アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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デレマス最新話を見ながらドンドン新要素を盛り込んでいるスタイル。

その結果辻褄合わせが大変になろうが知ったこっちゃない()


Lesson65 俺がアイドルになったワケ 2

 

 

 

 おかしい。

 

「まだクリスマスプレゼントを購入していないにも関わらず財布が軽い」

 

 激おこちーちゃんのご機嫌を取るために喫茶店でケーキを奢った結果である。女の子の機嫌の取り方なんてこんなやり方しか知らないのだ。

 

「えっと、すみません良太郎さん、私達までお金を出していただいてしまって……」

 

「大丈夫ですか? 良太郎さん」

 

「はは、屁の突っ張りはいらんですよ」

 

「言葉の意味は分かりませんが凄い自信ですね」

 

 強がりですが何か。年下の女の子の手前(約一名違うがこの際些細なこと)、これ以上グダグダ言っても仕方がない。

 

「ホントすまんな」

 

「そう言えばお前しれっと金払ってなかったなおいどういうことだ」

 

 

 

 さてさて、喫茶店でお茶をしながら少しお話をしたのだが、その際なんと春香ちゃん達が俺たちの買い物のお手伝いをしてくれるということになった。

 

「それにしても、本当に良かったんですか? あずささん達も自分達の買い物があったはずなのに……」

 

「私達は大丈夫よ。少し服を見ていただけで、特に用事があったわけでもないから」

 

「はい。忍さんへのプレゼント選びだったら私達も喜んでお手伝いしますよ」

 

「私がお力になれるかどうか分かりませんが……」

 

 ね? とあずささんが春香ちゃんと千早ちゃんに振り返ると、春香ちゃんは快諾、千早ちゃんは自信無さげではあるが承知した様子だった。

 

 どうやら先日俺の知らないところで月村とも知り合っていたらしく、春香ちゃんと千早ちゃんは月村のことを既に知っていた。聞けば春香ちゃん達がナンパされていたところを月村とデート中だった恭也が颯爽と現れて助け出したとのこと。おいおいイケメンかよ。イケメンだった。

 

 しかしこれで恭也が月村に対して変なプレゼントを贈って罰ゲームという未来は回避されただろう。いやマジ助かった。

 

「良太郎さんもプレゼント選びなんですよね?」

 

「そうだよー。俺はそこのイケメンと違って友達と妹と妹みたいな母親以外にあげる人はいないけどねー」

 

「……ん?」

 

 俺の発言の何処かに気になるところがあったのか春香ちゃんは小首を傾げていたが、特に何も尋ねてこなかった。

 

「妹……ですか?」

 

「そう。正確にはこいつの妹なんだけど、昔から家族ぐるみでの付き合いだから俺にとっても妹みたいなもんだよ」

 

 歩きながらで少々行儀が悪いと思いつつも、ポケットから出したスマフォの画像フォルダを開いて去年のクリスマスの画像を引っ張って来る。映っているのは我が周藤家の三人と、高町家の五人、そしてフィアッセさんを合わせた九人の集合写真だ。

 

「俺の右隣にいるのが長女の美由希ちゃん、目の前にいて肩に手を置いてるのが次女のなのはちゃん。なのはちゃんの方は前に翠屋に来た時にいたから分かるよね?」

 

「わ! あの女の子、恭也さんの妹さんだったんですね!」

 

「……可愛い……」

 

 写真を見ながらそうだったんだー! と手を叩く春香ちゃん。千早ちゃんも何か呟いたような気がしたのだが、春香ちゃんが手を叩く音と重なってしまって何も聞こえなかった。

 

「みんなは兄弟とか姉妹とかいるの?」

 

 そういえばこういったプライベートな質問をしたことがなかったなーと思い、丁度今はプライベートだしこういう話題もいいかなと話を振ってみる。

 

「私は一人っ子だけど、幼馴染のお姉さんがいたわ」

 

「私も一人っ子でした。千早ちゃんは?」

 

「え、私……?」

 

 春香ちゃんに問われ、千早ちゃんの目が一瞬泳いだ。

 

「私は、その……兄弟も姉妹もいないわ」

 

「そっかー。じゃあ兄弟がいるのは良太郎さん達だけなんですね」

 

 少しだけ千早ちゃんのリアクションが気になったのだが、あまり触れない方がいいだろうと判断して春香ちゃんにそうだねーと返す。

 

「さてと、それじゃあ心強い女性陣の味方も引き入れたことだ。早速プレゼントを入手しに行こうではないか!」

 

「「おー!」」

 

「あまり騒がしくするなよ」

 

「春香……あずささん……」

 

 俺が拳を突き上げると春香さんとあずささんがノリノリでそれに付き合ってくれたが、恭也は呆れ顔でため息を吐き、千早ちゃんは若干恥ずかしそうに顔を俯けるのだった。

 

 

 

「あ、その前にATMでお金下ろして来ていいですか」

 

「……さっさと行って来い」

 

「す、すみません!」

 

「ごめんなさいね、良太郎君」

 

「………………」

 

 

 

 

 

 

「そういえば私、最近無性に蜂蜜を溶かしたお水が飲みたくなることがあるんですよ」

 

「前世の記憶じゃないかな」

 

「私は、そんな春香ちゃんを凄く可愛がりたくなるのよ」

 

「それも前世ですよ」

 

「私は高槻さんを見ると鼻から愛が溢れそうに……」

 

「それも前世……前世? いや、どっちかと言うと中の人……?」

 

 いやまぁ、前世も中の人も意味は同じだけど、根本的な部分で違うというか……。

 

 

 

「……あ」

 

 適当に色々な店を回っていると、不意に春香ちゃんが視線を上げた。

 

「ん? どうかしたの?」

 

 何かあったのかと春香ちゃんの視線を追ってみるとその先の街頭ビジョンに一人の女性が映っており、ステージの上で歌を歌っていた。ふんわりとしたボブカットに左目の泣きぼくろ、そして特徴的な緑色の右目と青色の左目。

 

 彼女は確か……。

 

「えっと、346(ミシロ)プロダクションの高垣(たかがき)(かえで)さんだね」

 

「あら? 高垣さんってモデルの方じゃ……。それに、346プロにアイドル部門の部署ってあったかしら?」

 

 首を傾げるあずささん。

 

「最近新設されたばかりだそうですよ」

 

 346プロダクションは女優やモデルを多く輩出する大手芸能プロダクションであるが、歌手やアイドルなどの部署が存在しなかった。ところが最近新たにアイドル部門を設立。栄えある346プロからデビューするアイドル第一号として、元々346プロにモデルとして所属していた楓さんが抜擢されたということだ。

 

「元々アイドルにも少し興味を持っていたみたいですし、楓さんも丁度いいタイミングだったんじゃないですかね」

 

「……あれ、良太郎さん、高垣さんと面識あったんですか?」

 

「ん? あぁ、雑誌の撮影現場で何回かね」

 

 俺の活動はライブやコンサート中心なのでそんなに回数をこなしているわけではないため、何回か現場が一緒になった程度の話だが。

 

 その際、俺並に無表情な346プロの関係者と何故か無言のにらめっこが五分ほど続くという珍事があったのだが、まぁ特に話すようなことでもないだろう。

 

「良太郎さんって本当に交友関係広いですよね」

 

「そうかな?」

 

 果たして楓さんとの関係を交遊と称していいのかどうか。

 

「そもそも交遊関係の広さというものを自分自身で把握しきれてないし」

 

「仰っている意味がよく分からないのですが」

 

 こう、大人の都合でいつの間にか知り合っていたり、辻褄合わせ的に知らなかったことになりそうな意味で。

 

 とりあえず見切り発車は良くないということを肝に命じておこう。(メメタァ)

 

 

 

 その時だった。

 

「おっと」

 

 びゅうっと冷たい木枯らしが吹き抜けていった。生憎春香ちゃん達は全員パンツルックだったのでチラリは期待できそうにないが、何処かにスカートを押さえて恥ずかしそうにしてる女の子でもいないかなーなどと考えながら少しだけ視線を周りに向ける。

 

 そんな俺の目に映ったのは。

 

 

 

 飛ばされた帽子を追いかけて車道に飛び出す、一人の男の子の姿だった。

 

 

 

「っ!?」

 

「危ない!」

 

 あずささんが息を呑み、春香ちゃんが思わず自身も道路に飛び出しそうになる。

 

 そんな春香ちゃんの腕を掴んで止める。

 

「っ!? 良太郎さ――!」

 

 街中に響く急ブレーキの音、目撃してしまった人が発する悲鳴。

 

「大丈夫」

 

 だが、こんな時に真っ先に動く男を俺は知っている。

 

 だから俺は春香ちゃんを止めるだけに留まった。

 

 そいつが男の子を助けると知っていたから。

 

 

 

「恭也!」

 

「大丈夫だ! 子供に怪我は無い!」

 

 

 

 それは、反対側の歩道から聞こえてきた恭也の声だった。

 

 車道には既に男の子の姿は無く、ただ急ブレーキをかけたことによる渋滞が発生しているだけで人は誰もいなかった。

 

「……え?」

 

 何があったのか分からず呆ける春香ちゃん。

 

 まぁ簡単に説明すると、高町家の流派の奥義を使った恭也が高速移動して男の子を抱き抱えて反対側の歩道まで駆け抜けた、ということだ。何やら集中力を高めることで周囲がゆっくりに云々の説明を受けたが正直現実味が無く大体聞き流していたので詳しい原理は分からないが、とりあえず「しんそく」みたいなものらしい。寧ろそんな勢いで抱き抱えたらそっちの方が危ないんじゃとか思わないでもない。慣性の法則仕事しろ。仕事したらしたで大変なことになってたが。

 

 というか、久しぶりに見たが相変わらず化け物染みた速さだった。気付いた時には既に隣にいなかったし。これが若者の人間離れって奴か……。

 

「よ、よく分からないけど、とにかく無事なんですね……よかったぁ……」

 

 心底安心した様子の春香ちゃん。隣であずささんも同じように胸を撫で下ろしていた。

 

 ふぅ、一瞬ヒヤッとしたが、特に大事になることもなく終わりそうで何より――。

 

 

 

「……ち、千早ちゃん?」

 

「ど、どうしたの千早ちゃん!?」

 

 

 

「っ!?」

 

 春香ちゃんとあずささんの声に振り返ると、そこにはその場に蹲る千早ちゃんの姿があった。

 

「千早ちゃん!?」

 

 慌てて近寄ってその肩に手を置くが、千早ちゃんからの反応がない。目の焦点が合ってなく、自分の体を抱き締めながら震えて若干過呼吸気味だ。

 

「ど、どうしたの千早ちゃん!?」

 

 春香ちゃんやあずささんの様子を見る限り、どうやら普段からの発作ではなさそうであるが、正直今はそんな考察をしている場合じゃなかった。

 

(不味い、人が集まってくる……!)

 

 あわや大惨事という事態は防ぐことが出来たものの、車道は渋滞を起こし何があったのかと周りの人達が足を止める。きっとその内警察も来る。

 

 そんな中でこんな状態の『アイドル』がいるのは理由云々をすっ飛ばしてまずい状況以外の何物でもない。

 

 チラリと視線を反対の歩道にいる恭也へと向ける。恭也は助けた男の子の母親らしき人物から頭を下げられていた。

 

(………………)

 

(っ! ……すまん!)

 

 俺の視線に気付いた恭也は視線で「行け」と言ってくれた。

 

 本当、アイドルの事情を察してくれる幼馴染みで助かった。

 

(一先ずここを離れよう。春香ちゃん、あずささん、お願い)

 

(は、はい)

 

(千早ちゃん、立てる?)

 

 小声で春香ちゃんやあずささんにお願いをし、千早ちゃんに肩を貸してあげてもらって足早にその場を離れることに成功した。

 

 

 

 ……この時の俺は、今回の件がこれで終わる気は一切していなかった。

 

 そしてこの予感は、翌日耳にすることになる凶報という形で現実になってしまったことを知る。

 

 

 

 如月千早が歌声を無くしてしまった、と。

 

 

 




・「はは、屁の突っ張りはいらんですよ」
お遊びはここまでだ(シリアス突入的な意味で)

・「無性に蜂蜜を溶かしたお水が~」
・「そんな春香ちゃんを凄く可愛がりたく~」
・「高槻さんを見ると鼻から愛が~」
祝! 英雄譚発売記念! 的な中の人ネタ。ただしちーちゃんのみミンゴス入り。
蓮華ああぁぁぁ!! 待ってろよおぉぉおぉ!!
呉編発売の十月下旬に逢いに行くからなああぁぁぁああ!!

・346プロ
デレマスのキャラが所属するアイドル事務所。
感想で「アイドル部門設立は二年前だった」という話を聞き、しかもこの作品ではデレマスキャラは全員二年前設定にしてあったので、時期的に丁度良かったために正式に登場させることと相成りました。
感想で色々と教えてくださった方々、ありがとうございました。

・高垣楓
『アイドルマスターシンデレラガールズ』の登場キャラ。クール(ギャグ)。
346所属デレマスキャラ一人目。実際アニメではどうなるのか知りませんが、とりあえずこの作品ではこういう設定に。
何かあったらその都度軌道修正を(ボソリ)

・無表情な346プロの関係者
実は武内Pが楓さんの元プロデューサーとかだったら面白いなーと思いつつ、アニメの展開によって臨機応変に対応できる曖昧な表現にしておく。

・やっぱりイケメン恭也
もうこいつが主人公でいいんじゃないかな()

・御神流 奥義之歩法 神速
恭也が出る二次創作なら一度は絶対にお目にかかる例のアレ。

・「しんそく」
威力80 命中100 優先度+2



 シリアス突入。

 これだったら原作通りでいいんじゃないかとお思いの方もいらっしゃると思います。作者もそう思いました()

 ただこの世界線で原作通りに進むと、流石にブチ切れた麗華さんが961とことを起こしてしまいそうだと思ったのでこういう形に。実は黒井さん(一時的)救済ルートだったという。

 次回はまたあとがきが短くなりそうです。



『デレマスを視聴して思った三つのこと』

・「前川ぁ!」「みくにゃん悪くないし!」

・熊本弁超ムズイ。

・茜ちゃんだ! 元気だ! 小柄だ! 大乳だ!

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