アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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初登場キャラ祭り!


Lesson268 少女たちの夏の始まり 2

 

 

 

「それでですねぇ、さっきも私たち三人で新しい衣装合わせをしてきたんです!」

 

「そーそー! すーっごく可愛い衣装だったんだ!」

 

「へぇ……それも事務員さんが一人でねぇ……マジで?」

 

「……マジなんです……」

 

 喜々として自分たちの衣装事情を語る未来ちゃんと翼ちゃん。確認するように話をすると、静香ちゃんはなんとも言えない表情で頷いた。

 

 三十七人分の衣装を一人で作成って……。

 

123(ウチ)の衣装もお鶴さんが殆ど一人で作ってるけど、上には上がいるもんだなぁ……)

 

 実は血縁者とかいうオチだったりして。

 

 とまぁそんな感じに、翠屋へとやってきた未来ちゃんと静香ちゃんと翼ちゃんの三人に混ざって談笑中。

 

 ちなみにこの世界ではまだ新型ウイルスとかそーいうのは流行ってないから、画面の向こうの諸兄は喫茶店で談笑とかもうちょっとだけ自粛してね。どうしても必要な場合は対面を避けて、マスクは食べるときだけ外そう。リョーくんとの約束だぞ。

 

「プロデューサーさんは何の衣装か教えてくれなかったけど、きっとわたしと未来と静香ちゃんの三人で新ユニット結成! そして次の定期公演でお披露目ライブ~っていう流れだよ!」

 

「私もそれがいいなぁ! 静香ちゃんもそう思うでしょ!?」

 

「私もそう思うけど……二人とも、何か忘れてない?」

 

 ため息を吐いた静香ちゃんに対し、翼ちゃんと未来ちゃんが揃って首を傾げる。

 

「ん? 未来、何か忘れてる?」

 

「んー……あっ、お財布!?」

 

「えぇ!?」

 

「ちょっと未来!?」

 

「あー大丈夫大丈夫、三人の分も俺が払うから」

 

 まだ明かしていないとはいえ先輩アイドルなんだから、これぐらいは出してあげないと。

 

「えっ、いいんですか!?」

 

「やったー! リョーさん、ケーキも頼んでいい!?」

 

「もうちょっとあざとい感じで」

 

「リョーさぁん……つばさぁ、ショートケーキ食べたいなぁ」

 

「ホールで持ってこんかぁい!」

 

「たわけ。そして煩い」

 

 恭也が振り下ろした垂直に立てられた銀のトレイが、俺の頭頂部にズガンと突き刺さる。だから縦はヤメロって……!

 

「って、話が逸れてる! 二人とも、宿題をするって話を忘れてるって言いたいの!」

 

 苦笑するなのはちゃんが持ってきたショートケーキ(三つ)に舌鼓を打ち、その甘さに呆けていた静香ちゃんがハッと我に返った。ガサゴソと手提げ鞄の中から取り出したのは、中学生の課題用と思われるテキスト集だった。

 

「「えー宿題ー?」」

 

「スイーツ食べながら、夜のミーティングまでに夏休みの宿題頑張るって決めたでしょ? ホラ二人も宿題出して!」

 

「「忘れてきました!」」

 

「リョーさん、今日はご馳走様でした。私たちは今すぐ事務所に戻りますね」

 

「「待って待って! あるから! 忘れてないから!」」

 

 ニッコリと良い笑顔で席を立とうとする静香ちゃんを、未来ちゃんと翼ちゃんが縋りつくように引き留める。やっぱりこのシアター組トリオ面白いなぁ。

 

「ちぇー、こんないい喫茶店で宿題なんてー」

 

「もうちょっとお喋りしてたかったのにー」

 

 唇を尖らせて不平を漏らしつつ、鞄から宿題を取り出す二人。

 

「いいお店だから、でしょ。……って、すみません、あの……」

 

「構いません。ゆっくりしていってください」

 

 静香ちゃんが『少し長居することになります』と言おうとしていたことを読み取った恭也が先んじて頷いた。学校帰りに寄って勉強に利用する学生も結構いるからな。

 

「よし、それじゃあ俺もお仕事を片付けようかな」

 

「えっ、なになに、どういうお仕事なんですかー?」

 

「みーらーいー……?」

 

 俺のノートパソコンを覗き込もうと立ち上がった未来ちゃんが「はーい……」とそのまま逆の動きで自分の椅子に戻っていった。まぁ本当にこっそり人のノートパソコンを覗き込むようなことはしないだろう。

 

 声のボリュームは控えつつキャイキャイと宿題を始めた三人の声をささやかなBGMにしつつ、俺もコラムの仕上げにかかるのだった。

 

 

 

「それじゃあ、第一回ユニット名会議を始めま~す!」

 

「はい翼議長! 『シュークリーム』なんてどうですか! ここのシュークリーム美味しかったから!」

 

「ダメよ二人とも! ユニット名はアイドルグループにとって一番のシンボル! 目標とかテーマとかキチンと意味を持たせなきゃいけないんだから!」

 

 

 

 ……果たして三人の宿題は進むのだろうか。

 

 

 

 

 

 

「あれ? 静香ちゃんもこっちで宿題?」

 

「は、はい……今日は昼間遊んじゃって……」

 

 夕方、事務所に戻ってきた私は琴葉さんからの質問に苦笑で返事をするしかなかった。

 

 そう、結局宿題は殆ど出来ずに私たちは喫茶『翠屋』を後にしてしまった。

 

(ち、違うの……アレはリョーさんまでこっちの話に乗っかってくるから、そのノリで私も乗っからざるを得なくなって……!)

 

 果たして誰のための言い訳なのか。多分自分自身への言い訳だった。

 

「ジャーン! こっちに戻ってくる途中で花火買ってきましたー!」

 

「ミーティング終わったらみんなで花火大会しよー!」

 

 背後ではまだ遊び足りなかったらしい未来と翼が、他のシアター組の面々に買ってきた花火セットを見せびらかしていた。

 

「ふふっ、相変わらず未来ちゃんと翼ちゃんは元気ね」

 

「元気良すぎです……あの子たち、絶対八月後半に泣きついてきますよ……」

 

「あ、あははっ、そのときは一緒に頑張ろうか」

 

 多分琴葉さんの言う通り、私も『事務所の宿題やってない組』の面倒を見る側になるのだろう……。

 

「でも夏休みも始まったばっかりで、時間もまだまだあるんだから。静香ちゃんも一杯遊ばないとね」

 

 そう琴葉さん「宿題はしっかりやることは前提だけど」と付け足してから笑う。

 

「……そうですね」

 

 ……()()()()()()()()()……か。

 

「よーし皆集まってるかー?」

 

「プロデューサーさん花火!」

 

「はいプロデューサーさんは花火じゃありませーん。ミーティング始めるぞー」

 

 どうやらミーティングが始まるようなので、私はテキストを閉じて筆記用具をしまった。

 

 

 

 ……間違いなく()()()はアイドルだ。だから、私は今を頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

「――とまぁ、そんな感じだ。次は大事な話をするからちゃんと聞けよー」

 

 次の定期公演についての説明を終えたプロデューサーは、そう言って全員の注目を改めてからコホンと一つ咳ばらいをした。

 

 

 

「新しいユニットを二つ結成してもらうことになった」

 

 

 

「っ!」

 

 やっぱり、昼間の新しい衣装はそのための……!?

 

「メンバーを言うぞ。まず――」

 

 

 

 ――七尾百合子。

 

 ――高山(たかやま)紗代子(さよこ)

 

 ――真壁(まかべ)瑞希(みずき)

 

 ――ジュリア。

 

 ――伊吹翼。

 

 

 

 

「――この五人でのユニットだ。そして――」

 

 

 

 ――箱崎星梨花。

 

 ――野々原(ののはら)(あかね)

 

 ――北上麗花。

 

 ――白石紬。

 

 ――最上静香。

 

 

 

「――この五人で新ユニットだ。それぞれ百合子と星梨花を中心にして動いてもらうことになる」

 

「は、はい!」

 

「頑張ります!」

 

 プロデューサーの言葉に力強く返事をする百合子さんと星梨花さん。なるほど、シアター一期生組の二人がリーダーとなる新ユニット……! 

 

 ……あれ?

 

「ん? どうした未来、面白い顔してるな」

 

 プロデューサーの言葉にチラリと未来に視線を向けると、彼女は呆気に取られすぎてまるでハニワのような表情になっていた。確かに面白いけど、私も今はそれどころじゃない。

 

「あ、あの、プロデューサー? ユニットって、私と翼と未来の三人ユニットじゃないんですか……? 今朝衣装合わせした……」

 

「ん? あぁ、一足先に試着してもらった新しい衣装か? アレはシアター組の()()()()だ」

 

「きょ、共通衣装? 三人ともデザイン違ったじゃないですか……」

 

「三種類あるからな。だから三人に試着してもらったんだよ」

 

「そ、そういうことだったんですね……」

 

 再びチラリと未来に視線を向けると、ハニワを通り越して土偶みたいな表情になっていた。自分でも何を言っているのか分からないけど、土偶だった。

 

「ここからは二人以外にも関係する大切な話になるから聞いてくれ」

 

 パンパンと手を叩き、全員からの注目を再び集めてからプロデューサーは話し始めた。

 

「新ユニットの結成や新衣装の制作は他でもない! 九月に開催される新しいライブイベントへ出場するためだ!」

 

 新しいライブイベント……前から告知が来ていた奴だ。

 

 それはあの346プロが主催となって行われる複合ライブ。いつも夏に開催していた346プロのフェスを、他事務所も参加できるように変更された超大型イベントだ。

 

「出場者を決めるオーディションは来月。新ユニットのみんなは勿論、他のユニットも今年の夏はフェス出場を第一目標に頑張ってほしい!」

 

『はい!』

 

 私は机の下でギュッと握り拳を作る。

 

 これはチャンスだ。限られた時間の中でアイドルとして次の一歩を踏み出す大きなチャンスなんだ。

 

 ……それでも。

 

 

 

(……未来と一緒のユニット……)

 

 

 

 やっぱりそれだけは、どうしても残念だった。

 

「そしてそしてさーらーにー重要なこと話すぞー!」

 

 一体何回注目を集めればいいのかと思わず考えてしまうぐらい、しつこく注目を集めるプロデューサー。そろそろくどい。

 

 

 

「次の定期公演のステージには、三人の()()()()()()()にも立ってもらう」

 

 

 

『……えええぇぇぇ!?』

 

 今日一番の衝撃情報に、全員が驚愕の声を上げた。

 

「あ、新しいアイドルの子が入ったんですか!?」

 

「い、いつの間に!?」

 

「残念ながらそうじゃない。そして正確には()()アイドルじゃない」

 

 ど、どういうこと……!?

 

「その説明をする前に」

 

 プロデューサーが廊下に続くドアをコンコンとノックすると、向こうからコンコンとノックが帰って来た。

 

「来てくれてるみたいだな。というわけで、まずはその三人を紹介しよう」

 

 そう言って、プロデューサーはドアを開けた。

 

 

 

 そこには、三人の少女が立っていた。

 

 

 

「初めまして皆さん。私たちは()()()()()()()()()()()()()の――」

 

 

 

 ――綺羅(きら)ツバサと言います。

 

 ――統堂(とうどう)英玲奈(えれな)です。

 

 ――優木(ゆうき)あんじゅでぇす。

 

 

 




・お鶴さん。
業界では『ミス・クレーン』を名乗っているらしい。
あの変顔見た瞬間アイ転への適性を感じてしまった……。

・新型ウイルス
もうちょっと自粛と言いつつ一年以上経ってるんだよなぁ……。

・高山紗代子
『アイドルマスターミリオンライブ』の登場キャラ。
眼鏡型委員長タイプの熱血属性バーニングガールな17歳。
ぶっちゃけこの子が一番炎属性だと思う。

・真壁瑞希
『アイドルマスターミリオンライブ』の登場キャラ。
無表情系マジック少女な17歳。
ちょっと前まで名前出てなかったけど、アイル組の一人。メインのお話残ってるから許して!

・野々原茜
『アイドルマスターミリオンライブ』の登場キャラ。
超絶可愛い美少女な16歳。
所謂ウザ可愛い枠にも関わらず、可哀そうに苦労人枠……。

・新しいライブイベント
デレマス編の第四章ラストのアレ。今回からは他事務所合同イベントになりました。

・三人の新しいアイドル。
詳細は次回!



 まだミリオンのアイドル全員登場してないのにラブライブのキャラが登場するアイマス小説ってマ?

 一応その……段取りっていうものがありましてね……(精一杯の言い訳)

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