アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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楓さん!!!(訳:久しぶりに登場です)


Lesson276 アナタに届けたいオモイ 2

 

 

 

「そういえば奏はもう観たのか? 今公開されてる『100日間生きた――」

 

「冒頭一言目から危険球投げてくるのヤメてくれない?」

 

「フフッ、冒頭から暴投ね」

 

「ホラ、クソさむダジャレお姉さんが反応しちゃったじゃない」

 

「お前がクソさむダジャレのトスを上げたせいなんだよなぁ……」

 

「二人とも、私も悲しいときは泣くのよ?」

 

 

 

 撮影の休憩中、なんとなくハンバーガーが食べたくなって近くの有名チェーン店に足を運んだら、たまたまそこで奏と楓さんに遭遇するというお約束(ミラクル)が発生したので、同席させてもらった。

 

 いやマジでなんだこのミラクル。アイドルとの遭遇自体は多々あることだけど、あの『高垣楓』が大口開けてハンバーガーにかぶりついている場面とかピックアップSSR十枚抜きレベルだろ。一瞬写真撮ろうかと思っちゃったゾ。

 

「現役JDであるところの奏はともかく、楓さんもこんなところに来るんですね」

 

「私だってジャンクなものが食べたくなるときはありますよ。それを言うなら良太郎君だって」

 

「俺は高頻度で出没しますよ。主におまけ目当てで」

 

 今のおまけである覆面ライダーダイナマイトの発破宙返りのオモチャのねじを巻きながら答える。あっ、宙返り失敗した。……コレ、実物見た爆豪君ブチ切れてるんだろうな……。

 

「そういえば、フライドポテトってお酒の肴にもなりますよね。居酒屋のメニューにあるぐらいですから」

 

「飲ませないわよ?」

 

「うふふ、分かってまーす」

 

 呆れ顔で注意をする奏に、笑顔で返事をする楓さん。奏は元々年上であろうと遠慮をする性格じゃなかったとはいえ、楓さんに対してそれ以上の気安さみたいなものを感じる。

 

「あぁ、そういえば映画の撮影でフランスに行ってたんだっけ?」

 

「えぇ、私と楓さんのユニット『ミステリアスアイズ』でね」

 

「楽しかったですよね、奏ちゃん」

 

「ほんっとうに大変だったわ」

 

 なんだろう、お互いの認識に齟齬があるのかな?

 

 ともあれ随分と仲良くなったようだ。いくら奏とはいえ、大人のお姉さんであるところの楓さんと一緒の撮影で色々とお世話になったに違いない。きっと朝起こしてもらったりしたんだろう。

 

 いいなぁ、俺も楓さんにモーニングコーヒー片手に起こしてもらいたいなぁ……ん?

 

 

 

りん

 

明日はアタシが起こすから

りょーくんはゆっくり寝てていいよ

12:35

 

既読

12:36

いきなりどーした

 

ちょっと電波が12:36

 

既読

12:37

電波なら仕方がない

 

 

 

 

 突然のりんからのメッセージ。よく分からないが、とりあえず明日は目覚まし時計を使わなければいいのかな?

 

「あっ、そういえばユニットの新曲、凄い良かったです」

 

「あら、ありがとうございます」

 

「十枚買おうとしたけど購入制限があったから五枚で我慢しました」

 

「ありがたいけど、なんでそんなに買うのよ……」

 

 ほら、事務所のみんなに布教しようと思って。志保ちゃんと恵美ちゃんと美優さんは既に購入済みで、志希は渡しても聞かないだろうし、ジュピターの三人とまゆちゃんにあげた。まゆちゃんは苦虫を噛みしめてももうちょっと穏やかなんじゃないかってぐらい渋い顔をしてたけど。

 

「……ずっと明言してることは知ってたけど、本当に楓さんのファンなのね」

 

「そりゃあもう」

 

「うふふ、嬉しいです」

 

 『周藤良太郎』の発言が与える影響を考えてそういうことを口にしないようにしているが、高垣楓と魔王エンジェルは今更そういう次元の話じゃないので遠慮する必要がなかった。そうじゃなくても普通に彼女の声と歌が好きだった。

 

「でもそう言っていただけるのであれば、例の動画で声をかけてくれなかったのが本当に残念です」

 

「あー……あの動画は俺主体じゃなかったので……」

 

 とはいえ本当に楓さんも参加して歌姫×3with『周藤良太郎』なんてことになっていたら、一体何十億ドルが動いたんだろうなぁ……。

 

「というか、貴方レベルなら一声かければいくらでもCDなんて貰えるんじゃないの? 特にウチの専務とか、喜んで贈りそうなものだけど」

 

「分かってないなぁ奏は。こういうのは自分のお金で購入することに意味があるんだよ」

 

 楽曲ダウンロードという選択肢がある昨今だからこそ、こうして実物のCDを買うことに意味があるんだ。そこには握手券やシリアルコードとは別の何かが存在するのである。

 

「欲を言うならばリリイベのCDの手渡し会にも参加したかったんだけどな」

 

「そうならなくて良かったわ……貴方が列に並んでいるところを見たらきっと大混乱よ」

 

「勿論変装はするぞ」

 

「混乱するのは私の頭よ」

 

 やめろよ、人を生きるメダパニみたいに言うのは……ん? またメッセージ?

 

 何かりんが言い忘れたことがあったのかとスマホを再び取り出すが、そこに表示されていた名前はりんのものではなかった。

 

「……未来ちゃん?」

 

 

 

 

 

 

「……よしっと」

 

「おーい未来、プロデューサーが集合だってさー」

 

「あ、うん! 今行く昴ー!」

 

 今日は私たちのCD手渡し会当日。リョーさんにそのことを伝え忘れていたことを思い出したので『もし時間があるようだったら来てください!』とメッセージを送ってからスマホを仕舞う。

 

「何やってたの?」

 

「えっとね、いつもお世話になってるリョーさんに今日の手渡し会のこと教えてたの」

 

「リョーさん? ……あぁ、あの亜利沙さんと仲が良いっていう怪しい男の人」

 

「怪しくなんかないよー! ちょっと無表情で本名が分からないけどアイドルのことにやたらと詳しくて何故かアイドルの知り合いも多いらしくて女の人の胸が好きな面白いお兄さんだよ!」

 

「今の説明でオレの中の警戒度が上がった」

 

 アレー!?

 

「おーい二人ともいいかー? エミリーにお手本やってもらうからちゃんと見ろよー」

 

「「はーい」」

 

 着物姿のエミリーちゃんが自分のCDを一枚手に取ると、両手でプロデューサーさんに差し出した。

 

「『はい、どうぞ』『ありがとうございます、ごヒイキ様』」

 

 エミリーちゃんの言う『ごヒイキ様』というのは『ファンのみんな』という意味だ。彼女は日本のことが好きでカタカナ言葉を使いたがらないから、こういう不思議な言葉遣いをする……ということを以前リョーさんに話したら「なにその縛りプレイ」と言っていた。……縛りプレイってなんだろう?

 

「『いつも応援しています』……と」

 

 エミリーちゃんが差し出したCDを受け取ったプロデューサーが「こんな感じだな」と腰に手を当てた。

 

「お客さん一人一人にCDを手渡しすることになる。お礼を言うときはちゃんと相手の顔を見るんだぞ。それぞれ三十秒ぐらい会話する時間も設けてあるからちょっと長くなるが、最後まで笑顔で頑張るように」

 

「「「はーい!」」」

 

「は、はーい……」

 

 元気よく返事をした私とエミリーちゃんと美也さんに対し、昴だけがちょっと頬が引き攣っていた。

 

「開場まで三十分でーす!」

 

「よし、それじゃあ俺も列整理を手伝ってくるから」

 

 そう言ってプロデューサーさんはスタッフさんと共に控室を出ていってしまった。

 

 三十分という微妙な時間、手持無沙汰になってしまった私たちはとりあえずパイプ椅子に座り……昴だけが、その場でストレッチを始めた。

 

「あらあら、昴ちゃんは落ち着きがないですね~」

 

「だ、だって動いてないと緊張するんだもん!」

 

 美也さんの悪気一切無しの笑顔に、昴は顔を赤くして少し拗ねたように唇を尖らせた。

 

「昴さん! 体操でしたら私もお付き合いいたします!」

 

 ふんすと鼻息荒くエミリーも立ち上がった。着物のままだけど、運動って出来るのかな?

 

「それじゃあ、ちょうどいいものあるので流しますね~」

 

 美也さんがそう言って自分のスマホを操作し始めた。

 

 ちょうどいいものって何だろうと首を傾げていると――。

 

 

 

『みなさーん! ラジオ体操第一の時間ですよー!』

 

 

 

 ――突然の大音量に思わず椅子から転げ落ちそうになった。

 

「あら~大きな音ですね~」

 

「美也さん音量下げて!」

 

「は~い」

 

 これでも一切動じない美也さんすごい……。

 

「こ、この声って、346プロの日野茜さんですか?」

 

「はい~。346プロの皆さんはラジオ体操の曲もカバーしていらっしゃるんですよ~」

 

「……これってカバー曲の括りに入れていいのか……?」

 

 へ~、ラジオ体操第二は新田美波さんなんだ~。

 

「なんつーか、346プロってアイドルの数が多いから知らないけど、たまにぶっとんだ変な曲カバーしたりするよね」

 

「私、どなたかが『高砂(たかさご)』を歌っていらっしゃったのを聞いたことがあります」

 

「エミリー、たかさごってなに? 誰の曲?」

 

「室町時代の猿楽士、世阿弥が作った能の一つです」

 

「むろまち!? さるがくし!? ぜあみ!? 何一つとして分かんないんだけどどういうこと!? 未来!?」

 

 私に助けを求めるような目を向けられても答えられるわけないじゃん……。

 

「あ、こっちは123の三船美優さんがカバーされたシューベルトの子守歌ですね~……」

 

「……美也さん?」

 

「………………すぅ」

 

「美也さん!? 流石に今寝るのはマズいんじゃないですか!?」

 

 

 

「お前たち~……緊張してないのはいいがリラックスしすぎというか、ちょっと煩いぞ~……」

 

 

 

 

 

 

おまけ『フカが足りねぇ!』

 

 

 

「それじゃあ『ゴジラVSコング』は観たか?」

 

「えぇ、観たわ。ゴジラの新作とキングコングの新作を二時間に詰め込んだような映画だったわ」

 

「詰め込め切れずに溢れ出てたけどな」

 

「次回作の『ゴジラVSコングVSシャークネード』に期待ね」

 

「アレ? もしかしてお前だけ別の次元に生きてる?」

 

 

 




・『100日間生きた――』
多分色々な意味での教訓として今後語り継がれるんだろうなぁ……。

・覆面ライダーダイナマイト
かっちゃんのヒーローネームが明かされたので。
覆面ライダー爆轟の強化形態というか別ベルトでの変身形態。

・発破宙返り
サスケのチャクラ宙返り、今3000~4000円するってマ?

・日野茜のラジオ体操第一
・『高砂』
・三船美優のシューベルトの子守歌
デレステ謎カバーシリーズ。あとはほたるの『蛍の光(閉店Ver)』とか本気で謎。

・おまけ『フカが足りねぇ!』
多分ワニもサメが足りなかったんじゃないかな(適当)

・ゴジラVSコング
更新日の前日に観てきました。やっぱり怪獣映画はこうでなくちゃ!



 ミステリアスアイズの二人が合流しました。つまりそういうことです。

 果たしてシアター新人四人組は無事に手渡し会を終えることが出来るのか……!?
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