新八が派手に爆発したその裏で、銀時と神楽は幻想郷における人里に来ていた。
博麗神社では霊夢と魔理沙がいつものようにお茶を飲んでまったりしている光景しかなかったので、たまには人里に行ってみるのも悪くはないかという判断の元だった。
そうして彼ら二人が人里にやってくると、
「あれ? もしかしてあんた達……」
「ん?」
銀時と神楽の目の前から、一人の女性がやってくる。
彼女の名前は藤原妹紅。人里においては慧音の所によく訪問しにくる人物だった。
「お前誰アルか?」
神楽と銀時にとっては初対面の相手。しかし妹紅にとっては知らない相手ではない。何せ以前銀時が寺子屋で一日代講キャンペーンを実施した際に、慧音と共にその様子を確認しているからだ。その後しばらく遭遇することはなかったのだが、今回こうして巡り巡って再会したという形である。
妹紅は、銀時達に頭を下げると、
「私は藤原妹紅。あんた達のことは慧音から聞いてるよ」
と、自己紹介をした。
「慧音っていうと、寺子屋に居たあの先生のことか?」
「そうそう。私もたまに手伝ってるんだよ。慧音がたまに仕事で抜けなくちゃいけない時とかに、あの子達の面倒を見たりとかね」
どうやら慧音が居ない時に、ルーミアやチルノ達の面倒を見るという仕事を引き受けているようだ。妖怪の子供たちの面倒を見るというのはそれだけで結構苦労しそうなことなので、彼女はある意味人が良いのかもしれない。
「あんた達は今日は一体何しにきたんだい?」
気さくに話しかけてくる妹紅。彼女の性格からきているのだろう。
「暇つぶしみてぇなもんだよ。いつもいる新八がこっち来てるっていうからついでみてぇな感じだ」
「なる程。ならちょっくら私と付き合ってくれないかい?」
ちょうど話し相手が欲しかったようで、妹紅は銀時と神楽の二人を誘おうとしている。
神楽はどちらでもよさそうな反応をとっており、銀時次第といった形となる。
断る理由もなかった銀時は、
「いいぜ。アンタみてぇな別嬪さんと話が出来るなら役得ってもんさ」
「おぉ、お世辞がうまいねぇ。とりあえず歩こうか」
お世辞を言いながら銀時は妹紅の提案に乗る。それをさり気なくスルーした妹紅。言われ慣れているのか、そんなことはどうでもいいと思っているのか。
ともかく、この幻想郷に来てから珍しい三人組で歩くこととなった。
「しっかし、アンタが代講やってた時の様子を聞いた時には驚いたよ。ほとんど授業していないって話みたいだからねぇ」
実は見ていたのだが、妹紅はそのあたりをぼかしつつ、そんな風に話を切り出していく。
対する銀時は、頭を掻きながら、
「まぁな……あんだけやんちゃなガキどもには、授業ずっと聞かせて暇させるよりも、身体動かしてた方がちょうどいいんだよ」
「嘘つけヨ。ただ単に面倒臭かっただけじゃないアルか?」
「銀さんを何だと思ってんの? 原作でも銀八先生見事に遂行してたでしょ?」
「原作? 銀八先生?」
いまいち話についていけていない様子の妹紅。彼女のいる世界の話ではないのだから当然のことではある。というより、幻想郷の住人では大多数の人間が追い付けるわけがない。
「まぁ、それはいいとしてさ……」
話についていけなくなった妹紅は、話題を変えることにする。
その時、銀時は少しだけ気配が変わったことを察していた。
「少し聞きたいことがあるんだよね」
「どうした?」
改まった態度で聞き直す妹紅。
そして彼女から出た質問と言うのは、
「不老不死について、どう思う?」
突拍子もない言葉だった。
「は?」
「不老不死アルか?」
当然、二人の頭に疑問符が飛び交う。
不老不死など本来あり得ないものだ。生きる者には必ず死が待ち受けている。これは紛れもない事実なのだと、少なくとも常識では考えられる。
だがここは幻想郷。時折その常識に当てはめてはいけない事象も存在する。
「ある人は、魔が差したせいで不老不死の薬を口にしてしまい、以降成長が止まってしまった。何十年、何百年、何千年経っても、老いもしないし死ぬこともない。もちろん痛みは存在するし、病気にもなる。怪我だってするし、命を落とす程の重傷に陥ることもある。だけど死なないんだ。そんな境遇に居る者が、この幻想郷には複数人存在するとしたら、アンタ達は一体どう思う?」
藤原妹紅は、かつて蓬莱の薬を口にしてしまい、不老不死となった。
それはもう取り返しのつかない過去の話。
今となっては最早どうすることも出来ないこと。
ならばせめて、今をどうにかして生き続けるしかない。
そんな彼女から尋ねられたのは、不老不死に関すること。
銀時は少し考える素振りを見せて、
「俺ならば、不老不死なんざ願い下げだな……生き方、死に方は自分で決めてぇからな。死にたくても死ねねぇってのは、少なくとも俺は御免だ」
「けど、そんな境遇の人が身近に存在するとしたら……? アンタは不老不死になろうとするか?」
これは彼女にとって、自身の生涯を懸けた質問でもあった。
結果的にはそうなっていたが、妹紅は過去の因縁すら超えた絆を、不老不死を得ることによって結んでいるのだ。皮肉にも、かつて恨んでいた相手との絆は、不老不死によって誰よりも固いものへと昇華しているのだ。
そんな彼女の気配を察したのか、神楽は口を開かない。
銀時は、真剣な眼差しで、
「それでも俺は、不老不死であることを選ばねぇ。最後まで美しく生きていたいからな……ただ、他の誰かが不老不死になることを止めるつもりなんざねぇよ。それがソイツの選んだ道だってんなら、俺には止めようがねぇからな……けど、終わりがあるからこそ、人生ってのは美しく感じるものなんじゃねえのか?」
「……っ」
それは、妹紅が相手をしている人物が告げたことと同じ答えだった。
それもその筈で、その相手もまた、銀時から答えを得たのだから。
彼女は納得せざるを得なかった。一生を共にするのではないかと思われる仲の人物が得た答えが、今も尚軸がぶれることなく、真っ直ぐに、銀時の口から告げられたのだから。
「……そうか。そうだな。そうだなぁ」
しみじみと感じ取る妹紅。
正直に、彼女は銀時のことを羨ましいと感じていた。
生き方も、死に方も選べるその人生を。
「……まぁ、これでいいか? テメェの知り合いの姫さんにも同じこと伝えたから、詳しくはソイツから聞け」
「っ!」
どうやら銀時は気付いていたらしい。
妹紅の質問が、妹紅自身のことを、輝夜との関係のことを、そのどちらについても関係していたことを。
「……敵わないなぁ、アンタにゃ」
妹紅は思わずそう呟いていた。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第百二十訓 気になったことは質問してみると良い
今回は妹紅エピソードです。
一話限りの話ですが、この後のポロリ篇エピソードに続いていきますー。
もうしばらくポロリ篇は続きます。