アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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新年初の本編(外伝)更新です。

本格的にラストに向かっていきますよ。


Episode52 Like a HERO!

 

 

 

『よーし! トークバトル終わったから、みんなちゃんとスマホしまえよー』

 

『こっそり録音状態にしたままにするんじゃねぇぞー』

 

『このライブの現地に選ばれた人間ならば、誇りを持って行動しなさい』

 

『みんなー! 分かったー!?』

 

 

 

 はあああぁぁぁい!!!

 

 

 

 長かったミニゲームコーナーを終え、観客たちにスマホをしまうように促す良太郎さんたちの指示に従い、私たちも手にしていたスマホを鞄の中に仕舞う。

 

 

 

「それにしても、りあむちゃんだっけ? あの『周藤良太郎』が名前を挙げるんだから、凄い子なんでしょうね」

 

「申し訳ないけど、私は聞いたことない名前だったわ~」

 

「私も知りませんでした……」

 

「あ、さっきちょっとマミ調べてみたよー! なんかりょーにぃが好きそうなおっぱいおっきな子だった!」

 

「むぅ……それならミキだって負けてないもん!」

 

「きっとそれだけじゃないんだろうけど……うん、私もちょっとだけ後で調べてみようかな」

 

 

 

「「………………」」

 

 同じ関係者席故に聞こえてきてしまった765プロの皆さんのそんな会話に、私とかな子ちゃんは思わず顔を見合わせてしまった。きっと私もかな子ちゃんのように大変気まずい表情をしていることだろう。

 

 先ほど良太郎さんが口にした『夢見りあむ』ちゃんは現在の『シンデレラプロジェクト』に所属するアイドルであり、早い話が私たちの後輩にあたるアイドルだ。同じ事務所の先輩として、私たち元CPの面々も一度は彼女を含む『CP二期生』とも呼ばれる子たちと顔を合わせているのだが……。

 

 

 

 ――私たちのときにもチラッと思ったけど、これで確信したよ。

 

 ――プロデューサー、バラエティー方面で良太郎さんに勝つのは無理だと思うよ。

 

 

 

 真顔でプロデューサーさんにそう言い切ったのは、凛ちゃんだった。

 

 確かに二期生は控えめに言っても個性的なメンバーが揃っていて、その中でもりあむちゃんは最も際立ったキャラだった。未央ちゃんは彼女を『内面のスペックを女性的な体つきというステータスに極振りした杏ちゃん』と称しており、それを聞いた李衣菜ちゃんと莉嘉ちゃんは爆笑していた。……引き合いに出された杏ちゃんは少々苦い顔をしていたけど。

 

 そんな未央ちゃんの言葉を正面から肯定するわけではないのだが……その、確かにりあむちゃんは少々面白い性格をしていることは確かだった。少なくとも良太郎さんが感心したような強いメンタルは持ち合わせておらず、麗華さんや天ヶ瀬さんや天海さんたちが興味を抱くような人物とは少し違うのではないか……というのが素直な感想である。

 

「りあむちゃん、大丈夫かな……」

 

「う、うーん……」

 

 心配そうなかな子ちゃんの言葉に、流石に手放しで「大丈夫」とは言えなかった。きっと今のトークを聞いていた人たちがこぞって彼女のことを調べ始めることに違いない。そして彼女のSNSに辿り着いて、彼女の普段の言動を目の当たりにしてしまい……。

 

(……や、やっぱり後で誤解を解いておいてあげた方がいいかな……?)

 

 このままではこれまで以上に炎上をしてしまいそうだから、少し私の方からフォローをしておいてあげた方がいいだろう。

 

「でも、多分凛ちゃんがフォローのメッセージを良太郎さんにしてくれるだろうから、きっと大丈夫だよね」

 

「……そ、そうよね」

 

「?」

 

 別に私がメッセージを送る理由なくなってガッカリとかしてないもん。

 

 

 

 

 

 

『それじゃあ俺たちは下がるが……麗華たち魔王エンジェルの三人は、また後で出てきてもらうからな』

 

 

 

 おおおぉぉぉ!?

 

 

 

『ったく、しょうがないわね』

 

『それじゃあオメェら、次に行く準備はいいか!?』

 

 

 

 おおおぉぉぉおおおぉぉぉ!!!

 

 

 

『それじゃあ……頼むぜ、二人とも!』

 

 

 

 

 

 

『アナタの瞳に映る私は、ただの子猫?』

 

『爪を立てられても知らないわよ?』

 

 

 

 わあああぁぁぁあああぁぁぁ!!!

 

 

 

 舞台裏に戻りながら、ステージに上がった『Cait Sith』の二人によるユニットデビュー曲『黒猫は遥か高みの夢を見る』に盛り上がる観客たちの歓声を耳にする。

 

 俺の出番はこの四曲後だから、少しぐらいは休憩出来るな。

 

「良太郎さぁん、お飲み物をお持ちしましたぁ!」

 

 何か飲み物でも、と考えていると丁度タイミングよくまゆちゃんが現れた。手にはアイスコーヒーの入ったグラスが。

 

「ありがとう、まゆちゃん」

 

「いえ。……その、ミニゲームは残念でした……」

 

「あぁ、俺は気にしてないから大丈夫だよ、ありがとう」

 

 勿論、誰だって罰は受けたくないが、兄貴が考えている罰ゲームならばきっとそれほどひどいものではない上に、何かしらの利益が発生するようなものになっていることだろう。具体的に言うと円盤の特典映像的なサムシングに。

 

 そんなやり取りをしつつ、まゆちゃんから受け取ってアイスコーヒーを一口。

 

「……あれ、これってもしかして翠屋の?」

 

 控室に置いてあった市販のアイスコーヒーだと思って飲んだら、予想外の飲み慣れた味で少々驚いた。

 

「はぁい! 上手く挽けて良かったですぅ!」

 

「……ん? ()()()?」

 

「良太郎さんの道具をお借りしまして……」

 

「本当に一から挽いたの!?」

 

 その知識が無くて俺に泣きついてたの、まだ一時間ぐらい前の話だよね!?

 

「そもそもこれ水出しじゃん……!?」

 

 明らかに時間が足りていないのだ!

 

「えっと、ギュッとしてドーンってやってからエイって……」

 

 説明は可愛らしいのだが、本当に何も分からなかった。……いいや、この世の中には知らない方が幸せなことなんていくらでもあるし、きっとこれもそのうちの一つなのだろう。美少女が淹れてくれた美味しいアイスコーヒーという認識だけ持っておこう。オイシイナー。

 

「まゆー! 次の次なんだから早く準備準備ー!」

 

「はぁい、今行きまぁす! それじゃあ、良太郎さん」

 

「うん、行ってらっしゃい」

 

「行ってきまぁす!」

 

 恵美ちゃんに呼ばれてパタパタと去っていくまゆちゃんの背中を見送る。

 

「……それで、りんは何してるの?」

 

 視界に入ってはいたものの触れるタイミングを失っていたが、休憩場所の片隅では先ほどからりんがこちらに背中を向けてスマホを操作していた。

 

「さっきリョウが言った『夢見りあむ』って子のことを調べてるみたい」

 

「なるほどね」

 

「……お、おっきい……いや、アタシも負けてないし……トップとアンダーの差で寧ろ勝ってるから……多分……」

 

 ブツブツと何やら聞こえてくるが、別に俺は胸の大きさだけで彼女のことを注目したわけじゃないんだけどなぁ。

 

「違うの?」

 

「入口がそうだったということは否定しない」

 

 いやあの低身長のこじんまりした体躯にあの胸だよ? 興味惹かれるに決まってるじゃないか。

 

(……無意識にりんと似たような子に惹かれた……っていうのは、都合のいい解釈かな)

 

「何?」

 

「なんにも」

 

 なにやらともみの目が暖かくなっていたような気がしたが、気のせいらしい。

 

「りょーくん! 今度アタシもこの子が着てるようなTシャツ着てみようと思うんだけど!」

 

「マジで!?」

 

 それを見ることが出来るのであれば大変喜ばしいのだが、果たしてそれは公に披露していいものなのかどうか真剣に悩んでしまった。

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

「冬馬君? どうかした?」

 

「……別に、なんでもねぇよ」

 

「そう? 『罰ゲームざまぁ』とか嘲笑ってたりしない?」

 

「それは済ませた」

 

「済ませてた……」

 

 そう苦笑しつつ、翔太は「それじゃあどうしたのさ」と首を傾げる。別に何もないと言っているのだが……コイツはその答えで納得はしないだろう。

 

「……もしかして、この後の曲のことで緊張してる?」

 

「今更俺がステージで緊張するとでも思ってんのか?」

 

「思ってないよ、それが()()()()()ならね」

 

「………………」

 

「少なくとも僕だったら凄い緊張する自信があるよ」

 

 何も答えていないのも関わらず、苦笑する翔太が勝手に話を進める。

 

 

 

「何せ、実質『周藤良太郎』との()()()()になるんだから」

 

 

 

「……ただいつも通りにステージに立っていつも通りに歌うだけだ。対決も何もねぇよ」

 

「勿論冬馬君も、なんだったらリョータロー君もそう思ってるだろうね。でも実際にあのゲネを観た僕たちからしてみたら……あれは今まで現実することのなかった『周藤良太郎』と『天ヶ瀬冬馬』の直接対決に見えたよ」

 

「良太郎だけじゃなくて、お前らも目ぇ悪くなったんじゃねぇか?」

 

「少なくとも僕は両目1.5だよ」

 

 ヘラヘラと笑う翔太に少々イラッとした。

 

「……正直な話、結構嬉しいんだよ」

 

「……嬉しい?」

 

 その感想は予想外で、思わず聞き返してしまった。

 

「冬馬君が僕たちとのユニットを大切に思っていることは分かってるよ。でも、それと同じぐらい『周藤良太郎』への挑戦をいつだって忘れていないことぐらい分かってる」

 

「………………」

 

「勿論俺も翔太も、『周藤良太郎』に勝ちたいって思ってるさ。それぐらいの野心は持ち合わせてる」

 

「北斗……」

 

 いつの間にか近付いてきていた北斗が翔太の肩に手を置いた。

 

「でも俺たちの中で、周藤良太郎に手が届くのは……冬馬、お前だ」

 

「だから、冬馬君」

 

「だから、冬馬」

 

 

 

「「勝て」」

 

 

 

「……ったく、なに二人して盛り上がってんだよ」

 

 正直に言うと考えないようにしてた。それを意識するだけで手が震えそうになるから。

 

 でもそれは確かに、俺が待ち望んでいたことでもあった。

 

 『周藤良太郎』。あらゆるアイドルの頂点に立ったと称しても過言ではないアイドルであり、俺が常に越えたいと目標にし続けた男。俺たちがデビューした頃には既にトップアイドルとなっていて、並び立つどころか足元に辿り着くことすら果てしない道のりだった。

 

 しかし、今。こうしてついに。

 

 『Jupiterの天ヶ瀬冬馬』としてではなく、一人のアイドル『天ヶ瀬冬馬』として奴の正面に立つ機会を得たのだ。

 

「……言われなくても、勝ってやるさ」

 

 拳が届く距離にいる。

 

 だから、全力で『周藤良太郎』に殴り掛かる。

 

「あぁ、勝つんだ」

 

 

 

 それ以外、もう何も考えない。

 

 

 

「……まぁ、その前に『Jupiter』としてのステージがあるんだけどな」

 

「ゴメンね。盛り上がらせちゃったけど、そのスイッチはそっちが終わってから切り替えてね」

 

「だからオメェらは上げてから堕とすんじゃねぇよおおおぉぉぉ!?」

 

 

 




・りあむ@注目の的
ギャグ時空のアイ転だから無事だけど、本家のりあむだったらガチで胃潰瘍とかになってもおかしくないと思う。

・バラエティー方面で良太郎さんに勝つのは無理だと思う
んごリンゴ娘、♯ギザ歯ネット娘、黒白主従、マンションポエム姉……。
突っ込み兼苦労人枠がはーちゃんに決定した瞬間である。

・『内面のスペックを女性的な体つきというステータスに極振りした杏ちゃん』
※個人の感想です。

・『黒猫は遥か高みの夢を見る』
ケットシーの二人の楽曲。(電気羊とかは関係)ないです。
相変わらずのネーミングセンスである。

・「ギュッとしてドーンってやってからエイって……」
まゆちゃんがギュッってしたぞ!

・『周藤良太郎』との直接対決
魔王 VS 勇者 の構図である。



 年が明け、ようやくアイ転の本編に戻ってきました。

 外伝が始まり一年が経ち、ようやく終盤戦です。とはいえ皆さんももうなんとなく気付いているでしょうが、ちまちまと長引く可能性があるので……気長に読んでいただけるとありがたいです。

 ……そろそろ総選挙に向けて、新しい応援小説考えねば……。

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