銀色幻想狂想曲   作:風並将吾

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第百十八訓 ラブコメには大抵存在するお約束

 屋台を後にした新八とリグルは、森の中を二人で歩いていた。新八は、知り合いと会えたことによって笑顔が増えている。一方のリグルは緊張しっぱなしだ。何せ目の前に自身が気になっている人物がいるのだ。気にするなという方が無理な話だろう。

 

「どうしたの? リグルちゃん」

「ふぇ? あ、い、いえ! なんでもないです……っ」

 

 どんどん声が小さくなっていく。

 単純に嬉しさと恥ずかしさが入り混じって、どんな反応すればいいのかわからなくなっているのだ。

 ただし相手は眼鏡である。

 眼鏡、である。

 

「なんか今ものすごく失礼なこと強調された気がする……」

「? どうかしました?」

「う、ううん、なんでもないよ!」

 

 リグルが心配そうな眼差しで尋ねてきたので、新八は咄嗟に否定する。

 それにしてもこの二人、客観的に見たらまるで付き合いたてで遠慮してるカップルのように見えなくもない。割と大半の理由がリグルにあるような気はしないでもないが、新八の反応もさらに助長させている。

 

「なかなか会えてなかったから、今日会えて本当嬉しいよ」

「え? あ、あの……その……っ」

 

 嬉しさがかなり高まって、リグルの顔は真っ赤に染まる。まるで女たらしのようなことを言っている新八。

 

「私も、新八さんに会えて嬉しいです……っ」

 

 顔を赤く染め、手足をモジモジとさせながら、上目遣いでリグルは言う。

 その様子に、新八はかなりドキッとした。

 

「(あれ、ちょっと待って? これかなりやばくない? ちょっと胸がドキドキしまくってるんですけどォオオオオオオオ!?)」

 

 ラブコメの波動というやつだろうか。

 今の新八は、何らかのラブコメの主人公のようにドキドキしている。元々あまり女の子と接する機会が多いわけではない。それでも彼の人柄が、優しさが、時折女性に響くことがある。今回は完全に相乗効果を招いていた。何せ普段は滅多に会うことのない人物同士。そんな二人が巡り会った時、一体何が起きるだろうか。

 まさにその第一弾として、

 

「「あっ……」」

 

 隣同士を歩いていた二人の距離が自然と近かったのか、彼らの手が、ちょんっ、と触れ合う。所謂あと少しで手を繋ぐことができる程の距離だった、というやつだ。

 

「ご、ごめん!」

「い、いえ、こちらこそ……っ」

 

 新八は手を引っ込める。この辺りはさすがといえる程のスピードだ。

 しかし、リグルは少し寂しそうな表情を浮かべていた。

 

「リグルちゃん?」

「うぅ……っ」

 

 何かを迷っている様子のリグル。

 そんな彼女を心配そうに見つめる新八。

 

「……うんっ」

 

 やがて覚悟が決まったらしいリグルは、意を決して、

 

「えっ……!」

 

 新八の手をしっかりと握りしめた。

 突然感じられた女の子の手の柔らかさに、新八の心はクライマックス状態である。

 

「(ちょっとォオオオオオオオ!! めっちゃ柔らかいんですけどォオオオオオオオ!! なんだこのラブコメ的展開!? こんなのがこの小説にあっていいんすかァアアアアアアアアアア!?)」

 

 内心穏やかではないご様子。

 一方のリグルは、

 

「あ、あの、森の中は危険なので、その、はぐれないように、手、つなぎましょう……っ」

 

 俯きながらそう言ったリグル。

 自身の行動が恥ずかしくて、まともに顔を合わせられないのだ。

 一挙手一投足が最早可愛いの塊と化しているリグル。普段男の子っぽいとか言われる彼女の様子は、そこにはない。

 

「う、うん、そうだねっ」

 

 自然と、新八の声も上擦ってしまう。

 お互い緊張している状態だ。

 一体これはなんの小説なのだろうか。

 

「……新八さん」

「どうしたの?」

 

 握る手に力が少しだけ入る。

 リグルは恥ずかしがりながらも、それでも新八のことを見ながら言う。

 

「私、新八さんになかなか会えなくて、その、寂しかったです……」

「……っ」

 

 思春期男子が言われてしまったら勘違いする台詞の一つ。

 それはもちろん新八の心にもダイレクトアタックを繰り出す。

 

「(本当にどうしちゃったの!? 今回僕の心臓バクバカ展開なんですけど!? このままだと、大人の階段登っちゃいそうだァアアアアアアアアアアア!!)」

 

 心の叫びに、段々と男の本能が混じり始めている。

 そんな新八の心の中はいざ知らず、リグルは自分の胸中を明かしていく。

 

「私、なかなか幻想郷でお話し出来る人がいないんです。ですから、こうして新八さんと会えて、お話しできて、手を繋げて、私……すごく嬉しいんですっ」

「っ!!」

 

 もう勘違いでもなんでもない。

 新八も鈍感だから気付いていないが、明らかにリグルは新八に好意を抱いている。

 きっかけは本当に些細なことだったのかもしれない。

 しかし、その感情に嘘偽りは存在しない。

 

「あの、もし、新八さんがよろしければ……」

 

 立ち止まる。

 新八もそれに合わせて立ち止まる。

 自然と、向かい合う形をとる。

 そしてリグルは、

 

「私と……私と……っ!」

 

「見つけたぞー!! 眼鏡ーっ!!」

 

 こんな時に限って、ラブコメのお約束が発動した。

 

 

 

 

 

 

銀魂×東方project

 

 

 

銀色幻想狂想曲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第百十八訓 ラブコメには大抵存在するお約束




ベッタベタなラブコメをやりたいが為の新八回ですww
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