銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第九訓 抑え込みすぎると感情は爆発してしまうから適度に吐き出せ

「銀さん! 助けに来たぜ!」

 

 箒に乗って宙を舞い、弾幕を放ち続けながら魔理沙が叫ぶ。その横には、銀時にとっては初対面となるパチュリーの姿もあった。

 

「本当ならば侵入者の手助けなんて真っ平御免だけど、そうも言ってられないわ。私はパチュリー。一時的に貴方達の味方よ、坂田銀時」

「そうかい。名前は魔理沙から聞いた所だろうな……ちょうどいい。アイツの遊び相手が俺一人で務まるか不安だった所なんだわ」

「遊びなんて生易しいものなんかじゃないわ。これは殺し合いよ」

「いいや、遊びだよ。小生意気なガキを宥める遊びだ。本心を打ち明けることすら叶わねぇガキの心開かせるにゃちょうどいい」

 

 木刀を構え、フランと対峙する銀時。

 対するフランは、暫し茫然としていた。それは新たなる侵入者が来たことに対してなのか、それとも銀時の言葉に対してなのか、あるいは両方か。

 いずれにせよ、パチュリーは今の彼女を見たことがほとんどなかった。

 

「フラン。貴女はレミィの手によって地下に幽閉されていた筈……その力が強大なのは、貴女だって十分に……」

「ジャマシナイデ」

 

 瞬間。

 パチュリーに対して、フランは夥しい数の弾幕を放った。

 

「なっ……!」

 

 慌ててパチュリーは、自身の目の前に炎の渦を創り出す。

 火符『アグニシャイン』。

 彼女が持つスペルカードの一種だ。

 

「おいおい、コイツぁとんでもねぇことになってんな……身内の者にも遠慮なしってか?」

「パチュリーは、私とギントキが遊ぶのを邪魔しに来た。だから葬るの。今はギントキと遊んでるの。邪魔する者は、壊しちゃうから!!」

 

 フランは、一時的に標的を、銀時からパチュリーと魔理沙に変える。

 そして、彼女は自身の持ち得るスペルカードの中でも、強力な部類に入るものを使用した。

 

「禁忌『禁じられた遊び』!!」

 

 十字架型のレーザーが、大量に放たれる。そのレーザーは回転し、彼女達の行く先を阻む。

 魔理沙は、星型の弾幕をばらまくことで相殺していく。

 パチュリーはあらゆる属性を内包した弾幕を放ち続けることで、打ち消していく。

 

「回転するレーザーって言うのは、これまたすげぇ弾幕だぜ! けど、私の魔法の方が、強いぜ!」

 

 箒に乗って宙を舞う魔理沙。

 その箒の先端より、無数の星がばらまかれていく。

 

「魔符『スターダストレヴァリエ』!」

 

 飛び交う星は、血まみれの空間に星空を生む。

 だが、フランはそれすらも壊す。

 

「キャハハハハハハハハ! そんな攻撃、喰らうもんか!」

 

 放たれる弾幕。

 十字型のレーザーは、容赦なく星々を打ち消す。

 だが、彼女は夢中になりすぎていた。

 

「日符『ロイヤルフレア』」

「えっ……!」

 

 フランの背後に居たのは、スペルカードを発動したパチュリー。

 彼女の放つ弾幕は、彼女を中心として放射状に放たれて、炎を帯びた弾幕は、容赦なくフランを燃やし尽くそうと襲い掛かる。

 所々、フランの洋服に焦げ跡がつく。

 避けきれていないものが、彼女の身体を襲う。

 それでも、彼女はほぼダメージを受けていない。

 

「禁忌『フォービドゥンフルーツ』!」

 

 禁断の果実を冠したスペルカードにより、赤と青の螺旋で描かれる弾幕が放たれる。

 炎と螺旋の衝突により、大きな衝撃波が生まれる。

 その威力は、宙を舞う魔理沙とパチュリーを吹き飛ばす程のものだった。

 

「きゃっ!」

「うわぁっ!」

 

 勢いよく吹き飛ばされた二人は、部屋の隅まで飛ばされて、壁に激突する。

 衝撃により肺から空気が一気に吐き出され、一瞬息苦しさを感じる。

 

「アハハハハハハ! 私に勝とうだなんて……」

「後ろを見ろ、クソガキ(フラン)

 

 勝ち誇ったフランの背後から聞こえてきたのは、夜叉(銀時)の声。

 フランは、自身が震えあがったのを感じた。

 495年という長い時間を過ごした彼女にとって、それは初めてとなる経験。

 一瞬、身体の動きが鈍った。判断を誤ってしまったのだ。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 渾身の一撃。

 銀時によって放たれた、木刀による一撃。

 それをまともに受けたフランは、反対側の崖まで飛ばされる。

 轟音が鳴り響き、周囲が少し揺れた。

 

「……分からねぇ。それだけの力を持っていながら、何故テメェはこんな所で閉じこもっていやがる……パチュリーとかいう奴が言ったことが本当ならば、強大な力によってここに幽閉されたってことなんだろうけど、テメェは本当に、そのままでいいっていうのか……?」

 

 すべてを破壊し尽くす程の力を持つフラン。

 そんな彼女が、この館を破壊することなく、孤独に苛まれながらも、尚この場所に幽閉され続ける理由。

 彼女は『姉妹』という言葉を使った。

 即ちそれは――。

 

「姉が関与しているんだな。テメェがここに居続ける理由は」

「お姉様がなんだって言うの? だからなんだって言うの?」

 

 フランの声色から、苛立っているのは明らかだった。

 

「不味い……このままだと、フランが……」

「ど、どうなるって言うんだぜ……?」

 

 ダメージが身体から抜け切れず、その場から動けない二人。

 パチュリーはフランの様子がおかしいことを悟り、魔理沙はそのことについて尋ねる。

 冷や汗を流しながら、パチュリーは答えた。

 

「最悪の場合、この辺一体がすべて吹き飛ぶことになるわ」

「なっ……!」

 

 暴走する力を抑えきることが出来ず、館はおろか、世界すべてを吹き飛ばしかねない程の強大な力。

 フランはそれを持ちながら、495年間ずっと耐え忍んできたのだ。

 

「お姉様が私の為に閉じ込めたことも知ってる。私の力が理由で閉じ込められているのも知ってる。だから私は、ここに居続けなくちゃいけないの!」

「本当にそれが本心か? 今の今までそんな感情を吐露することすらしなかった奴が、偉そうに物語るじゃねえか。テメェの本心くらい、テメェの口でしっかり言いやがれ!!」

「黙れぇ! 馬鹿にするな! 私を馬鹿にするな! お姉様を馬鹿にするな!!」

 

 QED『495年の波紋』。

 それは、彼女が抱え続けた苦悩が放たれる弾幕。

 波紋のように広がり続ける、感情の爆発。

 避けることなど叶わない弾幕の奔流に、銀時は逆らうことなく進み続けた。

 

「お、おい銀さん! そりゃ無茶だぜ!」

 

 それがどれ程の物なのかを理解し切っていない魔理沙にも、銀時の行動が余りにも無謀過ぎるのは分かった。だからこそ叫んでいた。

 その中で、パチュリーは茫然と眺めていた。自身がここに来たのは、彼女を止める為。その目的は恐らく果たせていたことだろう。

 だが、それよりも。

 

「あれだけの弾幕なのに、彼、ほとんど傷ついていない……?」

 

 違和感を抱いたのは、その一点。

 確かに、銀時の身体を射抜いている。血を流しているのだからそれだけは間違いない。

 しかし、それは銀時を地に伏せるまでに至っていない。

 

「ほらな。それだけの力出しながら、ここが崩れることを恐れて、本気を出しきれちゃいねぇ」

「!!」

「大事なもん守りたかっただけなんだろ? けど、たまには我が儘の一つや二つ、ぶつけたっていいじゃねえか。壊すだけが快楽じゃねぇ。耐えることだけが愛情じゃねぇ。もっとぶつけたっていいんだよ。テメェの感情位、テメェで抑えきれねぇ時だってあるんだろ? だったら、ぶつけてこいよ……ここに居る奴らは、そんな簡単につぶれるような奴らじゃねえ筈だぜ」

 

 フランは恐れていたのだ。

 自身の力によって、姉を困らせてしまうことを。

 自身の力によって、姉を傷つけてしまうことを。

 自身の力によって、すべてを壊してしまうことを。

 だからこそ、彼女は言われるがまま幽閉され続けた。

 そうしている内に、彼女は外へ出たいという欲求を、考えないようにしてきた。

 物凄く単純な願い――他人と触れ合うということすら、捨ててきた。

 手に入らないのならば、壊す。

 自身の力もまた、それを証明しているのだから。

 

「壊すのがテメェの力だっていう癖に、テメェに絡まった鎖を壊すことすら出来ねぇガキは、黙って周りに頼ればいいんだ。ちったぁテメェの想い、姉にぶつけてこい。それがテメェに出来ねぇってんなら、代わりに俺達が言ってきてやらぁ……」

 

 いつの間にか、フランは攻撃することを止めていた。

 その瞳からは、一筋の涙が零れていた。

 

「狂気が、収まった……?」

 

 長年、フランの狂気を目の当たりにしてきたパチュリーだからこそ、理解した。

 この瞬間、フランに纏わりついていた狂気は、晴れていた。

 

「ま、今は遊び疲れてるだろうから、後は大人の仕事ってことで、俺達で行ってやらぁ。だからまぁ、大人しくゆっくり休んでろ」

 

 銀時は、立ち尽くしているフランの前まで歩み寄り、その頭の上に手を乗せる。そして優しく撫でた後、彼女の横を通り過ぎようとした。

 

「ギン、トキ……」

「ん?」

 

 ポツリと、フランは銀時の名前を呟く。

 彼女に絡まる、負の感情による鎖は、壊れかけている。

 

「本当に、いいの? 私、こんなにも酷い力を持ってるんだよ? ギントキにも、他の人にも、たくさん酷いことしたんだよ?」

「それがなんだってんだ? 多少駄々をこねることだってあるだろ。生きてりゃ周りにぶつけちまうことだってあるんだから、それでいいじゃねえか」

「お姉様が私の為を想って閉じ込めたのに、その想いを踏みにじることになるんだよ?」

「踏みにじることになるかよ。テメェを想って閉じ込めてたってんなら、姉貴もまた、テメェのことが好きってことだろ? なら、一緒に過ごすことが出来るようになればもっといいじゃねえか」

「……私、お姉様の隣に居ても……みんなの隣に居ても、いいの?」

「……それは俺が決めることじゃねぇ。けど、そんなこと、聞くまでもねぇだろ?」

 

 その問答は、フランの抱えてきた不安を、いとも容易く解いていく。

 ほとんど鎖は残されていない。

 

「……ギントキ、私、もっと我が儘言っても、いい?」

「あ? なんだ……」

 

 次の言葉を言い終える前に、銀時の身体に、フランが抱き着いていた。

 

「よっ!?」

「なっ!?」

「えっ!?」

 

 思わず、魔理沙とパチュリーの二人も驚いてしまう。

 そんな彼らに構わず、フランは涙を瞳にたくさん溜め込みながら、銀時に言った。

 

「私、もっとギントキのことを知りたい。もっとたくさん、ギントキと触れ合いたい。だから、お姉様の所へ行ったら、必ず私のところに帰ってきて? 約束、だよ?」

「約束、か……」

 

 その言葉が持つ重みを、彼は何処までも知ってしまっていた。

 だから、銀時は不敵な笑みを浮かべつつ、

 

「あぁ、約束だ」

 

 そう告げて、優しくフランの身体を自分から離して、

 

「……パチュリー、フランの姉の所まで案内してくれ。魔理沙、もちろん来るよな?」

「当たり前だぜ! けど、さっきフランがしてたことについて説明するのが先だぜ?」

「あれはフランが勝手にやったことじゃねえか! 俺は何もしてねぇよ!」

「……はぁ、まったく。騒がしい連中ね。いいわ。レミィのところまで案内してあげる。フランのこともあるし、貴方を倒せる気がしなくなったし」

 

 こうして、彼らはレミリアの所へ向かうこととなる。

 去り行く三人の後ろ姿を――特に銀時の背中を見送りながら、フランはポツリと呟く。

 

「ギントキ……ギン兄様……私、もっと貴方のことが知りたい……もっと、一緒に、居たい……」

 

 眼差しは何処か温かく、頬は赤く染まり、熱を帯びている。

 495年という長い年月の中、一人の少女が初恋を覚えた――のかもしれない。

 よりにもよって、天然パーマのぐうたら侍を相手として

 

 

 

銀魂×東方project

 

銀色幻想狂想曲

 

 

 

 

 

 

 

第九訓 抑え込みすぎると感情は爆発してしまうから適度に吐き出せ

 




銀時vsフラン、終結。
次回、銀時・霊夢・魔理沙vsレミリアの戦いが始まる、と思います!
今回は結構シリアスしてた気がしますが、最後の最後にフランが思いもよらないことになりましたね……。
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