博士と助手の奮闘記。我々は料理を手に入れるのですっ!!



博士と助手は一度食べた料理の味が忘れられなかった。
けれどもヒグマはハンターとしてあちこち転々。
かばんは海の外へと旅立っていった。
そんな中、ついに耐え切れなくなった二人は料理に挑戦する!!


カクヨムとの二重投稿です

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博士と助手の惨敗クッキング

「我々の新たな挑戦の開始なのですよ、助手」

「はい、博士。ヒグマは当てにならないです」

「ハンターだからといってフラリといなくなるなどと……我々に対する敬いが足りないのです。我々は長なのに……」

「我々は長なのに……」

 

 まったく、ヒグマはいけずです。我々は料理の味を覚えてしまったのです。

 

「いない者は仕方ないので、我々で作るのです。何も問題はありません、我々は賢いので」

「そうですね、博士。幸いかばんからマッチの使い方は聞いてあるので我々だけで可能かと」

「我々に抜かりはないのですよ」

「しかし、問題は我々が火を苦手とすることです」

「しかし、我々には考えがあるのです」

「はい。火が見えるから足が引ける。ならば見えなくしてしまえば良いだけです」

 

 助手と二人、かばんが料理をしたかまどの前に意を決して立ち向かう。

 

「さぁ、助手。とっておきを出すのです」

「はいなのです、博士」

 

 かばんが火を入れていた正面の穴に固い板──かばんいわく金属板──を立てかける。

 

「ふっふっふ、なのですよ」

「これで火はバッチリと封じられたのです」

「やはり我々は賢いのです」

「そうですね、博士」

 

 助手と二人で考え深く頷く。かまどの中には燃えやすい木屑と、薪がすでに用意してある。

 

「火加減の調整は無理ですが……これで煮る、ができるのです」

「調整はこれからの課題です。ですが、今回はまず料理の完成が優先です」

「上に乗せる物も網から板に変更したのです」

「これは期待が持てるのです。さあ博士、早く火をつけるのです」

「そ、そうなのです」

 

 ここからが一番の難所なのです。

 マッチの使い方もばっちりと学習済みな我々には死角はないのです。

 

「じょ、助手。ちゃんと箱を持っておくのですよ?」

「ま、任せるのです。博士もマッチが燃えたらすぐに離して中へ落とすのです」

「も、問題ないのです。つけたらすぐに離すのです。そうしたら、我々で板をずらして火を閉じ込めるのですよ、分かっていますよ助手」

「しゅみれーしょんはばっちりです。我々は賢いので」

「そうなのです。我々は賢いのです」

 

 ぷるぷると小刻みに震えて中々上手くマッチに火がつかないが、何度目かでジッと小さな音を立てて火がついたのです。

 すぐさまマッチを離し、真下にあるかまどへ落とす。

 決して、驚いたから落ちたのではなく、自分から落としたのです。

 群れの長たる我々が、怯えるなどということはないのです。

 かばんが料理をした時は初めて見たから驚いただけなのです。

 

「助手、板のそちらを持つのです」

「はい博士。せーの、です」

「せーの、なのです」

 

 板がずれて火が完全に閉じ込められた。

 パチパチと音がなり、火が強なり始めたことを我々に伝える。

 

「これでばっちりなのですね」

「あとは見守るだけなのです」

 

 助手と二人でジッと鍋を見つめる。

 しかし一向に、かばんやヒグマが料理した時のように、噴きこぼれるが起きない。

 それに──

 

「助手」

「はい、博士」

「勘違いでなければ、火の音が消えたのです」

「博士もそう思いますか」

「助手もですか……勘違い、ではなさそうなのですね」

「確認しますか?」

「そ、そうですね……」

 

 しかし、これで板をずらして火がついていたら厄介なのです。

 

「少しだけ、もう少しだけ、様子を見ましょう。我々は慎重なので」

「そうですね、博士」

 

 助手と二人、またジッと鍋を見つめる。

 やはり一向に料理の進んでいる雰囲気がしない。

 

「これは確認するしかないのです」

「そうですね、博士」

「では助手、そちらを持つのです」

「はい、博士。せーの、なのです」

 

 助手の掛け声に合わせて板をずらすと中が見えた。

 

「火が、消えているのです」

「確かに燃え始めた音は聞こえていたはずなのです」

「じょ、助手よ。もう一度なのです」

「は、はい、博士っ」

 

 その後、何度もマッチを落として火の音を確認するも、少ししてしまえば火が消えてしまう。

 

「燃えた跡はあるのに火が消えているのです」

「これは一体どういうことなのでしょうか?」

「……我々の賢さをもってしても分からないのです」

「む、無念……なのです」

 

 いつの間にか辺りは夕暮れになっていた。

 朝日が昇ってから始めたはずなのに、随分と時間が経ってしまっようなのです。

 助手と一緒に途方に暮れていると、我々のお腹がきゅうと音を立てて空腹を訴えてきたのです。

 我々は空腹なのです。

 

「仕方がないのです。助手、ジャパリまんを取りに行くのです」

「そうですね、博士。我々は空腹なので」

 

 ジャパリまんをラッキービーストから受け取り、助手と木の枝に並んでパクリと齧る。

 うん、やはりジャパリまんは美味なのです。

 

「ジャパリまんは美味なのです」

「我々用に調整はされたジャパリまんは美味しいです」

 

 でも、何故だか今日のジャパリまんは少しだけしょっぱかったのです。

 かまどの板の上にポツンと鍋が置いてある。

 それを見つめながら、助手へと言葉をかける。

 

「明日はヒグマを探しに行くのです」

「そうですね、博士」

「フレンズによって得意な事は違うのです」

「我々はやはり考える事が得意です。料理はヒグマが得意なので任せるのです。分業です」

「それが良いのです。我々は賢いので、そう判断するのです」

「我々は賢いので」

 

 あぁ、明日はしょっぱいジャパリまんではなく、あの辛い料理が食べたいのです。

 どこかでアードウルフの鳴き声が聞こえた。

 それはどこかで我々の心情を表すようであったのです。

 

 



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