アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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本編であり番外編のような短編集スタート!


Lesson291 ほんのりシアターデイズ

 

 

 

・ほんのりシアターデイズ その1

 

 

 

「真壁さん、僕とお付き合いしてくれませんか?」

 

 

 

 その日、劇場の控室へとやって来た私の目に飛び込んできたのは、静香ちゃんが瑞希さんに告白をしている光景だった。

 

「……し、静香、ちゃん……!?」

 

「え? あ、未来、おはよう――」

 

「ゴメンナサイ!」

 

 気が付けば私は踵を返して走り出していた。

 

「――って、未来!? ちょっと待ってコレは違うの!?」

 

 ダメ! 追いかけてこないで静香ちゃん! 今なんか泣いちゃいそうだから!

 

 

 

 

 

 

「……へ? ラブソング?」

 

「はい、ラブソング、つまり恋の歌です」

 

 改めて控室に戻って来た私に向かって、瑞希さんはそう言いながらコクリと頷いた。なんでも、次の瑞希さんの新曲が恋をテーマにした曲らしい。

 

「しかし先日……」

 

 

 

 ――真壁さんは本当に綺麗な声ね。

 

 ――ただもう少しだけ気持ちを乗せて歌えるといいわね。

 

 

 

「……と、レッスンの先生に言われてしまったのです」

 

「はぁ……」

 

「気持ち……知りたい、恋の気持ち……」

 

 リョーさんに負けず劣らずの無表情のまま、しかし瑞希さんの目は好奇心にキラキラと輝いていた。

 

「それで『男性役で告白してみてください』って頼まれただけよ」

 

「そ、そうだったんだ~……私、てっきり……」

 

 ビックリしたと同時に、少しだけホッとしている私がいた。……なんでホッとしてるんだろう?

 

「それでジュリアさん、次は貴女にお願いしたいのですが」

 

「うげっ」

 

 瑞希さんがそれまで黙って様子を窺っていたジュリアさんに詰め寄ると、ジュリアさんは頬を引き攣らせながら身を仰け反らせた。

 

「……はぁ……まぁ、どうせこんなことだろうとは思ったけどよ」

 

 そう言ってため息を吐きながらソファーから立ち上がるジュリアさん。どうやら今度は彼女が男性役をするらしい。ジュリアさんはどんな風に告白をするのかとちょっとだけワクワクしながら見守る。

 

 ジュリアさんは壁際に瑞希さんを立たせると、彼女の頭のすぐ側に腕を突いて顔を寄せた。

 

 

 

「好きだぜ、お前のこと」

 

 

 

 ……お、おぉ~……!

 

「これは……非常にドキドキしました。なるほどこれが恋でしょうか?」

 

「いや絶対違うと思う……」

 

 やや頬を紅潮させた瑞希さんに対してジュリアさんは苦笑しながらそう言うが、あながち間違ってないと思う。

 

「はいはいは~い! 今度は私がジュリアーノにそれやってもらいたいで~す!」

 

「わっ!? ビックリした!?」

 

 勢いよく控室に入って来たのは翼だった。どうやら先ほどのやり取りを聞いていたらしく、ジュリアさんに向かって「次は私!」と詰め寄っていた。

 

「ヤだよ! なんであたしがお前にやってやんなきゃいけないんだよ!」

 

「だってジュリアーノかっこいいんだも~ん」

 

「答えになってねぇんだよ!」

 

「ねーねー、未来もそう思うよね?」

 

「えっ、あ、うん……」

 

 ジュリアさんがカッコいいのは同意するけど……私は、どちらかというと……。

 

(……チラッ)

 

「真壁さん! もう一度私に挑戦させてください!」

 

 どうやら静香ちゃんは自分のときとジュリアさんのときとで瑞希さんの反応が違ったことに不満らしく、再チャレンジを自分から申し込んでいた。

 

「いえ、他を当たってみたいと思います」

 

 しかし瑞希さんはそれをきっぱりと断った。

 

「他って、何かアテがあるのか?」

 

 翼からの熱烈なアピールを片手で制しながらジュリアさんが尋ねると、瑞希さんは「はい」と小さく頷いた。

 

「同じ相談を双海亜美さんにしたところ『ふっふっふ~! それじゃあみずきんには我が765プロが誇る恋愛マスターを紹介してしんぜようではないか~!』と、とある方を紹介されたのです」

 

「「「「な、765プロが誇る恋愛マスター!?」」」」

 

 思わず私と静香ちゃんと翼とジュリアさんの声が揃ってしまった。

 

 

 

 

 

 

「……というわけでよろしくお願いします、我那覇さん」

 

「ちょっと待て」

 

 突然シアター組の真壁瑞希が自分のところにやって来たかと思うと「恋愛のことを教えてください」なんて訳の分からないことを言い出した。

 

「なんで自分なんだよ!?」

 

 せめて既婚者のぴよ子とかにいくだろ!

 

「ですが我那覇さんはあの『クリスマスライナー』に出演されたと伺っています」

 

「うぐっ!?」

 

「あー! そういえばそうだった! 三年前ぐらいでしたっけ!?」

 

「『クリスマスライナー』って、あの切ない恋や遠距離恋愛がテーマのドラマCMですよね!?」

 

 何故か瑞希と一緒に付いてきた未来と静香が盛大に反応した。

 

「た、確かに出たけどさぁ……」

 

「双海亜美さんも『クリスマスライナーに出演したひびきんは一皮も二皮も向けた大人の女……存分に恋愛の極意を聞いて来るといいさ!』と仰っていましたので」

 

 亜美には今度へび香との強制触れ合い動物園させてやる。

 

「あのCMの響さん、す~っごい綺麗でした!」

 

「私も『これが恋してるっていうことなんだ』って感動した記憶があります」

 

 未来と静香は褒めてくれるけど、アレは結局恋の演技が出来なかったから……。

 

「というわけでどうか私にも恋愛の極意を教えていただけないかと思い、こうしてお願いにきたわけなのです」

 

「……う~ん……」

 

 真っ直ぐ頭を下げる瑞希。どうやら彼女に揶揄う意図は一切なく純粋に『恋愛について知りたい』と思っているらしい。それは確かに自分も一度通った道なので、先輩としては無下に扱うことは出来なかった。

 

「……はぁ、分かったぞ……」

 

「っ! ……ありがとうございます」

 

「でも悪いけど、自分も恋愛がなんたるかを偉そうに講釈できるわけじゃないからな」

 

 というか、そんなことを出来る人間なんてきっといない。いたとしてもそれが絶対の答えだなんて限らない。

 

 だから自分も、その問題に直面したとき先輩からしてもらったものと同じアドバイスをすることにしよう。

 

「よし瑞希、今から時間あるか?」

 

「? はい、ありますが」

 

「それじゃあ自分について来るといいぞ。今からいいところに連れてってやるさ!」

 

「……いいところ、とは?」

 

 

 

「瑞希が自分だけの恋愛を見つける手助けをしてくれる場所、だぞ」

 

 

 

 

 

 

 

「あれ? 響ちゃんじゃん。久しぶりだね」

 

「どうせそんな展開になるんだろうなって思ってたぞ!」

 

 『八神堂』の受付ではやてちゃんと雑談をしていたら響ちゃんが来店してきたので挨拶をしたら突然叫ばれた。何事だよ。

 

「響さん、どーかされたんですか?」

 

「いやもうなんでもないぞ……いきなり大声出してゴメン、はやて」

 

 俺はスルーですか響ちゃん。

 

「おじゃまします」

 

「ん?」

 

 そんな響ちゃんと一緒に入店してきた一人の少女がいた。

 

(……無表情な子だなぁ)

 

(……無表情な人ですね)

 

 なんだろう、凄いシンパシーを感じる。……って、この子確かシアターの子だったな。

 

「えっと……真壁瑞希ちゃんだっけ? 765プロシアターの」

 

「はい、真壁瑞希と申します。今日は我那覇さんにこのお店が『自分だけの恋愛を見付ける手助けをしてくれる』というお話を聞いてきました」

 

 ん? 何やら聞き覚えのあるフレーズ。具体的には三年前ぐらいに響ちゃんを初めてこの『八神堂』に連れてきたときに言ったような気がする。

 

「えっと、実は……」

 

 ※沖縄少女説明中

 

「というわけなんだ。はやて、またお願いしてもいいか?」

 

「そりゃあもう、お安い御用です! ちょい待っててくださいね~」

 

 響ちゃんの要請を受けたはやてちゃんは小さく力こぶを作る真似をしてから店の奥へと消えていった。なのはちゃんと同じ事務所でアイドルとしても精力的に活動しているおかげで、最近のはやてちゃんは実に健康的な美少女に育っていた。

 

「それにしても『恋愛について』か」

 

 アイドルやってるとどうしても一度はその問題にぶつかるようだ。そして過去にその問題にぶつかった響ちゃんが、今度は同じ問題にぶつかった後輩のために動いていることに、今更ながら彼女たちの成長を実感してちょっと感動。

 

「それで我那覇さん、こちらの方とはお知り合いですか?」

 

「え? あ、あぁ……実は自分もこの人に『自分だけの恋愛を見つける手助けをしてくれる場所』ってこのお店を紹介してもらったんだ」

 

「なんと、つまり恋愛マスターのマスター……恋愛グランドマスターということですね」

 

 なにそのある意味では俺とは縁遠い称号。

 

「でもまぁ、美人な嫁さん捕まえたことだしあながち間違いでもないだろ?」

 

「さらに既婚者でしたか。それはそれは、私にも是非ともご教授をお願いします」

 

「寧ろ俺が捕まえられた側だし、そもそもまだ結婚はしてないけどな」

 

 ご教授と言われても。確かに俺もりんもお互いのこと大好きだが、ぶっちゃけ()()()()()()()()とは言えないから……。

 

「ではせめて、既婚者からの本気のドキドキを体験してみたいです」

 

「本気のドキドキ?」

 

 ※無表情少女説明中

 

「ほう……それは面白そうだ」

 

「……え゛」

 

 ちょっとばかりやる気を見せると、響ちゃんがアイドルの喉から出してはいけない声を出した。

 

「ちょ、本当にやるのか!?」

 

「実は前にりんから甘い言葉を囁いてほしいって言われたことがあってね。丁度いいからその予行演習でもさせてもらおうかなと」

 

「えぇ……」

 

「それじゃあ準備はいいかな?」

 

「バッチコーイ」

 

 既に壁際でスタンバっている瑞希ちゃん。準備はいいということなので、伊達眼鏡を付けたままではあるが彼女の頭の横に軽くドンッと音を立てながら右腕を突く。

 

 

 

「可愛い唇の子猫ちゃんだね」

 

 

 

 そう囁きながら左手の親指を彼女の唇に触れるか触れないかという距離まで近付ける。

 

 

 

「その唇、食べちゃいたいぐらいだ」

 

 

 

「もしもしポリスメン?」

 

「ヤメ、ヤメロォ!?」

 

 スマホを取り出して国家権力召喚をしようとする響ちゃんの姿に、慌てて瑞希ちゃんから飛び離れる。

 

「やれって言ったからやったんだろぉ!?」

 

「やりすぎだぞ! あんなの犯罪だぞ犯罪! なんだよあの子猫ちゃんって!」

 

 北斗さんイメージしてやったのに酷い言われようだ。

 

「ゴメンな瑞希! この人、遠慮とか配慮とかそーゆーの全くしない人だから! ……って、あれ? 瑞希?」

 

「………………」

 

「瑞希ちゃん?」

 

「………………」

 

「「……き、気絶してる……!?」」

 

 無表情のままだったから気付くのが遅れたけど、瞬きしてねぇ!?

 

「さ、流石の瑞希もキャパオーバーすることあるんだな……!?」

 

「はやてちゃーん! お店の奥を貸してもらっていいかなー!?」

 

 

 

 話を聞いたシグナムさんとシャマルさんに正座で説教された。

 

 確かにやりすぎたのかもしれないけど、なんとなく納得は出来なかった。

 

「嫁さんにもチクッとくからな」

 

「ままならねぇなぁ……」

 

 

 




・真壁瑞希
ほぼ名前だけでアイル編もすっとばしちゃったので、今回ピックアップ。
元ネタは当然ゲッサン版三巻の特別編。

・リョーさんに負けず劣らずの無表情
流石にあの鉄面皮ほどではないけど、一応無表情キャラ。
笑うと可愛いのは当然である。

・恋愛マスター我那覇響
・クリスマスライナー
初期も初期、Lesson44のネタである。

・「可愛い唇の子猫ちゃんだね」
・「その唇、食べちゃいたいぐらいだ」
良太郎が本気を出して口説く(演技をする)とこうなる。

・「もしもしポリスメン?」
ポプテは使いやすい言葉が多くて二次書きもニッコリ。



 ほんのりシアターデイズ、初日は真壁瑞希編でした。気絶落ちで本当に申し訳ない……。

 こんな感じの短編を四週にわたってお送りしていく予定です。

 来週はおっぱいが大きい子他数名。



『どうでもいい小話』

 凡ミスで名古屋公演の現地を手放してしまった作者は、二次先行で再び現地を勝ち取ることが出来るのか!?
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