妖怪の山というだけあって中には妖怪がうじゃうじゃいるのかと身構えていた彼らだったが、実質そんなことはなかった。登ってみればただの山。木々豊かで空気も美味しい。ある一種のハイキング気分を味わっていた。
「落ち着いた山ですね。もっとこう、三歩歩くたびに妖怪に襲われるのかと思いましたよ」
「流石にそこまで厳しい山ではありませんよ……けど、奥に行けば行くほど守りが堅いので、その点は注意してくださいね」
新八の発言に対して、文は注意を促す。何かあってからでは遅いことは重々承知なのだろう。
「分かってるわよ。ったく、早く巫女ぶっ飛ばしたいってのに……」
霊夢の怒りメーターは地味に溜まりつつあった。単純に相手に対する怒りはもちろんのこと、なかなか敵地に赴けないことに対する怒り。そして、銀時の無自覚な女たらし。
「どうしたネ脇巫女? そういう日アルか?」
そんな彼女の苛立ちが伝わったのか、神楽があまりにも不躾な質問をしていた。
「いや別にそういうわけじゃないわよ……間違っても今の質問、他の人には絶対しない方がいいわよ。ってかそれ以上今の私にされたら何するか分からない」
「もはや脅し文句だぜ!? 苛立ってるのは明らかだぜ!?」
青筋浮かばせまくってる霊夢を見て、魔理沙は思わずツッコミを入れていた。放っておくと霊夢は辺り一帯を破壊しかねない程の
「まぁまぁ霊夢さん。その怒りは犯人にぶつけましょうよ」
「それに怒りまくるとシワ増えるぞ?」
「犯人八つ裂きにする前にあんたを八つ裂きにしてやろうか? おん?」
「ちょっとー! 銀さん!! 何怒り買ってるんすか!? 仲間割れも程々にしてくださいよー!! 射命丸さんからも……っていつのまに写真構えてんじゃねぇよ!!」
「へっ?」
一触即発☆脳漿炸裂寸前といった様子を写真に収めようとしている
「いやぁ、だって面白そうな波動を感じたんですもん。新聞記者として、特ダネ逃すわけにはいかないですから!」
「いいからさっさと道案内して欲しいぜ!?」
満面の笑みで反省する気もない様子の文に対して、魔理沙もツッコミに参加する。
魔理沙の言葉を聞いて渋々引いた文。
そうしてしばらく歩いている内に少し開けた谷に辿り着く。
そこにいたのは、
「……ん? ガキか?」
一人の少女だった。
紅珠のアクセサリーでツーサイドアップにした鮮やかな青い髪、緑のキャスケットをかぶり、白いブラウスの上に肩にポケットのついた水色の上着を着ている。スカートは裾の部分にたくさんのポケットがついた濃い青色。靴は長靴のようなもの。胸元には紐で固定された鍵がぶら下がっている。最大の特徴は、少女の体格からしてみたら大きすぎるリュックだった。
彼女はまだ銀時達に気付いていないようで、木陰で何かを作っているようだった。
「河城にとりさんですよ。彼女は河童なんです」
「え? 河童? どう見ても河童には見えないのですが……」
文からの説明を受けて、新八は戸惑っていた。彼らが知っている河童とは凡そ姿が全然違うのだ。
頭に皿はないし、甲羅もないし、何もかもが想像と違っている。
というか彼らは河童に会ったことがある。
「ありゃ河童じゃねえよ。河童っつーのはこう、もっとやべぇ生き物だろ?」
「いや銀時。アンタの河童に対するその考えは一体何処から来ているの?」
霊夢のツッコミはもっともだが、残念ながら彼らは自分達の世界で河童を見てしまっている。なのでそのギャップが激しいのだ。
「とりあえず、通り道にアイツが居るのはなんともなぁ……」
「退いてもらわないことには先へ進めないアル」
銀時と神楽がポツリと呟く。
「「てなわけで頑張れ新八」」
「なんで僕ぅ!?」
銀時と神楽によって指名された新八。
もちろん驚いた。だからこそ、つい大声をあげてしまった。
「っ!?」
だからこそ、少女に気付かれてしまった。
「そこに誰かいるの?」
少女は既に、声のした方をジッと見ている。
もうそこに何者かが居ることを確信している様子だ。
「おいぃいいいいいい! 新八のせいでバレちまったじゃねぇかぁああああああああ!」
「すみませぇえええええええええん!!」
「何してんだぜ!!」
「……これはあれね。責任もってアンタが何とかしなさい」
「いってくる、アル!!」
最後に喋った神楽が、新八の身体を掴んで、
「え?」
思い切り、ぶん投げた。
「どわぁああああああああああああああ!!」
「ええぇえええええええええええええ?!」
突然目の前に眼鏡をかけた人間が吹っ飛んできた少女は、それはもうかなり驚いたそうな。
思わず背負っているリュックを振りかぶって、
「とんでけぇええええええええ!」
「ぶぎゃああああああああああ!!」
新八を、数メートルかっ飛ばした。
「って、なにしてくれとんじゃあああああああああ!」
「それはこっちの台詞だぁあああああああああああ!!」
新八vs少女のツッコミ合戦。
いや、というかこれ少女が完全にとばっちりを喰らっているだけである。
「人がせっかく発明していたっていうのに、いきなり飛んでくる貴方が悪いよ!」
「投げ飛ばされたんだから仕方ないじゃないですか!!」
「投げ飛ばされた? ってことは……他に誰かいる?」
「あっ」
新八がつい零した一言により、新八以外にこの場に人が居ることがばれてしまう。
「あの、新八さんがアホなことやらかしているんですけど」
これには文も呆れている。
「……仕方ねぇ。どの道もうあの様子だと隠れても無駄だ。出るしかねぇな」
こうして、銀時達は少女の前に出るしかなくなったのだった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第百一訓 想定外の事態が起きるとついぽろっと零してしまうもの