

「さぁまゆちゃん! 君には喫茶翠屋店主高町士郎氏直伝のコーヒー術を伝授しよう! これさえあれば豆から美味しいコーヒーを淹れることが出来るようになり、肩こりや眼精疲労ともおさらば! こんな僕でも彼女が――!」

 

「おっとまゆちゃん、そのまま良太郎を離さないように頼むよ」

 

「はぁい!」

 

 兄貴の言葉に従うように、俺の腰に回されていたまゆちゃんの腕の力が強まった。勿論まゆちゃん程度の腕力ならば振りほどくことは容易なのだが、俺が手荒なことをしないということを前提としたとても強力な拘束だった。これが『拘束のまゆ』……!

 

「というかまゆちゃん、次の志希の次の次が出番なんだから、そろそろ準備を」

 

「うふふふふふふふふふ」

 

「めっちゃいい笑顔!」

 

 なんの躊躇もなく俺に抱き着いているところ見ると、Lesson170で恵美ちゃんに「どーせ本当に抱きしめられたら顔を真っ赤にオーバーヒートして倒れるのが目に見えてるんだから、諦めなって」と言われていたときと比べて大分成長したらしい。

 

 先ほどのことが翔太の口から告げられるにつれて、段々と兄貴の纏う空気の温度が下がっていくのが分かる。

 

 とりあえずもう一発殴られることを覚悟しつつ、まゆちゃんの頭を撫でながらモニターで『秘密のトワレ』を披露し始めた志希を見守るのだった。

 

 

 

 

 

 

「……なんかまゆ、肌艶よくない?」

 

「うふふふふふふ」

 

 志希の次にステージに上った北斗さんの次は、アタシたち『Peach Fizz』の出番だ。

 

 メインステージで披露されている『ROMANTIC SHAKER』を聞きながら、センターステージの下でまゆと共に待機しているのだが……先ほど合流したまゆは、何故かとても機嫌が良かった。

 

「さっき良太郎さん成分をこれでもかっていうほど補充しましたから……」

 

「何があったの……」

 

 リョータローさんが持ってきていたミルを使うことが出来ずに涙目になっていたまゆが、一体この短時間で何があったというのか……。

 

「とりあえず絶好調なのはいいけど、これから本番だから切り替えてね?」

 

「ご安心を! 今のまゆならば世界を相手に戦えますよぉ!」

 

 このライブ自体がある意味で世界レベルの注目は浴びてると思うけど……。

 

 まぁ、まゆに限ってそんなミスをするとも思えないから、アタシの杞憂だろう。

 

「気合い入れていくよ、まゆ!」

 

「はぁい! この123プロのみんなの大舞台で、最高の『Peach Fizz』をお見せしましょうね!」

 

 

 

 

 

 

「ってて……いくら拳であんまりダメージが通らないからって、鈍器に手を出すのは流石にダメだろ」

 

「そう言いつつもポットで殴られて割とピンピンしてるお前が怖いよ……」

 

 冬馬はそう言ってドン引いているが、躊躇なくポットを振り切った兄貴の方がもっと怖いと思う。ギャグ時空だったから許されているものの、これがサスペンス時空だったら普通に事件現場である。

 

「サスペンス時空だと、高町一家はどういう立ち位置なんだろうな」

 

「出禁だろ」

 

 あの一家がいる状況で殺人事件はおろか傷害事件が起きるとは思えなかった。少なくとも仕掛けられたボウガンから放たれた矢ぐらいだったら間違いなく切り捨てると思う。

 

 さて、ステージの上を見守りたい気持ちを抑えて次のブロックで披露するギターの準備のために舞台裏の奥にまで引っ込んできた。

 

「……ん?」

 

 ギターホルダーを身に着けるために衣装を少々整えていると、腹部の辺りになにかがくっ付いているのに気が付いた。

 

「……イヤモニ?」

 

 それはステージに立って歌うアイドルの必需品、イヤホンモニターである。ぶっちゃけ俺とか一定のレベルになると必要ない場合もあるが、あると歌いやすさが段違いなのは確かである。

 

「あれ、俺のやつはさっき返したよな……」

 

 イヤモニやマイクといった音響機器は着替えや準備の際に落として紛失することを防ぐため、基本的にステージから降りる度に一度音響さんに返すことになっている。

 

 それが何故ここに……? というか、そもそも誰のだ……?

 

 

 

(……ん? ()()()()()にくっ付いてた……!?)

 

 

 

 あ、これヤベェ奴だ!?

 

 

 




・三章の冒頭に登場して、約一年後に声が付いた
最初声無し組として登場しつつ、今ではボイスが付いてるアイドルも増えたなぁ……。

・いくら既婚者とはいえ好きな男の人
( ´3`)~♪

・信じるか信じないかは、お前次第だ
都市伝説好きだけど、陰謀論的な奴は好きじゃない。

・「自由を奪った状態で殴るなんて……!」
ツイッターで流行ってた牛の漫画。ファブルパロの奴が好き。

・カーンデジファー様に唆された武史君
アカネちゃん、武史君の美少女化かと思ってたけど予想の斜め上の設定だった。

・『拘束のまゆ』
『グラッシー帝国』の大幹部。
きらりんロボはアニメ化してる設定にでもしようかしら。

・『ROMANTIC SHAKER』
伊集院北斗のソロ曲。たった一人でムンナイに立ち向かった男。

・高町一家は出禁
しかし、京極真という例があったな……。



 ついにトラブル発生です。元ネタは『拘束のまゆ』(6th名古屋二日目舞台裏話)だったりします。

 さぁ、彼らは無事に切り抜けられるか!?



『どうでもいい小話』

 幕張公演良かった……仕事の関係で二日目のLVに参加出来なかったのが悔やまれる……振り返り公演を楽しみにしてましょう。

 次は、再び地元名古屋だ!



『どうでもいい小話2』

 お迎え祈願短編書く前に加蓮が引けましたので、お迎え記念の短編をツイッターにて公開中です!

 そして続いてやって来た蘭子お迎え祈願短編も公開中なので、そちらもよろしくお願いします!

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