アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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卒業研究発表と就職試験が(終わってないけど)終わったよー!

というわけで久々に更新。

これからはもう少し頻繁に更新……出来たらいいなぁ。


Lesson05 765プロ 3

 

 

 

 伊織ちゃんは双子にからかわれ、真っ赤になりながら追いかけていってしまった。

 

 これで一先ず最初の目標だったりっちゃんと竜宮小町の激励は済んだわけだ。

 

「さぁさぁ、いつまでも立ち話もあれだろう。せっかくソファーがあるんだから、座りたまえ良太郎君。今日はゆっくり出来るのだろう?」

 

「はい。午後から一日オフなんで」

 

「みんなも良太郎君と話したいだろうが、時間はあるんだ。一息付こうじゃないか」

 

 はーい、と全員が賛成したところで音無(おとなし)小鳥(ことり)さんに背中を押される。

 

「ささ、お客様はソファーにどっかりとどうぞ!」

 

「じゃあ、お言葉に甘えまして」

 

 実はりっちゃんのレバーブローがジワジワ効いてて立ってるのが辛かったんだよね。

 

 勧められるままにソファーに向かい、座ろうとする。しかし、どうやら先客がいたようだ。

 

 

 

「……なの~……zzz」

 

 

 

「み、美希!?」

 

「大人しいと思ったら……」

 

 影になっていて気付かなかったが、ソファーでは金髪美少女が涎を滴ながら幸せそうな顔で眠っていた。

 

 765プロで金髪と言えば星井(ほしい)美希(みき)ただ一人なので彼女がそうなのだろう。本当に中学生かと疑いたくなる見事なプロポーション、大乳。ゆったりとした服の胸元から見える谷間が大変ご馳走です!

 

「……全てのおにぎりは……ミキのもの……なの……じーくおにぎり~……zzz」

 

「随分と愉快な夢を見てるみたいだな」

 

 おにぎりの独占とはなかなかの鬼畜。おにぎりが無くなったら世の小学生は遠足のお弁当に何を持っていけばいいと言うんだ!?

 

「サンドイッチとか?」

 

「普通にお弁当箱にご飯詰めればいいじゃない」

 

 それじゃあ、コロコロ転がるおにぎりを追いかけて、お池にはまってさぁ大変……あれ?

 

「混ざってる混ざってる」

 

 兎にも角にも、せっかく765のみんなと交流に来たというのに、一人だけ寝たままっていうのは寂しいものがある。独りぼっちは寂しいもんね。

 

 と言う訳で、ちょっとしたドッキリを敢行することにする。

 

 し~っとみんなに静かにしてもらい、そっと枕元に座り込んで軽く彼女の鼻先に触れる。

 

「……ん~……」

 

 美希ちゃんは軽く身動ぎするが、それでも起きる様子はない。ならば直接声をかけるまで。

 

「美希ちゃん、起きて。起きないと、美希ちゃんのケーキ食べちゃうよ」

 

「……ケーキがないなら……ババロアを食べるの……」

 

 マリー乙。じゃなくて。

 

「ババロアは無いけど、ほら、イチゴだよー」

 

 買ってきたケーキの中からイチゴのショートケーキを取り出し、上に乗っていたイチゴをつまみ上げて美希ちゃんの口元に持っていく。

 

「はい、あーん」

 

「……あ~ん……」

 

 どうやらイチゴの香りに反応したようで、口を開けた彼女の口にイチゴを放り込む。

 

「モグモグ……なの……?」

 

 あ、目が開いた。

 

 イチゴを咀嚼しながら美希ちゃんは眠たそうに目を開く。そして俺の顔を見るなりその目が徐々に大きく開かれていき、ゴクリとイチゴを飲み込んだ。どうやらしっかりと目を覚ましたようだ。顔がイチゴのように真っ赤である。

 

「おはよう。イチゴは美味しかった?」

 

「……っ~……き、きっ……!?」

 

 あ、これはマズい。

 

 

 

「キャアァァァァァァ!?」

 

 

 

 うら若き少女のつんざくような悲鳴が、至近距離から俺の耳の鼓膜を貫いた。

 

 

 

 

 

 

「嫌われちゃったかな」

 

 まだ耳は痛いものの、ソファーに座り自分で買ってきたチーズケーキをつつく。両脇は双海姉妹が陣取り、向かいのソファーには高木さんとりっちゃんとあずささんが座る。座れなかった子達も立ちながらではあるが、思い思いに各々好きなケーキに舌鼓を打っている。

 

 そんな中、美希ちゃんだけが壁の影に隠れながら、真っ赤な顔のままこちらを睨んでいた。

 

 どうやら寝顔を至近距離から覗かれていたことが相当恥ずかしかったようだ。

 

「しかもその相手が周藤良太郎なんだし、ミキミキが恥ずかしがるのも無理ないっショー」

 

「? 何で俺だと無理ないんだ?」

 

「何を隠そう! ミキミキはこの事務所で一番の周藤良太郎ファンなのだー!」

 

 え、そうなの? と視線を向けると、美希ちゃんは更に顔を壁に隠してしまった。……こう言っちゃ大変失礼だが、ああいう初心(うぶ)な反応をするキャラに全く見えなかったので意外である。

 

「りょーにーちゃんのCDは初回限定盤と通常盤の両方買ってるしー」

 

「コンサートのチケットの抽選が外れる度にチョー落ち込んでるしー」

 

「あ、りょーにーちゃんのブロマイドがお財布の中に入ってるの見たよー!」

 

 双子によって次々とバラされ美希ちゃんの顔は既に茹で蛸状態。聞かされてる俺ですら気恥ずかしいのだ、彼女からしたら相当だろう。やめたげてよー!

 

 しかし、ここまで恥ずかしがられると流石に悪いことをしたと思ってしまう。個人的にはちょっとしたジョークのつもりだったんだが。

 

「いや、美希じゃなくても良太郎さんにあんなことされたら誰だってああなると思いますけど……」

 

 そうだろうか? 以前魔王三人娘の楽屋に遊びに行った時、寝ていたりんに小さいチョコレートで似たようなことをしたことがあったが。

 

 

 

 ――も、もう一個食べさせてくれたら起きてあげる。

 

 

 

 と言って再び目を閉じられてしまったし、全員が全員こんな反応をするわけじゃないだろう。ちなみにその後もう一回やろうとしたらともみに止められ、りんは麗華に叩かれていた。

 

 そんなことより、今は美希ちゃんと仲直りすることが先決だ。仲良くなりに来たのに嫌われてちゃ話にならない。

 

「ごめんね、美希ちゃん。どうか仲直りしてもらえないかな」

 

 近寄りつつ手を伸ばす。美希ちゃんは逃げ出しはせず、まだ赤い顔のまま俺の顔と手を交互に見る。

 

「……りょーたろーさんを、嫌いになった訳じゃなくて……ちょっと驚いただけだから……」

 

 まるで小動物のようにオズオズと壁の影から出てきた美希ちゃんは。

 

「……こういうことはもうしないって約束してくれるなら……その、仲直りしてあげてもいいの」

 

 そう言って差し出した俺の手をキュッと握った。握ったと言っても、人差し指と中指に軽く手を添えるだけの、とても遠慮したような握り方だったが。

 

「ん。じゃあ仲直り。これからよろしく」

 

「よ、よろしくお願いしますなの」

 

 いやぁよかったよかった! 年下の女の子に嫌われたままとかお兄さん堪えらんないよ。

 

 また一人、765プロのアイドルと仲良くなったぞ!(テッテレー)

 

 

 

 

 

 

 美希ちゃんと仲直りしたところでケーキパーティー再開。ダメージは回復してきたのでソファーには座らず、立ったままだった子達に話しかける。

 

「えっと……剣崎(けんざき)真琴(まこと)ちゃんだっけ?」

 

「あの……菊地(きくち)(まこと)です」

 

 こいつは失敬。

 

「あの、もしよかったらサインいただけないでしょうか!?」

 

 真ちゃんは凄い勢い(風を切る音が聞こえた)で頭を下げると、色紙を差し出してきた。

 

「ん、それぐらいお安いご用だよ」

 

 何となくそんな気はしてたしねー。

 

 ならば私も私もと詰め寄ってくる少女達全員分のサインを書く。

 

「ってアンタらもかい」

 

「貰えるもんは貰えるときに貰っとく主義なのよ」

 

「今度は別バージョンをもらおうかと!」

 

「いやぁ、そう言えば貰ってなかったことに気づいてね」

 

「す、すいません」

 

 いつの間にか並んでいたりっちゃん、小鳥さん、高木さん、プロデューサーさんの四人にもサインをする。

 

「ありがとうございます! 我が家の家宝にします!」

 

 いや、アイドルのサインを勝手に家宝にしたらご家族の方々が困ると思うんだけど。

 

「ほら雪歩も! せっかく良太郎さんに会えたんだから!」

 

 真ちゃんは自分の後ろに隠れていた少女を前に出す。先ほどからズッとオドオドとしていた少女、会話の内容から萩原(はぎわら)雪歩(ゆきほ)だろう。

 

「……え、えっと……その……!」

 

 後ろ手に何かを隠しているようだが。

 

「せ、折角来て頂いた良太郎さんに……こ、これを……」

 

 お、何かな。雪歩ちゃんはお茶が好きってプロフィールに書いてあったけど……。

 

 

 

「お……お、お茶……と、焼き肉ですぅ~!!」

 

 

 

「焼き肉!?」

 

 え!? どっからこの鉄板出てきたの!?

 

「カルビロースタンハラミ各種取り揃えておりますぅ~!」

 

「ゆ、雪歩が焼き肉を出した!」

 

「し、知っているの、真!」

 

「雪歩はおもてなしにお茶を出す……けれど焼き肉はお茶以上の最高のおもてなしなんだ!」

 

 やべぇ。俺、自分がアレなキャラだってのは自覚してるけど、ここまでついていけないのは初めてだ。

 

 とりあえず焼き肉は美味しくいただきました。

 

 

 

 

 

 

「……美味い」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「よかったね雪歩!」

 

 雪歩が用意した焼肉を食べている良太郎さんから少し離れた位置で私はケーキを食べる。……何処から鉄板を出して、いつの間に用意したのかという突っ込みは止めておこう。

 

 周藤良太郎。日高舞と並んで、私、天海(あまみ)春香(はるか)がアイドルを目指すきっかけとなったアイドルの一人である。きっとこの二人に憧れてアイドルを目指した女の子は私以外にも大勢いるだろう。

 

 私が物心ついた時には既に引退してしまっていた舞さんとは違い、良太郎さんは現在進行形で私の青春を彩っているアイドルだ。デビューした時からずっと憧れていたトップアイドル。

 

 

 

 しかしこうして初めて会ってみて、抱いていたイメージはガラリと変わった。

 

 

 

 無表情から威圧感を感じてしまうが、その言動と行動は同年代の男の子と何ら変わりはなかった。冗談を言ったり、おどけてみたり。……女の子の胸に視線が行きがちだったり。まるでクラスメイトの男子生徒を見ているようだった。

 

「律子さん。良太郎さんって、昔からあんな感じだったんですか?」

 

「ん? あんな感じって? あのいい加減でふざけたむかつく態度のこと?」

 

「あ、いえ、そこまでは……」

 

 イメージが変わったと言えば、律子さんもそうだ。まさかここまで毒を吐く人だとは思いもしなかった。

 

「まぁ、そうね。初めて会った第一声が人の頭見て『いいエビフライですね』だったって言えば理解してもらえるかしら?」

 

「は、ははは……」

 

 キラキラと輝くアイドルとしての周藤良太郎像にヒビが入る。

 

 けれど、何故か幻滅したりはしなかった。寧ろ身近な存在に感じられて少し嬉しかった。

 

「……歌でも踊りでもなく、常に自然体で居続けるのが、アイツの本当の魅力なのかもしれないわね」

 

 そう呟いた律子さんは、呆れたような、嬉しそうな、それでいて寂しそうな複雑な表情をしていた。

 

「良太郎さんのこと、よくご存じなんですね」

 

「……一年以上付き合えば、アイツのことなんかすぐ分かるわよ」

 

 単純なんだから、と言った律子さんはほんの少しだけ顔を赤く染めていた。

 

 

 

「――ええ!? 律子がですか!?」

 

「うん。『次は負けないんだから!』って叫びながら顔真っ赤にしちゃってね――」

 

 

 

「……やっぱりもう一発殴る」

 

「だからダメですって律子さん! 真も話に夢中になってないで止めて!」

 

 

 

 これもきっと仲がいい証拠……だよね?

 

 

 




・本当に中学生かと疑いたくなる見事なプロポーション
冗談抜きでこの子本当に中学生なのかしら……。
巴まみ「信じられないわ」
桐ケ谷直葉「同感ね」

・ジークおにぎり
諸君、私はおにぎりが好きだ。諸君、私はおにぎりが大好きだ。梅干しのおにぎりが好きだ。鮭のおにぎりが好きだ。昆布のおにぎりが好きだ。おかかのおにぎりが大好きだ。ツナマヨのおにぎりが大好きだ。明太子のおにぎりが好きだ。(ここまで書いておにぎりの具を考えるのが面倒くさくなった)

・独りぼっちは寂しいもんね。
杏子のコスプレをした響が思い浮かんだんだが、これは髪形が一緒だったからなのか、それとも何か別のことが引っかかったからなのか……。

・マリー乙
【逆転の】パンがないならケーキ食えばいいじゃんwww【発想】

・「キャアァァァァァァ!?」
始めは「なのー!?」とかにしようかとも考えたが、こっちの方がガチっぽいからという理由で不採用となった。

・美希ちゃんだけが壁の影に隠れながら、真っ赤な顔のままこちらを睨んでいた。
こんな初な美希が見れるのはたぶんこの小説ぐらいですぜ旦那!

・も、もう一個食べさせてくれたら起きてあげる。
あざとい流石りんちゃんあざとい。

・「えっと……剣崎真琴ちゃんだっけ?」
「きゃっぴぴぴぴぴ~ん! キュアソードなりよ~!」

・「焼き肉ですぅ~!!」
雪歩の焼き肉好き設定は実はアケマスの頃から存在。それ以降ほとんど使われていなかったが『生っすかスペシャル05』にてその片鱗を再び垣間見せた。

・……女の子の胸に視線が行きがちだったり。
良太郎さん! バレてますよ!



まだまだ続く765プロ。早くりんちゃん再登場させたいお……。

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