「あ、追いついたのか銀さん」
少し小走りで銀時が上の方まで向かうと、神社の前にちょうど辿り着いたらしい魔理沙達が居た。
「まぁな。スッキリしてきたぜ」
「そりゃよかったわね。これから私もスッキリしてくるわ」
「それテメェだけじゃなくて、相手の頭もスッキリ空っぽにならない? 大丈夫? 殺戮パーティー現場にならない?」
「安心なさい。峰打ちにするから」
「霊夢さんの武器の何処に峰が存在するんですか!?」
「五月蠅いわね眼鏡。いちいちツッコミしてないと呼吸も出来ないの? 死ぬの?」
「余計なお世話だゴラァ!!」
霊夢からの言葉に新八はキレる。
どうやら霊夢は、敵地を前にして少しピリピリしている様子だ。何かと誰かに当たらないと気が済まない感じらしい。それでも少しマシになっているのは、川下で銀時にある程度怒りをぶつけておいたからだろう。
「ぼさっとしないでさっさと中に入るアル。早くケリつけて美味しい料理食べるネ!」
「もう宴の話に持って行ってるぜ!?」
流石と言うべきか、なんというべきか。
神楽の頭の中には、既に食べることしか存在していないのかもしれない。やはり万事屋メンバーは通常運転なのだろう。決戦を前にしてこの緊張感のなさである。
「そうは言いますけど……多分、あそこに居る人、思い切り犯人ですよね?」
新八が指差した先には、一人の女性がいる。
着ているものが巫女服であることから、恐らく霊夢の元に手紙を送ったのは彼女であることが予想される。
ただし、問題なのは――。
「なんであの人、頭に鉢巻巻いてるんですかね……」
「それだけじゃないぜ……なんか横断幕作ってるぜ……」
「銀ちゃんの名前が入った扇子を持ってるアル」
「……私、あんなアホに脅迫状送りつけられたの?」
「てか、なんで俺の追っかけみたいになってんのあれ」
軽く銀時は身震いさせる。
緑髪の少女は、もう見るからに目を輝かせながら、鳥居の前で待機していた。
それはまるで、アイドルの出待ちをしている熱烈なファンのような――。
「あとは任せた。俺が行くとろくな目に遭わない。絶対これ嫌な奴だ」
「逃げる気?」
「ありゃ逃げたくもなるだろ!! 一歩間違えればストーカー間違いなしのやべぇ追っかけになんぞ!! てか、銀さんあんな奴見たこともねぇんだけど!?」
霊夢の挑発が入るも、それよりも少女の奇行があまりにも怖すぎるといった感じの銀時である。
見ず知らずの少女にいきなり追い掛け回される危険性が出てきているのだ。無理もない話だろう。
何よりあの少女――東風谷早苗に、常識なぞ通用しない。
「おかしいですね……今確かに、銀時さんの気配を感じたんですが……会ったら必ず……うふふふ♡」
辺りを見渡しながら、早苗は何かを呟いている様子。
彼女の周りからは、桃色と黒色の混じったやばいオーラが湧き出ている。
「やべぇよあれ絶対やべぇよ取って食われる奴だよあれ。あんな少女に銀さんのタマ取られちまうよ。二重の意味で」
「何変に伝わりにくい下ネタぶっこんできてるんですか。さっきスッキリさせたんじゃないんですか?」
「いやスッキリさせるにしても、ションベンだからな? 別に一発してきたわけじゃ……」
「さっきからアンタら何の話してるんだぜ!?」
顔を真っ赤にしながら魔理沙が反応する。
「何アルか? 今更純情ぶるアルか? ガキんちょネ」
「ガキでもいいよ! 私は別に下ネタ耐性あるわけじゃないんだぜ!?」
「それでもツッコミとして生きていく気あるの魔理沙? 情けないわね」
「情けなくていいぜ!? ああもう突撃するぞ!!」
この空気から脱する為には、攻め込む必要があると判断した魔理沙。
だからこそ魔理沙は、先陣を切って単身で乗り込む。
「やい緑巫女! 博麗神社に変な予告状叩きつけてきたのはお前だな!! この私、霧雨魔理沙が成敗しに来てやったぜ!!」
「……今貴女に用はないので、下がっててもらっていいですか?」
「なっ……」
魔理沙のことなどさほど興味なさそうな感じで、早苗は追っ払おうとする。
「あ、もう今の私は、正直乗っ取りとかどうでもいいので。私はただ、坂田銀時さんを篭絡させることが出来ればそれで幻想郷を私達の物に出来るし、何より私も幸せになれるんじゃないかなーって考えてるので。博麗神社ならもう大丈夫ですよ? そんなことしなくても信仰集められそうだなーって思い始めてましたし」
「ちょっとーっ! 早苗!? そんなことないよ!? 全然必要だよ!? 何もうグータラモード突入しちゃってるのーっ!?」
あまりの変貌っぷりに、影からもう一人――諏訪子も出てきてしまったようだ。
「は? え? 増えた?」
魔理沙は流石に混乱する。
更に。
「駄目よ早苗。私達の目的は、博麗神社を手に入れて信仰を増やすこと。坂田銀時は倒すべき相手だし、何より貴女と手合せさせないって言った筈よ?」
「いいえ神奈子様。私は銀時さんとは戦いませんよ。銀時さんを守矢神社に婿養子として来てもらうだけです♪」
「それが駄目だって言ってるでしょーが!! 目を醒まして早苗!! チャランポランの『マダオ』侍に神主なんて務まらないから!!」
「誰がマダオ侍だこのガキィイイイイイイイイイイイイイ!!」
諏訪子の言葉を拾ってしまった銀時が、つい前に出てしまった。
このままもし隠れてやり過ごしていたら、もしかしたら銀時は会わなくて済んだかもしれないのに。
しかし、だが、しかし――。
「ほ……本物の銀時さんキターーーーーーーーーー!!!!!」
凄まじい勢いで、早苗は銀時の元へ駆け寄ってきた――。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第百六訓 やばい相手かやばくない相手かは気配でなんとなく分かる
おかしいなぁ……もう少し早苗さんを常識ある感じに書くつもりだったのに……どうしてこんなことに……。
というか今回の話、どう転んでもシリアスにならないんですけど……。