アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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本編はママでもこちらでは……?


番外編61 もし○○と恋仲だったら 23

 

 

 

 それは、あり得るかもしれない可能性の話。

 

 

 

 ――某理髪店店主の反応。

 

「……え、あの二人が? ……いや、勿論めでたいんだけど、なんというか『ようやくか』っていう感想なんだよな。昔っから一緒だったし、収まる所に収まったというか。なんにせよ、二人が幸せなら一番だよ」

 

 

 

 ――某八百屋店主夫人の反応。

 

「周藤さんのところの良太郎君と、二階堂さんのところの千鶴ちゃん!? あらホントに!? まぁビックリ……はしないわね。順当な結果じゃない? 二人ともずっと仲が良かったし、二階堂さんも良太郎君のことを気に入ってたみたいだし」

 

 

 

 ――某居酒屋店員の証言。

 

「……え、寧ろまだくっついてなかったの? まだそのときじゃないから公表してないだけだと思ってたのに、純粋にくっついてなかっただけなのか。……まぁ、二人とも素直にならなさそうな雰囲気あるからなぁ」

 

 

 

 ――某青果店長男の証言。

 

「……特に興味はないが……ふん、アイツらは間違いなく()()だ。今更何があろうともどうこうなるような奴らじゃない」

 

 

 

 ――某小学校教員の証言。

 

「なに!? 良太郎と千鶴君が!? それはめでたい! ……思えば、千鶴君はまだ今のように前向きでなかった頃の良太郎の身をずっと案じていたんだったな……おめでとう、二人とも! 今度またラーメンでも奢ろうじゃないか!」

 

 

 

 ――某寿司屋大将の証言。

 

「二人ともアイドルだから、公表したとなると世間の風当たりは強くなるんじゃないかな……まぁ、二人ともいざとなれば地元に帰ってくればいいだけだからな! うちの商店街のみんなは良太郎と千鶴ちゃんが大好きなんだから! 幸せになってもらわないと!」

 

 

 

 

 

 

「……なんか、わたくしが思っていた反応と違いますわ」

 

「何を今更」

 

 私と良太郎が交際していることを世間に公表……する前に、商店街を中心に信用のある人たちに打ち明けて早一週間。それはもう大騒ぎになるものだとばかり考えていたが……その予想に反して、みんなの反応はアッサリとしたものだった。

 

「普通……こう『えぇ!? あの二人が!?』みたいな感じになりません!?」

 

 仮にもアイドルとアイドル、しかも両者ともに昔からよく知っている二人が交際を始めたのだから、驚く要素は沢山あるはずなのだ。

 

「寧ろ何でそうなると思ったの」

 

 たまたま立ち寄った渋谷生花店でその疑問を吐き出したのだが、店番をしていた凛は呆れた様子でため息を吐いた。

 

「千鶴さんと良太郎さんが付き合ってるなんて噂、もう半年前からずっと流れてるよ」

 

「半年前!?」

 

 それは実際に私と良太郎が恋人になるよりも前じゃないですの!? 寧ろ噂通りに恋人になってしまったということじゃないですの!?

 

「商店街の人たちはみんな『周藤良太郎』のファンで、二階堂精肉店の看板娘『二階堂千鶴』が大好きだから。その二人が恋人っていうなら静かに見守ろうっていう流れになるのは自然なことだよ」

 

「そ、そもそもどうしてそんな噂が流れるんですの……!?」

 

「……知りたいの?」

 

 どうして凛は『今から怖い話するけど』みたいな雰囲気を醸し出しているのだろうか。

 

「まぁ、千鶴さんが聞きたいっていうなら話すけど……どの話がいいかな」

 

「ちょっと待ちなさい」

 

 ポケットからスマホを取り出したところでストップをかける。

 

「何を見ようとしてますの……?」

 

「千鶴さんと良太郎さんの目撃情報の掲示板」

 

「掲示板!? 商店街の方々はわたくしの知らないところでそんなものを使って情報交換してましたの!?」

 

「回覧板だけだと千鶴さんにバレる可能性があったから。……はいコレ、公表前のやつ」

 

 というか、今回まさかの掲示板回ですの!?

 

 

 

 

 

 

【商店街の希望】S・RとN・Cを見守るスレ【我らの誇り】

226:八百屋

R&Cがウチの前を通過。

体の影で見づらかったが手は繋いでいない。

 

227:理髪店

平日の昼間とはいえ今日はちょっと人通りが多いからな。

二人とも遠慮してる感がある。

 

228:煙草屋

いつになったら二人の子どもを見れるのかしら。

この手でCちゃんの子どもを取り上げるまでは死ねないわ。

 

229:魚屋

>228 なぁに時間の問題よ。あの二人ならくっついちまえばすぐよ。

 

230:薬局

>228 スマホを巧みに操りこうやって掲示板を利用している時点で、当分お迎えは来ないだろうけどね。

 

231:バイク屋

>228 こんな八十代見たことない。

 

232:煙草屋

>231 まだ79だ口の利き方には気を付けろよ小僧

 

233:バイク屋

ひぇ……

 

234:生花店(長女)

 

245:八百屋

菜っ葉

 

246:弁当屋

バラン

 

247:生花店(長女)

 

248:生花店(長女)

【速報】R&C、人通りが少なくなったところで手を繋ぐ

 

249:理髪店

>248 でかした

 

250:八百屋

>248 やったぜ

 

251:煙草屋

>248 詳細キボンヌ

 

252:弁当屋

ウチからも確認した。

Rはいつも通りだがCははにかんでる。可愛い。

 

253:精肉店

ウチのCはいつだって可愛いだろいい加減にしろ!!

 

254:魚屋

>253 大将! そろそろ新鮮なR&Cネタ仕入れてないかい!?

 

255:古書店

>>254 魚屋がそれを言うのか……。

 

256:精肉店

ウチだと隠す必要もないが、一応親の前ということで大っぴらにはイチャついてない。

しかし陰でイチャついてる。

 

257:煙草屋

>256 詳細キボンヌ

 

258:薬局

>256 葉っぱ

 

259:弁当屋

>258 お前がそれ言うとシャレにならねぇんだよぉ!

 

260:精肉店

Rが夕飯食べに来るとな。

食卓の下でお互いの爪先でイチャイチャしてる。

 

261:理髪店

うひょぉぉぉ!!

 

262:八百屋

ベタだなぁ(だがそれがいい)

 

263:煙草屋

寿命が十年伸びた。

 

264:精肉店

バレてないと思ってるんだろうなぁ。

よく見るとCもRを見ながらニマニマ笑ってるの。

Rは表情変わらんから、反応を楽しんでるんじゃなくてアレは純粋に相手の顔を見て幸せに浸ってる。

 

265:古書店

尊み秀吉

 

266:中華料理屋

めっちゃええ庵

 

267:煙草屋

寿命がさらに十年伸びた。

 

268:バイク屋

>267 めっちゃ寿命伸びてて草

 

 

 

 

 

 

 ――何をしてくれてんですのお父様あああぁぁぁ!!??

 

 ――というか貴女も何してくれてんですのおおおぉぉぉ!!??

 

 

 

「ん?」

 

 なんか渋谷生花店の前を通ったら、やや聞き慣れない荒っぽい口調の聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

 一体何事かと店内を覗いてみると、そこには店番をしている凛ちゃんと何故か真っ赤になった顔を両手で押さえている千鶴がいた。

 

「一体何事?」

 

「あ、良太郎さん」

 

「っ!? りょ、良太郎……!?」

 

 いらっしゃーいと手を振る凛ちゃんに対し、顔を上げた千鶴は真っ赤な顔の上にさらに涙目にもなっていた。めっちゃ可愛いけど、本当に何事だろうか。

 

「こ、これ……!」

 

 千鶴の震える手の中には彼女のスマホが。珍しく掲示板なんてものを開いているようで、一体何を見て……。

 

「……あぁ、俺たちの目撃情報掲示板?」

 

「知ってましたの!?」

 

 ヒント:この商店街に『バイク屋』なんてものは存在しない。

 

「それだけ俺たちが商店街の人たちに応援されてるってことなんだから、素直に喜ぼうぜ」

 

「わたくしは貴方ほど厚顔無恥じゃありませんのよ……!」

 

 今まで自分たちが秘密裏に行っていると思っていた恋人同士のやり取りが商店街の住人に筒抜けだったのだから、まぁ恥ずかしがる気持ちは分かる。

 

「確かに『二人で並んで歩いてるときに「夫婦みたいですわね」って手を繋いだ』ことや『こっそりクレープをお互いに「あーん」してた』ことや『千鶴の部屋で「今日の私は甘えんぼなのー」って言って膝枕を要求してきた』ことが、全部知られていることは事実だ」

 

「貴方はわたくしを慰めたいんですの!? トドメを刺したいんですの!?」

 

 再び両手で顔を覆い「その事実を知りたくありませんでしたわあああぁぁぁ!」と叫びながらその場に蹲ってしまった千鶴。

 

 凛ちゃんが「R&Cがウチの店内で羞恥プレイなう」と書き込んでいるのを尻目に、俺は千鶴の側にしゃがみ込む。

 

「ホラホラ、今日はウチに泊まりに来るんだろ? 早く帰ろうぜ」

 

「どうして貴方は徹底的に餌を撒きに行きますの!?」

 

 涙目を通り越して滂沱の涙を流しながら「ホラ! 凛が早速打ち込んでるじゃありませんの!」とまるで子どものように凛ちゃんを指差す中、俺は彼女の両脇に手を差し入れて無理やり彼女を立たせる。その際胸の柔らかさをしっかりと堪能するが、既に()()()()()()()()()()()恋人同士なので問題はないと勝手に判断した。

 

「凛ちゃん」

 

「……はいはい。全く、人んちでイチャつかないでよね」

 

 そう言いつつ、凛ちゃんは俺の意図を汲んで店の奥に引いてくれた。

 

「……さぁ、千鶴」

 

「………………」

 

 珍しく完全に不貞腐れてしまっている千鶴がとても可愛い。

 

「ホントにゴメン。ちょっと意地悪しずぎたな」

 

「……本当ですわ。貴方じゃなかったら嫌いになっていますわ」

 

「そうだな、俺もお前じゃなかったらこんなことしない」

 

 そう、例えばの話。俺の恋人が千鶴じゃなくて、例えばりんだったり、美希ちゃんだったり、まゆちゃんだったり、凛ちゃんだったり、そういう可能性があったとしても。

 

 

 

 きっと俺は、千鶴以外にはこんなことをしない。

 

 

 

()()()()からずっと俺と一緒にいてくれたお前だからこそ、ちょっとだけ意地悪がしたくなっちゃったんだよ」

 

「……性悪」

 

「そうだな」

 

「変態」

 

「それも甘んじて受け入れよう」

 

「……大好き」

 

「俺も」

 

 流石にこんなところでキスはしないけれど。

 

 コツンと額を軽く合わせる。

 

「千鶴」

 

「……なんですの」

 

 

 

「愛してる」

 

「……私も、愛してる」

 

 

 

 

 

 

「『REC』」

 

 ……さて、千鶴が店の奥に気付く前に帰ろうかね。

 

 

 




・某青果店長男
口調こんなんだけど、妹健在なのでいい兄ちゃんやってます。

・某小学校教員
本編でいずれ登場予定(確定枠)

・>
掲示板形式特殊入力フォーム使ってなかったから、変なことにならないように>>から一つ消して使用中。



 『ただひたすら千鶴さんを赤面させたい』というテーマでお送りした恋仲○○でした。本編だとお母さんだったけど、ちゃんと女の子というか乙女させてあげたかったんや。

 次回は本編に戻りましていよいよ始まります『アイル編』……と言いたいのですが、最近ちょっと珍しく執筆のモチベが急下降しておりますので、モチベ維持のために番外編に逃げる可能性があるのでご了承ください。



『どうでもいい小話』

 メジロマックイーン可愛いですね(訳:とりあえずウマ娘リセマラ終わらせました)

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