「な、ななな、765プロの皆さんの、バックダンサァァァ!?」
「あ、杏奈たちが……!?」
「ほ、ホンマなんですか!? センセ!」
「ええ。先方の要望に沿うと判断した貴方たち七人を推薦したわ。引き受けてくれるかしら」
「……勿論、やります。やらせてください」
「わ、わたしもやります!」
「わ、私も!」
「ふふ、みんな引き受けてくれるみたいね。ありがとう」
「……春香ちゃんと、一緒のステージに立てる……!」
「……あぁ、それと一つ言い忘れていたわ。今回、123プロダクションから二人、貴方たちと同じようにバックダンサーとして出向してくるそうよ」
「……え、ひ、123プロダクション……!?」
「す、周藤良太郎さんの事務所から!?」
「と言っても、二人ともまだデビューしてなくて殆ど貴方たちと変わりないそうよ。緊張する必要はないわ」
「……123プロ……」
カレンダーが一枚捲られ、暦が七月から八月に変わった。
既に東京は梅雨明けしており、先週のジメジメしていた空とは打って変わってカラッとした空に燦々と輝く太陽が大変眩しい今日この頃。
「いやぁ、出立にはいい天気になったね」
再びJK二人を助手席と後部座席に乗せ、俺は愛車で首都高速をひた走っていた。既に夏休み真っ只中ということで渋滞を予想して早めに出発したのだが、思いの外混んでいなかった。この分だと余裕を持って目的地に到着しそうである。
「それにしても、結局またリョータローさんが送迎してくれるんですね」
バックミラーをチラリと覗くと、後部座席の恵美ちゃんが呆れと苦笑を足して二で割ったような表情をしていた。
「まゆはまた良太郎さんの車の助手席に座れて満足ですぅ」
一方まゆちゃんは大変嬉しそうだった。
「立ち上げたばかりでスタッフ少ないし、体が空いてる人間が未成年の送迎をするのは当然だよ」
「未成年って……リョータローさん何歳でしたっけ?」
「今年の四月二日に十九歳になったばかりよぉ」
「あ、うん。態々ありがと、まゆ」
まぁ俺の場合、主観的には既に成人を越えて中年レベルだし。
あと相変わらずまゆちゃんは俺のプロフィールに詳しいなぁ。
「まゆとしてはぁ、是非良太郎さんも一緒に来て欲しかったんですけどぉ」
「まぁ俺も普通にお仕事だからね」
ですよねぇ、と肩を落とすまゆちゃん。流石に五日間もお仕事をお休みするわけにはいかないから仕方がない。
「っと、見えてきた見えてきた」
予想通り、想定していた時間よりだいぶ早く到着した目的地は、撮影スタジオでなければテレビ局でもなく。
羽田空港、国内線ターミナルである。
さて、今回空港を利用するのは夏休みという期間を利用して恵美ちゃんとまゆちゃんが二人で旅行に行くため、ではなく、765プロの合宿に参加するためだ。
765プロ初となるアリーナライブは十一月末の開催を予定しており、今から約四ヶ月後である。準備期間としてはまぁまぁあるものの、今や売れっ子の765プロのみんなは全員が時間を合わせて練習することが少々難しい。そこで連帯意識を深めるという意味も含めて、四泊五日の練習合宿を行うらしい。
そして恵美ちゃんとまゆちゃんを含めたバックダンサー組もその合宿に参加して一緒に練習をする、ということだ。つまり765プロのみんなとバックダンサー組の顔合わせであると同時に、恵美ちゃんとまゆちゃんと他のバックダンサー組の顔合わせでもあるのだ。
正直そういう合宿というものに参加する機会が全く無かったので少々羨ましい。ソロで合宿とかただの一人での引き籠り練習になりかねないし。士郎さん達(高町家ではないところがポイント)と山に行ったことはあったけど、あれは合宿というより山籠もりだったし。その内冬馬も体験することになるんだろうなぁ。……そういえば、あの時山で出会った筋肉隆々なご老人と一緒にだいぶ無茶な修行をしていた絆創膏の少年はちゃんと生きているのだろうか。
「何処で集合?」
「えっと、展望デッキで集合です」
「雨降ってたらどうするつもりだったの?」
メールでのやり取りは既にしていたらしく、スマホを取り出して集合場所を確認する恵美ちゃん。765プロのみんなが到着するよりも一日早く合宿場所に行って先にバックダンサー組で交友を深めよう、という提案を恵美ちゃんがしたらしい。なんというか恵美ちゃんらしい発想である。
駐車場に車を停め、キャリーバックをゴロゴロと引っ張る二人に追従する形の手ぶらな俺。一応荷物を持とうかとも提案したのだが、流石に荷物持ちまではさせられないと全力で遠慮されてしまった。
というわけで展望デッキに到着。人が多いので探すのに一苦労……かと思いきや、大きな荷物を持った女の子が七人固まっていたのですぐに発見できた。流石にスクールの先生が推薦するアイドル候補生というだけあって、可愛い子ばかりである。
「私、飛行機乗るの初めて!」
「ふふふー。可奈、ちゃんとパスポート持ったんかー?」
「ええ!? 奈緒ちゃん、福井ってパスポートいるの!?」
「いやいや可奈ちゃん、国内行くのにパスポートが必要なわけないよ」
「え? 飛行機乗る時には絶対パスポートが必要なんじゃないんですか? わたし、いつも飛行機に乗る時はパスポート持って行くんですけど……」
「……星梨花ちゃんがいつも利用してる飛行機は、多分国際線だと思う……」
「………………」
そんなやり取りをする七人に近づく二人の後を追う。
「えっと、奈緒……かな?」
「へ? ……恵美か?」
恵美ちゃんが関西弁で喋っていた女の子に話しかけると、サイドテールのその子も窺うように恵美ちゃんの名を尋ねた。
「……きゃー! ようやく会えたー! 初めまして奈緒ー!」
「私も会いたかったでー! 初めましてや、恵美!」
どうやらメールのやり取りで既に仲良くなっていたようで、お互いを確認した途端に満面の笑みで抱き合う二人。社交性が高い二人が出会うとこうなるのか。……いい感じに潰れあっていて眼福ですね。
「ってことはそっちがまゆやな。話は恵美から聞いとったで」
「……どうも初めまして」
よろしゅうなー! とフレンドリーに挨拶する少女に対し、まゆちゃんの返しは若干固い。まるで初めて恵美ちゃんと会った時のようだった。
「あれ? そっちのお兄さんは? 事務所の人?」
そこで少女はようやく一緒に来た俺の存在に気付いたようだ。
「……あ!? えっと、その……」
途端にしまったという表情になる恵美ちゃん。変装状態だから気付かれてないみたいだが、ここで「周藤良太郎です」と挨拶をしたら騒ぎになるのは間違いないだろうな。
「違うよ。俺は恵美ちゃんの従兄の高町恭也。二人を車でここまで送って来たんだ」
ということで偽名を名乗ることに。自分でもビックリするぐらいスムーズに恭也の名前が口から出てきた。
「へー、恵美、従兄のお兄さんおったんや」
「ま、まあね」
恵美ちゃんも空気を呼んで話を合わせてくれた。
「っと、自己紹介まだでしたね。
ペコリと頭を下げる奈緒ちゃん。それに続いて他の子たちも律儀に挨拶をしてくれた。
「は、初めまして!
「……
「
「
「な、
「……
ふむ、何ともバラエティに富んだメンツだが、年齢が765プロの面々に近い子で固めたというところか。
「よろしくー」
チラリと腕時計を覗く。まだ彼女たちが乗る飛行機まで時間があるな。
「みんなまだ時間あるね? 折角だから喫茶店でお茶でもご馳走するよ」
「ホンマですか!?」
「わー! ありがとうございます!」
年相応にはしゃぐ奈緒ちゃんと可奈ちゃんと星梨花ちゃん。杏奈ちゃんも反応は薄いがしっかりと喜んでいて、美奈子ちゃんと百合子ちゃんは申し訳なさそうにしている。ただ一人、志保ちゃんだけが訝しげにこちらを見ていた。
「えっと、何?」
「……いえ、何でもありません」
そっか勘違いかー。(棒)
とりあえず真面目そうな子だし、少しだけ言動に注意することにしよう。
いやぁそれにしても奈緒ちゃんと美奈子ちゃんは中々の胸を(以下省略)
「へー、美奈子ちゃんの実家は中華料理屋なんだ」
「うん! 知り合ったのも何かの縁だし、恭也君が来てくれたら大盛りサービスしちゃうよ!」
実は同じ大学一年だったらしく、話をしている間に美奈子ちゃんから敬語が抜けていた。いやぁ、正体ばらした時が楽しみだなぁ。(暗い笑み)
「いやー! 表情全然動かさへんからちょっと怖かったけど、恭也さんええ人ですわー!」
「……杏奈も、ちょっとだけ、怖かった」
奈緒ちゃんはコーラフロートをかき回しながらカラカラと笑い、杏奈ちゃんはメロンソーダのストローを口に咥えながら呟くように言った。
ううむ、そういう反応をされるのは久しぶりだなぁ。やっぱり無表情の人間ってのは怖いのかな。
「表情の変化は乏しくても、りょ……恭也さんは心豊かな素晴らしい人なのよぉ」
「お? なんやなんや? まゆっちは恭也さんにホの字なんか?」
「ふふ、尊敬している、とだけ言っておくわぁ」
評価されているが偽名ゆえに自分のことだとピンとこない件。くそぅ、恭也の名前なんて使うんじゃなかった。恭也めなんてことを!(理不尽)
っと、そろそろ時間かな。
「じゃあ俺はこの後仕事あるから。765プロの皆さんによろしくね、恵美ちゃん、まゆちゃん」
伝票を持って立ち上がる。……流石に十人分だけあって、結構いったなぁ。払えないほどではないが、流石に財布が軽くなった。
「はい、ありがとうございました」
「お仕事頑張ってください。りょ……恭也さん」
「ありがと。みんなも頑張ってねー」
『はーい!』
元気のいい返事を背に俺は喫茶店を、ひいては空港を後にした。
さて、福井へ合宿に向かう彼女たちに対し、俺は仕事である。これでもトップアイドルなのだから仕方がない。
……もっとも『何処で』仕事とは言ってないわけだが。
・だいぶ無茶な修行をしていた絆創膏の少年
たぶん空手と柔術と中国拳法とムエタイを習っている。
・横山奈緒
『アイドルマスターミリオンライブ』の登場キャラ。Dance。デレマス的に言えば多分パッション。
温泉巡りが趣味な関西弁の17歳。いつか楓さんと温泉で共演させたい。
・矢吹可奈
『アイドルマスターミリオンライブ』の登場キャラ。Vocal。デレマス的に言えば多分パッション。
歌うのが大好きだけど若干音が外れる系の14歳。劇場版ではスタッフのせいで悲惨な目に……。
・望月杏奈
『アイドルマスターミリオンライブ』の登場キャラ。Vocal。デレマス的に言えば多分キュート。
ネトゲが趣味で俯きがちだがステージに立つと性格が変わる14歳。映画から彼女を知った作者はソロ曲聞いてビックリした。
・箱崎星梨花
『アイドルマスターミリオンライブ』の登場キャラ。Vocal。デレマス的に言えば多分キュート。
天然なお嬢様で小動物チックな13歳。何かしようものならお父様が飛んできます。
・佐竹美奈子
『アイドルマスターミリオンライブ』の登場キャラ。Dance。デレマス的に言えば多分パッション。
人に料理を食べさせることが大好きな高カロリー系の18歳。迂闊に彼女の料理を大盛りで注文してはいけない(戒め)
・七尾百合子
『アイドルマスターミリオンライブ』の登場キャラ。Visual。デレマス的に言えば多分クール。
ファンタジー好きな文学少女系の15歳。気軽に「風の戦士」と呼んであげよう。
・北沢志保
『アイドルマスターミリオンライブ』の登場キャラ。Visual。デレマス的に言えば多分クール。
リアリストだが仕事はきっちりとこなすプロ意識の高い14歳。「ごしゅP様」は多くのプロデューサーのハートを打ち抜いた。
・「恭也君が来てくれたら大盛りサービスしちゃうよ!」
1「良太郎は『高町恭也』を名乗った」
2「『高町恭也』が来たら大盛りサービス」
問い:以上のことから考えられる今後起こりうるであろう悲劇を記述せよ。
バックダンサー組本格参戦! 劇場版ではほぼモブのような扱いを受けてしまった彼女たちの魅力を是非描いていきたい。(このメンツだと美奈子と志保がお気に入り)
そしてついにデレマス二期スタート! くぁwせdrftgyふじこlp!
『デレマス十四話を視聴して思った三つのこと』
・早苗さんは仕事熱心だなぁ(白目)
・夏だし、ホラー展開は丁度良かったですね(震え声)
・……まゆいきなり出ちゃったよ……やべぇよやべぇよ……。