先に仕掛けたのは椛だった。剣を振り下ろし、いくつもの弾幕を文目掛けて張り巡らせる。
対する文は、自身の速度を以ってして避け、それでも避けきれなかったものを、扇子で作り出した竜巻で打ち消していく。
「貴女に使っている時間はないんです……手早く終わらせます!」
「侵入者と共に行動している貴女を放っておくわけにはいきません。反省してもらいます!」
狗符『レイビーズバイト』。
不意打ちとして文に放ったスペルカード。赤と黄色の弾幕が、獣の牙のような形をして襲いかかるというもの。
「攻撃がワンパターンなんですよ!!」
先程は竜巻で打ち消した文だったが、今度は弾幕の隙間を通り抜けて椛目掛けて突っ込んできた。
「そうきてくれると思ってましたよ!!」
椛は不敵な笑みを浮かべると共に、数歩後ろに下がる。そして、
「山窩『エクスペリーズカナン』!!」
「っ!!」
『の』の字に描かれた弾幕とともに、楕円に張り巡らされた弾幕が文に襲いかかる。
「それで勝ったと思わないでくださいよね!」
突符『天狗のマクロバースト』。
椛の攻撃を避ける際に文が最初に使ったスペルカード。その風を利用して、文は一度空中に飛ぶ。更に、
「風符『天狗道の開風』!!」
椛を狙った、竜巻による射撃。
一直線に舞う風は、敵を巻き込もうと周囲の力を借りて速度を増す。
「この程度で……っ!」
手に持つ盾を使って、風の猛攻を防ぐ。とはいえ、その威力は絶大。地に付けている脚に力を込めて踏み止まり、
「うぉおおおおおおおおおおおお!!」
防いでいた盾に力を込めて、その軌道を空中へと変える。
「ちぃ……相変わらずそういった小賢しいことは上手くこなしますね」
「手先が器用と言って欲しいものですね。それにしてもどうしたんですか? 防戦一方じゃないですか。もしかして柄にもなく勝ちを譲ってくれるのですか? 文さんとても優しいんですね」
「冗談言わないでください。誰が貴女なんかに勝ちを譲りますか。私はただ機会を伺っていただけですよ」
「そんな暇があるなんて随分と余裕ですね」
「そういう貴女は余裕がなさそうですね。何ですか? 手数はそれで終わりですか?」
「減らず口、噛み砕いてあげますよ!!」
弾幕をぶつけ合いながら、二人は互いを貶し合う。
「……アイツら、本当は仲いいんじゃねえのか?」
遠目で観戦している銀時がポツリとそんな言葉を零す程、互いのことを理解している様子の二人。
「まぁ、水と油。犬猿の仲って奴でしょうね……少なくとも私には、仲良しこよしには絶対見えないわ」
「けど霊夢、あんだけの攻防繰り広げられるのって、相当の数こなしているか、理解してないと難しいぜ?」
「たぶんその両方でしょうね……互いを蹴落とす為に互いを理解している。だからこそ、あんなやり取りが出来るんでしょう」
霊夢の分析はある意味正しい。
椛と文の二人は、元々仲は悪い方。少なくとも客観的に見て仲がいいと言えるわけがなかった。二人の間に何があったのかまで彼らは把握することは出来ない。しかし、今の関係性が成り立っているのは、互いのことを倒そうとする意思があるからこそなのかもしれない。
「坂田さん達! ここは私が何とか食い止めておきますから、早く奥へ向かってください! 後はその道を真っ直ぐ行けば、問題の場所まで辿り着くはずですから!!」
椛の弾幕を躱し、自身の弾幕を放ちつつ、文は銀時達に伝える。
彼女は自分が椛の相手をすることにより、時間稼ぎをしようとしているのだ。
「川上の方に向かってください! そうすれば神社が見える筈です!!」
「……分かった。テメェも後でちゃんと追いついて来いよ?」
「分かってますよ! 私がいないと、誰が異変の記事を書くって言うんですか!!」
「へっ! どうせ三面記事しか書けねぇクソコラムばっかのゴシップだろ? よく言うな!」
「そういうこと言っていると、また坂田さんの記事書いてやりますからね!!」
銀時と文の二人は、そんなやり取りをかわす。
互いに冗談を飛ばし合い、まるでここを乗り越えることが分かっているかのようだ。
その態度は、椛の怒りを買う。
「私相手にそんな態度を取れるなんて、よくもまぁいけしゃあしゃあと……!」
「へっ! 伊達に場数踏んでないですからねぇ。見せてやりますよ? 取材で鍛えた私のスピードを!」
文は更に加速し、椛まで突っ込む。
その間に、
「……行くぞ。あの場は射命丸に任せておけ」
「は、はい……」
銀時に続き、新八が返事をしながらついて行く。その後ろを神楽、魔理沙の順番でついて行き、殿として霊夢が後ろを守るという形をとっている。
その一方で、文と椛の戦いにも決着がつこうとしていた。
「あまり時間をとれません。これで終わりにします」
「随分と上から目線ですね……後悔しても知らないですよ?」
「後悔なんてしませんよ。私の目的はもうほとんど果たせたも同然なんですから」
二人は互いに全力の攻撃を与える為に、構える。
そして――。
「幻想風靡!!」
「牙符『咀嚼玩味』!!」
互いに全力を振り絞った攻撃が、辺り一面に散らばっていったのだった。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第百四訓 嫌いな相手を倒そうとすると自然と理解が深まる
この勝負の決着は、敢えて見せないようにしました。
どっちに軍配が上がったのかは、恐らく物語が展開していくにつれて明らかになっていきますしねー。
何にせよ、椛さんってばスペルカードがダブルスポイラー合わせても三枚って少ないんですよ……。