少女は、帽子をかぶり、羽衣を身に纏っていた。黒いロングスカートを履いており、髪の毛は明るい紫色。瞳は真紅に染まっており、高身長。
そんな彼女は今、銀時や神楽の前にいる。
「あ、地震来ますよ。気をつけてくださいね」
ぶっきらぼうにそれだけを伝え、その場を去ろうとしていた。
「って、ちょっとまたんかぁあああああああい!!!」
流石に銀時もスルーするのは許さなかった模様。いきなり地震予知情報を出してきたということは、彼女が咲夜やパチュリーの言っていた地震を予知した人物なのだろう。
何故こんな噂が流れてきたのか、理由は一つしかない。
「こうしてみんなに自分から流してたアルな……」
そう。
彼女が自分で、地震が来るという事実を伝えていたのだ。
「地震ってのは、博麗神社で起きたことか?」
銀時は尋ねる。
しかし少女は、
「あれについては私も知りません……私はただ、地震が起きることを伝えにきたのと、総領娘様を連れ戻しにきただけなので……」
「総領娘様? 誰だそいつは」
聞き覚えのない名前に、銀時は尋ねる。
すると少女は、
「比那名居天子様です。そして私は……永江 衣玖。よろしくお願いします」
その口調はかなり事務的なものだった。本当に必要最低限のことのみを伝えるような、そんな感じ。頭を下げながら表情を変えることなくそう言った。
銀時達は自分達の名前を告げた後に、
「その天子ってのはアンタの上司みたいなもんか。もしかしたら今回の一件はそいつが絡んでるんだろうな……」
「……あり得るかもしれません」
ため息をつきながら衣玖は答える。自分の主人が一体どんな性格をしているのかをある程度察する事が出来てしまっているからこそ、可能性を捨てきれない。
「各人のみに起こる異常気象……テメェが予知した地震とは違う博麗神社のみを襲った大地震……そして緋色の空……これだけのことを平然とやってのけるっつーことは、そいつはやっぱり天候や自然現象を意のままに出来るやつってことだろ? テメェの主人にはそれが可能か?」
「……可能です」
「決まりだな」
銀時は確信する。
今回の異変、衣玖の主人とも言える存在、比那名居天子こそが犯人であると。
「そうしたらそいつぶっ飛ばせば終わりアルな? そいつのところまで案内……」
「する必要はないわ!」
「「「!?」」」
三人のいる所に響く女性の声。
その声の主は、既に銀時達のすぐ近くまで来ていた。
腰まで届く青色のロングヘアーに真紅の瞳。頭にかぶっている帽子には、桃の実と葉っぱが付いており、半袖のシャツにロングスカート、ブーツを履いている。胸元には大きな赤いリボン。服の一部はエプロン状になっており、虹色に輝く装飾品が施されていた。そして右手には大きな剣を握りしめている。
彼女こそ今回の異変の主犯、比那名居天子である。
そんな彼女は、何やら楽しそうな表情を見せていた。
「まさか博麗の巫女でもなく、幻想郷の管理者でもなく、ただの侍が私のことまで辿り着くとはね! 今回の一件を引き起こして正解だったわ!」
「……テメェが今回の異変の犯人ってところか?」
「如何にも!」
銀時に追求されたところで、彼女は特に反論することもない。何より、追い詰められる状況すら予測していて、それを楽しんでいるようにも見える。思考回路で言えば完全に愉快犯のそれに近い。
「私は大地を操る程度の能力を持っている。そしてこの緋想の剣は、周囲の気質を集めて力に変えることが出来る剣。今回色んな人の天候が変わってたのはこいつのせいだな」
「なるほど……その時幻想郷にいた能力持ちに作用してたのは、その剣が気を集めてたからか」
結果的に、それぞれの人物達の周囲の天候が崩れたのは副産物でしかなかったのだ。ただし、天子はそれを見越した上で今回の一件を引き起こしている。
「総領娘様……どうしてこのようなことを?」
一番聞きたいのはまさしくその点。この一点が解き明かされない限り、動きようがないからだ。
だが、天子の口より告げられたのは、
「え? 暇だったから。退屈しのぎ?」
あまりにも短絡的で、そしてあまりにも自分勝手で、そして物凄く単純な理由だった。
「「はぁ!?」」
これには流石に銀時と神楽の二人も呆れるレベル。衣玖に関してはこめかみの部分を抑えていた。
「やることなくて暇だったんだよ。その時にこの剣見つけてさ。んで、こんな異変を起こしたら誰か強いやつくるかなーって思って」
「霊夢のところに地震起こしたのはどうしてアルか……?」
「ん? 博麗の巫女は強いんだろう? なら地震でも起こせば来るかなーって」
「……まじか。まじかこいつ。ただそれだけの理由でこんな傍迷惑な異変を起こしやがったのか!?」
下手すれば幻想郷を揺るがす程の大事件になりかねなかったものが、結果的にただ一人の暇つぶしによって引き起こされていたという事実。あまりにも酷すぎる事実に銀時は驚愕を隠しきれない。
「まぁまぁ、固いこと言いっこなしってことで。とりあえずせっかく犯人にたどり着いたんだし、どう? ひと勝負……」
「「そうね。その話、すごく興味があるわ」」
その時。
怒りに満ちた二人の女性の声が、辺り一面に響き渡った。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第百二十三訓 時にはしょうもない理由で事件を引き起こすこともある
おそらく次回でポロリ篇終了となります。
そして地霊殿篇へと突入する予定です!