アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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※今話のために前々話の一部分をサイレント修正しました。


Lesson248 だいっきらい! 3

 

 

 

「翼がどんな子か……ね」

 

 未来からの問いかけに対する答えを、ストレッチをしながら少し考える。

 

「……何から言えばいいのかしら」

 

「それじゃあスタイルから聞いてみようかな」

 

「それ本当に聞かなきゃいけないこと!?」

 

 この状況で何故それを真っ先に尋ねたのか。

 

「……まぁ、スタイルはいいわ。同年代とは思えないぐらい」

 

「なるほど……」

 

 未来との短い付き合いの中で初めて聞く真面目な声が、どうしてこんな場面だったのだろうかと自分自身に問いかけたい。

 

「私は346プロの棟方愛海ちゃんを魂の師として仰いでるから」

 

「誰もそんなこと聞いてないわよ!」

 

 真剣な目で「いつか、そんな彼女が慕っていると噂される『大師匠(グランドマスター)』に会うのが私の夢なの……!」と語る未来に、一瞬だけ本気で彼女を事務所に招き入れた責任みたいなものを感じてしまった。

 

「性格は……このみさんは『天真爛漫な甘え上手』って言ってたわ」

 

 これは本当に的を射た表現だった。

 

 翼には兄と姉がいるらしく、そのせいか根っからの末っ子気質。無意識に『許されること』のギリギリを見極めているようで、彼女からの本気のお願いを断れる人は殆どいない。

 

 しかし彼女のことを語ろうとすると、重要なところは『甘え上手』ではなく『天真爛漫』という点である。天真爛漫、というか自由気ままのマイペース。他人の都合よりも自分の都合を優先しようとするタイプの人間だ。

 

「あまり私と合うタイプの子じゃないわ」

 

「ふーん」

 

 きっと今も、街中をフラフラと歩いていることだろう。

 

 

 

 

 

 

「アイスありがとーね! 眼鏡のお兄さん!」

 

「次はちゃんと気を付けるんだよ」

 

「はーい!」

 

 店員さんから再度三段アイスを受け取り、少女は花が咲くような満面の笑みを浮かべた。

 

 ようやく正面から向かい合うことで彼女の顔を見ることが出来たのだが、やはり想像通り、いや想像以上の美少女だった。

 

 彼女の溌剌とした元気の良さを表すかのように明るい金髪に緋色の瞳。身長と顔立ちの幼さから、多分中学生ぐらい……だと思われる。そこに自信がないのは、彼女の胸部が大変豊かに育った大乳だからだった。多分志保ちゃんと同じぐらいあるだろうが、身長的に彼女の方が大きく見える。

 

(……おや、この子……)

 

「あっ、お兄さん、わたしの体ジロジロ見てどうしたのかな~?」

 

 俺の視線に気付いたらしい少女がニヤニヤと笑いながら俺の顔を覗き込んできた。そういう立ち位置に来ると余計に胸の大きさが際立って……痛い痛い、なのはちゃんゴメンって、二の腕抓らないで。

 

「いや失敬、余りにも可愛いもんだから、思わず見入っちゃったよ」

 

「え~? も~お兄さん上手だな~!」

 

 素直に答えると少女はテレテレとハニカミ嬉しそうだった。……痛い痛い、だからなのはちゃんゴメンって、二の腕叩かないで。

 

 さて、少々のハプニングはあったものの当初の目的であるクレープは買えたから、このままなのはちゃんとのデートの続きを――。

 

「二人は恋人さんなの?」

 

 ――しようと歩き始めたら、何故か少女も付いてきた。

 

 もし成人男性と小学生女子が並んで歩いている姿がそう見えるのだとしたら、それは早苗ねーちゃん案件になってしまうので是非とも勘弁願いたいのだけど。

 

「ち、違います! きょ、兄妹です!」

 

「ふーん」

 

 しかしなのはちゃんがそれを否定してくれた。実際には「みたいなもの」ではあるが、そこまで詳しく説明するほどのことじゃないだろう。

 

「それで、俺たちに何か御用かな?」

 

「んー用ってほどじゃないんだけど、なんとなくちょっとお話してみたいな~って」

 

 俺を挟んで反対を歩くなのはちゃんの顔を覗き込みながら、少女は「デート中にゴメンね~」と笑いかけた。なのはちゃんは「は、はぁ……」と困惑しつつもそれを拒否せず、ついでにデートであることも否定しなかった。お兄さん地味に嬉しい。

 

「改めて、アイスありがとうね、お兄さん! わたしは――」

 

 

 

「――伊吹翼ちゃん」

 

 

 

「……えっ!?」

 

 俺が名前を言い当てると、少女改め翼ちゃんは驚いて目を見開いた。

 

「なんでどーして!? もしかして、お兄さんエスパー!?」

 

「実はそうなんだ。だから君の考えていることも筒抜けで……」

 

「今、わたしのスリーサイズ考えてみたんだけど」

 

「……っていうのは冗談でぇ」

 

 チクショウ! なんで俺には本当に読心能力がないんだ!

 

「パンフレットで見たからね」

 

「えっ」

 

 そう、彼女は『765プロライブ劇場』のパンフレットに載っていたのだ。

 

「これでもアイドルに関しては色々と詳しくてね。765プロのシアターアイドルの伊吹翼ちゃんだよね?」

 

「……あ~バレちゃったか~」

 

 口では「しまったなぁ」と困りつつも、顔では満更でもなさそうに笑っていた。

 

 静香ちゃんも亜利沙ちゃんもそうだが、シアター組二期生の子たちはまだ知名度が微妙なので変装をしている子が殆どいないので、しっかりと顔を見ることが出来ればすぐに分かった。

 

 そう、俺が彼女のことをじっくりと見ていたのはそのためだったのだよ!

 

「改めて、伊吹翼です! プライベートだから、サインはお断りだよ!」

 

 少女改め翼ちゃんは、そう言いながらパチリとウインクをした。

 

「それは残念。俺は……そうだな、アイドル好きのリョーさんとでも名乗っておこうかな」

 

 最近よく使う偽名というか通称をここでも使う。これからもシアター組のアイドル相手にはこの名前で統一することにしよう。

 

「こっちは妹の……」

 

 なのはちゃんのことを紹介しようと思い、どうしようかと考える。

 

 なのはちゃんも既にメジャーデビューしているアイドルなので、そのまま本名で紹介するのはダメだろう。となると、彼女も俺と同じように偽名か通称を使ってもらうことになるのだが……そうだなぁ。

 

 

 

「ナッパちゃん」

 

「ナッパちゃん!?」

 

 

 

「ダメだった?」

 

「寧ろダメじゃないと思ったの!?」

 

 どうやらお気に召さなかったらしいなのはちゃんが「どうして相変わらずネーミングセンス皆無なの!?」という軽い罵倒と共にベチベチと再び二の腕を叩いてきた。

 

「りょう……じゃなくて、リョーさんと同じで『なーちゃん』で良かったでしょ!?」

 

「いや、その呼び方は将来別の人に使われるような気がしたから、今から枠を潰すのも忍びないなって思って……」

 

「いつ書かれるか分からないようなお話の考慮なんてしなくていいの!」

 

 うーん、面白い呼び方だと思ったんだけどなぁ……。

 

「あっはははっ! お兄さんのネーミングセンス変なのー!」

 

 俺たちのやり取りを見ていた翼ちゃんがお腹を抱えて笑っていた。目元にうっすらと浮かんだ涙を拭いながら「それじゃあさぁ」と問いかけてきた。

 

「わたしだったら、どんなニックネームにする?」

 

「翼ちゃんの?」

 

「そーそー!」

 

 よく分からないが、恐らくこれは俺のネーミングセンスを試されているようだ。ならばここは一つ、気合いを入れて素晴らしい名前を進呈してみせよう。

 

「そうだな……翼……つばさ……ツバサ……」

 

 ……閃いた!

 

 

 

「タッキー」

 

「タッキー!?」

 

 

 

「個人的には渾身の出来」

 

「色々と待って!? いぶきだから『ブッキー』ぐらいは予想してたけど、タッキー!? タは一体何処から来たの!?」

 

「いや……翼ならタッキーかなぁって」

 

「発想が異次元過ぎて本当に訳分かんないんだけどー!」

 

 ツボにはまったらしい翼ちゃんは、街中だというのにその場に蹲ってゲラゲラと笑い出してしまった。

 

「どうやらお気に召してもらったようで何よりだよ」

 

「多分そういうのじゃないと思うの……」

 

 

 

「あー笑った笑ったー」

 

 一通り大笑いして満足した様子の翼ちゃん。気に入ってくれたのかと思いきや、実際に『タッキー』と呼ぼうとするとノーサンキューを突き付けられてしまった。どうして。

 

「もしかしてお兄さん、芸人さん? ちょっと変装してるようにも見えるし」

 

 おっと、そういう見解をされたのは初めてだな。

 

「芸人ではないけど、テレビ関係の仕事ではあるよ。カメラの前に出ない仕事」

 

 これは初めて亜利沙ちゃんと会ったにした説明と同じ設定である。

 

「つまり『ぎょーかいじん』ってやつ!? すっごい! それじゃあ……」

 

 なのはちゃんに視線を向けながら「君の方が本物の芸能人だったりするのかな?」という疑問を投げかけてくる翼ちゃん。まさかのなのはちゃんへの流れ弾である。避けろナッパちゃん!

 

「え、えっと……まだ、違います」

 

「おっ? まだっていうことは、もしかして……」

 

「はい」

 

 ニッコリと笑いながら頷くなのはちゃん。どうやらなのはちゃんは明言せず、翼ちゃんの想像力に任せる方法を取ることにしたらしい。いやまぁ明言してないっていうだけでゴリゴリの嘘なんだけどね。銀幕デビュー決定してるでしょ貴女。

 

「私、昔色々あって辛かった時期にアイドルの『周藤良太郎』さんの歌とダンスで、助けてもらったことがあるんです。だから、私も誰か悲しんでる人を助けてあげられるようなアイドルになりたいなぁって、そう思ってるんです」

 

「……ナッパちゃん」

 

「私結構いいこと言ったんだからその呼び方ヤメテよぉ!?」

 

 まさかなのはちゃんがそんなことを思ってくれているなんて……思わず涙が零れそうになり、眼鏡を外さないように気を付けながらそっと目元を拭う。

 

 

 

「……好きなんだ、『周藤良太郎』」

 

 

 

 突然、翼ちゃんの声のトーンが低くなった。

 

 いつの間にか足を止めていた翼ちゃんに振り返ると、彼女は困ったように眉を潜めながら唇を尖らせていた。

 

「翼ちゃん……?」

 

 

 

 

 

 

「なんか話を聞く限り、私、仲良くなれるような気がするな~」

 

「寧ろ貴女が仲良くなれない子ってどんな子よ」

 

 初対面の私に勢いよく突撃してきた未来に、苦手な人なんているのだろうか。

 

「……あぁ、そうそう、翼には一つだけ()()があるから覚えておいた方がいいわよ」

 

「地雷?」

 

 好きなものは好き、嫌いなものは嫌いと、はっきりと口にする翼。

 

 そんな翼が()()()()()()ことすら嫌な顔をする地雷。

 

「翼はね――」

 

 

 

 

 

 

「……わたしは、嫌い」

 

 

 

 

 

 

 ――765プロで唯一の『周藤良太郎』ギライなのよ。

 

 

 




・「棟方愛海ちゃんを魂の師として」
・『大師匠』
書ける日が楽しみです!

・多分志保ちゃんと同じぐらいあるだろうが
原作では同い年の二人でしたが、アイ転では志保ちゃんの方が二歳年上で、さらに身長や胸部も育っている模様。

・ナッパちゃん
良太郎のクソダサネーミングセンスの餌食に……。

・『なーちゃん』
シャニの担当なので、絶対に出ます(鉄の意志)

・タッキー
翼と言えば。

・避けろナッパちゃん!
勿論竜玉。今の日本ならばこの辺りもそろそろ女体化しそう。



 次回シリアス……だと思った? 残念、ネタなんだなぁ……。
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