アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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再びライブシーンに帰ってきました。


Episode43 Like a thunder!

 

 

 

 ――と、言うわけで、厳正なる審査の結果。

 

 ――栄えある『I love you』選手権の勝者は。

 

 

 

 ――『北沢志保』!

 

 

 

 勝者を告げる良太郎さんの声に、会場が一斉に沸き立った。

 

『当然の結果です』

 

 そう言いつつも、モニターに映る志保さんの口元はとても嬉しそうだった。

 

 ――いやぁ、散々フラグが立ってたのに、凄いね志保ちゃん。

 

 ――チクショウ。

 

 ――リョータロー君、もうちょっと本音を抑えて。

 

「いやぁ、しほりんが勝ったかぁ……ぶっちゃけ負けると思ってた」

 

「私も」

 

 勝者を讃える拍手を送りながら、未央がポツリと零した一言に私も同意する。どうやら今回ばかりはギャグ時空ではなかったようだ。

 

 ――というわけで、志保ちゃんが一人勝ち抜けと……。

 

『意地でも私を道連れにしたいようですね……!?』

 

 往生際の悪い良太郎さんの抵抗むなしく、これで志保さんの罰ゲーム回避は確定した。

 

 ――それじゃあ四人とも、覚悟はいい?

 

 ――詳しい順位は後にして、サクッと誰が最下位かを発表しちゃおう。

 

 翔太君の言葉に、再び緊張が走る。

 

 なんとなくそんな気がしていた一位以上に、誰になるか分からない最下位の発表はドキドキとする。ステージ上でも恵美さんとまゆさんは手を合わせて祈っており、美優さんも不安な表情でギュッと目を瞑っている。一人志希さんだけが相変わらず平然としていた。

 

 ――本当はみんな可愛かったんだけどね。

 

 ――残念ながら、今回の五人の中で最も順位が下になってしまったのは。

 

 

 

 ――『所恵美』!

 

 

 

『うあああぁぁぁ……』

 

 その名前が告げられた途端、呻き声を上げながら恵美が膝から崩れ墜ちた。オイオイと泣きマネをする恵美さんの背中をまゆさんが擦っている。

 

 ――いやぁ、本当に残念だったね。

 

 ――勿論恵美ちゃんの告白の演技も良かったんだけど……。

 

 ――これは僕たちの口からはちょっと言いづらいから。

 

 ――冬馬、代わりに総評を簡潔にズバッと頼む。

 

 

 

 ――無難すぎてインパクトが弱い。

 

 

 

『ごっはぁっ!?』

 

 はっきりと言い切った冬馬さんの言葉に、恵美さんは膝を突いたまま前に倒れ伏してしまった。これは先ほどの泣きマネとは違って本当らしく、まゆさんも『恵美ちゃん!? 傷は浅いですよしっかりしてください!』とやや焦りながら励ましの声をかけている。

 

 かなり辛辣な言葉だが……冬馬さんの言葉に思いっきり納得してしまった自分がいる。

 

 ――トップバッターだったから、っていうのもあるとは思うんだけどね。

 

 ――他の四人と比べちゃうと、パンチが弱かったんだよね。

 

 ――まぁ、志保ちゃんの告白だから、しょうがないのかもしれないけど。

 

『今、私、ディスられました?』

 

 ――じゃあ志保ちゃん本人だったらどんな告白だった?

 

『そ、それは……い、言えるわけないじゃないですかっ!』

 

 ――これ! 恵美ちゃんこれ! この顔を赤らめながら声を荒げる感じ!

 

 ――これを告白に絡めたら、きっと良かったんじゃないかな。

 

『くっ、ゴメン志保……! アタシ、まだ志保のこと理解(わか)りきれてなかった……!』

 

『お願いだから誰かツッコミ代わってくださいっ!』

 

 志保さん(しょうしゃ)良太郎さん(ざんていはいしゃ)恵美さん(はいしゃ)に弄られている構図に、会場からは笑いが起こるのだった。

 

 

 

『私たち、何をしてるんでしたっけ……』

 

『アイドルのライブですねぇ』

 

長いこと(一ヶ月以上)ミニゲームを続けておいて、その言い分が通じるんですか……?』

 

 『I love you』選手権という名の女性陣のミニゲームが終わり、後半戦は次のMCパートに持ち越しということになり、志保が疲れたように溜息を吐く。

 

『ここからまたライブを再開するわけなんだけどー……多分みんな「えっ、今更この空気感で盛り上がれるの?」とか思ってるんじゃないかなー?』

 

 恵美ちゃんが『どーよみんな?』と会場を見渡しながらそう呼びかけると、会場からは「そんなことはない!」と言わんばかりの歓声が上がる。

 

『うふふ、皆さん元気いっぱいですね』

 

『まーでもー……次はみんな絶対にブチ上がるから、その心配は最初から杞憂なんだけどねー?』

 

 微笑むまゆちゃんと不敵に笑う志希ちゃん。彼女の言葉に周りの観客たちと同じように私の期待も膨らんでいく。

 

「普通だったら『ハードル上げるなぁ』って思うところだけど……」

 

「そのハードルを軽々と越えてくるんだろうな、って思っちゃうところが良太郎さんたちだよね」

 

 奈緒と加蓮の言うように『期待を上回ること』ことを期待されているのに、さらにそんな期待を軽々と越えてくるのが『周藤良太郎』、引いては123プロダクションだ。越え方がたまに斜め上にぶち抜くこともあるが、それはそれで盛り上がる。……自分に実害がない、ということが前提だが。

 

『……準備も出来たみたいですので……早速始めていきましょう』

 

 

 

『さぁ……慄きなさい』

 

 

 

 志保さんのその言葉を皮切りに、会場の照明が徐々に暗くなっていく。観客たちは再びペンライトを点けながら席を立ちあがる。私もカチカチとペンライトのスイッチを押して色を変えながら立ち上がり――。

 

 

 

「っ!? これは……!?」

 

 

 

 ――隣から聞こえてきた卯月の声に、顔を上げた。

 

 目の前のモニターには、メインステージに立つ四人のシルエットが映し出されていた。

 

 流れ始めたイントロは、かつてフリーアイドルだった良太郎さんが961プロに所属していた『Jupiter』とコラボした際に歌った曲。961プロが版権を持っていたために披露出来ずファンは長いこと待ち続けた曲。そして……961プロから版権を買収することでついに()()()()()伝説の曲……!

 

 

 

『『『『……Alice(アリス)』』』』

 

 

 

 きゃあああぁぁぁあああぁぁぁ!!!

 

 

 

 『周藤良太郎』と『Jupiter』の四人による『Alice or Guilty』に、ドームが黄色い大歓声に包まれた。全く男性の声が聞こえなくなるぐらいのそれはすさまじく、私も隣から発せられた卯月のそれによってかなり耳がキーンとしていた。

 

 メインステージでは、両サイドを翔太君と北斗さんが固め、良太郎さんと冬馬さんがダブルセンターという形でダンスを披露していた。

 

 元々ジュピターの三人で披露するときでも十分ダンスが激しかったこの曲は、良太郎さんとコラボすることによってそのダンスはさらに過激なものになる。四人がコラボした当時もこのダンスは話題となり、ジュピターの三人が「悔しいが今では追いつくのがやっと」と雑誌のインタビューで答えていたことを思い出した。

 

 そのコラボ直後にジュピターが961プロを辞めたことで長らく公の場に出ることはなくなってしまったが、123プロが版権を買い取ることでそれは解消され、再び『Jupiter』を代表する曲として返り咲いたのだ。

 

 ……うん、こんなに詳しいのは卯月からの受け売りだよ。普段の卯月からは考えられないぐらいキラッキラした目で語るんだから、私も未央も若干押されちゃったよ。私も散々良太郎さんのことを色々話してきたから人のこと言えないんだけどさ。

 

 そんな『幻の曲』とも呼べる曲がこうしてドームという大きな舞台で、しかも以前と同じように『周藤良太郎』とのコラボという形で披露されているのだから、ファンからしてみれば夢にまで見たような光景だろう。勿論、『Jupiter』ファンだけじゃなくて私のような『周藤良太郎』ファンも同じだ。

 

 私たちは感謝しないといけないだろう。ステージの上で披露してくれている良太郎さんたちは勿論、買収のために手回しをしてくれた幸太郎さんと――。

 

 

 

 ――それに応じてくれた、961プロに。

 

 

 

 

 

 

「……ふん、忌々しい。よもや私の見ている前でコレをやるとはな」

 

「はっはっは、そう言うな黒井」

 

「そうだぞ。元とはいえ、自分がプロデュースしたアイドルの成長を喜んでみたらどうかね?」

 

「笑えん冗談を抜かすな。私に逆らった時点であいつらは用済みだ。どこで何をしようと私の知ったことではない」

 

「なら、どうしてこの曲を123へと手放したのかね?」

 

「………………」

 

「お前なりの、けじめではなかったのか?」

 

「……くだらん。私の事務所のアイドルに相応しくない曲を、はした金に替えただけだ」

 

(……()()()()()()()()()()()()()()()()のではないかね……と言いたいところだが)

 

(これ以上は黒井がヘソを曲げかねないな……くくっ)

 

「……なんだその顔は。大体――」

 

 

 

「ぴよおおおぉぉぉ! 今、良太郎君が冬馬君の顎をクイッて! クイッて! 分かってる! 良太郎君分かってる! 彼は! 需要というものを! 理解(わか)っているっ! あぁでも個人的には良×冬よりは冬×良の方が! 冬馬君のヘタレ攻めの良太郎君の誘い受けの方がっ!」

 

 

 

「――……き、貴様ぁ……!?」

 

「はっはっはっ、いやぁ音無君は今日も絶好調だね」

 

 

 

「……765と961は、とても愉快な方々なのですね」

 

「サイリウムを両手で八本持ちしている貴女がそれを言っちゃうんですね?」

 

「お一ついかがです?」

 

「貴賓室にサイリウムを箱で持ち込んだのは、貴女が初めてでしょうね」

 

 

 

 

 

 

「うわぁ……リョータローさん、ファンサービスが凄い」

 

 四人と入れ替わる形で舞台裏に戻ってきたアタシたち。水分補給をしつつモニターを見ると、丁度リョータローさんが曲の合間に冬馬さんの顎を人差し指で持ち上げる瞬間だった。

 

 普段ならば絶対にやらないだろうが、()()()()()()()()()()()()()()()()を把握しているリョータローさんはステージの上だと平気でこーゆーことをする。……いや、平気というか吹っ切れているだけというか。

 

「……卯月さん、アレを見て何を思ってるんでしょうね」

 

 ポツリと志保が呟く。確かに、大の天ヶ瀬冬馬ファンである卯月は今のをどういう感情で見ていたのだろうか……。

 

 ちなみに。

 

「………………」

 

 りょーいん患者筆頭のまゆは死んだ目でモニターを見つめていた。推しのライブを見ている目には到底見えなかった。

 

「ま、まゆちゃん……そろそろ準備を……」

 

「……えぇ、分かってます美優さん、分かってます……」

 

 美優さんに促され、不服そうにしつつも次の準備に向かうまゆ。

 

 アタシはそんなまゆに近付いてコソッと耳打ちする。

 

(ライブが上手くいったら、ご褒美にやってもらうといいよ!)

 

「っ!」

 

 カッと目を見開き、視線で(恵美ちゃんは天才ですか……!?)と語っているまゆ。いや、自分で言っておいてそれほど凄いことは言ってないと思うけど……。

 

「それじゃあ、気合い入れて頑張ってきますっ!」

 

 次はそんなノリの曲じゃないけどなーと思いつつ、勇ましく去っていくまゆの背中に「いってらっしゃーい」と見送るのだった。

 

 

 




・栄えある『I love you』選手権の勝者
・『北沢志保』!
まぁ演技でガチればこうなるよねっていうね。

・恵美、負け抜け決定
そして最下位は残念ながら恵美に。

・無難すぎてインパクトが弱い。
自分で書いててそう思っちゃった()
やっぱり最初に書くからこうなっちゃったのかなぁ……。

・良太郎とジュピターの『Alice or Guilty』
第二章終盤で披露したアレ。
『橘です』とか色々ネタにも使われるけど、『強者としてのJupiterの象徴』みたいでお気にいりの曲です。

・961から買収
実際アニメとかだとどうなってたのかは知らない。

・黒ちゃんのツンデレムーブ
何故この小説には基本的に男のツンデレしかいないのか……。

・ピヨちゃん&ミッシー絶好調
女性陣は楽しそうでなによりです()



 五人の順位は下のアンケート結果を参照してください。かなりの大差で正直びっくりしてる。

 そして久々にライブパートに戻ってきました。……長かったなぁ(小並感)

 ちなみに、早速『Alice or Guilty』の歌詞使用してみようかと思ったら、ジュピターの曲は全部使用不可でした。悲しいなぁ……。

 それでは皆さん……次は名古屋ドームでお会いしましょう!

『I love you』選手権 アナタは誰を選ぶ?

  • 『所恵美』による『北沢志保』
  • 『佐久間まゆ』による『一ノ瀬志希』
  • 『一ノ瀬志希』による『三船美優』
  • 『三船美優』による『所恵美』
  • 『北沢志保』による『佐久間まゆ』

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