アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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前回、全体で72話目だったにも関わらず千早ネタに一切触れないというアイマス小説書きとしてあるまじき失態を犯してしまいました。

とりあえず自宅の壁に向かって謝罪させていただきます。申し訳ありませんでした。


Lesson64 俺がアイドルになったワケ

 

 

 

 俺、周藤良太郎はアイドルである。

 

 きっかけは兄貴がオーディションに勝手に応募していたという結構ありがちなもので、そこでアイドルとしての才能を見出だされた。

 

 最初こそ先輩アイドルの嫌がらせがあったものの、後はトントン拍子にトップアイドルへの道を突き進み、初出場のIUで優勝を果たした辺りから『覇王』だのなんだのと言われるようになり、いよいよ本格的に世間様にトップアイドルとして認められるようになった。

 

 その頃にはだんだんと歌やダンスといったアイドルとしての活動そのものが楽しくなっており、今でも十分楽しんでお仕事をさせてもらっている。

 

 まぁ、ぴちぴちのアイドルを生で見れるってのもそこそこ楽しい理由だが。

 

 

 

 ところで、物語というものは『起承転結』で語られることが多い。俺のここまでの経緯を起承転結で語るとすれば。

 

 起は、兄貴がオーディションに応募したこと。

 

 承は、そこでアイドルとしての才能に気付いたこと。

 

 結は、今現在アイドルであるということ。

 

 

 

 起承結。

 

 そう、転が抜けているのだ。

 

 

 

 『ビギンズナイト』の一件も十分それに値するが、今回抜けている転として語るのはそれよりももっと根本的な話。

 

 後に語ることになる『ビギンズナイト』を前日譚、第零話とするならば。

 

 

 

 それはマイナス一話の物語。

 

 

 

 周藤良太郎がアイドルになろうと『決意』する物語。

 

 

 

 

 

 

 とまぁ、そこそこ力が入った語りから始めたわけだが、それはもうちょい後になるとして。

 

 

 

 朝目が覚めると息が白く、車の窓ガラス一面に霜が降りる、そんな寒さ。十一月のカレンダーは既に捲られており、その絵柄はクリスマスを連想させる華やかなものに。

 

 季節は既に秋を通り越し、すっかりと冬になってしまっていた。

 

「おぉ、さみぃさみぃ」

 

 吹き抜けた木枯らしの冷たさに体を震わせ、コートの前を抑える。すれ違う人々もしっかりと防寒具を着込んでおり、街中はすっかり冬の装いとなっていた。

 

「冬だからな。寒くない冬が来ても困る」

 

「いいんじゃないかな。たまには寒くない冬が来ても」

 

 別に冬が嫌いというわけではないのだが、やっぱり女の子の肌色が少なくなるのがゲフンゲフン。

 

 え? 今さら取り繕っても何が言いたいのか分かる? はは、またまたご冗談。

 

「何を言ってるんだ。寒くない冬が来てみろ。そんなことになったら……」

 

「なったら?」

 

「クリスマスケーキがすぐ悪くなるだろう」

 

「……いやまぁ、うん。確かに深刻な問題ではあるな」

 

 なんというか、流石個人店ながらクリスマス戦線を戦い抜く喫茶店の長男らしい考えであるが、こいつの口からそれを言われると何故か釈然としない気持ちになった。

 

 

 

 さて、珍しく一日オフのこの日に恭也と色気もへったくれもない二人で街中を歩いているのかというと、先ほど恭也が僅かに触れたクリスマスが関係してくるのである。

 

 十二月二十四日。持つ者と持たざる者、リア充と非リア充、勝者と敗者の様々な思惑が渦巻くクリスマス、別名『悪夢の聖夜(ナイト○アービフォアクリスマス)』。

 

 それは一部飲食店において聖戦の日なのだ。

 

 シュークリーム他ケーキでも大変な人気を誇る喫茶『翠屋』でもそれは例外ではなく、二十四日と二十五日はある意味で死線と言えるほどの忙しさとなる。まだアイドルになる前の俺も何度か手伝いに駆り出されたのだが、あれは酷かった。何が酷いって人の多さも酷かったのだが、まるで椀子蕎麦のように次から次へと流れるように見せつけられるカップルたちに俺の精神が酷かった。危うくキラキラを無くして闇に飲み込まれた一号のように闇堕ちするところだった。

 

 では高町家のクリスマスはそれだけで終わってしまうのかと言うとそんなことはなく、一日遅れの二十六日に我が周藤家を含めた二家族合同のクリスマスパーティーを開くのが恒例なのだ。

 

 何故飲食店でもない我が家も二十六日なのかというと、アイドルになる前は俺が高町家に貸し出されていたから、アイドルになってからはクリスマスのファン感謝イベントで忙しいからという理由である。

 

 「クリスマス二日間忙しい」→「つまり恭也もデートする暇が無い」→「ぷげら」

 

 ……と笑ってやりたいところではあるのだが、世の中そうは上手くいかない。自分たちが壮大な恋愛結婚だった上に今でもアツアツな万年新婚夫婦は息子の恋愛に関して大変寛大で、二十五日は月村のために(恭也のためにじゃないところがポイント)恭也を早上がりさせるのである。

 

 以前悔し紛れに「リア充爆発しろ」って言ったら「俺が爆発したら悲しむ人がいる」って返されて「ぐぬぬ」ってなった。畜生! こいつにネタなんて仕込むんじゃなかった! イケメンが言ったら洒落にならないじゃねえか! 本人としては月村じゃなくて家族のことを指して言ったんだろうけど!

 

 そしてようやく話が戻って来るのだが、今回二人で街中に出てきた理由は、クリスマスプレゼントを購入するためなのだ。

 

 ここで指すクリスマスプレゼントは家族へのプレゼントと月村へのプレゼントの二種類である。今までは月村とデートをしながらプレゼントを選んでいたらしいのだが、今年になって「自分で選んで私に頂戴」と言われたらしい。

 

 さてここで困った恭也君。自身のセンスをイマイチ信用しきることが出来ず、かといってなのはちゃんや美由希ちゃんに頼むことも出来ない。運悪くフィアッセさんも帰国してしまい当分不在。他に仲のいい女友達もいない。相談相手がいなくなったところで白羽の矢が立ったのが俺だったという訳である。

 

 

 

「なのはちゃん達のプレゼントは俺も買いたかったから丁度良かったといえば丁度良かったけど、そもそも何で俺なのよ」

 

 阿良々木(あららぎ)とか彼女持ちが他にいるだろうに。

 

「……正直阿良々木が参考になるとは思えなかった」

 

 あの恭也からもそう認識されるあいつは一体何なのだろうか。

 

 そう言う訳で二人してクリスマスプレゼントを求めて街中に繰り出してきたわけなのだが、イマイチ決めきれずにブラブラと適当に歩き回っているのである。

 

「さて、とりあえず定番で言えば服飾系統、アクセサリーだな」

 

 服は女の子の好みやサイズ的な問題もあるので、ある程度誤魔化しがきくアクセサリーが無難である。

 

「ちなみに今までどんなプレゼントを?」

 

「香水とか、化粧品関係が多かったな」

 

「おおう、そっちかー」

 

「だから今回も香水でもと考えていたのだが」

 

「止めといた方がいいぞ」

 

 月村が『恭也が選んだプレゼント』を欲しがったと言うことは、恐らく望んでいるのは指輪とかそこら辺だろう。

 

 ただぶっちゃけ俺も女の子に対してアクセサリーを贈ったことは無い。今までクリスマスプレゼントを上げてきた相手は、女の子に限ればなのはちゃんや美由希ちゃん、魔王の三人ぐらいなものである。交友関係の割に少ないと思うが、こっちも現役アイドルでクリスマスは忙しいのだ。クリスマスパーティーを開く高町家の面々や、わざわざクリスマス前にプレゼントを渡しに来てくれる魔王の三人以外にプレゼントのやり取りをする相手がいないのである。しかもプレゼントもお香や置物などばかり、アクセサリーなど門外漢。

 

 正直言って詰んでいる状態である。

 

(……あれ、これもしかして変なものプレゼントしたら俺も月村から怒られるんじゃ)

 

 詰んでいるうえに罰ゲーム付きである。

 

 どうするか。こうなったら今からでも誰かアドバイスをくれそうな女友達に連絡を取ってみるべきか。

 

 

 

「……む?」

 

「ん?」

 

「あら?」

 

「あれ?」

 

「あ……」

 

 

 

 俺たちが彼女たちとばったりと出くわしたのは、ポケットからスマフォを取り出した丁度その時だった。

 

 

 

 

 

 

「やっぱりこの界隈でのアイドルとのエンカウント率がおかしいような気がするんだ」

 

 激励に行った時の響ちゃんとか、兄貴のお見舞いの時の真美ちゃんとか、りんとのデートの時の美希ちゃんとか、仕事現場への移動中の時の雪歩ちゃんたちとか、出待ちしてた貴音ちゃんとか。最後のは向こうから会いに来てたけど、それでも普通こんなに街中でアイドルと出くわすことは無いと思うんだけど。しかも765プロ限定。ご都合主義ってレベルじゃねぇぞ!

 

「それはこっちの台詞ですよ……」

 

「まさかあの良太郎さんと街中で会うことになるなんて誰も考えませんよ……」

 

「うふふ、こうして良太郎君と一緒に歩くなんて、半年前では考えられないわねぇ」

 

 いや、結構自分は普通に歩いてたりするから多分みんなが気付いてなかっただけじゃないかと。変装してたら気付かれないし。その点で言うと、俺もデビュー前の彼女達に気付いてないだけで会ってるのかもしれないが。

 

 もしかして、こうして街中を歩いている人達の中にも将来のアイドルがいたりするのかもしれない。

 

 例えば、今すれ違ったピンク髪のコギャルや金髪のチビギャルとか。……いや、あの二人は女性向けファッション誌の読者モデルって感じでアイドルっていう感じじゃないか。

 

 ……でも、アイドルとして磨けば光りそうな気もするんだがなぁ。

 

 

 

 閑話休題。

 

 俺と恭也が出会ったのは、なんと春香ちゃんと千早ちゃんとあずささんの三人だった。たまたま三人とも今日はオフで、たまたま三人一緒に買い物に来ていたらしい。

 

 本当に何なんだこの偶然。

 

「えっと、あずささんは恭也と初対面ですよね。俺の幼馴染みで喫茶『翠屋』店主長男の――」

 

「高町恭也です。普段から良太郎(このバカ)がご迷惑をおかけしてすみません」

 

「おいコラ」

 

 保護者か? お前の立ち位置は保護者か? というか断定したな? そして俺の名前に変なルビ振ったな?

 

 畜生、月村に恭也があずささんの胸をチラ見してたってチクってやる。

 

「ガン見してた良太郎さんがそれを言っちゃうんですね」

 

「あれば見るのはもはや(さが)なんだよ」

 

「そういえば、以前何も無い壁に向かって私のポスターだと仰った件についてお話をしていませんでしたね」

 

 ジト目の春香ちゃんへの返事の言外に「無きゃ見ねぇ」と言ったのが逆鱗に触れたのか、底冷えするような笑顔の千早ちゃんが俺のコートの袖を掴んだ。

 

 どうやらちーちゃんは根に持つタイプのようです……っていうか、りっちゃん本当にチクってたのね。(Lesson43参照)

 

 

 

 チクることの恐ろしさを思い知りました。(小胸感)

 

 

 




・起承転結
話を書く上で大事なこと。意識しすぎると話が纏まらなくなったりするが、書いているうちに自然とその形になるという不思議。

・『悪夢の聖夜(ナイト○アービフォアクリスマス)
たぶん恐怖のプレゼントを持ったサンディ・クローズがやって来る。

・キラキラを無くして闇に飲み込まれた一号
終盤での主人公の闇堕ちはテンプレ。しかしやっぱり熱い展開。
もうそろそろ終わりそうなので、名残惜しいですね。

・「俺が爆発したら悲しむ人がいる」
ネタ的には末尾に(キリッ が付くのだがイケメンが言うと洒落にならない。

・彼女持ちの阿良々木くん
きっと良太郎レベルじゃ太刀打ちできないような変○な鬼いちゃん。
実は良太郎というキャラのイメージモデルなのだがそんなことはなかった感がぱない。

・アイドルとのエンカウント率
改めて羅列したら凄いことになってた。すげぇなこの界隈。

・ご都合主義ってレベルじゃねぇぞ!
AA略。

・ピンク髪のコギャルや金髪のチビギャル
デレマス二話視聴でようやく今後の方針が決まりました。次に再登場させるときが楽しみです。

・ちーちゃんは根に持つタイプ
第二章も終盤ですので、小ネタ大ネタ問わず伏線回収していきますよー。

・チクることの恐ろしさを思い知りました。(小胸感)
しかし反省した様子はない模様。



 前書きでも述べたように、前回の72話で千早ネタを忘れるという失態を犯してしまいました。普段から誕生日ネタも一切触れてこなかったのですが、ネタ小説的には是非とも触れるべきでした。

 これからはこのようなことが無いように(72のように)固く(72のように)真っ直ぐな気持ちで(72のように)安定した執筆活動を続けていく所存です。

 稚拙な文章ではありますので、皆さんも期待に(72のように)胸を膨らませずにお楽しみください。



 あ、今回から千早回です。



『デレマスを視聴して思った三つのこと』

 ・え、346プロ大手? マジ設定どうしよう……。

 ・リwアwルwエwネwドwリw

 ・お姉ちゃんエロい!

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