銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第百十四訓 時に人は思いもよらない力を発揮する

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 物凄く大きな叫び声をあげながら、銀時は妖怪の山を駆け下りていく。フランをお姫様抱っこしつつ、彼は生命の危険と対峙しているような状態である。もしこのまま追いつかれてしまったら、その時に待ち受けているのは……。

 

「待ちなさい! 銀時!!」

 

 背後から最初に迫ってきたのは、鬼のような形相を浮かべている霊夢。彼女の容赦なさは、放っている弾幕の量にも比例していた。

 

「くっそ! 追いかけっこで弾幕使うんじゃねえよ!!」

「ただの追いかけっこなんかじゃないわ。これは……制裁よ?」

「余計酷くなってんじゃねぇかァアアアアアアアアアア!!」

 

 最早それは死刑宣告にも近い。少なくとも、今逃げ切ることが出来れば後はどうとでもなるだろうが、逃げ切れるという保障が何処にもない。

 ちなみにフランはというと、先ほど自分がした発言に対して恥ずかしがっているのか、顔を赤くしたまま銀時の方を直視出来ないといった感じである。それでも銀時にしっかりとしがみついている辺り、この状況は満更でもない様子。完全にお姫様抱っこされている状態なのだ。まるで物語のヒロインのような扱いを受けている。好意を寄せている人物にそのようなことをされて、喜ばないわけがない。

 それが、別の恋する乙女を刺激していることなど、当然銀時は気付くはずがない。

 

「旦那様。旦那様の目に私しか映らないようにしてあげるわ」

 

 霊夢の横から現れたのは、怪しい笑顔を振りまいている輝夜だった。とてもではないが安心するわけのない、どう考えても何か企んでいるようにしか見えない笑顔。もし捕まってしまった時には……。

 

「もうただのヤンデレにしか見えねぇよ!?」

「私はただ旦那様をお慕いし、愛しているだけよ! 私の愛を受け取って!!」

「重すぎて願い下げだコノヤロォオオオオオオオオオオ!!」

 

 もちろん銀時は受取拒否。

 だが、事態はさらに悪化する。

 

「さ、銀時。覚悟を決めて頂戴。命懸けの鬼ごっこなんてそうそう出来ることじゃないから楽しみだわ」

 

 日傘を握り締め、明らかに楽しそうな表情を浮かべながら幽香が迫ってきていた。

 

「オメェはこの状況楽しんでるだろ絶対!!!!」

「あら、流石は銀時ね。よく分かってるじゃない」

「余程タチ悪いわ!!」

 

 もちろん幽香も嫉妬の感情は含まれているのだが、それ以上に手加減しなくても平気である銀時を相手に、全力で追いかけっこすることが出来ることが楽しいといった様子である。彼女は根っからの戦闘狂。無理もない。

 

「第一なんでアンタみたいなチャランポランがそんなにモテるのよ!! ああもうなんだか無性に腹立ってきたわ!!」

「ただの八つ当たりじゃねえかァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 霊夢は自身の心に現れている怒りの感情を、銀時相手に存分にぶつけている。それはもう誰がどう見ても嫉妬である。気付いていないのは霊夢本人と、言われている銀時位だろうか。

 

「フラン、わりぃな……しっかり捕まっててくれよ!」

「う、うん……っ」

 

 銀時にそう言われて、フランは改めて抱き着く腕に力を込める。

 銀時も、フランをお姫様抱っこしながらも、軽い身のこなしで距離を離していく。普段から家賃関連で逃走しまくっているのがここに来て活用出来ているらしい。

 

「銀時さぁああああん!! 逃げられませんからね!!」

「どわぁああああああああ!!」

 

 走っていた矢先、数メートル先に早苗が現れる。ここ最近のこととはいえ、山の地理に関しては彼女の方が銀時より知っている。その点においてアドバンテージを取ることが出来るということ。予め逃走経路を先読みして、待機していることだって不可能ではない。

 

「ちっとばっか気を付けろよ……っ!」

「へ? 何を……!?」

 

 銀時はフランを抱えたまま、思い切り地面を蹴る。そのまま勢いを殺すことなく近くの木を蹴り飛ばすと、早苗の上を飛び越えてそのまま華麗に着地。

 

「なっ……!」

 

 そしてそのまま逃走続行。まんまと逃げ果せたのである。

 

「テメェらなんぞに捕まってたまるかよ!!」

 

 命がかかっている時の銀時はかなり必死なようだ。普段はなかなかやらないようなアクロバティックなことも平然とやりのけてしまう。その動きや気兼ねをもう少し日常に向けられたならば、さらに魅力が増すだろうにと、歌舞伎町に住む人は思うかもしれない。

 

「まてぇええええええええ!!」

「待てと言われて律儀に待つ奴なんざいるわけねぇだろうがァアアアアアアアアアアア!!」

 

 この追いかけっこは、後に幻想郷中に知れ渡る喜劇として名を残すことになるが、この時の彼らはまだ知る由もないだろう。

 ともかく、こうして喜劇にも近かった今回の異変は幕を閉じる。

 

 

 

 

 

 

銀魂×東方project

 

 

銀色幻想狂想曲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第百十四訓 時に人は思いもよらない力を発揮する




これにて風神録篇は終了となります!
次回からはポロリ篇伍です!
取りこぼしたお話や、短編をいくつか掲載していきますー。
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