銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第九十八訓 怖い所に行くにはそれ相応の覚悟が必要

「最近幻想入りした人で、巫女っぽい人を知りたい、ですか?」

 

 事情を聞いた文が最初に発したのは、疑問の声だった。

 

「えぇ。こんな手紙を送りつけてきやがった大間抜けにお灸をすえてやらないといけなくてね」

 

 霊夢の目は怒りに染まっている。

 最早マジになっている。こんな状態の彼女を敵に回してしまったら、もしかしたら敵は殺されてしまうのではないかと思う程の怒りの色。

 

「これ、絶対やばいと思うぜ……霊夢がやりすぎないように見張らないといけない気がするぜ……」

 

 近くに居た魔理沙は若干震えあがる程である。

 そんな中で、文はすぐに思い至ったような表情を浮かべる。

 

「思い当たる節と言いますか、恐らくこの人だという検討は付きましたが……少々危険かもしれませんよ?」

「どういうことだ?」

 

 頭を掻き毟りながら銀時が尋ねる。

 すると文は、

 

「坂田さん、前に私の住処についてお話したこと、覚えてますか?」

「あ? あー……確か、妖怪の山がどうとか……」

 

 紅霧異変が解決した後に行われた宴にて、文が銀時に言った言葉。

 妖怪の山には彼女の友人や仲間が居るという点。

 

「まさか、その巫女っつーのは……」

「はい。最近妖怪の山の中に、一社の神社が丸ごと幻想入りしてきたのです」

「「なっ!?」」

 

 驚いたのは、新八と神楽。

 今までミツバのような人が幻想入りするケースや、忘れ去られた物が香霖堂に流れ着くことは数多く存在した。しかし、建物毎幻想入りしたというケースを聞いたことがなかった為、万事屋メンバーからしてみれば驚くべきことであった。

 

「おかしいことではありませんよ? 確か紅魔館も同じ類のものだった筈ですし」

 

 紅魔館も、今回の神社と同様に建物毎幻想入りしたケースの一部だ。

 つまり幻想郷では、こういった類のことが起きても何らおかしくはないということが証明される。

 

「つまり今回の場合、何らかの目的があって建物毎こちらに幻想入りして、博麗神社を狙った何者かが居る……ということですかね?」

「そうなるでしょうね。けど……そうなるとちょっと厄介かもしれません」

「どういうことアルか?」

 

 文が少し考えるような素振りを見せる。

 気になった神楽が尋ねると、文がその理由を説明した。

 

「妖怪の山の住人は、他者が入り込むことを快く思わないのです。ですから真っ先に排除しようとします」

「そういやお前、確か妖怪の山は警戒心が強い奴らばっかとか言ってたな……」

 

 一応その時の話を覚えていた銀時は、その難易度が決して簡単ではないことを察する。

 文は少し嬉しそうに、

 

「あやや? 私の話、覚えててくださったんです?」

「ちっとばっかり記憶に残ってただけの話だ。別にテメェの話だから覚えてたわけじゃねえ」

「またまたー、照れちゃってもー」

「照れてねぇっての」

 

 若干面倒臭い対応をする文に対して、いいからさっさと話を続けろと言わんばかりの銀時。

 

「そんなわけで、戦闘になることは必須だと思われますので……一応それ相応の覚悟をしておいてくださいね」

 

 心配そうな表情を浮かべながら、文がそう告げる。

 対する霊夢は間髪入れずに、

 

「当たり前じゃない。心配せずともそんなもの、とうに出来てるわよ」

「荒事なら任せろ! 私も久しぶりにマスタースパークぶっぱなすぜ!」

「これまでいくつもの異変乗り越えてきましたからね。僕達だって協力しますよ!」

「万事屋の力、見せてやるアル!」

 

 四人のやる気は既に十分だった。誰もが逃げる素振りも、躊躇う素振りもまったく見せず、むしろ今か今かと心待ちにしているような状況。

 そんな中で、銀時もまた宣言する。

 

「わざわざそんなアブねぇ所に仕事しに行く程、仕事してぇわけじゃなかったんだけどな……事情が事情だからな。案内しろや、射命丸」

「……分かりました。皆さんがそうおっしゃるのならば迷いません。私も、貴方達の為に協力します」

 

 珍しく、射命丸文が真面目な雰囲気で宣言する。

 普段マスゴミとしての印象が強すぎるだけに、今回の彼女は評価に値するものだった。

 

「ここからでしたら、妖怪の山はそう遠くない筈です。準備が出来次第向かいましょう」

 

 文の言葉に、一同は頷いた。

 

 

 妖怪の山の中。

 とある神社を覗き込んでいる二人の少女が居た。

 片方は、カールした金色のボブ、赤い瞳、つばの広い赤い帽子にはブドウの飾り物がついている。だぼっとして、そでの膨らんだ黄色い上着、その上にはオレンジ色のエプロン、黒いロングスカートに黒い細チョーカーをつけた少女――秋穣子。

 もう片方は、同じくカールした金色のボブに金色の瞳、細いシルエットの赤い上着、裾のほうに向かって赤から黄色へと変わっていくロングスカート、三枚ぞろいの楓の髪飾りをつけた少女――秋静葉。

 二人は姉妹であり、秋を象徴した存在である。簡単に言ってしまえば、幻想郷における『秋を司る神様』だ。

 そんな二人が何故神社を眺めているのかというと、

 

「あの神社、なんであんなに騒がしいのかな……?」

 

 穣子が呟く。

 理由は簡単で、女性達が何かもめているような声が聞こえてきたからだ。

 ちなみに、静葉が姉で、穣子が妹である。

 

「穣子ちゃん、あの女の人達、何かもめているようだよ?」

 

 静葉が大人しいイメージなら、穣子は活発なイメージ。

 二人の印象はそれぞれ反対である。

 

「もうちょっと聞いてみようよ、静葉ちゃん」

 

 二人は興味本位で聞いてみることにする。

 そして聞こえてきた内容は……。

 

「どうしてですか!? 坂田銀時さんの武勇伝を聞いてると、より一層会いたくなってきたって言うのに、なんでお二人とも私が相手するのは駄目だとおっしゃるのですか!?」

「今の早苗が白夜叉に会ったら間違いなく何するか分からないからだよ!!」

「そうそう! 諏訪子も私も、早苗の為を想って言ってるのよ!」

「ファンがアイドルに会うのに許可がいるんですか!?」

「いるしアイドルじゃないからね!? むしろチャランポランでズボラなやばいやつって話だからね!?」

「そんな見ず知らずの男なんぞに、私達の早苗を会わせられない!!」

「いいじゃないですか!! 自由気ままで我が道突き進む人って素敵ですよ!! 常識にとらわれない素敵な殿方じゃないですか!!」

「ああもう早苗フィルターがとんでもない方向に向いてやばいよ神奈子ぉ!!」

 

 一人の暴走少女を、二柱の神様が止めているという何とも言えないシーンだった。

 

「……そっとしておこう」

「そうだね、穣子ちゃん……」

 

 秋を司る神様は、見てはいけないものを見てしまった気分になったという。

 

 

 

 

 

 

銀魂×東方project

 

 

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第九十八訓 怖い所に行くにはそれ相応の覚悟が必要

 

 

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