キスメを通り過ぎた銀時達が次に遭遇したのは、
「……蜘蛛?」
「え?」
霊夢の呟きに、魔理沙が疑問を浮かべる。
彼らの目の前に居たのは、金色のポニーテールに茶色の大きなリボンをつけ、瞳の色は茶色。黒いふっくらした上着の上に、焦げ茶色のジャンパースカートを履いていて、丸く膨らんだスカート部分は蜘蛛の腹を、胸についた飾りボタンは蜘蛛の眼を、四本のベルトは自分の四肢と合わせて蜘蛛の8本脚と模様をイメージしたものとして装飾が施されている。どう見ても人間体なのだが、霊夢は何故だか蜘蛛だと一発で見抜いた。
「へぇ……アンタ、なかなかいい目してるね!」
少女は蜘蛛と呼ばれて喜んでいた。
どうやら自分の種族を言い当てられたことが嬉しかったようだ。
「私は黒谷ヤマメ! こんな所に人間達がこんなにも来るとはすごいじゃないかい! 私は思わずびっくりしちゃったよ!」
やけにおばさん臭い口調で語り掛けてくる少女に対して、
「なんだこいつ、合法ロリかなんかか?」
という、銀時からの的外れな感想が返ってきた。
「合法ロリってのは私のことかい? 随分と新しい言葉つかってくるねぇお侍さん」
「坂田銀時だ。名前位覚えて帰ってくれよな?」
「ほほう、坂田銀時って言うのかい。大層な名前だねぇ……そっちの人達は?」
ヤマメに言われたことにより、他のメンバーも自己紹介をする。
そんな彼女の感想の一つに、
「へぇ。眼鏡かい」
「ちょっと!? 僕名前言いましたよね!? なんですぐに眼鏡認定されなきゃならないんですか!?」
これには流石の新八もツッコミするのを止められなかった。
「本当にこんなところに人間が来るだなんて珍しいねぇ。一体何のようなんだい?」
「私達は地霊殿という場所を探しております。そこにいらっしゃる方が、今地上で起きている異変について何か掴んでいるのではないかと思いまして……」
「なる程……それならばここを真っ直ぐ行って、一度旧都に足を運んでみるといいよ。そこからなら地霊殿は行ける筈だからねぇ……にしても、なかなか強そうな連中だなぁ。一度お相手してみたいけど……」
ヤマメは全員を見渡して、それから小さく溜め息を吐く。
「駄目だねぇ。こんだけ強そうな連中が六人もいると、私はすぐに負けちまいそうだよ」
ヤマメは好戦的ではあるものの、引き際というものを知っている。
大勢で寄ってたかって殴られたら自分がまけてしまうことを悟ったのだろう。
それ以上深い追及をすることはなかった。
「随分と優しい蜘蛛なのね。テリトリーの中に足を踏み入れたら逃がさないものだと思っていたけど」
「私ぁ別にあんたら食べたいわけじゃないからねぇ。楽しく生きていられればそれでいいのさ。だからさ、次会った時には是非とも戦っちゃくれないかい? 特にそこのお侍さん――坂田銀時、なかなか強そうだよ」
「え、俺?」
まさか指名されるとは思ってなかった銀時。
自分で自分を指差しながら、きょとんとしている。
「いや、まぁ、銀さん面倒事は勘弁なので、ここは代わりに魔理沙でどうっすか?」
「ちょ、私を使うのかよ銀さん!?」
「いいわよ~」
「いいのかよ!?」
あっさりとヤマメは認めたので、流石に魔理沙も驚きを隠せない。
「まぁ、冗談はともかくとして、旧都に行けば何か掴めるんじゃないかい?」
「サンキューアル」
一応神楽が礼の言葉を述べる。
「それじゃあ先へ進みましょう。いつまでもここで立ち止まっているわけにもいかないし」
「そうだな……道案内ご苦労さん。それじゃあ俺達行くわ」
「あいよ~」
銀時達は、ヤマメに指示された方へと歩みを進める。
ヤマメは彼らの後ろ姿を眺めながら、気楽そうに手を振っていたという。
※
そうして銀時達は、旧都へ到着した。
そこは辺り一面暗い場所――とはいえ、所々松明によって火がつけられており、ある程度の灯りは保たれてる。色んな建物が建ち並び、住人も何人か歩いているようだ。
その大体は、鬼か妖怪である。
「鬼か……そういやあの大酒飲みも鬼だったな」
「あぁ、萃香のこと?」
以前、宴会をやりたいが為に自身の能力をフル活用した鬼――萃香。
彼女もまた鬼であり、この地に足を踏み入れることは一応可能である。
今回彼女は酒飲んで寝ている為、ここには来ていないが。
「これが終わったら、温泉浸かりながら宴会だぜ!」
萃香の名前を聞いて酒が飲みたくなったのか、魔理沙がそんなことを宣言した。
「お、いいアルな! 温泉に浸かって食べるのも悪くないアル!」
「……俺達二人だけの宴会になりそうだな」
「そうですね……」
男女の壁は、温泉においてはかなり大きいものである。
最も、何人かはそんな壁をぶち破って銀時の元へやってきそうなものではあるが。
と、その時だった。
「……ん?」
銀時は、辺りを見回した。
「どうしましたか? 銀時様」
咲夜が尋ねる。
銀時は辺りを見ながら、
「いや、何か今、気配を感じた気がしてな……」
確かに、銀時は何者かの視線を感じたのだ。
しかし今回は殺気や闘気の類ではない。
もっと純粋な好奇心からくるもの。
「……んん?」
他の人達も銀時に倣って周囲を見るが、特におかしな点は存在しない。
そう、彼女達からしてみれば、視線すら感じていないのだ。
「本当に人がいるアルか? 何も感じないアル」
「……気のせい、か?」
銀時が辺りをもう一度見渡した、その時だった。
「っ!」
突然、銀時の肩に、何かが触れたような感触が起きたのだ――。
銀魂×東方project
銀色幻想狂想曲
第百三十訓 道案内する人の口調が時折おばさん臭いことだってある