アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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君たちは「なんでお前ら!?」と言う。


Lesson376 Episode of Beit 2

 

 

 

 俺がそれに気が付いたのは偶然で、『集会』のメンバーにりあむちゃんが加入する前の出来事である。

 

 

 

「いやぁ今日の765プロも最高でしたね……」

 

「最高じゃない日の765プロとかないでしょ……」

 

「それな……」

 

「いい……」

 

 ライブの参戦を終え、揃いも揃って消失した語彙で精一杯の感想を言い合いながら打ち上げをするために俺たちはカラオケへと向かっていた。このまま軽食を摘まみながら改めてライブの感想を語り合うのが俺たちの『集会』だった。

 

「ありさとしてはですねぇ! やっぱり……!」

 

「いやいやありりん、そこはだねぇ……!

 

 少々語彙力を取り戻した亜利沙ちゃんと結華ちゃんが並んで語り合っている。そんな彼女たちの一歩後ろをついていく形で俺とみのりさんが並んで歩く。

 

「でもでも……きゃっ」

 

「それが……ひゃっ」

 

 しかしどうやら語り合いがヒートアップしすぎてしまったらしく、亜利沙ちゃんと結華ちゃんは前方から歩いてくる男性二人と正面からぶつかってしまった。

 

「「おっと」」

 

 体格差があったのでそのまま後ろに倒れそうになる二人を、みのりさんと二人で後ろから支える。うーん軽すぎる。結華ちゃんもっとご飯食べよ?

 

「えっと、ごめんなさい……」

 

「すみませんでした……」

 

 当然のように謝る二人は良い子。

 

 ……ここで話が終わってくれれば良かったのだが、ここからが面倒くさかった。

 

 再現するのも嫌だから省略するが、どうやら酔っぱらっているらしい男二人がかなりウザめに絡んでくる。「せっかくだから一緒に」だの「いいお店知ってるから」だの、亜利沙ちゃんと結華ちゃんを口説き始める男たち。美少女だから仕方がないとはいえ、一応後ろに親しそうな男二人(おれたち)がいるんだから諦めてもらいたいところだった。

 

 初めはナンパをされた二人に頑張ってもらっていたのだが、あまりにもしつこいのでいい加減諦めてもらうために俺とみのりさんが声をかける。しかし男たちはこれが面白くなかったらしく突然激昂。それまでの態度が激変して突然亜利沙ちゃんと結華ちゃんに暴言を吐き始め、ついに手を出そうと男たちが腕を振り上げて――。

 

 

 

 ――それより早く、みのりさんのハイキックが男の側頭部ギリギリで止まった。

 

 

 

 その動きはあまりにも洗礼されすぎていて『綺麗』の一言に尽きなかった。寸止めだったにも関わらず男の頭が吹っ飛ぶ光景を幻視してしまったほどである。……もしも振り切っていたら、冗談抜きで吹っ飛んでいたんじゃないかと今でも思っている。

 

 ちなみにもう一人の男は俺が小手返し。女の子に手を挙げようとするんじゃありません。

 

 その後、男たちはお手本のような三下ムーブで去っていき、少しばかり目立ってしまった俺たちも足早にその場を立ち去った。亜利沙ちゃんと結華ちゃんは少しだけショックを受けている様子だったが、打ち上げのカラオケ店に到着した頃にはいつもの様子に戻っていた。

 

「……二人とも、大丈夫そうですね」

 

「あんなことがあって少し心配したけど、よかった」

 

 年相応の少女らしくキャッキャと楽しそうな二人の姿にホッと胸を撫で下ろす俺とみのりさん。

 

「……それにしてもみのりさん、さっきのハイキック凄かったですね」

 

「えっ」

 

 みのりさんは分かりやすくギクリとした。

 

「聞いたことなかったですけど、何か格闘技やってたんですか?」

 

「えっと……そ、それを言うならリョー君だって凄かったじゃないか。流れるような小手返しだったけど、随分と手慣れてたよね」

 

「俺のは護身用ですよ。幼馴染の家が武術の道場やってるんで」

 

 知り合った当初は手習い程度だったが、アイドルになったことをきっかけに『いざという時に自分の身を守れるように』という理由で士郎さんから本格的に叩き込まれたのだ。本来護身術の基本は『身を守ること』『逃げること』『助けを呼ぶこと』なのだが、高町家仕込みの護身術はナイフを持った暴漢と一対一ならば確実に制圧出来るようになってしまった。

 

「俺のは……えっと……ほら、見様見真似だよ。ああやって大袈裟なことすればビビってくれると思ったからさ」

 

「……なるほど」

 

 俺が気になったのは、ハイキックをしたときのみのりさんの『眼』である。男たちが逃げて行った後、みのりさんはすぐに「大丈夫!?」と亜利沙ちゃんと結華ちゃんの安否を確認していた。そのときの様子はいつものみのりさんだったのだが……ハイキックを放った瞬間のあの眼。

 

 自他ともに認める『混沌校』出身の俺には分かる。アレは間違いなく()()()()してた奴の眼だ。亜利沙ちゃんと結華ちゃんを守るためという名目が無かったならば確実に振り抜いていたと断言出来る。

 

 そもそも見様見真似でハイキックなんて出来ないんだよ。俺は余裕で足上がるけど、一般人は目の前にいる人間の頭の高さまで足上げれないし、その上ギリギリで寸止めすることなんて出来る一般人なんているわけないのだ。

 

「……あ、みのりさん何頼みます? みんなでパーティー用の大皿とか頼みます?」

 

「あ、う、うん、いいね、なんだか俺もお腹空いてきちゃったよ」

 

 とはいえ、みのりさんもこれ以上踏み込んでほしくなさそうだったので自分でこの話題を切り上げた。折角楽しい打ち上げの場なんだからわざわざ変な空気にする必要はないからね。

 

 

 

「……はぁ!? それマジで言ってますか!?」

 

「それは流石にありえないよねぇ……!」

 

「ほう……やるか小娘ども……!」

 

「それ聞いて黙ってられるほど大人じゃないよ……!」

 

 

 

 なお解釈違いで四人揃ってギスった模様。俺たち『集会』の日常である。

 

 

 

 

 

 

「「「「「「おはようございます」」」」」」

 

 

 

 イベント当日の朝。イベントそのものは午後から始まるのだが、打ち合わせやリハーサルがあるため朝早くから集まった俺たちは、同じくステージに立つアイドルユニットの三人と揃って挨拶を交わした。

 

「今日はよろしくお願いしますねーっ」

 

「っす」

 

「よろしくお願いします!」

 

 すなわち『セクシーギルティ』向井拓海ちゃんと及川雫ちゃんと堀裕子ちゃんの三人である。

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

「お願いします」

 

「よろしくねー!」

 

 ……あまりこういうことを言うのは失礼だとは重々承知しているものの、なんというかサイズ感が大きい。普段からリョー君が無表情のまま目を輝かせているだけのことはある。

 

 そんな余計なことを少しだけ考えつつ、しかしすぐに頭を仕事に切り替える。なんの因果か、今の俺はアイドル。あの憧れのアイドルなのだ。俺自身がその輝かしい存在を汚すわけにはいかないので、しっかりと仕事はこなす。

 

 まずは運営の事務所でスタッフたちと打ち合わせ。それぞれのMCのタイムスケジュールとステージの確認を行う。スタッフさんたちは俺たちも知っている町内会の人だったので若干やりやすさはあった。

 

「……えっと、それとですね。一応注意喚起をさせていただきたいのですが……」

 

 そんな中、スタッフさんが神妙な面持ちでそんなことを口にした。

 

「実はですね、最近この近隣を大勢のバイクの集団が走っておりまして……所謂暴走族という奴です」

 

 突然飛び出した不穏な単語に、一瞬その場にいた全員の身体が強張った。

 

「………………」

 

 特に拓海ちゃんが、苦虫を嚙み潰したような表情になっていた。そしてそんな拓海ちゃんに、雫ちゃんと裕子ちゃんが心配そうな表情になる。スタッフさんにその気は全くなかったのだろうが、その話題に対して彼女は少々思うところがあるのだろう。

 

 向井拓海は『元暴走族』であるということは、既に公表されていることである。

 

 所謂『裏』と呼ばれている存在と繋がりがある。もしくはあった。それは芸能界で活動していく人間にとって多大な足枷になる。拓海ちゃんはその逆境を乗り越え、現在は『セクシーギルティ』として活躍し、多くのファンを獲得した。

 

 勿論、今回の一件に拓海ちゃんが関与しているとは思わない。当然彼女には何の責任もないわけだが……それでも『以前の自分と同じような存在が他人に迷惑をかけている』ということに負い目を感じているのだろう。

 

 

 

 ――俺とそっくりである。

 

 

 

「イベント中にトラブルが発生する可能性も十分にあります。どうかお気を付けください」

 

「……そうですね、分かりました」

 

 あくまでも善意で忠告してくれたスタッフさんは何も悪くない。だからここでは拓海ちゃんの様子の変化に気付かないふりをして、そのまま話を進めてもらおう。

 

 その後に打ち合わせは問題なく終わった。少しばかりセクギル側の三人のテンションが下がり気味だったが、彼女たちもプロである以上割り切って仕事に臨んで欲しい。

 

 ……でも。

 

 

 

「……俺に、リョー君みたいなことが出来るとは思わないけど」

 

 

 

 

 

 

「ハーッハッハッハッ! 見たか! これが『周藤良太郎』の実力だ! 俺にかかればこれしきのスケジュールなんぞ速攻で終わらせることが出来るのだよ!」

 

「はい。お疲れさまでした。イベント楽しんできてくださいね」

 

「あ、はい、お疲れさまでした」

 

 ハイテンションに仕事を終わらせたらスタッフが全員ローテンションだった。一人だけ盛り上がりが空回り。ぴえん。

 

 それはそれとして、目標通り午前中の仕事を早めに終えることが出来たので、みのりさんたちのイベント会場へと向かうことにする。今日は様々な事情により車を自宅に置いてきているため、タクシーで移動することにする。

 

「……ん?」

 

 そしてその移動中、何やら複数のバイクの排気音が聞こえてきた。

 

(もしかして……スタッフさんが言っていた、暴走族……!?)

 

 一体どんな奴らなのか、気になってしまった。

 

 目が合っていちゃもんを付けられないように、出来るだけ身を隠してこっそりと音の聞こえる方へと視線を向ける。

 

 そこには古典的にも『呉莉羅連合』とチーム名が書かれた旗を掲げながら走るバイクの集団が……。

 

 

 

「呉莉羅連合!?」

 

 

 

 なにそのチーム名!?

 

 

 




・みのりさんのハイキック
めっちゃ絵になると思ったからやらせてみた。

・護身術の基本
極めると、危険な場所に行こうとすると道が溶岩のように見えるらしいっすよ(バキ並感)

・セクシーギルティ
そういえばお忘れの方もいらっしゃったかもしれませんが、アイ転世界では早苗さんがアイドルになっていないためたくみんが加入しております。

・呉莉羅連合
『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』に登場する暴走族。
基本的には気のいい奴ら。原作には男がいた気もするけど、アイ転世界ではレディース。



 呉莉羅連合が登場するアイドルマスターの二次創作はここだけなのでは?
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